背景
‘She Loves You’はモノ・マスターしか実在しないと言われてるので
ろくに調べていませんでした。ステレオ・バージョンもモノ・マスター
を使った疑似ステレオであることが既に明らかにされてますし。
私の出番は無いだろうなぁ...ところが!
某MLを通じてスワンさんより提供されたオリジナル・レコード軍団。
オリジナル(のはずの)シングルCDもあるし、CD版のEPもあるし、
どっちかと一緒だろうと思っていたら、
どっちとも違ってました。
これは大変。早速調査開始です。
まずは基本の確認です。
CDは2種類に分類できます。
分類 | タイトル | 国 | フォーマット | Mono/Stereo | 備考 |
A | シングル | JP | CD | Mono | |
PAST MASTERS | JP | CD | Mono | |
B | EP | JP | CD | Mono | |
1962-1966 | JP | CD | Mono | |
Aグループは(デジタルデータとしても)全く同じもの、
Bグループは微妙に違うので、「マスターテープは同一だけどリマスタリングが違う」のだと思われます。
そして、AとBには以下の差(テープ編集)があります。
- 1'02":“woo”の小節の区切り位置(1拍目)
- 1'15":ギターリフの途中(2拍目)
- 1'23":“Pride can 〜”の直前のスネア(4拍目)
- 1'31":“and you know 〜”の直前(4拍目)
編集個所が偶数という場合、部分的な編集による差し替えと考えられます。
この場合で言えば、1'02"〜1'15"、1'23"〜1'31"の2個所が修正されたということです。
最初の修正は何をやったのか私にも分かりませんが、
後ろの修正は間違いなくハイハットの音色補正でしょう。
極端に変化するので既に気付かれていた方も多いと思います。
モノ・マスター自体がテープ編集されて作られていますが、上記テープ編集はそれを示すものではありません。
あくまでも、モノ・マスター作成後、レコードリリースのために“更に”行われたテープ編集です。
現時点では2種類のバージョンしかありませんので、どちらが編集されたかを特定することはできません。
それを解く鍵がオリジナル・レコードとなります。
ではレコードの分析を追加してみます。
(今度追加予定)
分類 | タイトル | 国 | フォーマット | 出だしの波形 | 備考 | PEAK | AVERAGE | PITCH |
A | シングル | JP | CD | | | | | |
PAST MASTERS | JP | CD | | | | | |
PAST MASTERS | US | CD | | スワンさん提供 | 102 | 95 | 100.2〜100.7 |
B | EP | JP | CD | | | | | |
1962-1966 | JP | CD | | | | | |
OLDIES | UK | LP | | Past Masters Vol.7 | | | |
C | シングル | UK | SP | | スワンさん提供オリジナル盤 | 100 | 100 | 100 |
EP | UK | EP | | スワンさん提供オリジナル盤 | 76 | 77 | 100.4〜100.6 |
OLDIES | UK | LP | | スワンさん提供オリジナル盤 | 71 | 72 | 100.0〜100.3 |
1962-1966 | JP | LP | | スワンさん提供オリジナル盤 | 86 | 84 | |
1962-1966 | JP | LP | | 70年代に購入、ステレオ盤 | | | |
OLDIES | JP | LP | | 70年代に購入、ステレオ盤 | | | |
OLDIES | JP | LP | | スワンさん提供オリジナル盤、ステレオ盤 | 80 | 59 | 100.3〜100.4 |
SWAN盤シングル | US | SP | | スワンさん提供オリジナル盤 | 103 | 116 | |
MEET THE BEATLES | JP | LP | | スワンさん提供オリジナル盤 | 63 | 63 | |
イギリス盤のオリジナルシングルは“Pride can 〜”のテープ編集が目立ちません。
そしてAに対しても、Bに対しても、同一とは判定できませんした。
更にオリジナルEPおよびオリジナルOLDIESを調査した結果、Cグループを作成することになりました。
同時期のオリジナル盤(シングル、EP、OLDIES)はいずれもAやBとは異なり、かつお互いに類似しています。
オリジナル盤同士ではテープ編集と思われる個所もありませんので、これらをCグル−プとすることにします。
現時点での妥当な推測は以下の通りでしょう。
63/07/04の元祖モノ・マスター(Cグループ) |
↓ | ↓ |
Aグループ(1'02" 〜 1'15"、1'23" 〜 1'31"を修正) |
Bグループ(1'23" 〜 1'31"を修正) |
推測:モノ・マスターは音が悪い。レコード化の時は気にしていなかったが、
CDにすると粗が目立ってしまう。EQをかけて修正したものの、逆に1'02" 〜 1'15"と1'23" 〜 1'31"の
がおかしくなり、部分修正を行った。これがPAST MASTERSバージョンである。CDシングル発売時は、
“バージョンの統一”という当初の掟があったため、PAST MASTERSバージョンをそのまま使用した。
ところが、赤盤CD制作時、先の掟は破棄され、再度マスタリングが行われ、再び1'23" 〜 1'31"が
修正された。そして、CD版EPや最近のレコードではこのバージョンが使用されている。
次の狙い目は私の所有している赤盤です。
スワンさん提供物件にも同じものがありますので、私とスワンさんの録音環境の差をチェックできるはずです。
未調査レコード一覧
タイトル | 国 | フォーマット | Mono/Stereo | 備考 | PEAK | AVERAGE | PITCH |
SECOND ALBUM | US | LP | | 日本盤じゃない | | |
シングル | JP | SP | | 70年代に購入、再発盤 EAR-20224 | | |
エックスポート(?) | UK | ?? | | スワンさん提供 | 89 | 102 |
OLDIES | UK | LP | | スワンさん提供オリジナル盤、ステレオ盤 | 86 | 73 |
SECOND ALBUM | US | LP | | スワンさん提供オリジナル盤、モノ盤 | 69 | 79 |
SECOND ALBUM | US | LP | | スワンさん提供オリジナル盤、ステレオ盤 | 79 | 81 |
SECOND ALBUM | US | LP | | スワンさん提供 1975年頃のステレオ盤 | 62 | 72 |
P.S.
スワンさん提供の物件は、レコード→カセットテープ→(私の)ラジカセ→PC、
と経由しているのでかなり音質が落ち、ワウフラッターも発生していると思います。
少なくとも、波形を見る限りでは、私のラジカセのLとRは微妙にズレが発生しているようです。
当然この辺りは考慮しますが、テープ編集跡が消える程ではないことを付け加えておきます。
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