A Day In The Life


【レコーディング・セッション履歴】 【収録レコードリスト】
【レコーディング・セッション分析】
【リマスター・モノ】 【リマスター・ステレオ】
【Undocumented Recording Session(1999年原稿)】

【レコーディング・セッション履歴】
67/01/19ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
フィル・マクドナルド
Recording 仮題“In The Life Of ...”、第1〜4テイク
第1テイクはトラック1にボンゴ・マラカス・ピアノ・ギター、トラック4に大量にエコーをかけたジョンのボーカル・マル・エバンスがミドルで1から24まで数える声(徐々にエコーが強くなる)、目覚まし時計のベル
第4テイクでは(第1テイクと同じ音を入れた後)2つの空きトラックにジョンのボーカルをエコー付きで録音
Geoff:ボンゴはリンゴ、マラカスはジョージ、ピアノはポール、Aギターはジョン、でスタートしたが、途中でジョージとリンゴが楽器を交換し、ボンゴは小さくミックスされた
Martin:第4テイク
1 ピアノ(ポール)、AG(ジョン、マラカス(ジョージ)、ボンゴ(リンゴ)
2 セカンド・ボーカル(ジョン)
3 イントロの最後数小節のピアノコード(ポール)、サード・ボーカル(ジョン)
4 深いテープエコー(0.09秒のディレイ)が掛かったボーカル(ジョン)、マルのカウント、目覚まし時計
67/01/20ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
フィル・マクドナルド
編集 第4テイクをテープ・リダクションして、第5〜7テイクを作成、第6テイクがベスト
Martin:第6テイク
1 第4テイクのトラック1
2 第4テイクのトラック2〜4(ボーカル類、ピアノ)
3 (空き)
4 (空き)
67/01/20ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
フィル・マクドナルド
Recording 第6テイクにジョンのボーカル、ポールのベース、リンゴのドラムス、ポールのボーカル(2/3に録り直す)を追加
Martin:第6テイク(トラック4はオーケストラ用に空けていたがポールがピアノを録音してしまう)
1 第4テイクのトラック1
2 第4テイクのトラック2〜4(ボーカル類、ピアノ)、ミドルのボーカル(ポール)
3 ベース(ポール)、ドラムス(リンゴ)
4 ピアノ(ポール)
67/01/30ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Mono Mixing 第6テイクよりリミックス1、デモ用のラフ・モノ・リミックス
“ACETATES”他多数のブートレッグに収録されている。ベースもドラムスも正規バージョンとは別テイク(後日に録り直したため)だが、ピアノは同じもの。
67/02/03ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Recording 第6テイクに1月20日に追加したポールのボーカル・ベース、リンゴのドラムスを録り直す
67/02/10ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
編集 第6テイクをテープリダクションして第7テイクを作成
Martin:第7テイクA
1 第4テイクのトラック1&第6テイクのトラック4のピアノ
2 第4テイクのトラック2〜4(ボーカル類、ピアノ)、ミドルのボーカル(ポール)
3 ベース(ポール)、ドラムス(リンゴ)
4 (空き)
67/02/10ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Recording 第7テイクにオーケストラ(40人編成)をSI
オーケストラは4トラック録音
Martin:オーケストラは5トラック録音、機械的にキャスタインを操作することで2台を同期させる(つまり同期信号の録音ではなく、テープの頭出しが大変)
Martin:第7テイクA
1 第4テイクのトラック1&第6テイクのトラック4のピアノ
2 第4テイクのトラック2〜4(ボーカル類、ピアノ)、ミドルのボーカル(ポール)
3 ベース(ポール)、ドラムス(リンゴ)
4 オーケストラ、ボーカル(ジョン)
Martin:第7テイクB
1 オーケストラ
2 オーケストラ
3 オーケストラ
4 オーケストラ(ティンパニーが多い)
67/02/10ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
編集 第7テイクに第6テイクのSIを加えてリダクション
(註:日本語版の翻訳ミス、原書では"reduction of take 7 with SI onto take 6")
予想:最終的な第6テイク(マーティンが記したジョンの追加ボーカルはこの段階のものだろう)
1 第4テイクのトラック1
2 第4テイクのトラック2〜4(ボーカル類、ピアノ)、ミドルのボーカル(ポール)
3 ベース(ポール)、ドラムス(リンゴ)
4 第6テイクのトラック4のピアノ、第7テイクAのオーケストラ、追加のボーカル(ジョン、ポール)
67/02/10ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Recording エンディングの編集用パート、第8〜11テイク
ピアノコードではなくハミング
第8〜10は中断
第11テイクの残り3トラックにオーバーダブ
67/02/13ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Mono Mixing 第7テイクより、リミックス2〜5
67/02/22ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Recording 編集用パート第1〜9テイク
エンシングのピアノコードの録音
ジョン、ポール、リンゴおよびマル・エバンスがEメイジャーを弾く
第7テイクが59秒で一番長い
67/02/22ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Recording 編集用パート第9テイクの空き3トラックにSI
ジョージ・マーティンのハーモニウムも加えて3回オーバーダブ
全長53.5秒だがレコードでは早めにF.O.
67/02/22ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Mono Mixing 第6および7テイクより、リミックス6〜9
67/02/22ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
編集 モノリミックス9および編集用パート第9テイク
67/02/22ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Stereo Mixing 第6および第7テイクより、リミックス1〜9
RS5〜RS6前後がブートレッグにしゅうろくされている(内容は以下の順)
(1)リミックスのコール無しで始まり、2回目のAメロで楽器を中央に定位させた後、3回目のAメロでボーカルだけが右へ移動する。このテイクはオーケストラのクレッシェンドが始まる前で終わる。
(2)何故か“RS7”のコール、ただし中身無し
(3)“RS5”のコール、イントロだけで終了する。このリミックスでは、ボーカルとピアノが右、Aギターとピアノとマラカスが左、ベースが中央になっている。
(4)“RS6”のコール、最初のクレッシェンドの前後で終わる(2種類あるが、完奏するものはない)。“RS5”とは左右が逆になっている。2回目のAメロだけが全ての音を中央に移動するのは前述のミックスと同じ。これらは3回目の頭で左右に移動させる。
更に番号不明のリミックス(“CAPITOL ARCHIVE”とされている)として-、ラジオ番組として放送された“HISTORY OF BEATLES YEAR 1962-1970”のミックスがある。これは“RS6”に極めて近いが、3回目の頭で左右に移動させる時、ピアノだけが1拍取り残されて、ボーカルと同じタイミングで移動する。
67/02/23ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Stereo Mixing 第6および7テイクより、リミックス10〜12
67/02/23ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
編集 ステレオリミックス12と編集用パート第9テイク
リミックス12は、カウント付きバージョンとして“IMAGINE”で公式にリリースされている。SGT. PEPPERとの違いはイントロ部分の編集跡だけである。
“IMAGINE”とは兄弟関係にある音源として、1983年に行われたアビーロードスタジオの一般公開(一般には“アビーロード・ショー”と呼ぶのかな?)のために未公開音源を準備したJOHN BARRETT氏が、その前段階でコピーした音源もブートレッグ化されている。“IMAGINE”とはオーケストラ部分のズレがないので、基本的には同じミックスと考えられる。ステレオの定位は左右が逆になっているが、これは後で逆にしたものと思われる。最大の違いはポールのボーカルパートの一部(ピアノのアルペジオが登場する前後の区間)でのテープ編集らしき形跡だが、具体的に何が違うのかを特定できる程の違いではない。部分的な差し替えといった程度だろう。
67/03/01ジョージ・マーティンジェフ・エメリック
リチャード・ラッシュ
Recording 第6テイクにピアノのオーバーダブ、未使用&目的不明
レノン('80 PBインタビュー):タイトル通りさ。ある日新聞を読んでいて、ふたつの記事に気がついたんだよ。ひとつはギネス家の跡取り息子が自動車事故で死んだという記事で、これがトップ記事だった。ロンドン市内の事故で死んだんだ。次のページには、ランカシャー州ブラックバーンに4000も穴ができたっていう話が出ていたんだ。道路にだよ。それで、そいつも埋めようとしてたのさ。あの歌の中の「君を燃え上がらせたいな」っていう、きれいなリックはポールのものだよ。あの歌詞の大部分はぼくのものだけど、ポールの頭の中にありながらどの歌にも使えないでいたあのリックをこの歌のために出してきたんだ。とてもいい文句だって、ぼくは思ったよ。

『耳こそはすべて(ALL YOU NEED IS EARS)』 ジョージ・マーティン著 ISBN4-309-46120-4
『サージェント.ペパーズ……』のアルバムでは、私たちはステレオ効果であらゆることを試みた。普通ならば考えられない定位づけをしたり、楽器が漂って位置を変えることによって、聴いている人の頭の上を飛んでいるような印象を与えたりしたのである。これに対して、もしもラフマニノフのピアノ・コンチェルトを録音するとしたら、そんな試みをすることはないだろう。人々は確かに、コンサート・ホールを思わせるような方法で録音されたお気に入りの作品を、好んで聴くものである。カデソツァの途中で、ピアノが天井を突き抜けて反対側にいってしまうなどというのは好まないのだ。同等に重要なことは、ラフマニノフ自身も、そんなことを考えてはいなかったのだ。しかし、もし私が″スペース・オデッセイ″なる電子音楽を作曲するとしたら、私はすべて思いどおりのことができる。ただひとつ悔やまれるのは、録音された音をコンサート会場で再現できないだろうということである。
 けれどもまた、コンサート会場というのは、席がひとつしかないわけではない。前方にも、そしてまた後方にも、席がある。さて、どこに音を位置させるのか?前にも述べたように、これは好みの問題なのだが、もし私がピアノ・コンチェルトを録音するとしたら、私はオーケストラの正面、ちょうど指揮者のすぐうしろあたりに音を定める。ピアノを真ん中に、そして第一と第二ヴァイオリンを左側にして、ヴィオラとチェロを右側にする。ハープはおそらく左で、トランペットやトロンボーンが右になり、ホルンや木管楽器を真ん中にする。と、こんなぐあいだ。

第6テイクと思われるトラック情報
1: Piano and lead vocals
2: Guitar and tambourine
3: Jangle piano, orchestra
4: Bass guitar and drums
(補足)
Tr.3の「ジャングルピアノ」は加工したAギターに聴こえる。67/03/01に記録されている音だろう。

【収録レコードリスト】
with count-in “The Complete John Barrett's Cassette Dub” F19 (7CD:---) for Abbey Road Video Show
AG/Pf/Dr/B/ジョンのボーカル/ポールのボーカル/マルのカウント/目覚まし時計(各1トラック) “ACETATES” A04 (CD:YD-009)
“ULTRA RARE TRAX Vol.3” A03 (CD:TSP-CD-025)
リミックス4 “UNSURPASSED MASTERS VOL.3(1966-1967)” A09 (CD:YD-003) 67/1/20(Fri),Remix 4 into 5,6,7
take 1, 2, 6, 2 の編集バージョン “ANTHOLOGY 2” B05 (2CD:TOCP-8703,04)
リミックス・モノ9 “SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND” B06 (モノLP:PMC 7027)
リミックス・モノ9 “SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND” A13 (CD(リマスター・モノ):5099969945922)
リミックス・ステレオ12 “SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND” A13 (CD:CP32-5328)
リミックス・ステレオ12 “The Beatles/1967-1970” A06 (2CD:TOCP-8012,13)
リミックス・ステレオ12 “SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND” A13 (CD(リマスター・ステレオ):0946 3 82419 2 8)

【レコーディング・セッション分析】
 第7テイクのオーケストラを第6テイクに戻したことから次のような推測ができる。
◆ 第6テイクから第7テイクへのリダクションはステレオの形式で行われた2トラックを使用
◆ オーケストラの録音もステレオ録音1回の予定であった。残りの2トラックを使用
◆ オーケストラを複数回録音して音を厚くする案が浮上し、4トラックテープ2台を同期させることになった
◆ ミキシング時に確実な同期ができないため、バンド演奏側のテープ第7テイクより第6テイクの方が音質が良いにもオーケストラを入れておく事にした

【リマスター・モノ】
相違箇所内容
エンディングF.O.の余韻はレコードの方が少し長い。

【リマスター・ステレオ】
相違箇所内容
3'31"4拍目のノイズ削除。
4'16"〜4'19"シンバルを強調。
4'20"ブレイク部分の余韻が強調されている(コンプレッサー効果の可能性あり)。

【分析】
 リマスター版ステレオ・バージョンの3分31秒付近にはクリック音が多く、1箇所だけのノイズ削除は焼け石に水の感がある。
4分16秒〜4分19秒のシンバルは追加されたと思われるくらいハッキリした音であるが、他の楽器は全く変化していなく、鳴るタイミングも同じであるのでEQで強調したものだろう。

【Undocumented Recording Session(1999年原稿)】
以下の音源について調べている最中です。
自称“別ミックス”
東芝EMI “IMAGINE”(CP36-5690)
THE SWINGIN' PIG “ULTRA RARE TRAX VOL.3”(TSP-CD-025)
DOCUMENT RECORDS “DOCUMENTS VOL.3”(DR-029-CD)
自称“テイク4〜6 1967.1.20”
UNIQUE TRACKS “UNSURPASSED MASTERS VOL.3”(UT CD 003)
自称“複数テイク”
DOCUMENT RECORDS “DOCUMENTS VOL.3”(DR-029-CD)
ノー・コメント
YELLOW DOG “ACETATES”(YD 009)
CAPITOL ARCHIVE
????? “HISTORY OF THE BEATLES YEARS 1962-1970”(RECORD)

“IMAGINE”はカウント付きバージョンとして公式にリリースされたものですが、 残念ながらイントロの差し替えを行ったのみでボーカルが始まる個所からSGT.PEPPERと同じステレオバージョンになっています (というよりは、SGT.PEPPERで使う前のRS12そのものではないかと思います)。同じく“別ミックス”となっている“ULTRA RARE TRAX VOL.3”と“DOCUMENTS VOL.3”は ラジオ番組として放送された“HISTORY OF BEATLES YEAR 1962-1970”を音源としています。ただし、同番組ではエンディングの ピアノコード部分がカットされていますが、いずれのCDも付け足しています。しかも、その付け足したパートのタイミングが 一致していることから、両者が全く同じマスターを使用していることは明らかです (一般的には後発のDOCUMENTSの方がコピーと考えられていますが詳細は不明です)。 で、この内容ですが、“CAPITOL ARCHIVE”とされていることからも、ステレオ・バージョンとして採用されたリミックス・ステレオ12以外の リミックスのいずれかである可能性が高いです。リミックス・ステレオ12との違いは、出だしの各楽器の定位が左右逆になっている点と、 2回目のAメロ部分だけすべての音を中央に寄せています。(その他の分析に関しては後日)

“テイク4〜6”と記されている“UNSURPASSED MASTERS VOL.3”のものは、実際にはステレオ・リミックス5〜6のようです(曲のはじめに“RS5”とか言ってますから)。 テイク4に相当する個所では、リミックス番号のコールがカットされた状態で始まります。 そして始まるのが何と前述の“CAPITOL ARCHIVE”と同じもの、と思ったら違っていました。 2回目のAメロで楽器を中央に定位させた後、3回目のAメロで定位が変わるのはボーカルだけ(右へ移動)でした。 このテイクはオーケストラのクレッシェンドが始まる前で終わってしまいます。続いて“RS7”のコールがありますが、 “RS7”に相当するものは無く、直ぐに“RS5”のコールがあり、 ステレオ・リミックス5が始まります。ただし、これはイントロ部分だけで終了です。このリミックスでは、ボーカルとピアノが右、 Aギターとピアノとマラカスが左、ベースが中央になっています。続く“RS6”では左右を入れ替えました。 しかも2回目のAメロだけが全ての音を中央に移動するのは“CAPITOL ARCHIVE”や前述の正体不明のステレオミックスと同じです。 もしや“CAPITOL ARCHIVE”とは“RS6”のことではと思ったのですが、これも違っていました。 結構似ているのですが、2回目のAメロで中央に移動させた音を3回目の頭で左右に移動させるのが遅れたらしく、 ピアノの音が1音だけ中央に残ってしまっています。これは、小節の区切りで定位を変えるか、 ボーカルに合わせて定位を変えるかに悩んだ結果と思われますが、いずれにしても明らかに別テイクです。
このように、リミックスに於ける主な作業は音の定位に関するものだったようです。 これに関してはSIR MARTINが以下のように証言しています(この曲に限定しているわけではありませんが)。)
『耳こそはすべて(ALL YOU NEED IS EARS、ジョージ・マーティン著、ISBN4-309-46120-4)』より
『サージェント.ペパーズ……』のアルバムでは、私たちはステレオ効果であらゆることを試み た。普通ならば考えられない定位づけをしたり、楽器が漂って位置を変えることによって、聴い ている人の頭の上を飛んでいるような印象を与えたりしたのである。これに対して、もしもラフ マニノフのピアノ・コンチェルトを録音するとしたら、そんな試みをすることはないだろう。 人々は確かに、コンサート・ホールを思わせるような方法で録音されたお気に入りの作品を、好 んで聴くものである。カデソツァの途中で、ピアノが天井を突き抜けて反対側にいってしまうな どというのは好まないのだ。同等に重要なことは、ラフマニノフ自身も、そんなことを考えては いなかったのだ。しかし、もし私が″スペース・オデッセイ″なる電子音楽を作曲するとしたら、 私はすべて思いどおりのことができる。ただひとつ悔やまれるのは、録音された音をコンサート 会場で再現できないだろうということである。
 けれどもまた、コンサート会場というのは、席がひとつしかないわけではない。前方にも、そ してまた後方にも、席がある。さて、どこに音を位置させるのか?前にも述べたように、これ は好みの問題なのだが、もし私がピアノ・コンチェルトを録音するとしたら、私はオーケストラ の正面、ちょうど指揮者のすぐうしろあたりに音を定める。ピアノを真ん中に、そして第一と第 二ヴァイオリンを左側にして、ヴィオラとチェロを右側にする。ハープはおそらく左で、トラン ペットやトロンボーンが右になり、ホルンや木管楽器を真ん中にする。と、こんなぐあいだ。

“DOCUMENTS VOL.3”の“複数テイク”とされているものは、“UNSURPASSED MASTERS VOL.3”のRS5とRS6を抜き出したもので、しかもRS6は最初のオーケストラのクレッシェンドが終わると同時にカットされてます(何故かWhat's The New Mary Jane ? の残骸がある)。 “UNSURPASSED MASTERS VOL.3”ではもう暫く続いて唐突に終わりますが、どちらも音源を出し惜しみしている感じで嫌ですねぇ。 “RS7”のコールから“RS6”が始まる個所(つまり“RS5”の前後)は両音源でテープ編集をした形跡は感じられませんので、同じマスター音源であると考えられます。

“ACETATES”は昔から有名な音源で、1967.1.30のラフ・モノ・リミックスによるアセテート盤のものです。 ベースもドラムスも正規バージョンとは別テイク(後日に録り直したため)ですが、ピアノは同じものです。 つまり、正規バージョンに於いて、ポールが最初に録音した音を聞くことができるので、大変貴重な資料です。

さらに、1983年に行われたアビーロードスタジオの一般公開(一般には“アビーロード・ショー”と呼ぶのかな?)で 流された‘A Day In The Life’は別バージョンであるという説があるのですが、私が所有しているレコードは極めて音が悪く( たぶん隠し録りしたもので、高域は落ちているし、ルームエコーがかかっている)、厳密な調査ができるレベルではありません。 内容的には“IMAGINE”に極めて近いバージョンと思いますが、それ以上の判断はできかねます。 なお、“アビーロード・ショー”に於ける未公開音源を準備したJOHN BARRETT氏がその前段階でコピーした音源が その後の第1次ブート全盛期を作ったのではないかと思われますが、これらが入手できれば、もう少しまともな調査ができると思います。
なんてことを言っていたら入手できてしまいました。私の結論としましては、 “IMAGINE”とは兄弟関係にある音源だと思います。そもそも、この曲は4トラックテープが 2本使われており、それらを同期再生させることでミキシングされています。2本のうち一方はビートルズの歌と演奏、 他方がオーケストラという状態ですので、この曲のリミックスでは、各々オーケストラに微妙なズレを検出できます。 ところが、前述の音源と“IMAGINE”にはオーケストラ部分のズレがありません。ステレオの定位は左右が逆になっていますが、 これは後で逆にしたものと思われます。最大の違いはポールのボーカルパートの一部(ピアノのアルペジオが登場する前後の区間) でテープ編集らしき形跡があるのですが、具体的に何が違うのかを特定できる程の違いではありません。部分的な差し替えが行われたかも知れませんが、基本的には同じミックスと考えられます。

リリース・バージョン(第6および第7テイクとエンディングの編集用パート第9テイクより)

第1・2・6テイクの編集バージョン“ANTHOLOGY 2”(CD:TOCP-8703,04)
67/2/22版リミックス・モノ9“SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND”(モノLP:EAS-70137)
67/2/23版リミックス・ステレオ12“SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND”(ステレオLP:MFSL 1-100)
CD用ステレオ・リミックス“SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND”(CD:CP32-5328)

マスターテープ構成

Track1 ボンゴ、マラカス、ピアノ、Aギター、マル・エバンズのカウント、目覚まし時計
Track2 ジョンのボーカル、ポールのボーカル、ピアノ(ADT?)
Track3 ドラムス、ベース
Track4 (同期信号)
第7テイクの各トラック オーケストラ

比較結果

 記録では、上記第7テイクを1トラックにミックス・ダウンして第6テイクの同期信号の位置にSIした(新た な)第7テイクが存在し、リミックス・モノ2〜5が作成されているようである。が、最終的にはモノ・バージョ ンもステレオ・バージョンも上記状態で同期を取りながらリミックスが行われている。

 CD用ステレオ・リミックスとは、4'20”のピアノ・コードの直前に編集箇所がある(CDの方が間隔が若干短 い)という点を指しているが、特にミックスバランスに差は無い。編集用パート第9テイクがCD化に際して改め て繋ぎ合わされたということであろう。編集用パート第9テイクはステレオ・バージョンの左チャンネルから聞 こえるトラックに“ジー”というノイズが延々と含まれているが、モノ・バージョンでは数秒でこのトラックを OFFにしているらしく、直ぐに聞こえなくなる。

 オーケストラのテープはマスターテープと同期をとってミキシングされているが、記録にもある通り若干ズレ がある。またF.I.のさせ方が、モノ・バージョンとステレオ・バージョンで全く逆になっており、モノ・バージョ ンが1回目(0'42”)だけ徐々にF.I.して、2回目(2'49”)と3回目(3'46”)は早々に音量が上がるのに対 し、ステレオ・バージョンは1回目だけF.I.が早く、他は徐々にF.I.している。また、ステレオ・バージョン の3'12”〜3'18”のオーケストラは4トラックテープに入っている音なのかADTなのか不明であるが、オー ケストラがダブル・トラックになっている。

 なお、レコードの内溝に追加したとされている犬笛の周波数は、15KHz〜20KHzと文献によってかなり幅があっ たが、周波数解析の結果、5'10”〜5'14”のノイズが15KHzの犬笛の音であることが判明した。従って、マー ティンがCDのライナーノーツに記しているものが正しい。実際には低周波成分も含まれているため人間にはレコー ドのスクラッチノイズのように聞こえる。
MONO(EAS-70137) STEREO(CP32-5328)*


0'03”:SGT(REPRISE)がF.O.



1'42”:オーケストラのクレッシェンドがわずかに遅くF.I.し、
                    音量は最初は小さめ



2'49”:“Ah〜”に合わせてオーケストラが始まるが、
         極端なF.I.はせず音量は最初から大きめ


3'46”:オーケストラが早めにF.I.
0'00”:イントロ


0'12”:Aメロ1
0'43”:Aメロ2
1'11”:Aメロ3


1'47”:間奏
2'21”:Bメロ1
2'35”:Bメロ2
2'49”:Cメロ


3'18”:Aメロ4


3'52”:エンディング

0'01”:SGT(REPRISE)がF.O.




1'42”:オーケストラのクレッシェンドがわずかに早くF.I.し、
                   音量は最初から大きめ




2'52”:“Ah〜”から数秒遅れてオーケストラが徐々にF.I.する
3'12”〜3'18”:オーケストラにADT(のような効果?)


3'50”:オーケストラが徐々にF.I.

4'20”:テープ編集
4'20”〜:ピアノコードに“ジー”というノイズ