ジョンとマーティン
写真はイントロのBコードの演奏であるが、赤丸と赤三角を交互に弾くのがジョンの右手パートの特徴である。緑丸が左手パートで、ロングトーンである点は以前から変わらないが、HELP!の頃は単音であったので奏法が進化しているのは確実である。
ここでのポイントとしたいのは、マーティンの編曲内容である。
マーティンがYesterdayのストリングス・アレンジの時にポールに話した内容に基づくと、Bコードはシ、レ#、ファ#で構成されるのでシは1オクターブ下げてチェロが担当する、というのがセオリーとなる。
ところがジョンの左手パートは、緑色で示した通りシとレ#が接近し、ファ#は親指では押さえにくいので省略、という全くの我流奏法になっている。
これに対してストリングスはセオリーに準ずるのではなく、ジョンの演奏を忠実にコピーしている。これが曲の持つ不気味さを強調しているのは言うまでもない。
エメリックによるとマーティンは当初この曲を嫌っていたとの事だが、ジョンの意図を理解して的確にサポートするからこそ名曲が生まれているというのが分かる。
写真はイントロ後半のE7ーD7での右手パートで、赤三角と交互に弾きながら赤丸1、赤丸2、赤丸3と移動する。
ジョンは白鍵を中心に弾いているため全く同じフォームになっている。ところがギターとは違って、ピアノでは同じ弾き方をしたから同じような音が出る、という訳ではない。赤丸2から赤丸3に移動する時に、E7では星印で示した黒鍵がある。
マーティンが好むのはE7で星印の音を使うことだと思われる。恐らくポールになら指摘しただろう。しかし、ジョンに指摘した所で直せないか直さないか、何にしろ変更しないと分かっていたのだろう。
ここではバイオリンのパートだけを工夫し、E7では赤丸2のタイミングから少し遅れて星印の音を使うように演奏させ、D7の時はジャストのタイミングで赤丸2の音を使っている。
この辺りのバランス感覚がマーティンの素晴らしさだと思う。
トラック1 | リンゴのドラムス |
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トラック2 | ポールのタンバリン |
トラック3 | ジョンのエレピ |
トラック4 | ジョージのギター |
トラック1 | リンゴのドラムス、ポールのタンバリン、ジョンのエレピ、ジョージのギター |
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トラック2 | (空き) |
トラック3 | (空き) |
トラック4 | (空き) |
トラック2 | (空き) |
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トラック3 | ポールのベース、リンゴのセカンド・ドラムス |
トラック4 | ジョンのボーカル |
トラック1 | リンゴのドラムス、ポールのタンバリン、ジョンのエレピ、ジョージのギター |
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トラック2 | オーケストラ |
トラック3 | ポールのベース、リンゴのセカンド・ドラムス |
トラック4 | ジョンのボーカル |
トラック1 | リンゴのドラムス、ポールのタンバリン、ジョンのエレピ、ジョージのギター、ポールのベース、リンゴのセカンド・ドラムス |
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トラック2 | オーケストラ |
トラック3 | (空き) |
トラック4 | ジョンのボーカル |
トラック3 | マイク・サムズ・シンガーズのコーラス |
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トラック1 | リンゴのドラムス、ポールのタンバリン、ジョンのエレピ、ジョージのギター |
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トラック2 | オーケストラ、マイク・サムズ・シンガーズのコーラス |
トラック3 | ポールのベース、リンゴのセカンド・ドラムス |
トラック4 | ジョンのボーカル |
1'35" | "yellow matter custard"の直前(1小節削除) アメリカ盤シングルでは未編集のまま残っており、80年のアメ リ カ編集盤 『レアリティーズ VOL.2』でも確認できる |
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2'00" | 目覚まし時計の直前 |
2'03" | ストリングスの直前 |
2'11" | "sitting in the"の直前 |
2'36" | "expert texpert"の直前 |
ドイツ盤MAGICAL MYSTERY TOUR
ドイツ盤MAGICAL MYSTERY TOURに別バージョンが入っていることでドイツ盤に注目が集まるようになった。おそらく前半を差し替える前のバージョンと考えられる。アメリカ盤と同じバージョンと思われるが、イントロの繰り返しが6回(アメリカ盤は4回)である事が価値を高めている。
この曲のバージョン違いとしてはイントロのエレピの繰り返し回数や途中のブレイク部分のドラムスの有無、"yellow matter custard"の直前の幻の1小節など話題に事欠かないが、ステレオ・バージョンの前半を差し替えた理由は語られる事が無かった。
個々のバージョン違いはミキシング時の偶発的なものもあるだろうが、ドイツ盤ステレオは左右がセンター寄りというのが最大のポイントだと思われる。つまり最後がモノラルとなる欠点を隠すために全体をセンター寄りにして、4'00"以降(リミックス・ステレオ7)部分はモノラルでありながら、パンポットで左に少し振ってステレオ感を出している。
一方、最終バージョンは欠点を逆手にとって、前半部分を左右に目一杯広げてステレオである事を強調し、徐々にモノラルに変化するというミキシングにしたのではないだろうか。
イントロの繰り返し | 4回のものと6回のものがある。4回のものにはUKモノ、USモノ、USステレオ、88年ビデオ・バージョンがあり、6回のものにはUKステレオ、ドイツ盤ステレオ、『レアリティーズVOL.2』収録バージョン、『LOVE』収録バージョンがある。 |
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ボーカルのADT | モノ・バージョンの方がディレイ時間が長めでダブル・トラック効果をより強調している(補足音源2)。 ステレオ・バージョンは"Sitting 〜"以降でADTの効果が浅くなりシングル・トラックに近くなる(補足音源5)。 |
ドラムスの有無 | モノ・バージョンは0'35"付近(補足音源3)と1'17"付近(補足音源4)のブレイク部分でオフになる。 |
ラジオ音声 | 3'30"頃からフェードインが始まり(補足音源6)、3'49"付近でクロスフェードが完了してリミックス・モノ22のみとなる(補足音源7)。 |
67/09/05 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット リチャード・ラッシュ | Recording | 第1〜16テイク、5テイクが完全バージョン
テープを巻き戻して使用したため最初の3テイクは残っていない ベース、Eギター、Eピアノ、ドラムス、メロトロン(オーバーダブ) Geoff:ジョンはウーリッツァーのEピアノ、ポールは最初のテイクでベースを弾いていたが途中からタンバリン(つまりベースもオーバーダブのはず) Take 7-9 ではベースが聴こえる |
67/09/06 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | 編集 | 第16テイクをリダクションして第17テイクを作成 |
67/09/06 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | Recording | 第17テイクへのSI
ベース、ドラムス、ジョンのボーカル |
67/09/06 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | Mono Mixing | 第17テイクよりリミックス1〜4、ベストはリミックス4、アセテート盤用 |
67/09/16 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット ジェフ・ジャラット | 編集 | 映画用テープコピー(リミックス・モノ4) |
67/09/27 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット リチャード・ラッシュ | Recording | 第17テイクにオーケストラをSIしながら第18〜24テイクを作成
構成は、バイオリン8、チェロ4、コントラ・バス・クラリネット1、ホルン3 第17テイクは3トラックにリダクションされ、空トラックに上記を録音 第21〜24テイクは編集用パート 第17テイクは単純にテープコピーされているだけでリダクションはしていない |
67/09/27 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット リチャード・ラッシュ | 編集 | 第20テイクを3トラックにリダクションして第25テイクを作成 |
67/09/27 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット リチャード・ラッシュ | Recording | 第25テイクへのSI
マイク・サムズ・シンガーズ(女性8名、男性8名)によるコーラスを録音 |
67/09/28 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット リチャード・ラッシュ | Recording | 第25テイクを1トラックにリダクションして第17テイクの第2トラックにSI
第17テイクには同じリズムトラックがずれて入っていることになる。 上記は誤解で、オーケストラとコーラスをミキシングしながら空きトラックに入れている。 |
67/09/28 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット リチャード・ラッシュ | Mono Mixing | 第17テイクよりリミックス2〜5、ベストはリミックス2 |
67/09/28 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット リチャード・ラッシュ | 編集 | リミックス・モノ2 |
67/09/29 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット グラハム・カークビー | Mono Mixing | 第17テイクよりリミックス6〜22、完全バージョンは10と22 |
67/09/29 | ジョージ・マーティン | ケン・スコット グラハム・カークビー | 編集 | リミックス・モノ10と22を編集してモノ23とする
前半の"sitting in the English Garden"という歌詞までがリミックス10 リミックス22にはラジオの録音がそのまま使われている |
67/11/06 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | Stereo Mixing | 第17テイクとリミックス・モノ22よりリミックス1〜7 |
67/11/06 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | 編集 | リミックス・ステレオ6と7 |
67/11/07 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック グラハム・カークビー | 編集 | リミックス・モノ23のテープコピー |
67/11/17 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | Stereo Mixing | 第17テイクよりリミックス25、前半部分の差し替え用 |
67/11/17 | ジョージ・マーティン | ジェフ・エメリック ケン・スコット | 編集 | リミックス・ステレオ25と7 |