All About 全曲バイブル

今まで調べたことを紙面が許す限り入れてもらいました。 そして自分の中でのヒットはクラプトンのチョーキング・ビブラートが周波数解析で分析できたこと。 ここだけでも見て欲しいくらい鳥肌が立ちましたよ! もう内容的には立ち読みできるレベルじゃないです(重いってのもありますが)。

パソコン分析が担当ですが、やはり元コピー屋の血が騒いでサウンド関係(I've Just Seen A Face、Girl、・・・)はうるさく介入してしまいました(汗)。盛り込めなかったネタはここでアウトテイクとして紹介します。

現存する文献をかなりチェックしたので、それだけでも色々書籍を買うよりは遥かに安いと思います。 特にマーティンの書いた『Playback』なんて入手困難なのに恐ろしく貴重な情報(誰々がギターを弾いたってメモにGretchとかEpiphoneとか書いてあるんですから)が載ってたりしますし。 他にもマーティンとエメリックとルイソンで証言が違ってたりするのも相当時間を掛けて検証してます。こんな大変な作業は2度とできません。

予め言っておきますが"GET BACK"に関する情報は控えめです。 ブートに由来する情報は公式な本には向きませんのでご理解のほど宜しく。 その辺りも本サイトでフォローします。

    リクエスト・問い合わせはTwitter ID : mid2prn
Twitter の予定テーマ:Tomorrow Never Knowsのループ分析
リマスター版の発売が9月9日、私自身も当然ながら即日購入で、 ステレオ・モノ合わせて400曲強を一ヶ月半で調査した。 1日10曲ペースで調べていたわけだが (仕事を終えて、家事を済ませてからの作業なので正にhard day's night、我ながら良くやったものだ)、 その真っ最中の10月後半に監修者から頂いたコメントが「ドラムスもループの可能性があるのでは?」
まさに盲点だった。が、余裕が無い。 最初の1分くらいを、1小節ずらして同期させてみたらスネアがピッタリ一致する。 つまり1小節ループの可能性が非常に高いのだが、原稿の締切があるのでそれ以上の調査は保留した。 ようやく調査を再開する。

【アウトテイク(編集後記)】
今回は私が提供する情報を他の方がどのように分析するかに興味があったのですが、 もう少し補足を加えないと伝わらない内容もあるようで...
私個人の分析は調査結果DBに述べています。
  1. リマスター(24ビット処理)で何が変わるのか?
    CDの規格は16ビットです。 単純にコピーしてしまうと折角増えた8ビット分の情報が捨てられてしまいます。 これでは何も意味がありません。

    では、どこで効果が表れるのかと言いますと、音圧補正です。 「音圧が上がる」とよく表現されていますが、 実態は小さかった音を大きくして、 大きな音と小さい音の差を少なくすることです。 この「小さかった音が大きくなる過程で使われるのが 捨てられるはずだった8ビット分の情報」ということです。

    以前は捨てられていた情報が復元されただけでなく 音圧補正で強調されていますので、 「今まで聴こえなかった音(音色、弦の擦れる音、等)が ハッキリと聴こえる」となるわけです。

    余談
    ABBEYROAD の旧CDは15ビット分の情報しか入っていませんでした。 なので普通に聴くだけでも音量が上がっており、正確な比較はできません。 音質の評価をする場合は、音量を同じにしてから比較した方が良いでしょう。
  2. スーパーインポジション(SI)
    ルイソンの記述に頻繁に登場するこの言葉、ところが結構曖昧な使われ方をしています。 意味はエメリックの著書に記述されている通り、「テープレコーダーの消去ヘッドを無効にして追加録音する手段」です。 エメリックはブレネルのテープレーダーに付いていたこの機能を使って、ギターやピアノの多重録音を楽しんでいたらしいです。
    問題は、パンチイン(未録音の空きスペースに録音する事)とは違って、やり直しがきかない点です。 追加録音の際に演奏ミスをしてしまうと、既に録音されていた音が巻き添えを食ってしまいます。 この点が監修者の方の懸念事項となって、全体的に「別のテープにコピーした可能性」でまとめる方向に落ち着きました。 実際、Got To Get You Into My Lifeではブラスを追加する際に、リミックスしたテープをコピーしてから ブラスの音を重ね書き(SI)していますし、リスクのある作業なのは間違いありません。

    ただし、どうしても辻褄の合わない曲がAnother Girlです。 マーティンのメモからも第1テイクのトラック全てが埋め尽くされた状態でポールのリードギターが追加されていることは確実ですが、 この曲は第1テイクしか存在しないのがポイントです。 つまり、空きスペースが無いにもかかわらずポールはリードギターを追加していることになります。 テープをコピーすれば第2テイクと呼ばれるはずですから、ここで言うSIは重ね書き以外に考えられません。 失敗したら既に録音されているジョンとジョージの演奏をボツにしてしまうというプレッシャーを諸ともせず ポールはリードギターを重ね書きしているのです(つまり、一発でキメたはずです)。 ‘Help!’録音時、ジョージがオブリガードを弾きこなせず、結局4トラックから4トラックへのミックスダウンをして リードギター用のスペースを空けて別録音にしたのとは対照的です。 この辺りが、ポールがギタリストとして自信を付けた証と言えるでしょう。
  3. J-160Eについて
    私以上に詳しい方も多いと思いますので詳細は譲りますが、相当に曲者です。 アコギかと思いきやトーンコントロールが結構効きますので ‘Please Please Me’のみならず‘Ask Me Why’でも同じ音が出せます。 同様に、‘Twist And Shout’もJ-160Eで演奏した方が雰囲気が出せると思います。 ポイントは「J-160Eでエレキの音を出す必然性は無い」という点だと思います。 ジョージはピックアップの位置を2度変えていて、1回目はブリッジ寄りに移動させたようです。 この事は、「アコギとしてシャープな音が欲しい」という表れだと思います。 つまり「J-160Eのトーンコントロールを絞る」ことは無かったと推測しています。 また、オクターブ奏法の音は小さくなってしまいますので ‘Please Please Me’や‘From Me To You’はグレッチを使ったと見る方が妥当でしょう。

    ただし、“PLEASE PLEASE ME”では相当の使用頻度だろうとは推測しています。 (私はグレッチを持っていないので、どちらの音がより近いかを判断できず、 基本的には使用楽器の推測に加わっていませんが。)
  4. Drive My Car のスライドギター
    10年以上前にBCCの月刊誌を書いていた頃、間奏をコピーして掲載したことがあります。 当時はスライドギターとしてコピーされた楽譜がありませんでしたのでチューニングの推測に苦労しました。 1弦をD、2弦をC、3弦をAにチューニングすると間奏は都合が良いのですが、 イントロの最後の部分がスライドバーで弾けないのが悩みだったからです。 ただ、ポールは薬指にスライドバーをはめるようなので、2弦6フレットと3弦5フレットを指で押さえるのは容易だと解釈し、 イントロ後半はフィンガリングによるもの、という結論に達しました。 つまり、イントロ・間奏・エンディングのリードギターは全てポールによるスライドギターだろうと思っています。
  5. Michelle でジョンはどこを作曲したのか
    Undocumented Recording Session(1999年原稿)の内容ですが、今回は記載することができませんでした。

    "MANY YEARS FROM NOW"によると、原曲はポールがLiverpool institute時代に作っており、RUBBER SOULの頃にジョンがミドル8を書き足したとされています (まあ、これは有名な話ですが、とりあえずポール本人のコメントということで確証が得られたわけです)。 ジョンがどこを足したかというのは(非常に心痛む話ですが)解散後の“JAMES PAUL McCARTNEY”というポールのTV番組でわかります。 この番組ではポールがビートルズ時代の曲をAギターの弾き語りでいくつか演奏しています。 その内の1曲としてMichelleが演奏されているのですが、なんと部分的に演奏されていないパートがあります。 “I love you I love you 〜”の6小節をカットしてイントロと同じコード進行の部分まで飛ぶのです。 といえば、みなさんも気が付くでしょう。そう!ジョンが作曲したパートをカットしているのです。 この時期、余程仲が悪かったことは理解できるのですが、ちょっと悲しい現実でした。
  6. I Will のベースギター
    「ベースギターが入っている可能性」という記述を奇異に感じた方も居られるようです。 この音(D音)は声楽でバスを担当する人が普通に出せる音であり、 ポール自身も We All Stand Together では同じ雰囲気でC音を、 Girl Is Mine では更に低い音(A音)を出していたりしていますが、 監修されたプロ視点での指摘ということで追記されています。 私の分析では「ベースギターやテープ操作を否定するような材料」が見つかりませんでしたので、 複数の意見をまとめる上ではプロの意見を優先させた結論が記述されているようです。
  7. 価格と携帯性の話
    安く作って多くの人に読んでもらう。持ち運べる大きさにする。 これらは重要な要素ですが、今回重視したのは「解り易さ」。 少ない説明で理解できるマニアの人には冗長な情報かもしれませんが、 文章で詳しく説明するより図にした方が直感的に理解できるので、 今回は是非にと入れて頂きました(PRESS TO PLAYほど正確ではないかも知れませんが)。 また、(私もそうですが)40代も後半になると視力が落ちて小さい字が辛くなります。 それなりの情報量を収めようとするとある程度の紙面が必要になってしまいます。

    著者の特権として、iPhoneに全曲バイブルを入れてみました。 電子書籍の環境が整えば解決できる問題もあります。 それまでに問題点を洗い出しておきたいと思っています。 今の感想では、検索するにしても読むにしても全体を見渡せる印刷物がやはり便利です。 電子書籍は部分的に拡大して読む、という使い方になってしまいますが、 ある程度内容を把握してしまえば持ち運べる便利さは比べ物になりません。
    と思っていたらiPadが登場しましたねぇ!これならそのまま電子書籍にしてもらっても問題ないかも。 是非よろしく! > 日経BPさん

【誤記・誤植の訂正】