KHM. タイトル 初版 第7版(最終版)
001. カエルの王さま、または鉄のハインリヒ Der Froschkönig oder der eiserne Heinrich
特徴
•主役となる王女の姉妹構成は後に 末娘と判明
•登場したかえるに対していきなり侮辱発言
•王女がかえるを寝室の壁に投げつけると、ベッド に落ちて王子に変身
収録:上01 かえるの王さま または鉄のハインリッヒ
注:下13 かえるの王子
あらすじ
•王と3人の娘による話
•長女が庭の泉の水を汲むと濁っていた
•かえるが登場して「結婚してくれるなら澄んだ水をあげる」と持ち掛ける
•長女は申し出を断る
•次女も長女と同じく申し出を断る
•三女は申し出を受け入れて澄んだ水を手に入れる
•かえるは三日三晩、三女の寝室に現れてベッドで朝まで過ごす
•三日目の朝、かえるは魔法が解けて王子の姿に戻る
•三女と王子は結婚し、長女と次女は悔やんで腹を立てた
特徴
•主役の王女が末娘であることを冒頭で言及
•情景描写を増やし、かえるに対する悪態は削除
•王女がかえるを寝室の壁に投げつけると、床 に落ちて王子に変身
近年の改変:キスで変身
現在では「王女がカエルを壁に投げつける」というグリム原典の粗暴さを和らげる形で、「キス」という優しい行動に変化しています。
最初に登場した出版物について断定できる資料は存在していませんが、20世紀初頭以降に数多くの児童向け改作やアニメーションが登場しています。以下のような傾向や推定が専門家の間で語られています。
1. 20世紀初頭のアメリカやイギリスの児童書
•子ども向けに「暴力的な要素」を避ける編集方針から、「王女がカエルにキスをする」設定に差し替えられたと考えられます。
•具体的な書名を挙げるのは難しいですが、1920~30年代頃の英語圏の児童書編集者や絵本作家たちがこの改変を行ったと見られています。
2. ディズニーの影響
•「キスで呪いが解ける」パターンが広く定着したのは、ディズニー作品が一般化させた要素が大きいです。
•特に、2009年のディズニー映画『プリンセスと魔法のキス(The Princess and the Frog)』が決定的にこの展開を象徴づけましたが、この時点ではすでに「キスで変身」は定番となっていました。
3. アンデルセン童話や他のロマン主義の影響
•キスによる変身というモチーフ自体は、アンデルセン童話や19世紀のロマン主義文学にもしばしば登場するため、それらの影響を受けて編集された可能性もあります。
002. 猫とネズミのとも暮らし Katze und Maus in Gesellschaft
特徴
•猫が最初の洗礼で付ける名は「かわなめ」
•猫は町を散歩して 日暮れまで時間を潰す
•2回目の名付けは「はんなめ」
•3回目の名付けは「ぜんぶなめ」
•教会で嘘がばれて猫がネズミを食べておしまい
収録:上02 猫と鼠のともぐらし
特徴
•猫が洗礼に出かけることが嘘だと解説を付加
•猫は町の屋根の上を散歩して 日暮れまで時間を潰す
•猫が名付けた「カワナメ」を不審がるネズミに対して『ネズミが名付ける「パンくずどろぼう」よりマシ』と反論
•2回目の名付けは「ハンペロ」(翻訳による差異)
•3回目の洗礼に出かけることを不審に思ったネズミに対して猫が暴言を吐く場面を付加
•3回目の名付けは「ゼンペロ」(翻訳による差異)
•教会で嘘がばれて猫がネズミを食べた後に、教訓「ごらんなさい、世の中ってこんなものですよ。」を付加
003. マリアの子ども Marienkind
あらすじ
・森の入り口に住むきこり夫婦と3歳の女の子の話
・きこりが森で伐採をしていると聖母マリア(キリストの母)が現れて、「娘の面倒を見てあげるので連れて来なさい」と語った
・きこりが娘を聖母マリアに預けると、二人は天国に昇っていった
・娘は天国で幸せな14年を過ごした
・聖母マリアが長い旅に出る前に娘に伝言を残した(娘は17歳?)
・伝言は「天国の13の扉の鍵を預ける。12の扉は開けて覗いても良いが、13番目の扉は開けてはいけない。」
・娘は毎日ひとつずつ扉を開けると、各部屋には12使徒の像があるのが見えた
・娘は誘惑に負けて13番目の扉を開けると、燃えさかる火の中に三位一体の像があった
・娘が三位一体の像を触ると指が金色になった
・旅から帰った聖母マリアに鍵を返す時、娘は「13番目の扉は開けてない」と嘘をつくが心臓の鼓動が速くてバレてしまう
・聖母マリアは娘が嘘をついてないか確認する(1回のみ )
・真実を語らない娘は口をきくことができなくなる
・天国にいる資格を剥奪された娘は深い眠りについた後に、茨の茂みで閉ざされた場所で目覚める
・娘は木のうろで秋から冬を過ごし、髪の毛が全身を覆うくらい伸びた
・春になると道に迷った王様が現れて、娘を城に連れて帰る
・王様は娘と結婚し、1年後に王子が生まれる
・再び聖母マリアが現れて、王妃(娘)が嘘をついてないか確認する
・王妃は再び嘘をつき、聖母マリアは罰として王子を連れて行く
・王子が消えたことで王妃は人食いだと噂される
・その翌年に王子が、さらに翌年には王女が生まれるが同じ経緯を辿る
・王妃は人食いとして火あぶりの刑が下される
・刑が執行されて火が燃え始めたときに王妃は懺悔する
・火は自然に 消えて、聖母マリアが3人の子を王妃に返す
収録:上03 マリアの子
特徴(相違)
・聖母マリアが長い旅に出るのは娘が14歳 の時
・伝言の最後に「13番目の扉を開けると不幸になる」 と加筆
・聖母マリアが娘の嘘を確認するのは2回
・娘の木のうろでの生活は数年が経過している
・刑が執行された時、火は天からの雨で 消えて、聖母マリアが3人の子を王妃に返す
004. こわがることを習いに出かけた男の話 Märchen von einem, der auszog das Fürchten zu lernen第2版以降で差し替え 初版は「上04 けん玉とトランプの名人」
原文(1812/1819版に基づく)
Ein Bauer war so gut im Kegeln und Kartenspielen, daß niemand ihm gleichkam.
Einmal begegnete ihm der liebe Herrgott auf der Straße und sprach:
»Komm mit mir, wir wollen miteinander spielen.«
Da spielten sie um Himmel und Erde, und der Bauer gewann alles.
Als sie fertig waren, sprach der Herrgott:
»Du hast gewonnen, nun ist alles dein.«
Da sprach der Bauer:
»Lieber Herrgott, ich mag den Himmel nicht, denn da ist es mir zu kalt;
die Erde will ich auch nicht, denn da habe ich schon genug Mühe;
gib mir nur ein gut Kegel- und Kartenspiel, so bin ich zufrieden.«
Das tat der liebe Herrgott, und der Bauer ging fröhlich seiner Wege.
(※ 1812年初版では段落も非常に簡潔で、注釈や教訓文は付されません)
日本語訳(不思議なおよばれ)
ある百姓は、ボウリング(九柱戯)とカード遊びが非常に上手で、彼にかなう者は誰もいなかった。
あるとき、道で親愛なる神さまに出会い、神さまは言った。
「一緒に来なさい。わしと勝負をしよう。」
そこで二人は、天と地を賭けて勝負をし、百姓はすべてを勝ち取った。
勝負が終わると、神さまは言った。
「お前の勝ちだ。今やすべてはお前のものだ。」
すると百姓は言った。
「神さま、天国はいりません。あそこは寒すぎます。地上もいりません。ここではもう十分苦労しています。ただ、良いボウリングとカード遊びができれば、それで満足です。」
神さまはその願いをかなえ、百姓は陽気に自分の道を行った。
補足
※教訓めいた締めがなく、皮肉・諧謔・反権威性が非常に強い。
※神が負ける、しかも百姓が「天国を拒否する」という点で後年の道徳化編集に耐えられなかった典型例
※「Gut」は上手な・立派な という意味で、「良いゲーム」ではなく「腕の良い勝負」 を指す
あらすじ
・ある父親に2人の息子がいた
・兄は利口で賢く、何でも器用にできた
・弟は間抜けで物覚え悪く、習うこともダメだったので世間の人は「とんだ厄介者」と言った
・用事を言いつけられるのは兄ばかりで、夜ふけの遅い時間になると「ぞっとするよ」と、尻込みした
・弟は「ぞっとする」という意味が分からなかった
・父親は弟に「一人前に大きくなったのだから、自分でパンをかせぐことを覚えるんだ。」と言った
・「ぞっとすることを習いたい」と弟は答えた
・兄は笑って「なんて馬鹿なんだ。一生能なしで暮らすだろう。」と思った
・父親はため息をついて「おまえの好きなようにしろ。だが、それじゃパンは稼げないぞ」と言った
・訪ねてきた教会の番人に父親は愚痴をこぼし、番人は「わしのところへよこしなさい。わしが仕込んでやろう」と答えた
・父親は喜んで承知し、番人は下の息子に鐘を鳴らす仕事をあたえた
・数日たった真夜中、番人は「ぞっとさせてやろう」と企んでこの若者に鐘つきを命じた
・下の息子が鐘のひき綱を取ろうとしたとき、鐘楼の窓のむかいの階段に(番人が扮した)何やら白いものが立っていたので「返事をしないなら、あっちへ行け。」と息子は怒鳴った
・三度び大きな声をかけても返事がなかったので若者は飛びかかって幽霊を階段からつき落とし、鐘を鳴らすと帰って寝た
・夫が帰ってこないのを心配した番人の女房が、階段の隅で足が折れた夫を見つけた
・女房は泣きわめきながら息子を父親に返した
・息子の言い訳は父親に通じず、夜が明けると50ターラーを渡されて追い出された
・下の息子は「ぞっとするように!」と独り言を唱えながら街道を歩いた
・1人の男に「首つり台の下に座って夜までいればぞっとすることを習える」と教わった
・若者は死体と朝まで寒さに耐えたが「あの上の連中は口もききゃしないし、ひどくまぬけだ」と徒労に終わる
・次に荷馬車ひきが現れ、宿屋に連れていった
・宿屋の亭主は「呪いをかけられた城に三晩眠らずにいれば、ぞっとすることがどんなものかわかる。しかも、冒険をする者には城の王さまが自分の姫をやるとおふれを出している。」と伝えた
・王さまは「3つのものを城に持っていける」と言い、若者は「火と、旋盤の台と、刃物のついた工作台」を要求した
・真夜中になると大きな黒猫が2匹やってきたので、爪を切る振りをして打ち殺して退治した
・すると黒猫や黒犬がぞろぞろ出てきたので、手あたり次第打ち殺して外の池の中に投げ込んだ
・眠くなったので部屋の隅あったベッドに潜り込んだ
・ベッドがひとりでに動きだして城の中をぐるぐる回り出した
・若者はベッドから這い出して火のそばで夜明けまで眠った
・朝になって王さまがやってきた
・王さまは若者がおばけに殺されて死んだと思いきや、一晩無事に過ごせたと聞いて喜んだ
・宿屋の亭主も驚いて「ぞっとすることを習ったかね?」と尋ねたが「何にひとつ習わなかった。」と答えた
・2日目の夜、大きなわめき声と共に人間の体の半分が煙突から落ちてきた
・「あと半分はどうした。半分だけじゃ足りないぜ」と若者が言うとあとの半分も落ちてきた
・若者が火を起こしている間に、上下の体がくっついて恐ろしげな男になって座っていた
・若者は力ずくで男を押しのけて自分の席に座った
・すると、たくさんの男がつぎつぎに落ちてきた
・恐ろしげな男は死人の足の骨9つと頭蓋骨2つを並べ、九柱戯(9本のピンをひし形にならべ、木製の玉を投げて倒れた本数で得点を競うボーリングに似た球技)をはじめた
・若者もやりたくなって声をかけると、「金をもってるならな」と答えた
・若者は頭蓋骨を旋盤にかけて真ん丸に削って遊んだ
・12時になると何もかも一斉に消え去り、若者は横になって眠った
・翌朝、王さまに様子を訊かれて「九柱戯で面白く遊んだだけで、ぞっとしなかった」と答えた
・3日目の夜、6人の大男が棺桶を担いでやってきた
・若者は「これはきっと俺の従兄弟だ。2、3日前に死んだばかりだ」と言って呼び寄せた
・若者は棺桶を開けると、中の死んだ男を温めた
・体が温まった死人はもぞもぞ動き始めた
・「俺が暖かくしてやらなかったらこんなにはならなかったぞ」と若者が声をかけると、死人は「それじゃあ、今度はおまえをしめ殺してやろう」と言いだした
・若者は「この恩知らずめ。」と言うが早いか、死人を棺桶に投げ込んで蓋を閉めた
・すると6人の男たちがやってきて棺桶を担いで行った
・「ちっともぞっとしないじゃないか」と若者は言った
・大きくて恐ろしい顔をした1人の男が入ってきた
・男は年を取っていて、白くて長い顎ヒゲを生やしていた
・「何がぞっとするかを教えてやるぞ。おまえは死ぬのだぞ」とこの大男が大声で言った
・「おまえが強かったら逃がしてやろう。」と白ヒゲの老人は言った
・老人は若者を火床の所へ連れて行くが、斧の一撃で地面に打ち込んだ鉄敷を、若者が一撃で割り、その割れ目に老人の顎ヒゲをその割れ目に挟んだ
・「捕まえたぞ。死ぬのはおまえだ!」と若者が言うと、老人は泣いて命乞いをした
・老人は若者を城の地下室に連れもどし、金が入った箱を3つ見せて「1つは貧乏人のため、もう1つは王さまのためのもの、3つ目はおまえのものだ」と言った
・12時の鐘が鳴ると白ヒゲの老人は消え失せ、若者は部屋の火のそばで眠り込んだ
・翌朝、やって来た王さまに顎ヒゲの男が地下室で金貨を見せてくれた事を伝えた
・王さまは「この城を呪いから救ってくれた。わしの娘を嫁にするがよい」と言った
・地下室の金が運びだされて結婚式が祝われた
・若い王さまはお妃と楽しく暮らしたが、相変わらず「ぞっとしたいな!」と言い続けた
・うんざりしたお妃は召使いの女に、庭を流れる小川で小魚を桶にすくって来るように依頼した
・夜になって若い王さまが眠っている所に、お妃は掛布団を剥いで桶いっぱいの小魚の入った冷たい水を掛けた
・小さな魚が王さまのまわりでピクピクはね、王さまは目を覚まして「ああ、ぞっとする。これでわかったよ、ぞっとするってことが」と叫んだ
005. オオカミと7匹の子ヤギ Der Wolf und die sieben jungen Geißlein
特徴
・狼は最後に泉に落ちるだけ (生死は不記載)
収録:上05 狼と七匹の子やぎ
特徴
・母ヤギの注意喚起の台詞に対して子ヤギが復唱
・狼が粉屋に行って、一度は断られるものの脅して前足に白い粉を振りかけてもらう。この経緯について、教訓「まあ、人間なんてそんなものです。」を付加
•狼が呑み込んだ子ヤギがお腹の中で動く様子を追記
•狼は最後に井戸に落ちて死亡
•子ヤギは「狼が死んだ!」と叫ぶ
006. 忠実なヨハネス Der treue Johannes第2版以降で差し替え 初版は「上06 ナイチンゲールとつちのこ」
原文(1812版)
Die Nachtigall und die Blindschleiche waren einmal gute Freunde und hatten zusammen Haus gehalten. Da kam der Winter, und es war Zeit, an Nahrung zu denken; die Nachtigall sprach:»Ich will hinausfliegen und mir Essen suchen, du bleibst hier und hütst das Haus.«
Die Blindschleiche aber sagte:»Ich kann nicht hinaus, denn ich habe keine Füße.« Da ging die Nachtigall fort und kam den ganzen Winter nicht wieder.
Als der Frühling kam und die Nachtigall zurückkehrte, wollte die Blindschleiche ihr nicht mehr die Türe öffnen und sprach:»Ich habe den ganzen Winter gehungert, nun will ich dich auch hungern lassen.«
Da flehte die Nachtigall und versprach, sie wolle es nimmermehr tun. Aber die Blindschleiche glaubte ihr nicht und blieb hart.
Darum ist die Nachtigall noch bis auf den heutigen Tag immer in Angst und flieht vor der Blindschleiche, wo sie ihr begegnet.
日本語訳(ナイチンゲールとアシナシトカゲ)
ナイチンゲールとアシナシトカゲは、むかし仲の良い友だちで、いっしょに暮らしていました。やがて冬が来て、食べ物のことを考えねばならなくなると、ナイチンゲールは言いました。「わたしは外へ飛んで行って食べ物を探してくるわ。あなたはここに残って家を守っていて。」
するとアシナシトカゲは言いました。「わたしは外へ行けない。だって足がないのだから。」
そこでナイチンゲールは飛び去り、冬のあいだじゅう戻ってきませんでした。
春が来てナイチンゲールが帰ってくると、アシナシトカゲはもう戸を開けようとせず、こう言いました。「わたしは冬のあいだずっと飢えていた。今度はおまえも飢えるがいい。」
ナイチンゲールは哀願し、もう二度とこんなことはしないと約束しました。けれどもアシナシトカゲは信じず、心をかたく閉ざしたままでした。
そのためナイチンゲールは、今日に至るまでいつも不安におびえ、アシナシトカゲに出会うと逃げるのです。
補足
※きわめて短く、動物寓話的・教訓的性格が強い話です。
※他の類話(資料)でも大筋は変わりませんが、初版は特に素朴で、理由説明が最小限です。
※「Blindschleiche」は一般に**アシナシトカゲ(slow worm)**と訳されます。
あらすじ
•年とった王さまが病気で死期を悟った
•王さまは一番お気に入りの召使い「忠実なヨハネス」を呼んだ
•ヨハネスに「死が近いように思う。唯一、気がかりな息子の養い親になって欲しい」と告げた
•忠実なヨハネスは「命をかけて、王子さまに忠実にお仕えいたします」と答えた
•年とった王さまは安心して、「王子に城の中を隅から隅まで、すべての部屋と中にある宝物を見せてやっておくれ。だが、最後の小部屋だけは見せないでくれ。」と言った
•さらに「そこにある黄金の屋根のお姫さまの絵を王子が見て、激しい恋に身をこがして危険な目にあうことから守ってほしい」と続けた
•そして王さまは息を引き取った
•年とった王さまが埋葬されると、忠実なヨハネスは若い王さまに臨終の際の約束を話し、「その約束を守り、あなたにも忠誠を誓って命をおあずけします」と言った
•喪が明けると、忠実なヨハネスは若い王さまに城を案内した
•ただし絵姿のある小部屋だけは開けなかった
•若い王さまはこの扉をいつも通りすぎる理由を問いただした
•「おそろしいものがあり、見たら気を失うでしょう」と忠実なヨハネスは答えた
•若い王さまは頑なに見たがり、忠実なヨハネスは折れて扉を開けた
•忠実なヨハネスがまっ先に入って絵の前に立ちはだかったが、王さまは爪先立ちしてヨハネスの肩ごしにその絵を見た
•王さまは気を失って地面にたおれた
•忠実なヨハネスは王さまをベッドへ運び、「災いが起こった」と思った
•気つけにワインを王さまに飲ませると、我に返った王さまが「あの美しい絵姿は誰だい」と訊いた
•「黄金の屋根のお姫さまでございます」と忠実なヨハネスは答えた
•王さまはお姫さまを手に入れたいと思い、忠実なヨハネスに手を貸してくれるよう頼んだ
•忠実な召使いは「金細工を持って出かけて運を試すこと」を提案した
•王さまは国中の金細工師をよび集めて加工品を作らせた
•2人は商人の服に身をつつんで、船で黄金の屋根のお姫さまのすむ都へ行った
•忠実なヨハネスは首尾よくお姫さまの興味を引き、城から船へ迎え入れた
•お姫さまが船を案内されている隙に、忠実なヨハネスは船を出した
•お姫さまが出航に気付くと、王さまは身分を明かして結婚を申し込んだ
•お姫さまはお妃になることを受け入れた
•帰路の最中、忠実なヨハネスは3羽のカラスの予言を聞いた
•最初のカラスが「陸に着くと、栗毛の馬が王さまを乗せて空に舞いあがり、王さまは二度とお姫さまを見ることはないだろう」と言った
•2番目のカラスが「助かる方法はないのかね」と聞いた
•「ほかの人がすばやくその馬にとび乗って、馬の手綱にかけてある鉄砲で馬を撃ち殺せば救われるのさ。でも王さまに言おうものなら、その人は爪先からひざまで石になるんだよ」と答えた
•2番目のカラスが「花婿の服はまるで金と銀で織ってあるように見えるけれど実は硫黄とタールで出来ていて、王さまがそれを着ると骨の髄まで焼かれてしまうのさ」と言った
•3番目のカラスが「助かる道はないのかい」と聞いた
•「誰かが手袋をはめてその服を包み、火の中に放り込んで焼いてしまえば、若い王さまは救われるのさ。でも王さまに言おうものなら体の半分が膝から心臓まで石になるのさ」と答えた
•3番目のカラスが「結婚式のあとダンスがはじまり、若いお姫さまが踊ると突然まっ青になって死んだように倒れるだろう。誰かが姫を抱きおこし、その右の乳房から血を3滴吸い取り、吐きださなくては、お姫さまは死んでしまうのだ。でも、それをもらせば頭のてっぺんから足の爪先まで体中が石になるのさ」と言った
•忠実なヨハネスは全ての話を聞いた
•ヨハネスは「ご主人さまをお助けしよう。たとえ自分自身が破滅しようとも」と自分に言い聞かせた
•陸に着くとカラスが言った通りのことが起きた
•王さまは栗毛の馬に乗ろうとしたが、忠実なヨハネスが先にとび乗って馬を撃ち殺した
•お城の大広間の深皿には花婿の服があったが、王さまが服を掴もうとするより先に忠実なヨハネスが手袋で包んで火の中へ投げ入れて燃やした
•結婚式が挙げられてダンスが始まると、入ってきた花嫁の顔が蒼白になって死んだように地に倒れた
•ヨハネスは花嫁を小部屋に運んで、彼女の右の乳房から血を3滴吸い取って吐きだした
•すぐに彼女は息を吹きかえして元気になった
•その様子を見ていた若い王さまはカーッとなり、「こいつを牢屋へぶちこめ」と叫んだ
•翌朝、忠実なヨハネスに死刑の判決が下されて絞首台へ引かれて行った
•忠実なヨハネスはカラスの話をし、「主人を助けるにはこれしかなかった」と説明した
•王さまは「恩赦だ!彼を下ろしてやってくれ」と叫んだが、忠実なヨハネスは石と化して命を失いドサッと落ちた
•王さまとお妃さまは深く悲しみ、石像となった忠実なヨハネスを寝室のベッド横に立てさせた
•しばらくすると、お妃はふたごを産んだ
•すくすく育つ2人の息子たちは親の喜びだった
•お妃が教会に行き、2人の子どもが父親のそばで遊んでいた時、石がしゃべり出した。「あなた様は私を生き返らせることができます。もし、あなた様が一番愛しているものを捧げてくださるなら」
•王さまは「おまえのためなら何でも捧げるつもりだ」と言った
•石は「あなた様が自らの手でお二人のお子さまの首をはね、その血を私に塗ってくだされば生き返るのです」と言った
•王さまは恐れおののいたがその通りにすると、命が戻った忠実なヨハネスが王さまの前に立った
•ヨハネスは「あなたの誠の心に私はお報い致します」と言って、子どもたちの首を元通りに戻した
•王さまは嬉しくてたまらず、お妃がやってくるのを見ると忠実なヨハネスと2人の子どもたちを大きな戸だなに隠した
•王さまは「私たちはあれを生き返らせることができるのだが、私たちの息子たちの命を犠牲にしなければならないのだよ」と話した
•お妃は心の底から驚いたが、「私たちは罪がございますわ」と言って王さまに同意した
•王さまはお妃を戸棚のところへ連れて行き、子どもたちと忠実なヨハネスに会わせると一部始終を話した
•それから皆は死ぬまで一緒に幸せに暮らした
007. うまい取り引き Der gute Handel第2版以降で差し替え 初版は「上07 ぬすまれたヘラー貨(KHM154 )」
あらすじ
•ある農夫が牝牛を市場で7ターラー(通貨単位)で売った
•家に帰る途中、池のカエルが「アク、アク、…」と鳴いていた
※akはacht(数字の8)の方言
•「わしが儲けたのは7ターラーだ。8じゃないぞ」と農夫は怒鳴った
•カエルたちはそれでも「アク、アク、…」と鳴いていた
•「わしの言うことを信じないなら、目の前で数えてやる」と言うと、ポケットのお金を24グロッシェン(1ターラー)×7ぶん数えた
•カエルたちはそれを無視して「アク、アク、…」と鳴いていた
•腹を立てた農夫は「自分で数えてみろ」と怒鳴って水の中にお金を全部投げ込んだ
•カエルたちは相変わらず「アク、アク、…」と鳴くだけでその金を返さなかった
•日が暮れたので、農夫は「おまえら、水をパチャパチャしかできない能なし野郎、大声を張り上げることはできるが、7ターラーを数えることはできやしない」などと悪態をついて家路についた
•カエルたちは農夫の後ろから「アク、アク、…」と鳴いていた
•しばらくして農夫は牝牛を1頭手に入れた
•「牛の肉がよい値段で売れれば牝牛2頭分は儲かるな、皮が売れればさらに上乗せだ」と農夫は皮算用した
•農夫が肉をもって町へ行くと犬が集まった
•先頭の猟犬(グレーハウンド犬)が肉の周りでクンクンと臭いを嗅ぎ「ヴァス、ヴァス、…」と吠えていた
※「ヴァス」は犬の擬音語だが、人間にはwas(何?)の意味に聞こえる
•農夫は「肉がほしいのは分かったけど、肉をやったらわしは大変なことになるんだ」と犬に言った
•犬はただ「ヴァス、ヴァス」と答えるだけだった
•「仲間にも分けてやるんだろうな」と農夫は確認した
•犬は「ヴァス、ヴァス」と言った
•「分かった、お前に任せるぜ。3日したら、この肉の代金を持ってくればいい」と農夫は言った
•農夫は肉を肩から下ろして来た道を戻っていった
•犬たちは肉へ飛び掛かって、「ヴァス、ヴァス」と吠えた
•3日が過ぎ、農夫は犬が金を持ってくると思っていた
•誰も金を持って来なかったので、農夫は我慢できなくなって町の肉屋に代金を要求した
•肉屋はカンカンに怒って農夫を追い払った
•農夫はお城へ行き、王さまに話を聞いて欲しいと願い出た
•王さまは娘のお姫さまと並んで農夫に困りごとを尋ねた
•農夫は「カエルや犬が大切なものを取り上げ、肉屋がそのお返しにわしをこん棒でなぐって支払った」と事の成り行きを詳しく話した
•この話にお姫さまは大きな声で笑いだした
•王さまは「農夫が正しいとは認められない」が、生まれてこのかた笑ったことのない娘を笑わせたので「娘を嫁にするがいい」と言い、この幸運を神さまに感謝するがよいと伝えた
•農夫は「家にはちゃんと女房が1人いて、それでも多すぎる。」と答えて断った
•王さまはカンカンに怒って「この無礼者」と言った
•王さまは「お前は他のものを報酬として貰わなければならんぞ。3日後に500、耳を揃えて貰うことになるだろう」と言った
•農夫がお姫さまを笑わせた褒美をもらう話は、城の番兵にも伝わっていた
•農夫が「500ほどもらえるよ」と言うと番兵は「そのうちのいくらかくれよ。」と無心した
•農夫は気前よく「200を受けとるがいいよ。3日たったら王さまのところに申し出ればいい」と言った
•2人の会話を聞いていたユダヤ人が「そのお金を小銭に替えてあげましょう。」と提案した
•農夫は「すぐさま小銭でくれるのなら300渡すとしよう。3日すりゃ、王さまのところで払ってもらえるよ」と言い、せこいユダヤ人は僅かな儲けに喜んで質の悪いグロッシェン硬貨で全額を持って来た
※この硬貨は3グロッシェンあったが質のよい2グロッシェン銀貨と同じ価値だった
•3日が過ぎて、農夫は命令どおり王さまの前へまかり出た
•「上着をぬげ」と王さまは言い、「こいつに500やろう」と続けた
•「200は番兵にやり、300はユダヤ人に両替してもらったので、私が貰えるものは一切ありません」と農夫は言った
•そこに兵隊とユダヤ人が入ってきた
•二人は取り分を要求し、割り与えられた数だけムチで打たれた
•兵隊は辛抱強く我慢し、ユダヤ人は「おう、痛い、これがちゃんとしたターラー銀貨の味かい」と悲鳴をあげた
•農夫のしたことがおかしくて怒りもすっとんだ王さまは「代わりに私の宝の蔵で好きなだけお金を取るがいい」と言った
•農夫は大きな袋に入るだけのものを詰め込み、料理屋に行って自分のお金を数え直した
•ユダヤ人は農夫の後を付けて、農夫が「袋にあてずっぽうに入れたものが本物かどうか分からない」と文句を言っているのを聞いた
•ユダヤ人は告げ口をして自分が褒美を貰い、農夫が罰せられる事を目論んだ
•王さまは農夫の悪態を聞いて怒り、ユダヤ人に連れて来るように命じた
•農夫は「古いぼろ服を着ては出かけられないので、新しい上着を仕立てて貰う。」と言った
•ユダヤ人は時間が掛かって王さまの怒りが収まってしまうのを恐れ、「きれいな上着をお貸ししましょう、単なる親切心からですよ。」と提案した
•農夫はユダヤ人の上着を着て一緒に出かけ、まだ怒っていた王さまは農夫の悪態を責めたてた
•「ユダヤ人の言うことはいつも嘘ばかりでして、本当の言葉は出てきませんよ。ここにおります奴も「わしが奴の上着を着ている」なんて言いだしかねませんよ」と農夫が言った
•ユダヤ人は「その上着は私が親切心から貸してやったのじゃなかったかい」と怒鳴った
•王さまはそれを聞くと「確かにユダヤ人は人を騙しているぞ、わしか、それともこの農夫をなぁ」と言って、ユダヤ人に硬貨を農夫に払わせた
•農夫はりっぱな上着を着てポケットには本物のお金を入れて家に帰り、「今度はうまく当たったぞ」と言った
008. きみょうな旅芸人 Der wunderliche Spielmann第2版以降で差し替え 初版は「上08 ナイフをにぎる手」
原文(1812版)
Es war ein kleines Mädchen, das hatte drei Brüder, die galten bei der Mutter alles, und es wurde überall zurückgesetzt, hart angefahren und mußte tagtäglich Morgens früh ausgehen, Torf zu graben auf dürrem Heidegrund, den sie zum Kochen und Brennen brauchten. Noch dazu bekam es ein altes und stumpfes Geräth, womit es die sauere Arbeit verrichten sollte.
Aber das kleine Mädchen hatte einen Liebhaber, der war ein Elfe und wohnte nahe an ihrer Mutter Haus in einem Hügel, und so oft es nun an dem Hügel vorbei kam, so streckte er seine Hand aus dem Fels, und hielt darin ein sehr scharfes Messer, das von sonderlicher Kraft war und alles durchschnitt. Mit diesem Messer schnitt sie den Torf bald heraus, ging vergnügt mit der nöthigen Ladung heim, und wenn sie am Felsen vorbei kam, klopfte sie zweimal dran, so reichte die Hand heraus und nahm das Messer in Empfang.
Als aber die Mutter merkte, wie geschwind und leicht sie immer den Torf heimbrachte, erzählte sie den Brüdern, es müßte ihr gewiß jemand anders dabei helfen, sonst wäre es nicht möglich. Da schlichen ihr die Brüder nach und sahen, wie sie das Zaubermesser bekam, holten sie ein und drangen es ihr mit Gewalt ab. Darauf kehrten sie zurück, schlugen an den Felsen, als sie gewohnt war zu thun, und wie der gute Elf die Hand herausstreckte, schnitten sie sie ihm ab mit seinem selbeigenen Messer. Der blutende Arm zog sich zurück, und weil der Elf glaubte seine Geliebte hätte es aus Verrath gethan, so wurde er seitdem nimmermehr gesehen.
日本語訳(ナイフのついた手)
昔、ある小さな女の子がいました。彼女には三人の兄がいて、母にとっていつも大切にされていました。しかしその女の子はあらゆることにおいて差別され、厳しく扱われ、毎朝早く起きて乾いた荒地で泥炭を掘らなければなりませんでした。その泥炭は料理や燃料に必要だったのです。しかも女の子が与えられたのは古くて鈍い道具だけで、その苦しい仕事をこなさねばなりませんでした。
しかしその女の子には恋人がいました。その恋人はエルフで、母親の家の近くの丘の中に住んでいました。女の子がその丘のそばを通るたびに、エルフは岩の中から手を伸ばし、非常に鋭くてどんなものでも切り裂く力のあるナイフを差し出しました。そのナイフで女の子はすぐに泥炭を切り出し、必要な量を楽しげに持って帰ることができました。そして女の子が岩のそばを通ると、二度岩を叩けば、手が差し出されてナイフを受け取ることができたのです。
しかし母親は、いつもその女の子がいかに手早く軽々と泥炭を持ち帰るかに気づきました。母親はそれを兄たちに話し、「きっと誰か他の者が彼女を助けているに違いない。さもなければそんなことはできない」と言いました。そこで兄たちはこっそり彼女の後をつけ、彼女が魔法のナイフを受け取るところを見ました。そして兄たちは追いついてそのナイフを無理やり奪いました。兄たちは戻ると、女の子がいつも通り岩を叩きました。すると善良なエルフが手を差し出しましたが、兄たちはそのエルフ自身のナイフで手を切り落としたのです。血に染まった腕は引っ込んでいきました。そしてエルフは、恋人が自分を裏切ったと思ったため、それ以来二度と姿を見せなくなりました。
あらすじ
•奇妙な旅芸人が考え事をしながら森の中を通っていた
•考えることが尽きたので「この森の中は退屈だなあ、いい仲間をここへ呼んでやろう」と独り言を言った
•旅芸人がバイオリンで1曲弾くとオオカミが茂みから飛び出してきた
•「オオカミは嫌だなぁ」と思ったが、オオカミは近付いてきて話しかけた
•「何てお上手なのでしょう。私も習いたいものだね」
•「すぐ習えるよ。ただねぇ、私の命じることは何でもしなくちゃだめだよ」と旅芸人は答えた
•「あなたの言う通りにします。弟子が師匠に従うようにね」とオオカミは言った
•旅芸人は空洞になっている古いカシの木の裂け目に前足を突っ込こむように言った
•オオカミが言われたようにすると旅芸人は石でオオカミの前足2本をクサビのように挟んだ
•じっとするしかないオオカミに「戻って来るまでずっと待っていろ」と言って旅芸人は道を先へ進んだ
•旅芸人はまたもや「この森の中は退屈だなあ、他の仲間が欲しいよ」と言ってバイオリンを響かせた
•キツネがしのび足でやってきた
•「キツネはお呼びじゃないよ」と旅芸人は言った
•キッネは旅芸人のそばに来て「何でそんなに美しくバイオリンが弾けるのかねぇ。私も習いたいよ」と言った
•「すぐ習えるさ。俺の命じることを何でもすればな」と旅芸人は言った
•「あなたの言う通りにします。弟子が師匠に従うようにね」とキツネは答えた
•旅芸人とキツネは両側に藪が高くそびえる森の道で立ちどまり、ハシバミの細い木をキツネの左の前足に結び付け、右の前足をもう一本の木に結びつけた
•旅芸人がハシバミの木をぱっと放すと、木はキツネと一緒に高く宙に跳ね上がった
•手足をバタバタさせてもがくキツネに「帰って来るまで、そうやって待っていな」と旅芸人は言って先へ進んだ
•旅芸人はまたもや「この森の中は退屈だなあ、他の仲間が欲しいよ」と言ってバイオリンを響かせた
•野ウサギがピョンピョン跳ねてやって来た
•「野ウサギはお呼びじゃないよ」と旅芸人は言った
•「あなたが弾くバイオリンの音は何と素晴らしいのでしょう。習いたいものですね」と野ウサギが話しかけた
•「すぐ習えるさ。わしの命じることを何でもすればな」と旅芸人は言った
•「あなたの言う通りにします。弟子が師匠に従うようにね」と野ウサギは答えた
•旅芸人と野ウサギは1本のヤマナラシの木が生えている場所までやってきた
•旅芸人は野ウサギの首に長いひもを結んで端をその木に結びつけた
•旅芸人は20回ピョンピョン木の周りを跳ねて回るように言った
•野ウサギが言われたようにする、幹にぐるぐる巻きついて身動きできなくなった
•「わしが戻って来るまで待っていな」と旅芸人は言って、さっさと行ってしまった
•その間、オオカミは散々苦労して裂け目から抜け出すと、大急ぎで旅芸人の後を追った
•キツネはオオカミを見ると助けを求め、一緒に旅芸人を追った
•オオカミとキツネは縛られた野ウサギを見つけ、同じように助けた
•旅芸人はまたもやバイオリンを鳴らすると貧しい木こりが近付いて来た
•「とうとう本当の仲間がやって来たぞ」と旅芸人は言った
•木こりが聞きほれて立ち止まっていると、オオカミやキツネ、野ウサギがやって来た
•木こりは獣たちが良からぬことを企んでいることに気付いた
•木こりがピカピカ光るオノを振りかざして旅芸人の前に立ちはだかると、獣たちは恐れを成して森の中へ走って逃げた
•旅芸人はお礼にこの男にもう1曲弾いて、それから旅を続けた
009. 12人の兄弟 Die zwölf Brüder
あらすじ
・王さま には12人の男の子がいた
・「次に生まれるのが女の子なら12人の兄は殺す」と王さまはお妃さまに告げる
・お妃さまは末っ子に事情を話し、兄たちと森で暮らすように促す
・女の子が生まれたことで12人兄弟は城へ帰ることができなくなり、腹いせに「女の子を見つけたら容赦なく殺す」と誓う
・12人兄弟は森の奥に入り、洞穴 に住むことを決める
・洞穴での生活が何年 も続く
・成長した女の子に(使用人の)洗濯女 が12人兄弟の秘密を明かす
・女の子は12枚のシャツを持って洞穴 に辿り着く
・留守番をしていた末っ子は女の子を殺そうとし、女の子は命乞いをする
・帰ってきた11人の兄に、末っ子は女の子に家事全般をさせると伝える
・女の子は12枚のシャツを見せて、自分は妹だと明かす
・狩りに行くのは12人兄弟 、家事担当は妹 の生活が始まる
・女の子は森へでかけて 12本のユリを見つけたので、折って持ち帰ろうとする
・お婆さんが現れて「12人兄弟はカラスになってしまった」と告げ、さらに唯一の救済方法は「女の子が12 年間、口をきかないこと」と告げる
・女の子は高い木の上で生活して、口をきかずに時を過ごす決意をする
・狩りをしていた王さまが女の子を見つけ、城に連れ帰ってお妃に迎える
・王さまの母親がお妃(女の子)の悪口を言い始めるが、お妃は反論できない
・言いくるめられた王さまはお妃に死刑を言い渡す
・お妃が炎に包まれる瞬間に魔法の期日がきて、飛んできたカラスは王子の姿に戻って妹(お妃)を救出する
・王さまの母親(お妃の継母)は煮えたぎる油と毒蛇の樽に入れられて無残な死に方をする
収録:上09 十二人兄弟
特徴(相違)
・王さまとお妃さまの間 には12人の男の子がいた(男女平等?)
・王さまは12個の棺 も用意する
・末っ子にはベンヤミンという名前 が明示されている
・12人兄弟は森の奥に入り、魔法に掛けられた家 に住むことを決める
・魔法の家での生活が10年 も続く
・成長した女の子にお妃さま が12人兄弟の秘密を明かす
・女の子は12枚のシャツを持って魔法の家 に辿り着く
・留守番をしていたベンヤミンに女の子が12枚のシャツを見せると、ベンヤミンは自分の妹だと気付く
・ベンヤミンは帰ってきた11人の兄に妹(女の子)を紹介する
・狩りに行くのは11人兄弟 、家事担当はベンヤミンと妹 の生活が始まる
・女の子は家の庭で 12本のユリを折ったとたんに、12人兄弟はカラスになって飛んで行き、家も消えてしまった
・お婆さんが現れて唯一の救済方法は「女の子が7 年間、口をきかないこと」と告げる
010. ろくでなし Das Lumpengesindel
あらすじ
・雄鶏と雌鶏が胡桃取りに山へ出かける
・満腹になって歩くのが面倒になって胡桃の殻で車を作る
・因縁をつけてきたアヒル を退治して車を引かせる
・途中で出会ったまち針と縫い針も乗せてあげる
・一行は「卵をあげる」と嘘を言って宿に泊めてもらう
・どんちゃん騒ぎで飲食した翌朝、雌鶏が生んだ卵は雄鶏と一緒に食べてしまう
・雄鶏と雌鶏は、まち針と縫い針を使った悪戯を仕掛けて無銭宿泊のまま逃げ出す
・気付いたアヒルも逃げ出す
・宿の主が目覚めると、まち針と縫い針でひどい目にあう
・宿の主は2度と泊めてやらないと誓う
収録:上10 ならずもの
類話:上66 ドンチャカ騒ぎ(?)
特徴
翻訳による以下の相違はあるが、展開は同じ
・Enteを「アヒル(家畜のカモ)」ではなく「カモ」 としている
・「まち針と(縫い針)」は「とめ針と(ぬい針)」 としている
・「まち針で顔をズタズタに切る」は「とめ針が亭主の顔をひっかき、いっぽうの耳からもういっぽうの耳まで赤いみみず腫れができた」 としている
011. 兄と妹 Brüderchen und Schwesterchen
あらすじ
・実母を失くした兄と妹が継母の仕打ちを嘆いて旅に出る
・(注1) 木のうろに入って、「おなかをすかしたまま死んでしまおう」と思いながら眠る
・翌朝、兄は喉が渇いて水を飲みたくなる
・2人の後をつけてきた継母は魔女で、泉に呪いをかける
・(注2) 「のろ鹿になる魔法」を感じていた妹の制止を振り切って兄は水を飲み、のろ鹿に化けてしまう
・(注3) 妹は三日間泣いた後、いぐさで縄を編んでのろ鹿を繋ぎ、ほら穴で長い年月を過ごす
・(注4) 狩りに来ていた王さまが妹を見つける
・(注5) 王さまは妹とのろ鹿を連れ帰り、お妃が亡くなると妹と結婚する
・(注6) 兄妹の幸せが魔女(継母)の知るところとなる
・お妃(妹)は王子を生むが魔女(継母)の策略で殺されて、魔女は自分の娘を身代わりとする
・王さまはお妃(妹)に会わせてもらえないためこの事実に気づかない
・夜になると本当のお妃(生霊?)が現れて、赤ちゃんに乳をやり、のろ鹿の背中をなでてやる日々が続いた
・(注7) その最終日、王さまがお妃を抱きしめるとお妃は生き返った
・(注8) にせのお妃(魔女の実子)は森へ連れて行かれてけものに食われ、継母(魔女)は火あぶりにされた
・魔女が焼かれると、のろ鹿の魔法も解けた
収録:上11 兄と妹
特徴
・(注1) 道中で雨が降る記述が追加され、妹が「神さまも私たちの心もいっしょに泣いているのだわ!」と言った後、夕方には木のくぼみに入って眠る
・(注2) 初めの泉は「虎になる魔法」、次は「狼になる魔法」が掛かっていたが、妹の忠告に従って兄は我慢する
・(注3) 妹はいぐさで編んだ縄と金色の靴下どめでのろ鹿を繋ぎ、小さな家を見つけて長い年月を過ごす
・(注4) のろ鹿が傷を負わされて家に帰る一部始終を狩人に知られてしまう。狩人に話を聞いた王さまが家に行って妹を見つける
・(注5)のお妃が居て、亡くなる過程は削除されて直ぐに結婚式を挙げる
・(注6) 魔女(継母)の醜い実子の描写も加筆
・(注7) その最終日、王さまがお妃である事を確認し合うと、神さまのおめぐみで、お妃は生き返った
・(注8) お妃は、にせのお妃と継母の悪事を王さまに話し、2人は裁判にかけられた(以降の経過は同じ)。
012. ラプンツェル Rapunzel
特徴
・ラプンツェルの母が妊娠中に隣の庭の「ラプンツェル草」を欲しがる
・隣の庭の所有者は妖精
・父がラプンツェル草を盗んだことで妖精に生まれてくる子供を渡す約束をする
・妖精は赤ちゃんをラプンツェルと命名して連れ帰る(誘拐ではない)
・ラプンツェルは12歳で塔に幽閉
・塔には階段も扉もない
・王子の登場する時期は未記載
・ラプンツェルは服のサイズが合わなくなる(王子との密会が妊娠に関係する伏線)
・魔女は妊婦となったラプンツェルの髪を切り、荒野に追放
・王子は塔から身を投げて両目を(物理的に)失う
・ラプンツェルは放浪中に双子(男の子と女の子)を出産
・ラプンツェルと王子は再会し、ラプンツェルの涙で失明が治った(前述の失明と不整合)
収録:上12 ラプンツェル
特徴
・ラプンツェルの母が妊娠中に隣の庭の「ラプンツェル草」を欲しがる
・隣の庭の所有者は魔法使い
・父がラプンツェル草を盗んだことで妖精に生まれてくる赤ちゃんを渡す約束をする
・妖精は赤ちゃんをラプンツェルと命名して連れ帰る(誘拐ではない)
・ラプンツェルは12歳で塔に幽閉
・塔には階段も扉もない
・王子の登場する時期は2〜3年後
・ラプンツェルが王子の存在をにおわす(未婚で妊娠する表現の回避)
・魔女は妊婦となったラプンツェルの髪を切り、荒野に追放
・王子は塔から身を投げて荊のトゲで失明(不整合の回避)
・ラプンツェルは放浪中に双子(男の子と女の子)を出産
・ラプンツェルと王子は再会し、ラプンツェルの涙で失明が治った
ディズニー版(2010年版『塔の上のラプンツェル(原題:Tangled)』)
特徴
・ラプンツェルは王国の王と王妃の娘として生まれる
・魔法の花の力を使って生まれたラプンツェルはその力が金色の髪に移っていた
・魔女ゴーテルに狙われて誘拐され、すぐに森の塔に閉じ込められて育てられる
・塔には階段や扉がある(魔女はそれを使って出入りしていた)
・ラプンツェルの髪は、彼女が歌うことで人を癒やし、若返らせる魔力を持っていた
・ラプンツェルが18歳になった時、泥棒のフリン・ライダー(ユージーン)が偶然塔に入る
・魔女は塔の出入り口を魔法で消去(ラプンツェルは軟禁状態)
・ラプンツェルは髪を切って脱出に使い、ユージーンと旅に出る
・旅の中でラプンツェルは自分が実は失われた王女だと知る
・2人は次第に心を通わせ、自由を手にしたラプンツェルはフリンとともに本当の家族のもとへ戻る
013. 森の中の3人のこびと Die drei Männlein im Walde
あらすじ
・(注1) 妻に先立たれた男には娘が1人いた。「長靴から水が漏れるかどうか」で再婚するかどうかを決め、夫に先立たれた後家と再婚する
・後妻にも娘がいたが、男の娘が美しくて誰からも好かれていたのに対して、自分の娘が醜いことを妬んで意地悪をした
・女(継母)は継子(男の娘)に紙の服を着せて、深い雪が積もった中をイチゴ仮りに行かせた
・継子は森の中を歩き回り、3人の小人が住む家を見つける
・(注2) 継子は小人たちに礼儀正しくあいさつをする
・継子は小人からイチゴをもらった上、「もっと美しく」、「口から金貨」、「王さまと結婚」を授かる
・(注5) 家に帰った継子の元に王さまがやって来てお妃となった
・(注3) 継母は実娘にも同じようにしてやりたいと思い、豪華な毛皮を着せて送り出した
・(注4) 継母の娘が悪い心を持っていると分かった小人たちは、「毛皮が紙のように寒く」、「日ごとに醜く」、「不幸な死」を願った
・1年後にお妃は王子を産む
・継母とその娘は城へ行ってお妃を川に投げ込んでしまう
・夜になると鴨(お妃)がやってきて子供の世話をして帰っていく
・翌日の夜も同じことが起こる
・翌々日、王さまが剣を鴨の上で3回振ると、生き返ったお妃が現れる
・(注6) 継母とその娘の悪事が明るみにでて、2人は森のけものの餌食になった
収録:上13 森の中の三人の小人
特徴
・(注1) 妻に先立たれた男と、夫に先立たれた女がいて、各々の一人娘は顔なじみ だった。女が娘経由で再婚の打診を伝えると、男は「長靴から水が漏れるかどうか」で再婚するかどうかを決め、女と再婚する。
・(注2) 継子は小人たちに礼儀正しくあいさつをし、持っていたパンを分け与える
・(注3) 継母の娘が羨ましがったので、継母は豪華な毛皮を着せて、バター付きのパンとケーキを持たせて送り出した
・(注4) 継母の娘は挨拶もしないで家に入り、ストーブのそばでパンとケーキを小人たちに分け与えることなく食べてしまう。裏口の掃除を頼まれても断った。小人たちは、「日ごとに醜く」、「口からヒキガエル」、「みじめな死」を願った
・(注5) 実娘を小人たちの元に行かせたものの、その待遇に腹を立てた継母は、凍った川で糸をすすいでくるように継子に命じるが、通りかかった王さまが連れ帰ってお妃となった
・(注6) お妃が生き返ったことは伏せられていた。王子が洗礼を受ける日、王さまが「ある悪人に対する裁き」を継母に問うと、「釘を打ち付けた樽に入れて転がす」と答えたので、継母とその娘が樽に入れられて処刑された
014. 3人の糸つむぎ女 Die drei Spinnerinnen
あらすじ
・(注1) 亜麻紡ぎの音が好きな王さまは、お妃と娘たちに、1日中、糸を紡がせていた
・(注2) 王さまが旅に出ることになり、箱一杯の亜麻糸を全て紡いでおくことを命じる
・(注3) お妃は3人の醜い娘を呼び寄せて糸を紡がせた
・(注4) 旅から戻った王さまが3人の醜い姿の理由を尋ねると、各々が糸紡ぎのせいでこうなったと答える
・(注5) 王さまはお妃と娘たちに二度と糸車に触らないように命じたので、彼女たちは苦しみから解放された
収録:上14 苦しみの亜麻紡ぎ
特徴
・(注1) 怠け者の女の子が糸を紡ぐのを嫌がり、母親は怒って泣かせてしまう。通りかかったお妃さまがその泣き声を聞き、母親に理由を尋ねると「娘は糸を紡ぐのが好きなのだが貧しくて麻を調達できない」と嘘をついた。お妃さまは娘を城で好きなだけ糸を紡ぐことを提案する
・(注2) お妃さまは上等な麻がぎっしりと積まれた3部屋に案内し、全て紡いだた王子と結婚することを命じる。しかし娘は途方に暮れて3日間手を付けなかった
・(注3) 通りかかった3人の醜い女が事情を聞いて、婚礼に呼んでくれることを条件に協力を申し出た
・(注4) 全ての部屋の糸紡ぎを終えると婚礼の準備が始まり、女の子は3人のおばさんを呼びたいと伝える。花婿(王子)は祝いの席の最中、3人の容姿の理由を尋ねると、各々が糸紡ぎのせいでこうなったと答える
・(注5) 王子は妻(花婿、女の子)には決して糸車に触らせないと言い、花嫁は糸紡ぎをしないですむようになった
015. ヘンゼルとグレーテル Hänsel und Gretel
特徴
・子どもたちを森に捨てるのは母親 の提案
・両親による遺棄計画を知ったヘンゼルがグレーテルを安心させるセリフの2度目だけ 「神さまがきっとぼくたちを助けてくれるよ。」(キリスト教の宗教観)
・2人がお菓子の家に辿り着くのは偶然
・魔女がグレーテルをかまどで焼こうとする企みを神様がグレーテルに教える
収録:上15 ヘンゼルとグレーテル
特徴
・子どもたちを森に捨てるのは継母 の提案
・父親が反対する描写が増えている
・ヘンゼルとグレーテルがこの会話を聞いてしまう場面で「おかみさん」が「まま母」と記述される
・両親による遺棄計画を知ったヘンゼルがグレーテルを安心させるセリフで、1度目にも「神さまはぼくたちを見捨てやしないから。」 を挿入(常に見守るという宗教観)
・2人を森で待たせている間の父親による偽装工作(木を切っている音)
・再び森の奥に放置する会話の中で、反対する父親がしぶしぶ承諾する光景を踏まえて教訓「人はAと言ったらBまで言わねばならないものです。」 を挿入
・2人がお菓子の家に辿り着くのは小鳥の道案内
・魔女の特徴(赤い目、鼻が利く)を付加
・魔女がグレーテルをかまどで焼こうとする企みをグレーテル自身が見抜く
・助かったヘンゼルとグレーテルが帰路につく時、アヒルの背中に乗って川を渡るエピソードを付加
・最後に「ネズミを捕まえて毛皮で大きな頭巾を作る」という締めの文(物語の終わりの常套句)を付加
016. 3枚のヘビの葉 Die drei Schlangenblätter第2版以降で差し替え 初版は「上16 なんでもござれ」
原文(1812年初版)
Fix und Fertig war lange Zeit Soldat gewesen, weil aber der Krieg ein Ende hatte und nichts mehr zu thun war, als einen und alle Tage dasselbe, nahm er seinen Abschied und wollte Lakai bei einem großen Herrn werden. Da gabs Kleider mit Gold besetzt, viel zu schaffen und immer was Neues.
Also machte er sich auf den Weg und kam an einen fremden Hof, da sah er einen Herrn, der in dem Garten spazieren ging. Fix und Fertig besann sich nicht lang, trat frisch auf ihn zu, sagte: „Mein Herr, ich suche Dienste bei einem großen Herrn … ich kann und weiß alles, was dazu gehört, kurz und lang, wie’s befohlen wird.“Der Herr sagte: „Recht, mein Sohn, das wäre mir lieb, sag an, was ist jetzt mein Verlangen?“ Fix und Fertig … brachte eine Pfeife und Tabak.
„Recht, mein Sohn, du bist mein Bedienter, aber nun gebe ich dir auf, mir die Prinzessin Nomini zu schaffen, die schönste auf der Welt; die will ich zu meiner Gemahlin haben.“– „Wohlan,“ sagte Fix und Fertig, „das ist mir ein kleines …“
(以下、原文は古い表記のため簡略化して要点部分として続きます。全文は公開ドメインのテキスト参照可能。)
日本語訳(なんでもござれのフィックス)
かつて長い間兵士として働いていたフィックスとフェルティヒは、戦争が終わって毎日同じことをするしかなくなると退役し、大きな殿様の従者になろうと考えた。金飾りの衣装を着て働き、毎日新しいことが起きるに違いないと思ったのだ。
旅してある宮廷に着いた彼は、庭を散歩している紳士を見つけた。ためらうことなく近づき、「殿、従者の職を探しています。どんな仕事でもできますし、命じられたことは何でもやり遂げます」と言った。
その紳士は「よかろう、息子よ。では今これから望むことを言いなさい」と言った。フィックスは答えず走り去り、すぐにパイプとタバコを持って戻ってきた。
「よろしい、息子よ。お前は私の従者だ。だが今度はこの世で最も美しいノミニ姫を私の妻として連れてこい」と命じた。
「よし」とフィックスは言い、「それは簡単なことだ。すぐに連れて来てみせよう。ただし馬車をよこせ、家来もたくさん連れて行く。そして皆は私の命令に従うのだ」と要求した。
その後フィックスは立派な従者の付き添いを連れ、大きな冒険に出る。歌う鳥がいる森には静かに入るし、カラスの群れには馬を奪われるし、川では苦しむ魚を助けて流れに戻すなど、数々の出来事を経て王女のいる場所へたどり着く。
王はフィックスに不可能と思われる試練を課し、種まきのあと全部を拾ってこい、水から指輪を取り出せ、そして一角獣を倒せ…と命じる。フィックスはここでも機転を利かせ、動物たちや自分の知恵を使って試練を成し遂げ、ついに姫を助け出して連れ帰る。
こうしてフィックスは偉大な臣下となり、成功を収めるのだった。
(この訳は要点をまとめた意訳であり、すべての細部を逐語訳したものではありません。)
あらすじ
・貧乏な男がいて、たった1人の息子を養うこともできなくなった
・息子は家計のために「自分のパンは自分で稼ぐ」と言って家を出た
・ある強大な王国の王さまが戦争をしていて、この若者は軍隊に志願した
・この若者は戦場へと進軍し、仲間の兵隊たちが死んでしまった
・指揮官もやられてしまうと残りの者たちは逃げだそうとした
・この若者は前に出て鼓舞し、他の者たちを従えて突撃し、敵を打ちやぶった
・王さまはこれを聞き、たくさんの財宝を与えて一番高い地位に付けた
・王さまには美しいが変わり者の王女がいた
・王女は「自分が先に死んだら一緒に生きたまま葬られる者としか結婚しない」という誓いを立てていた
・その代わり王女も同じつもりで、一緒に墓に入って死ぬと言っていた
・この誓いはこれまで求婚者を怯るませてきたが、この若者は気にせず求婚した
・王さまは念押ししたが、若者の意志は固かったので王さまは結婚を許した
・結婚式が行われ、2人はしばらくの間幸せに暮らした
・お妃が重い病気に罹り、どの医者も匙を投げた
・お妃が死んで若い王さまは約束を果たす時が来た
・王さまは全ての門に見はりを立てさせた
・お妃の亡きがらは丸天井のある地下の王家の墓に安置され、若い王さまも一緒に地下に閉じ込められた
・棺の横のテーブルには4本のローソクと4個のパンと4本のワインが置いてあり、若い王さまは毎日ほんのひと口だけ口にしたが、いよいよ死が近付いてきた
・丸天井の墓の隅から1匹のヘビが這い出てきたので、「わしが生きている限り、死体には触れてはならん」と言って彼は剣でヘビを3つに切った
・しばらくすると2匹目のヘビが隅から這い出てきた
・2匹目は別のヘビが切られているのを見て引き返した
・そのヘビは口に緑の葉を3枚加えてまたやってきた
・そのヘビは切られたヘビの3つの部分を繋がるように並べて、それぞれの傷口に1枚ずつ葉を置いた
・ヘビの分かれた部分が繋がって生き返り、葉っぱを置いたまま2匹揃って去っていった
・これを見ていた若い王さまは、葉っぱの力が人間にも効くかも知れないと思い付いた
・若い王さまは死者(王妃)の口にその葉っぱを1枚置き、他の2枚を両目に置いた
・その途端に王妃は息を吹きかえた
・若い王さまは一部始終を王妃に話して聞かせた
・老王は2人が元気な姿でいるのを見て喜んだ
・若い王さまは3枚のへビの葉を召使いに渡して、「これを大切に保管しておいておくれ。」と言った
・妻は生き返ると心の中が変わっていて、夫に対する愛情は彼女の心から拭い去られたように見えた
・夫は自分の老いた父を訪ねようと、夫婦で船に乗った
・妻は夫が示した愛情も誠意も真心も忘れて、船乗りへ浮気心を抱いた
・若い王さまの就寝中、王妃は船乗りと一緒に夫を海の中に投げ込んだ
・妻は船乗りに帰路を指示し、「夫は途中で死んだと言い、あんたを父の前で褒めれば、わたしと結婚して父の王冠の継承者にしてもらえるわ」と言った
・忠実な召使いは小舟を気付かれないように下ろして、死んだ主人を釣り上げた
・召使いは身に付けていた3枚のヘビの葉の助けを借りてその死者を生き返らせた
・2人は全力で昼も夜も舟を漕ぎ、もう1つの船より早く老いた王さまの所に戻った
・老王は自分の娘のひどい仕打ちが信じられなかったが、誰にも見つからない部屋に行くように2人に命じて娘の到着を待った
・罪深い女は父の前で計画通りの言い訳をして船乗りを褒めた
・老王は「死者を生き返らせようと思う」と言って2人に出てくるように命じた
・女はへなへなと膝まづき、お慈悲を願った
・老王は「慈悲などはない。」と拒否し、ふさわしい報いとして王妃の罪に加担した者と一緒に穴の開いた船に乗せた
・船は海の中へ放り出されて2人は波の中に沈んでいった
017. 白いヘビ Die weiße Schlange
あらすじ
・(注1) 王さまは白い蛇の料理を食べていたので、動物の会話を理解することができた
・召使いが王さまの料理を下げる時に白い蛇を口にしたら、動物の会話を理解できるようになった
・同じ日、お妃が指輪を失くし、この召使いが疑われる
・召使いは中庭の水辺で「お妃の指輪を食べてしまった」という鴨の会話を耳にする
・召使いはこの鴨を料理人に渡し、胃袋から指輪を取り出して事なきを得る
・召使いは褒美として馬と資金を受け取って旅に出る
・旅に出た召使いが池のほとりで3匹の魚を助けると、魚たちは恩返しを約束した
・次に進んでいると、馬が蟻塚を踏んでいて蟻の王さまが苦情を叫んだので、馬を脇に寄せると蟻の王さまは恩返しを約束した
・さらに進んでいると、親カラスがまだ飛べない子カラスを強制的に巣立たせていたので、馬を殺して与えると子カラスは恩返しを約束した
・召使いは歩いて旅を続けて大きな町に着く
・この町では「お姫さまが出す難題を成し遂げたら婿になれるが失敗したら命を失う」というおふれが出ていた
・召使いはこれに挑み、課題「海に落とされた指輪を拾う」は3匹の魚の助けで成し遂げる
・召使いの身分に不満だったお姫さまは、次の課題「草の中にまき散らしたキビ10袋を1晩で全て拾い集める」を出すが蟻の助けで成し遂げる
・(注2) 召使いへの不満は無かったもののお姫さまは、3つ目の課題「命のリンゴを持ってくる」を出すが助けた内の1羽のカラス がリンゴを加えてやって来た
・(注3) 若者(召使い)はお姫さまと結婚し、王さまが死ぬと王となった
収録:上17 白い蛇
特徴
・(注1) 王さまが物知りであるという前置きが付加されている
・(注2) リンゴを持ってきたのは助けた3羽のカラス
・(注3) 若者(召使い)とお姫さまはリンゴを分けあって食べ、幸せに暮らして長生きした
018. ワラと炭とソラマメ Strohhalm, Kohle und Bohne
特徴
・藁と炭とそら豆が相談する所から始まる
・橋代わりとなった藁の上を「炭が最初に渡る」のは藁の提案
・炭が渡りはじめるとそら豆も渡り始める
・炭が真ん中に来たところで藁が燃え始めて全員が川に落ちる
・炭と藁は死亡
・そら豆は岸に近かったので泳いで助かる
・そら豆はたくさん水を飲んでしまったので はじけてしまう
・たまたま居合わせた仕立て屋がはじけたそら豆を縫い合わせた(そら豆に黒い縫い目がある起源)
別話
・そら豆が先に 渡り切り、炭が後に続くも真ん中で藁が燃えて川に落ちる
・そら豆はその光景を見て大笑いしたので はじけてしまう
・たまたま居合わせた仕立て屋が黒い糸で はじけたそら豆を縫い合わせた(そら豆に黒い縫い目がある起源)
収録:上18 旅に出た藁と炭とそら豆
特徴
・おばあさんがそら豆を煮る過程で一部の「藁と炭とそら豆」が逃げ出す (この前置きで文章量が倍になっている)
・橋代わりとなった藁の上を「炭が最初に渡る」のは炭がせっかちだったから
・炭が渡りはじめてもそら豆は岸に留まっていた
・炭が真ん中に来たところで藁が燃え始めて2人は川に落ちる
・炭と藁は死亡
・そら豆はその光景を見て大笑いしたので はじけてしまう
・たまたま居合わせた仕立て屋が黒い糸で はじけたそら豆を縫い合わせた(そら豆に黒い縫い目がある起源)
・「そら豆は仕立て屋に心からお礼を言いました。」 を加筆
019. 漁師とその女房の話 Von dem Fischer und seiner Frau
あらすじ
・(注1) 漁師とおかみさんが海のそばの小便壺に住んでいた
・漁師がいつも通り釣りをしていると大きなヒラメが掛かった
・ヒラメは「魔法にかけられた王子なので逃がして」と命乞いをする
・漁師は帰ってこの話をするとおかみさんは願い事「小さな家が欲しい」をするようにけしかける
・漁師は気が進まないまま海に戻ると、透き通った水が黄色と緑色に変わっていたがヒラメに向かって願い事を叫ぶ
・ヒラメが現れて願いを叶え、漁師とおかみさんは満足してしばらく暮らす
・1~2週間も過ぎるとおかみさんは欲が出て、願い事「石造りの城に住みたい」をするようにけしかける
・漁師は心が重いまま海に行くと、水は紫色と灰色と藍色に変わっていたがヒラメに願い事を伝えた
・ヒラメは願いを叶え、漁師は満足したがおかみさんは「考えてみないとね」と言って1晩過ごす
・(注2) 翌日の昼に起きるとおかみさんは欲が出て、願い事「周囲を治める国王になりたい」をするようにけしかける
・漁師が王さまにはなりたくないと言うと、おかみさんは「それなら私が王さまになる」と返す
・(注3) 漁師は暗い気持ちで海に行くと、黒ずんで灰色になっており、水が底から湧き上がっていたがヒラメに願い事を伝えた
・ヒラメは願いを叶えるが、おかみさんは直後に次の願い事「皇帝になりたい」をするようにけしかける
・(注4) 漁師が海に戻ると、水はすっかり真っ黒で、どんよりとしてつむじ風が吹いていたがヒラメに願い事を伝えた
・(注5) ヒラメは願いを叶えるが、おかみさんは直後に次の願い事「法王になりたい」をするようにけしかける
・(注6) 漁師が怯えて震えながら海に戻ると、沖合では風が吹き荒れ、海は煮えくりかえり、船は遭難信号の大砲を打ちながら高波に揺れ、空は中ほどの青さを残して周辺が酷い嵐のように真っ赤になっていたがヒラメに願い事を伝えた
・ヒラメは願いを叶えるが、おかみさんは次の願いを考えて一睡もできないまま1晩過ごす
・朝日が昇るのを見たおかみさんは願い事「神様のようになりたい」をするようにけしかける
・(注7) 外は嵐、雷が鳴り、稲妻が走り、海では津波が起こるなか、漁師はヒラメに願い事を伝えた
・ヒラメは願いを叶えることなく、城は小便壺に戻り、法王だったおかみさんも元の生活に戻った
収録:上19 漁師とおかみさんの話
特徴
・(注1) 漁師とその女房が海辺の小便壺のような小屋 に住んでいた
・(注2) おかみさんが起きたのは翌日の朝、明るくなった頃
・(注3) 海はいたるところが青黒く、水がゴウゴウと湧き上がって腐ったようなひどい臭いがしていた
・(注4) 海は真っ黒で、どろどろで、海底から泡が立ち 、つむじ風が吹き、荒れて逆巻いていた
・(注5) おかみさんの願いは「教皇」(翻訳による相違の可能性あり)
・(注6) 激しい風が陸地を吹き、雲が勢いよく流れ、日が暮れたように暗くなり、木々の葉は吹き飛ばされ、波は高くうねってうなりながら岸に打ち付けて、船は遭難信号の大砲を打ちながら高波に揺れ、空は中ほどの青さを残して周辺が酷い嵐のように真っ赤になっていた
・(注7) 漁師が再考を懇願 するもおかみさんの考えは変わらず、漁師はヒラメに願い事を伝えた
020. 勇敢なちびの仕立て屋 Das tapfere Schneiderlein
I
あらすじ
・ロマンディアという小さな町の仕立て屋がリンゴを脇に置いて仕事をしていた
・リンゴに蠅がたかったので布でひっぱたくと1発で7匹 殺すことができた
・(注4) 仕立て屋は良い事がある前兆と考えて鎧 を作らせて金文字で「7 auf einen Streich(一撃で7)」 と書かせた
・仕立て屋がその鎧を着て町をあるくと、人々は「一撃で7人殺せる男」と誤解して恐れた
・(注10) 仕立て屋はその地を治める王さまの城へ行って雇ってもらうことになるが、兵士(家来)は恐がって暇を願い出た
・(注11) 家来に辞められては困る王さまは、仕立て屋に無理難題を出して辞めさせようと画策する
・(注12A) 王さまは「森に住む2人の大男の退治」を依頼し、成功報酬は「娘の婿とする」と「国の半分を与える」を提案した
・(注12B) 仕立て屋は王さまが用意した助っ人の兵士に頼ることなく2人の大男を退治したが、王さまは約束を後悔して次の難題を出す
・(注12C) 仕立て屋はここでも助っ人の兵士に頼ることなく「一角獣の捕獲」を行ったが、王さまは3つ目の難題を出す
・(注12D) 仕立て屋はやはり独力で「猪の捕獲」を行い、ようやく結婚式を挙げる
・(注13) 新王(仕立て屋)は寝言でお妃に素性を悟られ王さまの知るところとなる
・(注14) 王さまは新王の追い出しを企て、「新王が寝言を言った家来が寝室に押し入る」計画を立てた
・(注15) 兵士のひとりがこの計画を新王に密告し、新王は寝たふりをして寝言「俺は一撃で7を殺し、2人の大男、一角獣、猪も倒した。部屋の外にいる連中なんか怖くない。 」と言ったので誰も寝室に入って来れなかった
Ⅱ
あらすじ
・(注1) ある夏の朝、仕立て屋が窓際の仕立て台に座っていた
・(注2) 通りかかった百姓女がジャム を売っていたので購入し、一片のパンに塗って仕立て台の上に置いた
・(注3) 食べる前に仕事を片付けようとしていたところで、パンに蠅がたかったので布でひっぱたくと1発で29匹 殺すことができた
・(注4) 仕立て屋はうれしくなって、帯 を縫って「29 auf einen Streich(一撃で29)」と刺繍 を入れた
・(注5) 仕立て屋はその帯 を体に巻いて、古いチーズと1羽の鳥をポケットにいれて世の中に出ていく
・(注6A) 山頂で出会う大男に帯の文字を読ませて誤解を植え付ける
・(注6B) 大男が「石を握って水を絞り出す」を披露すると、仕立て屋は手品の要領で「古いチーズを絞って水を出しす」とやり返した
・(注6C) 大男が「石を空高く投げた」を披露すると(しかし地面に戻ってきた)、仕立て屋は「鳥を空に向かって投げた(落ちずに消えていった)」とやり返した
・(注7) 大男は仕立て屋のお供となって、2人は先へ進む
・(注8) 2人が桜 の木のそばを通りかかると、大男は実が食べれるように枝の先を曲げて仕立て屋に渡す
・(注9) 仕立て屋は「狩人が鉄砲を撃ったので素早く木を飛び越えた」と言い訳をして大男を信用させた
【Ⅱは以降が欠落】
収録:上20 勇敢な仕立て屋の話
特徴
【最初はⅡ】
・(注1) ある夏の朝、ちびの 仕立て屋が窓際の仕立て台に座って仕事をしていた いた
・(注2) 通りかかった農婦がムース を売っていたので購入し、一片のパンに塗って自分の横に置いた
・(注3) 食べる前に仕事を片付けようとしていたところで、パンに蠅がたかったので布でひっぱたくと1発で7匹 殺すことができた
・(注4) 仕立て屋は自分の勇敢さに感心して、ベルト を縫って「7 auf einen Streich(一撃で7)」と刺繍 を入れた
・(注5) 仕立て屋はそのベルト を体に巻いて、古いチーズと1羽の鳥をポケットにいれて世の中に出ていく
・(注6A) 最初に山頂で出会う力持ちの大男に「一緒に行く」ように誘う が断られたので、ベルトの文字を読ませて誤解を植え付ける
・(注6B) Ⅱと同じ
・(注6C) Ⅱと同じ
・(注7) この展開は無く、大男の出す試練が続く
・(注6C) 大男は切り倒された樫 の木を森から運び出す力比べを持ちかける
・(注6D) 仕立て屋は「大男に木の幹の中央を持たせ、自分はその後ろで(大男からは見えない)木の上に乗って一緒に運ばせた
・(注8) Ⅱと同じ
・(注9) Ⅱと同じ
【Ⅱはここまで】
・大男は仕立て屋を自分達 のほら穴に泊まるように勧める
・大男は仕立て屋にベッドをあてがうが、仕立て屋には広すぎたのでこっそりと床をはって隅っこで寝た
・真夜中になって、大男は仕立て屋がぐっすり寝たと思い込んでベッドを叩き壊した(仕立て屋を殺したつもりでいた)
【ここからI】
・仕立て屋は一人で 旅を再開した
・(注10) 仕立て屋はある王さま の宮殿へ行って雇ってもらうことになるが、軍人 は恐がって暇を願い出た
・(注11) Iと同じ
・(注12A) Iと同じ
・(注12B) Iと同じ
・(注12C) Iと同じ
・(注12D) Iと同じ
・(注13) Iと同じ
・(注14) 王さまは新王の追い出しを企て、「新王が寝たら縛って船に乗せてどこかに送る」 という計画を立てた
・(注15) Iと同じ
021. 灰かぶり Aschenputtel
特徴
・灰かぶり(シンデレラ)の願いを叶えるのは亡後の実母
・王子のお妃選びのために王様が催した舞踏会は3日間
・初日の灰かぶりは鳩舎に登って城の大広間を眺めるだけ
・翌日は亡き実母の墓で銀のドレスと靴を手に入れて参加
・移動は青と銀の服を着た召使いが操縦する6頭立ての馬車
・王子の注目を一身に受けてダンスを独占してしまう
・3日目は同じく金のドレスと靴を手に入れて参加
・移動は赤と金の服を着た召使いが操縦する6頭立ての白馬の馬車
・またもや王子を独占してしまうだけでなく、王子は灰かぶりが逃げ帰らないように階段にタールを塗らせる
・灰かぶりは金の靴の片方をタールに取られるが辛うじて逃げ帰る
・王子は金の靴で花嫁探しをする
・一番上の姉は踵 を切り落として靴を履くが、城に向かう途中で靴に血が溜まっているのを鳩に指摘されて不正がバレる
・二番目の姉はつま先 を切り落として靴を履くが、同じく城に向かう途中で靴に血が溜まっているのを鳩に指摘されて不正がバレる
・灰かぶりには靴がぴったりで王子は花嫁として連れ帰る
・継母と2人の姉は驚くだけ
収録:上21 灰かぶり
特徴
・灰かぶり(シンデレラ)の願いを叶えるのは神さま
・父親は灰かぶりが舞踏会に出かける度に不可解な行動を取っている
・王子のお妃選びのために王様が催した舞踏会は3日間
・初日の灰かぶりは亡き実母の墓で金と銀で刺繍されたドレスと靴を手に入れて参加
・移動方法は不記載
・王子の注目を一身に受けてダンスを独占してしまう
・翌日はさらに立派な金と銀で刺繍されたドレスと靴を手に入れて参加
・3日目は最上級に豪華なドレスと純金の靴を手に入れて参加
・王子は灰かぶりが逃げ帰らないように階段にタールを塗らせる
・灰かぶりは靴の左側をタールに取られるが辛うじて逃げ帰る
・翌日、王子は純金の靴で花嫁探しをする
・一番上の姉は足の指 を切り落として靴を履くが、城に向かう途中で靴に血が溜まっているのを鳩に指摘されて不正がバレる
・二番目の姉は踵 を切り落として靴を履くが、同じく城に向かう途中で靴に血が溜まっているのを鳩に指摘されて不正がバレる
・灰かぶりには靴がぴったりで王子は花嫁として連れ帰る
・結婚式の当日、出席した2人の姉は鳩に両目を潰されて失明する
シャルル・ペロー版(1697年フランス童話集『マ・メール・ロワ(眠れる森の美女 他)』、《シンデレラ、または小さなガラスの靴》Cendrillon ou la petite pantoufle de verre)
特徴
・ガラスの靴:最初に登場したのはペロー版(ただし「ヴェール(verre/毛皮)」説もあるが、現代では否定されている)
・妖精の教母:ペロー版特有の存在(グリム版には登場せず、母の墓の木と鳥が助ける)
・詩的教訓(moralité):「善良であれば、たとえ貧しくても報われる」などの韻文による道徳的まとめが末尾に付く
・美しさとマナー:単なる美貌だけでなく、礼儀や優しさも重視されている
・継母たちへの対応:グリム版では報いを受ける(目を突かれる等)が、ペロー版では許される(典型的フランス宮廷風の結末)
登場人物
・シンデレラ(Cendrillon):美しく心優しいが、継母と義姉たちに虐げられている少女。
・継母:意地悪で高慢。実の娘たちを優遇し、シンデレラを召使いのように扱う。
・2人の義姉:高慢で贅沢好き。シンデレラを軽蔑する。
・妖精の教母(marraine la fée):シンデレラのゴッドマザー。魔法で彼女を助ける。
・王子:舞踏会を主催し、シンデレラに一目惚れする。
あらすじ
【不幸な日々】
ある裕福な紳士が再婚し、美しいが冷酷な女性とその娘2人を家に迎えた。再婚相手と義姉たちは、前妻の娘であるシンデレラをこき使い、台所のそばで灰まみれになっている彼女を**「灰かぶり(Cendrillon)」**と呼んで嘲笑する。
【舞踏会の知らせ】
ある日、王子が舞踏会を開き、すべての娘たちが招待されることになる。義姉たちは着飾って出かけるが、シンデレラは家に残されて泣いていた。
【妖精の魔法】
そこに現れたのが、妖精の教母(ゴッドマザー)。彼女はかぼちゃを馬車に、ネズミを馬に、トカゲを召使いに変え、さらに**美しいドレスとガラスの靴(pantoufles de verre)**をシンデレラに授ける。
ただし、「魔法は真夜中までしか効かない」と忠告される。
【舞踏会(1日目)】
舞踏会でシンデレラは王子に見初められる。誰も彼女が誰か気づかない。真夜中が近づくと、急いで帰り、ゴッドマザーの元へ戻る。
【舞踏会(2日目)】
翌日も舞踏会に行くが、今度は時間に遅れ、12時の鐘とともに逃げ出す途中、階段に靴を片方落としてしまう。王子は靴を拾い、これを手がかりに探すと誓う。
【靴の試し履き】
王子は靴の持ち主を探して国中を巡る。義姉たちは必死に履こうとするが入らない。
【再会と結婚】
ついにシンデレラの番になり、難なく靴が入る。王子は彼女が舞踏会の美女だと知り、すぐに彼女と結婚する。
【姉たちの報い(または赦し)】
ペロー版ではグリム版と異なり、シンデレラは義姉たちを赦し、宮廷に連れていって貴族と結婚させるという慈悲深い結末になっている。
補足:なぜ「ガラスの靴」か?
・一説では、「pantoufle de vair(毛皮のスリッパ)」が「pantoufle de verre(ガラスのスリッパ)」に聞き間違えられたとも言われました。
・しかし、ペロー自身が明確に「verre(ガラス)」と記述しており、当時の幻想的な素材として意図的に選んだ可能性が高いと現在では考えられています。
ディズニー版(1950年版『シンデレラ』)
特徴
・父親は再婚後に亡くなる
・王子のお妃選びのために王様が催した舞踏会は1日だけ
・シンデレラの願いを叶えるのは妖精(良い魔法使い)
・妖精が魔法でシンデレラにドレスとガラスの靴を与えて参加
・移動方法は馬に変身したネズミに引かれたかぼちゃの馬車
・王子の注目を一身に受けてダンスを独占してしまう
・シンデレラはガラスの靴を階段に残して逃げ帰る
・王子はガラスの靴で花嫁探しをする
・2人の姉は靴が入らないだけ
・シンデレラには靴がぴったりで王子は花嫁として連れ帰る
・結婚式が行われて皆に祝福される
RECLAM社の解説
原文
Nach drei Erzählungen aus Hessen. Eine davon aus Zwehrn hat nicht den Eingang, wo die sterbende Mutter ihrem Kinde Bei-[35]stand verspricht, sondern fängt gleich damit an, daß es einem Stiefkind schlimm geht; auch ist das Ende verschieden. Nachdem Aschenputtel ein Jahr lang vergnügt mit dem König gelebt, verreist er und läßt ihr alle Schlüssel zurück, mit dem Befehl eine gewisse Kammer nicht zu öffnen. Als er aber fort ist, wird sie von der falschen Schwester verleitet die verbotene Kammer aufzuschließen, worin sie einen Blutbrunnen finden. In diesen wird sie hernach, als sie bei der Geburt eines Söhnleins krank liegt, von der bösen Schwester geworfen, die sich an ihrer Stelle ins Bett legt; aber die Wachen hören das Jammergeschrei, retten die rechte Königin und die falsche wird bestraft. Dieser Schluß ist dem in dem Märchen von Brüderchen und Schwesterchen (Nr. 11) ähnlich, einen anderen, der an die bekannte Sage von der heiligen Genoveva erinnert, hat eine vierte Erzählung aus dem Meklenburgischen. Aschenputtel ist Königin geworden und hat ihre Stiefmutter, die eine Hexe ist, und ihre böse Stiefschwester zu sich genommen. Als sie einen Sohn gebiert, legen diese einen Hund hin und geben das Kind einem Gärtner, der soll es tödten; eben so beim zweitenmal, wo der König aus großer Liebe abermals dazu schweigt. Beim drittenmal überliefern sie die Königin mit dem Kinde dem Gärtner, er solle sie tödten, er bringt sie aber in eine Waldhöhle. Da die Königin vor Gram keine Milch hat, so legt sie das Kind einer Hirschkuh an, die in der Höhle ist. Das Kind wächst, wird aber wild, bekommt lange Haare und sucht im Walde Kräuter für seine Mutter. Einmal kommt es zu dem Schloß und erzählt dem König von seiner schönen Mutter. Fragt er >>wo ist denn deine schöne Mutter?<< >>Im Wald in einer Höhle<<. >>Da will ich hingehen<<. »Ja, aber bring einen Mantel mit, daß sie sich anziehen kann. Er geht hinaus, erkennt sie, ob sie gleich ganz mager ist, und nimmt sie mit. Unterwegs begegnen ihm zwei Knaben mit goldenen Haaren. >>Wem gehört ihr<< fragt er. »Dem Gärtner. Der Gärtner kommt und entdeckt daß es des Königs Kinder sind, die er nicht getödtet sondern bei sich aufgezogen hatte. Die Wahrheit kommt an den Tag und die Hexe mit ihrer Tochter wird bestraft. Eine fünfte Erzählung aus dem Paderbörnischen leitet so ein, eine schöne Gräfin hatte in der einen Hand eine Rose, in der andern einen Schneeball und wünschte sich ein Kind so roth als die Rose und so weiß als der Schnee. Gott erfüllt ihren Wunsch. Wie sie einmal am Fenster [36] steht und hinaussieht, wird sie von der Amme hinabgestoßen. Das gottlose Weib aber erhebt ein Geschrei und gibt vor die Gräfin habe sich selbst hinabgestürzt. Dann berückt sie durch ihre Schönheit den Grafen daß er sie zur Gemahlin nimmt. Sie gebiert ihm zwei Töchter, und das schöne roth und weiße Stiefkind muß als Aschenputtel dienen. Es soll nicht in die Kirche, weil es keine Kleider hat, da weint es auf seiner Mutter Grab, die reicht ihm einen Schlüssel heraus und heißt es einen hohlen Baum aufschließen: er öffnet sich wie Schrank, und es findet darin Kleider, Seife sich zu waschen und ein Gebetbuch. Ein Graf sieht es und um es festzuhalten, bestreicht er die Kirchenschwelle mit Pech. Es entwickelt sich nun alles wie in den andern Erzählungen. Eine sechste aus der Gegend von Zittau wird in Büschings Wöchentl. Nachrichten 1, 139 angedeutet. Aschenputtel ist eine Müllerstochter und soll auch nicht in die Kirche gehen. Neues kommt nicht vor, nur daß statt der Tauben ein Hund die falsche Braut verräth und bellt
>>wu, wu, wu!
Schuh voll Blut!<<
und bei der rechten
>>wu, wu, wu!
Schuh paßt gut!<<
Eine siebente in Hagens Erzählungen und Märchen 2,339. Die Reime lauten,
>>helfen in dein Kröppchen, aber nicht in dein Töppchen<«.
>>Hohe Weide, thu dich auf,
gib mir dein schön Geschmeide raus<<.
Der Hund bellt
>>hau, hau, hau, hau, hau,
mein Herr hat nicht die rechte Frau<<.
Eine achte bei Colshorn Nr. 44. Eine neunte bei Meier Nr. 4. Dies Märchen gehört zu den bekanntesten und wird aller Enden erzählt. Murner sagt es soll ein gouch sein wib regieren lassen und meister sin. Nit daß du si alwegen für ein Fußtuch woltest halten, denn si ist dem man uß der siten genummen und nit uß den Füssen, [37] daß si soll ein äschengriddel sin<<< Geuchmat Straßb. 1519 (zuerst 1515) 4. Bl. eb. Im Niederdeutschen Askenpüster, Askenböel und Askenbüel (Bremer Wörterb. 1, 29. 30). In Holstein nach Schütze Aschenpöselken von pöseln, mühsam (die Erbsen aus der Asche) suchen: Sudelsödelken, von sölen, sudeln, weil es im Schmutz verderben muß. In Pommern Aschpuck, ein schmutziges Küchenmädchen (Dähnert). Die hessische Mundart bestätigt auch Estor im oberhessischen Wörterbuch, Aschenpuddel, ein geringfügiges, unreines Mägdlein. Noch mehr oberdeutsch ist Aschenbrödel (Deutsches Wörterbuch 581) und Äscherling. Aschengrittel, Aschengruttel, Äschengrusel in Schwaben (Schmid schwäb. Wörterb. 29. Deutsches Wörterb. 1, 582). Dänisch und schwedisch Askefis, vom blasen in die Asche (at fise i Asken). Jamieson v. Assiepet, Ashypet, Ashiepattle, a neglected child, employed in the lowest kitchenwork. Polnisch Kopeiuszek von Kopec, Rufß, Rauch.
Es gab sonst ein Märchen, wo Aschenprödel ein von stolzen Brüdern verachteter Knabe war, wie ein ähnliches Verhältnis in dem Märchen vom Eisenhand Mann (Nr. 136) vorkommt und im Aschentagger bei Zingerle S. 395. Rollenhagen in der Vorrede zum Froschmeuseler erwähnt es unter den wunderbarlichen Hausmärlein »von dem verachteten, frommen Aschenpößel und seinen stolzen, spöttischen Brüdern<<. Auch Oberlin theilt vom Aschenprödel eine Stelle mit, worin ein Knecht diesen Namen führt und Geiler von Keisersberg nennt einen verachteten Küchenknecht einen Eschengrüdel, was ein Eschengrüdel alles thun muß<< Brosamen Bl. 792; vergl. in den 15 Staffeln die siebente. Tauler in der medulla animae sagt >>ich dein Stallknecht und armer Aschenbaltz<<. Luther in den Tischreden 1, 16 >>Cain der gottlose Bösewicht ist ein gewaltiger auf Erden, aber der fromme und gottesfürchtige Abel muß der Aschenbrödel unterthan, ja sein Knecht und unterdrückt seyn«. Agricola Nr. 515 >bleibt irgend ein Aschenbrodel, darauf niemand gedacht hätte<< Nr. 594 »Jacob der Aschenbrodel, der Muttersohn. Bei Eyering 2, 342 »armer Aschenwedel<«. Verelius in den Anmerkungen zur Gautrekssaga gedenkt S. 70 der Volkssage >>huru Askefisen fick Konungsdottren til hustru, welche mithin auch von einem Jüngling handelte, der Küchenjunge war und die Königstochter erhielt. Auch die Sprichwörter sitia hema i asku, liggia som kattur i hreise und liggia vid arnen, gelten meist von Königssöhnen, in der Wilkinasaga Cap. 91 von Thetleifr, [38] und in der Refssaga (Cap. 9 der Gothrekssaga), aus welcher Verelius alles andere herleiten will. In den norwegischen Märchen bei Asbjörnsen kommt häufig ein Askepot vor: in den finnischen heißt er Tukhame oder Tuhkimo von tukka Asche; s. Schiefner 617. Man wird auch an den starken Rennewart Ulrichs von Thürheim erinnert, der gleichfalls erst ein Küchenknecht sein muß, auch an den Alexius, der in seines Vaters kaiserlichem Haus unter der Stiege wie ein Knecht wohnt; s. Görres Meisterlieder S. 302.
Es war uralte Sitte daß der Unglückliche sich in die Asche setzte, so setzt sich Odysseus, der als Fremdling und um Hilfe flehend zu dem Alkinoos geredet hat, demüthig in die Asche am Herd nieder und wird dann daraus in die Höhe gehoben 7, 153. 169; vergl. 11, 191.
Oft wird erwähnt daß die Tauben rein lesen. Es sind die reinen, heiligen Thiere und gute Geister. Schon beim Meister Sigeher(MS. 2,221b),
dem milten bin ich senfte bî
mit linden sprüchen süezen,
schöne alz ez ein turteltûbe habe erlesen.
Bei Geiler von Keisersberg >>so liset die taub uff die aller rein- sten kornlin, darumb wenn man sauber korn hat, so spricht >>>man es ist eben als hetten es die tauben zsamen getragen<« Brosamen Bl. 88b. In Pauli's Schimpf und Ernst (1535) Cap. 315 Blatt 60ª eine Erzählung von einer Frau, die ganz hinten in der Kirche auf ihren Knien lag und vor Andacht weinte, da sah der Bischof wie eine Taube kam und las dieselben Thränen auf und flog danach hinweg. Bei dem Umstand, daß Aschenputtel durch den verlorenen Schuh gesucht und entdeckt wird, ist an die Sage von der Rhodope zu erinnern, deren von einem Adler entführten Schuh Psammetichus, dem er in den Schoos gefallen war, durch ganz Ägypten schickte um die Eigenthümerin zu seiner Gemahlin zu machen (Aelian Var. lib. 13).
Gudrun muß im Unglück Aschenbrödel werden, sie soll selber, obgleich eine Königin, Brände schüren und den Staub mit dem eigenen Haar abwischen: sogar Schläge muß sie dulden; vergl. 3986. 3991. 4021. 4077. 4079.
Im Pentamerone (1, 6) Cennerentola bei Perrault Cendrillon [39] ou la petite pantoufle de verre (Nr. 6); bei der Aulnoy Finette Cendron (Nr. 10). Norwegisch bei Asbjörnsen S. 110. Ungarisch in dem zweiten Theil des Märchens von den drei Königstöchtern bei Stier S. 34 folg. Serbisch mit eigenthümlichen und schönen Abweichungen bei Wuk Nr. 32. Schottky bemerkt ausdrücklich (Büschings wöchentl. Nachrichten 4, 61) daß die Serbier ein dem deutschen ähnliches Märchen von Aschenbrödel haben. Verwandt ist das Märchen von allerlei Rauh (Nr. 65) so wie das vom Einäuglein (Nr. 130).
翻訳
ヘッセンの三つの伝承に基づく。一つはツヴェーン(Zwehrn)からのもので、死にゆく母が娘に助けを約束する冒頭がなく、継子が苦しんでいるところから始まる。また、結末も異なっている。灰かぶり姫は王と一年間幸せに暮らしたが、王が旅立つ際に全ての鍵を彼女に託し、ある一つの部屋を開けてはならないと命じた。しかし王が不在になると、灰かぶり姫は悪い義姉にそそのかされてその禁じられた部屋を開けてしまい、中には血の泉があった。その後、彼女が息子を産むとき病床にあったところを、悪い義姉にその泉に投げ込まれ、代わりにその義姉が王妃になりすます。しかし、見張りたちは本当の王妃の嘆きの声を聞いて彼女を救出し、偽りの王妃は罰を受ける。この結末は《兄と妹(Nr. 11)》の物語に似ており、また、聖ゲノフェーファの伝説を思わせる別のメクレンブルクの伝承もある。
この伝承では灰かぶり姫が王妃となり、継母(魔女)と悪い義姉を自分のもとに呼び寄せる。彼女が息子を産むと、継母と義姉は犬を代わりに寝かせて、赤ん坊を庭師に殺すよう命じる。王は深い愛情から何も言わずにこれを黙認する。二度目も同じことが起こり、三度目には王妃と赤ん坊ごと庭師に殺すよう命じるが、庭師は彼女たちを森の洞窟にかくまう。王妃は悲しみから母乳が出ず、洞窟にいた牝鹿に赤ん坊を授乳させる。子は成長するが野生的で、長い髪を持ち、母のために森で薬草を集めていた。ある日、彼は城へ行き、父王に「自分の美しい母」のことを話す。「どこにいるのか?」と問われ、「森の洞窟に」と答える。王は訪ねて行くが、「彼女に羽織を持っていってください」と言われる。王は彼女を見てすぐに痩せこけていても認識し、城へ連れ帰る。途中、金髪の少年2人と出会い、「誰の子か?」と問うと、「庭師の子だ」と答える。だが庭師が現れ、殺さずに育てていた王の子であると明かす。真実が明るみに出て、魔女とその娘は罰を受ける。
パーダーボルン地方の第四の伝承ではこう始まる。ある美しい伯爵夫人が片手にバラを、もう片手にスノーボールの花を持ち、「バラのように赤く、雪のように白い子供が欲しい」と願う。神がその願いを叶えた。ある日、窓辺に立っていたとき、乳母に突き落とされる。悪女である乳母は叫び声を上げて「伯爵夫人が自ら身を投げた」と偽り、容姿の美しさで伯爵を誘惑し、妃となる。二人の娘を産み、美しい赤と白の継子は灰かぶり姫として仕えさせられる。教会に行くことを許されず、母の墓で泣くと、鍵を渡されて空洞の木を開けるように言われる。その中には衣服、洗顔用の石鹸、祈祷書が入っていた。伯爵が彼女を見て、教会の敷居にピッチ(樹脂)を塗って足止めをしようとする。ここから他の伝承と同様の展開となる。
ツィッタウ地方の第六の伝承はビュッシングの『週報』1巻139頁に簡単に紹介されている。灰かぶり姫は粉屋の娘で、やはり教会に行かせてもらえない。新しい要素はないが、鳩の代わりに犬が偽の花嫁を見破り、吠える:
「うう、うう、うう! 靴に血がいっぱい!」
そして本物の花嫁のときは:
「うう、うう、うう! 靴がぴったり!」
第七の伝承はハーゲンの『物語と童話集』2巻339頁。詩句は以下の通り:
「小鍋には手を貸すけど、大鍋には貸さない」
「高き柳よ、開けてくれ、美しき飾りを私にくれ」
犬は吠える:
「わん、わん、わん、わん、わん、
主人の嫁は本物じゃない!」
コルスホルン(Nr. 44)やマイヤー(Nr. 4)などにも八番目、九番目の伝承がある。この物語は最も広く知られたもので、各地で語られている。
ムルナーはこう言う。「女に支配され、主とされるのは愚か者だ。女を常に足拭きとして扱ってはならない。なぜなら彼女は男の脇から造られ、足からではないのだから、灰かぶりなどとするべきではない」と(『Geuchmat』シュトラスブルク1519年版、初版は1515年)。
《灰かぶり姫》という名前について:
低地ドイツ語では、Askenpüster, Askenböel, Askenbüel(ブレーメン方言辞典 第1巻 29・30頁)と呼ばれ、ホルシュタインではシュッツェによると「Aschenpöselken」といい、動詞「pöseln(苦労して探す)」から来ており、灰の中から豆を探すという意味になる。また「Sudelsödelken」は「sölen(汚す)」や「sudeln(泥まみれにする)」に由来し、汚れた中で暮らさねばならないことを示す。
ポンメルン地方では「Aschpuck」と呼ばれ、これは「汚れた台所の召使い」を意味する(デーネルトによる)。ヘッセン方言では、エストルの上ヘッセン方言辞典に「Aschenpuddel」とあり、「つまらない、不潔な少女」の意味。さらに南ドイツでは「Aschenbrödel(灰ブロート姫)」や「Äscherling」という形でも知られる。
シュヴァーベン地方では「Aschengrittel」「Aschengruttel」「Äschengrusel」などが用いられ(シュミットのシュヴァーベン語辞典、第1巻582頁など)、デンマーク語やスウェーデン語では Askefis(「灰の中で屁をする」=最下層の労働者)という名称がある。スコットランドでは Assiepet, Ashypet, Ashiepattle という形で、「見捨てられた子供」「台所仕事に使われる子供」の意味で知られる。
ポーランド語では Kopeiuszek という名称があり、これは「Kopec=すす・煙」から来ている。
男性版「灰かぶり姫」
かつては、Aschenbrödelが「傲慢な兄たちに軽んじられる少年」として語られていた。これは、《鉄の手の男(Nr. 136)》やチロル地方の《Aschentagger(灰の日の男)》にも類似する。
ローエンハーゲンは『Froschmeuseler(蛙と鼠の物語)』の序文で、「見捨てられた敬虔なAschenpößel(灰かぶり)とその傲慢であざける兄たち」の話を「不思議な家庭童話」の一つとして挙げている。
オーベルランも《Aschenprödel》の話を引用し、その中で召使いがこの名を持っていると記す。また、Geiler von Keisersberg(15世紀末の説教師) は、見下される厨房下働きを「Eschengrüdel」と呼び、「Eschengrüdelは何でもやらねばならない」と言う(『Brosamen』紙第792葉)。この語は「15の階層のうち第七階層」に属する者のこと。
タウラー(神秘神学者)は『medulla animae(魂の髄)』の中で「私はあなたの馬小屋の召使いで、貧しいアッシェンバルツ(Aschenbaltz=灰男)」と言っている。
ルターは『Tischreden(食卓談義)』第1巻16頁で、「カインは地上で暴君のようにふるまうが、敬虔で神を畏れるアベルはAschenbrödel(灰かぶり)のように仕え、奴隷のように抑圧されねばならない」と述べている。
アグリコラの箴言集(Nr. 515)にも、「誰も気にかけていなかったAschenbrodel(灰かぶり)」とある。また(Nr. 594)では「母親の子、ヤーコプ=アッシェンブローデル」とも。
アイアリング(Eyering)第2巻342頁では「貧しいアッシェンヴェーデル(Aschenwedel)」と呼ばれる。
スカンジナビアの伝説:
スウェーデンの学者ヴェレリウスは『ゴートレクのサガ』の注釈で、「Askefisenが王女を妻に得る」という民話に言及しており、これは王子でありながら台所の仕事をさせられた若者の話である。
スウェーデンの諺「sitia hema i asku(灰の中に座る)」「liggia som kattur i hreise(ほこりの中で寝る猫)」「liggia vid arnen(炉のそばに横たわる)」も同様に、王子が苦労している姿を表す表現である。『Wilkinasaga』第91章ではテトレイフ(Thetleifr)が同様の状況にある。
ノルウェーの民話では Askepot(アスケポット) がたびたび登場し、フィンランド語では Tukhame または Tuhkimo(tukka=髪、あるいは「灰」の意)という。
他の類似伝承:
・ウルリヒ・フォン・テューアハイム の『Rennewart(レンネヴァルト)』も、まず厨房下働きから始まる。
・聖アレクシウス伝説では、皇帝の子であるにもかかわらず、自ら召使いとして階段下に住む。
・**ホメロス『オデュッセイア』**では、不幸な者が炉端の灰に身を置くという古来の習慣があった。オデュッセウスもアルキノオス王のもとに来たとき、炉の灰の中に座り、そこから引き上げられる(7巻153行・169行、11巻191行など参照)。
鳩の象徴について:
よく物語で言及されるのは、鳩が「清い粒(まめ)を選り分ける」こと。鳩は「清く聖なる動物」「善き精霊」とされる。
・マイスター・ジゲールの詩(写本2, 221b):
milten bin ich senfte bî
mit linden sprüchen süezen,
schöne alz ez ein turteltûbe habe erlesen
(私はやさしくおだやかに、美しい鳩のように選ばれた)
・カイザースベルクのガイラー曰く:「鳩は最も清い穀粒を選ぶ。だから上等な穀物のことを『鳩が集めたようなもの』という」
・**パウリの『冗談と真面目(1535)』**第315章には、教会の一番奥で涙を流して祈っていた女性の話があり、司教が見ると一羽の鳩が来て、その涙を拾って飛び去ったという逸話がある。
ガラスの靴による発見について:
灰かぶり姫が「落とした靴」で見つかるというモチーフは、古代のロドピスの伝説を思わせる。ロドピスの履いていた靴が鷲にさらわれ、それがエジプト王プサメティコスの膝に落ち、王はその持ち主を王妃にしようとしてエジプト全土に探させた(アイリアノス『雑事集成』第13巻)。
他の関連物語:
・グズルーンは不幸の中で「灰かぶり姫」となり、女王でありながら自ら薪をくべ、自分の髪で塵を拭き、鞭打たれさえする(叙事詩の該当行:3986, 3991, 4021, 4077, 4079)。
・ペンタメローネ(第1巻第6話)では Cenerentola(チェネレントラ)、ペローでは Cendrillon ou la petite pantoufle de verre(ガラスの靴の小さな灰かぶり)(第6話)、ド・ラ・ウノワでは Finette Cendron(フィネット・サンドロン)(第10話)。
・ノルウェー版(Asbjørnsen, p.110)、ハンガリー版(スティーア『三人の王女』の第2部)、セルビア版(ヴーク No. 32)はそれぞれ特徴的で美しい差異を持つ。シュコッキーはビュッシングの『週報』第4巻61頁で、セルビア人がドイツのそれに似た「灰かぶり姫」の物語を持っていると明記している。
また《いろいろな毛皮(Allerlei-Rauh)》(Nr. 65) や《一つ目ちゃん》(Nr. 130) も関連している。
022. なぞ Das Rätsel第2版以降で差し替え 初版は「上22 子どもたちの屠殺ごっこ」
原文(1812年初版)
I.
In einer Stadt, Franecker genannt, gelegen in Westfriesland, da ist es geschehen, daß junge Kinder, fünf- und sechsjährige, Mägdlein und Knaben, miteinander spielten. Und sie ordneten ein Büblein an, das solle der Metzger sein, ein anderes Büblein, das solle Koch sein, und ein drittes Büblein, das solle eine Sau sein. Ein Mägdlein, ordneten sie, solle Köchin sein, wieder ein anderes, das solle Unterköchin sein; und die Unterköchin solle in einem Geschirrlein das Blut von der Sau empfahen, daß man Würste könne machen. Der Metzger geriet nun verabredetermaßen an das Büblein, das die Sau sollte seyn, riß es nieder und schnitt ihm mit einem Messerlein die Gurgel auf, und die Unterköchin empfing das Blut in ihrem Geschirrlein. Ein Rathsherr, der von ungefähr vorübergeht, sieht dies Elend; er nimmt von Stund an den Metzger mit sich und führt ihn in des Obersten Haus, welcher sogleich den ganzen Rath versammeln ließ. Sie saßen all über diesen Handel und wußten nicht, wie sie ihm thun sollten; denn sie sahen wohl, daß es kindlicher Weise geschehen war. Einer unter ihnen, ein alter weißer Mann, gab den Rath, der oberste Richter solle einen schönen roten Apfel in die Hand nehmen, in die andere einen rheinischen Gulden, solle das Kind zu sich rufen und beide Hände gleich gegen dasselbe ausstrecken; nehme es den Apfel, so solle es ledig erkannt werden, nehme es aber den Gulden, so solle man es tödten. Dem wird gefolgt; das Kind aber ergreift den Apfel lachend, wird also aller Strafe ledig erkannt.
II.
Einstmals hat ein Hausvater ein Schwein geschlachtet, das haben seine Kinder gesehen; als sie nun Nachmittag miteinander spielen wollen, hat das eine Kind zum andern gesagt: „du sollst das Schweinchen und ich der Metzger seyn;“ hat darauf ein bloß Messer genommen, und es seinem Brüderchen in den Hals gestoßen. Die Mutter, welche oben in der Stube saß und ihr jüngstes Kindlein in einem Zuber badete, hörte das Schreien ihres anderen Kindes, lief alsbald hinunter, und als sie sah, was vorgegangen, zog sie das Messer dem Kind aus dem Hals und stieß es im Zorn, dem andern Kind, welches der Metzger gewesen, ins Herz. Darauf lief sie alsbald nach der Stube und wollte sehen, was ihr Kind in dem Badezuber mache, aber es war unterdessen in dem Bad ertrunken; deßwegen dann die Frau so voller Angst ward, daß sie in Verzweifelung gerieth, sich von ihrem Gesinde nicht wollte trösten lassen, sondern sich selbst erhängte. Der Mann kam vom Felde und als er dies alles gesehen, hat er sich so betrübt, daß er kurz darauf gestorben ist.
日本語訳(子どもたちが屠殺ごっこをした話)
I. ある町での出来事
フラネッカーという名の、西フリースラントにある町でのことです。5〜6歳ほどの幼い子どもたちが一緒に遊んでいました。彼らはひとりの男の子を「肉屋」、別の男の子を「料理人」、さらに別の男の子を「豚」の役にしました。女の子たちの中から一人を「女料理人」、もう一人をその補助役にしました。その補助役の女の子は、小さな容器で豚の血を受けてソーセージを作る役目です。
約束どおり「肉屋」の役の子は「豚」の役の子に近づき、その子を地面に投げ倒して小さなナイフで喉を切りました。「補助役」の女の子は容器で血を受け取りました。
そこへ偶然通りかかった町の評議員がこの惨状を目にしました。そしてその「肉屋役」の子を連れて行き、長老の家に行きました。すぐに町の評議会が招集され、皆この問題をどう扱うべきか分からずに集まりました。なぜならそれが子どもの遊びとして起きたことだと分かっていたからです。
その中の一人の老人が助言しました。最高裁の裁判官は片方の手に美しい赤いリンゴを、もう片方の手にライン地方の金貨を持ち、その子を呼んで両方の手を差し出すべきだと。子どもがリンゴを取れば無罪とし、金貨を取れば死刑にするべきだと。評議会はこの助言に従い、子どもは笑いながらリンゴを掴み、こうして罰せられることなく自由になりました。
II. 家庭での悲劇
ある日、父親が豚を屠殺するのを子どもたちが見ていました。その午後、子どもたちが遊びをしている時、一人の子がもう一人に言いました。「お前は豚役、私は肉屋役だ。」そして裸のナイフを取ると、弟の喉に突き刺しました。
母親は上の部屋で一番小さな子どもを桶で洗っていましたが、他の子の叫び声を聞いてすぐに駆け下りてきました。そこで何が起きたかを見届けると、喉に刺さったナイフを取り除き、激怒して肉屋役の子の心臓を突き刺しました。その後母親はすぐに湯船で遊んでいる最小の子の様子を見ようと上の部屋に戻りましたが、その間に子どもは湯船で溺れて死んでいました。母親は恐怖と悲しみで心を打ち砕かれ、召使いの慰めも拒みながら絶望して自ら首を吊って命を絶ちました。
父親は畑から帰ってきてこの光景を見て、あまりの悲しみに打ちひしがれ、まもなく悲嘆のうちに命を落としました。
あらすじ
・1人の王子が世界を旅して周りたいと思った
・王子は1人の忠実な召使いだけを連れていった
・王子は大きな森に入り込み、日が暮れても泊まるところが見つからなかった
・小さな家へ向かう1人の娘がいた
・王子はその娘に「私と召使いを今晩泊めてもらえないか」と声をかけた
・娘は「泊めることはできますが、まま母は悪い術を使い、よその人たちには親切ではないのでお薦めできませんわ。」と答えた
・王子は魔女の家に来たと気付いたが、先へ行くこともできないので、家の中へ入った
・赤い目をした老婆は親切そうに振る舞い、炭火で何かを煮ながら「お座り、休むといい」と促した
・娘は、「老婆は悪い飲み物を作っているので、何も食べたり、飲んだりしないように」と2人に注意した
・王子たちは朝までぐっすり眠った
・旅立ちの準備が整って王子が馬に乗ると、老婆は「お別れの飲み物をあげよう」と言った
・老婆が飲み物を取りに行っている間に王子は馬を走らせ去っていった
・出遅れた召使いはこの悪い魔女が持って来た飲み物を受け取った
・その瞬間にグラスが飛んで、毒が馬にかかって倒れて死んでしまった
・召使いは走って主人を追って事の次第を話しましたが、置き忘れた鞍を取りに戻った
・召使いは死んだ馬の肉を1羽のカラスが食べていたのを見て、「これよりいい獲物が手に入るか分かりゃしない」と言うとカラスを殺して持って行った
・2人は森の中を先へ進み、夜になる頃、宿屋を見つけて入っていった
・召使いは宿屋の主人にカラスを渡して夕食に料理してくれるように頼んだ
・この宿は人殺しの隠れ家で、暗くなると12人の人殺したちがやって来て食卓に着いた
・宿屋の亭主と魔女もこの人殺したちに加わって一緒にカラスの肉が入ったスープを食べた
・カラスに入っていた馬の肉の毒で、皆がバタバタと倒れて死んでしまった
・宿屋の主人の娘以外にはもう誰もいなくなった
・娘は全てのドアを開けて王子に山と積まれた宝を見せたが、王子は何もいらないと言って召使いと一緒に馬に乗って先へ進んだ
・2人は美しいけれども思いあがったお姫さまがいる町に入った
・お姫さまは「自分が解けない謎を出したらその人は夫になれる。しかし、謎が解けたら首を切り落とす」という御触れを出していた
・お姫さまの考える時間は3日あり、既に9人の者が犠牲になっていた
・王子はお姫さまの美貌に目が眩んで、命を賭けて謎「これはなんでしょう。ある人が、1人もうち殺さなかったのに、12人の者をうち殺しました」を出しました。
・お姫さまは考えに考えたが何のことか分からず、本を調べたが何も載ってなく、知恵は尽きた
・お姫さまは女中に「王子が夢で話すのを立ち聞きする」ように命じた
・賢い召使いは主人の代わりにベッドに寝ていて、女中のマントを剥ぎ取ってムチで追い出した
・2日目の晩は侍女を遣わせたが、召使いがまたもやムチで追い出した
・主人は3日目の晩は大丈夫だろうと思って自分がベッドに横になった
・お姫さまが自らやって来て、霧のような灰色のマントをまとって王子の横に座った
・お姫さまは夢の中で答えるだろうことを願いながら王子へ話しかけた
・本当は王子は目を覚ましていて、何もかも分かっていたが、謎の答えを話した
・お姫さまは立ち去ろうとしまが、王子がマントを握りしめていたので仕方なくマントを置いていった
・翌朝、お姫さまは謎が解けたとみんなに知らせて12人の裁判官を集めた
・お姫さまは彼らの前で謎を解いたが、王子は聞いて欲しいと願い出て昨晩の出来事を話した
・裁判官たちは「証拠を見せなさい」と言った
・3着のマントが召使いによって運び込まれ、そこにはお姫さまがいつもよく着る「霧のような灰色のマント」もあった
・裁判官たちはこれを見て「このマントを金と銀で刺繍させなさい。婚礼用のマントになるでしょう」と言った
023. 小ネズミと小鳥と焼きソーセージの話 Von dem Mäuschen, Vögelchen und der Bratwurst
特徴
・ソーセージの役割は「お粥や野菜料理の中をさっとはい回る」
収録:上23 小ねずみと小鳥と焼きソーセージ
あらすじ
・1匹の小ネズミと1羽の小鳥と1本の焼きソーセージが一緒に楽しく暮らしていた
・小鳥の仕事は森の中で薪を集める事だった
・ネズミの仕事は水を運び、火を起こし、食卓の用意をする事だった
・焼きソーセージの仕事は料理を作る事だった
・ある日、小鳥が別の鳥に出会ってこの素晴らしい境遇を自慢した
・ところが、このもう一方の鳥は、小鳥が他の2人より大変な仕事をしているとそそのかした
・ネズミの役割は「火を起こして水を運べば『食卓の用意を』と言われるまで休んでる」だった
・ソーセージの役割は「大鍋のそばにいて、お粥や野菜の中を一度に4回体を伸ばして、グルグル絡めて味が染みるように潜る 、そうすればギラギラと脂が付いて塩味がして料理が出来上がる」だった
・小鳥が家に帰って重い荷物をおろすと、みんなで食卓に付き、食事が終わると朝まで眠るのが素晴らしい暮らしだった
・小鳥は「長いこと充分下男をやってきて道化だった」と言った
・議論の末、役割を交換することになり、焼きソーセージは薪取り、ネズミは料理人、小鳥が水を運ぶ役になった
・焼きソーセージは薪を取りに出かけ、小鳥は火を起こし、ネズミは鍋を火に掛けた
・焼きソーセージが戻って来ないので小鳥が探しに行くと、犬が焼きソーセージを食べていた
・小鳥は悲しみに打ちひしがれて薪を背負って家に帰った
・ネズミは料理の仕上げをしようと鍋の中へ入って、焼きソーセージのように味付けをしようとしたが鍋の中ほどで動けなくなり、皮と毛が無くなって命まで失くしてしまった
・小鳥がやってきて食事を運ぼうとしたが、料理人が居なかった
・小鳥はびっくりして狼狽えてあちこちへ薪を放り出した
・火が薪に移って火事になった
・小鳥は大急ぎで水を取りに行ったが、桶がするりと井戸の中へ落ちた
・そのはずみで小鳥も一緒に井戸に落ちて溺れ死ぬ羽目になった
024. ホレおばさん Frau Holle聖ニコラウスの影
特徴
・ある未亡人には2人の娘がいるが、美しい方より醜い方を可愛がっていた
・美しい娘が井戸 に落ちるのは水汲みに失敗したから
・醜い娘は自分の意志で井戸に飛び込む
収録:上24 ホレおばさん
特徴
・醜い方を可愛がるのは「自分の娘」だから (2人の娘の素性を加筆)
・美しい娘が泉 に落ちるのはまま母の命令(井戸に落とした糸巻きの巻き枠を拾うため)
・美しい娘が地上に戻ったことを告げる雄鶏の話を加筆
・美しい娘が「姉」で、出迎えたのが「妹」
・醜い娘も糸を紡ぎ、指に傷を付けて巻き枠を血に染め、それを泉に投げ入れてから 自分も飛び込む
・醜い娘が地上に戻ったことを告げる雄鶏の話を加筆
025. 7羽のカラス Die sieben Raben
あらすじ
・あるお母さんには3人の息子と末っ子の娘 がいた
・3人の息子は礼拝中にトランプで遊んでいたので、お母さんに (罰として)真っ黒なカラスになれと呪った
・カラスになった3 人は飛び立ってしまう
・女の子は小さな椅子だけを持って カラスになった兄たちを探す旅に出る
・女の子は道中でカラスが落とした指輪(女の子が末の兄に贈ったもの) を拾う
・女の子は旅を続けて世界の果てに着く
・そこにはお日様がいたが、とても熱く、しかも子供を食べていた(夏に亡くなる子が多くいた暗示?)
・女の子はお日様の元を逃げ出して月に行くが、月は冷たくて意地悪だった
・女の子は再び逃げ出して星々のところに行く
・星々は親切でそれぞれが小さな椅子に座っている
・その中の「明けの明星」が立ち上がって女の子に「ひよこの足」を渡し、兄たちがいるガラスの山に入るために必要だと伝える
・女の子はガラスの山に着いたが、入るための鍵だった「ひよこの足」を失くしていた
・女の子は自分の小指を切り取って「ひよこの足」の代わりに使う
・山の門が開くと小人が登場し、女の子は三羽のカラス を探していることを伝える
・小人は三羽のカラス のための食事を用意しており、女の子は各皿と各コップから1口ずつ頂いた(白雪姫に酷似)
・女の子は最後のコップ(末の兄のコップ)に持ってきた指輪(末の兄に贈った 指輪)を入れた
・戻ってきた三羽のカラス は食事が減っているのに気付くが、末の兄が妹が来たこと に気付く
・三羽のカラス は救われて家に帰る
収録:上25 三羽のカラス
あらすじ
・ある男(お父さん)には7人の息子 がいて、待望の女の子が生まれた
・女の子の洗礼をするため、7人の息子が水を汲みに行くが水差しを井戸に落としてしまう
・待ちきれないお父さんは (罰として)真っ黒なカラスになれと呪った
・カラスになった7 人は飛び立ってしまう
・成長した女の子は7人の兄の存在を知る
・女の子は両親からもらった指輪、パン、水、そして小さな椅子を持って カラスになった兄たちを探す旅に出る
・女の子は旅を続けて世界の果てに着く
・そこにはお日様がいたが、とても熱く、しかも子供を食べていた
・女の子はお日様の元を逃げ出して月に行くが、月は冷たくて意地悪だった
・女の子は再び逃げ出して星々のところに行く
・星々は親切でそれぞれが小さな椅子に座っている
・その中の「明けの明星」が立ち上がって女の子に「ひよこの足」を渡し、兄たちがいるガラスの山に入るために必要だと伝える
・女の子はガラスの山に着いたが、入るための鍵だった「ひよこの足」を失くしていた
・女の子は自分の小指を切り取って「ひよこの足」の代わりに使う
・山の門が開くと小人が登場し、女の子は七羽のカラス を探していることを伝える
・小人は七羽のカラス のための食事を用意しており、女の子は各皿と各杯から1口ずつ頂いた(白雪姫に酷似)
・女の子は最後の杯(末の兄の杯)に持ってきた指輪(両親からもらった 指輪)を入れた
・戻ってきた七羽のカラス は食事が減っているのに気付くが、末の兄が両親の指輪 に気付く
・妹の登場で七羽のカラス は救われて家に帰る
026. 赤ずきん Rotkäppchen
特徴
・ケーキとワインをお祖母さんに届けるようにお母さんは赤ずきんに依頼
収録:上26 赤ずきん
あらすじ
・おばあさんは小さな女の子を一番可愛がっていて、赤いビロードの頭巾をあげた
・女の子はそればかり被ったので“赤ずきん”と呼ばれるようになった
・お母さんが赤ずきんに「このケーキ1つとワイン1本を持っておばあさんの家に行っておくれ。」とお使いを頼んだ
・さらに「暑くならないうちに出かけて、外に出たらちゃんとしとやかに歩いて、道からはずれないようにして、おばあさんの部屋に入ったら『おはようございます』と言うのを忘れないように、部屋のあちこちをキョロキョロ口見ちゃいけませんよ」 (礼儀作法を追記) と言った
・「大丈夫よ、ちゃんとやるわ」と赤ずきんは言うと、手を握って約束した
・おばあさんは赤ずきんの村から半時間ほどの村のはずれの森の中に住んでいた
・赤ずきんが森に入るとオオカミに出くわしたが、悪い奴とは知らなかったので赤ずきんは恐がらなかった
・オオカミは赤ずきんと会話をして、歩いて15分はかかる家に住むおばあさんにケーキとワインを持って行くところだと聞き出した
・オオカミは「この柔らかそうな子は脂がのって婆さんより味が良さそうだ。2人ともごちそうになるには (その場で赤ずきんを食べない理由を追記) 、うまいことやらなくちゃな」と考えた
・オオカミは「きれいな花が咲いて、小鳥たちが可愛らしい声でさえずってるよ」と言って赤ずきんを寄り道に誘った
・赤ずきんは「おばあさんに花を摘んで届けても時間に着けるわ」と考えて寄り道をした
・その隙にオオカミはおばあさんの家に行った
・オオカミはおばあさんをひと飲みにしてから、おばあさんの服を着て、頭巾を被ってベッドに横になった
・持ちきれないくらい花を集めた赤ずきんはようやくおばあさんの家へ向かった
・ドアが開いているのを変だと思いながら赤ずきんは部屋に入って「おはよう!」と呼び掛けた
・返事が無かったが、ベッドに行ってカーテンを開けた
・おばあさんは寝ていたが、頭巾を深く被っていた
・「なんて大きなお耳なの!」
・「おまえの言うことがよく聞こえるようにだよ」
・「なんて大きな目をしているの!」
・「おまえの顔がよく見えるようにだよ」
・「なんて大きな手をしているの!」
・「おまえをしっかり捕まえるようにだよ」
・「なんて恐ろしく大きな口なの!」
・「おまえを食うためさ!」
・オオカミはベッドから飛び出して赤ずきんを飲み込んでしまった
・オオカミは満腹になって眠りこんで大いびきを掻き出した
・そばを通り掛かった猟師が「おばあさんがいびきを掻いているなんて」と案じた
・部屋に入るとベッドでオオカミが寝ているのを見つけた
・猟師は「オオカミがおばあさんを食べてしまっているのかも」と思って、鉄砲を撃つ代わりにハサミで腹を切り開いた
・二、三度切ると赤い頭巾が見えたので、さらに二、三度切ると女の子が飛び出して言った
・「ああ、びっくりしたわ。オオカミのお腹の中ってとっても暗かったわ!」
・続いておばあさんも出てきた
・赤ずきんが外から大きな石を持ってきて3人でオオカミの腹の中に詰め込んだ
・オオカミは目を覚ますと逃げ出そうとしたが石が重すぎてバッタリ倒れて死んでしまった
・3人は喜び、猟師はオオカミの毛皮を剥いで持ち帰った
・おばあさんはケーキを食べ、ワインを飲んで元気を取り戻した
・赤ずきんは「これからはお母さんがいけないと言ったときには、1人で道草したり、森の中に入るなんてもう二度としないわ」と思った
こんな話もあります (後日談)
・赤ずきんがまた年とったおばあさんの所へ焼き菓子を持って出かけた
・別のオオカミが声を掛けて彼女を脇道に逸らそうとした
・赤ずきんは用心して真っ直ぐにおばあさんの家まで行った
・赤ずきんは途中でオオカミに出会った事をおばあさんに話した
・「『こんにちは』と話し掛けてきて、とても怪しい目つきをして見ていた」と話し、「人通りのある道でなかったら、きっと食べられちゃったわ」と続けた
・おばあさんは「はやく戸を閉めなくっちゃ。オオカミが入れないようにね」と言った
・オオカミが戸を叩いて「開けてちょうだい、おばあさん。赤ずきんよ。焼き菓子をもってきたわ」と言った
・2人は息を殺し、戸を開けなかった
・オオカミは家の周りを何度も忍び歩いてから屋根に飛び乗った
・「夕方に赤ずきんが家に帰るのを待って、後を付けて食べてやろう」というオオカミの企みをおばあさんは気付いていた
・おばあさんは赤ずきんに「昨日、ソーセージを茹でたから手桶で煮汁を持ってきて、家の前の大きな石のえさ箱に入れてちょうだい」と言った
・赤ずきんは煮汁でえさ箱を一杯にした
・ソーセージの臭いがオオカミの鼻まで立ち上ってきた
・オオカミは下を覗き込んだが体を支えきれず、屋根からすべり落ちてえさ箱の中で溺れ死んでしまった
・赤ずきんは喜び勇んで家に帰った
・これでもう、だれも悪さをするものはいませんでした。 (物語の終わりの常套句を付加)
027. ブレーメンの町の音楽隊 Die Bremer Stadtmusikanten第2版以降で差し替え
第2版(1819年)のあらすじ
年老いて役に立たなくなったロバが、主人に殺されそうになり、家を逃げ出します。彼は音楽隊に入る夢を抱いて、ブレーメンを目指します。
道中で同じように捨てられた犬、猫、鶏と出会い、それぞれ「もう働けない」と追い出されていた仲間たち。4匹は意気投合し、「ブレーメンで音楽隊になろう!」と旅を続けます。
途中で夜になり、森の中で明かりのついた家を見つけます。中では盗賊たちがごちそうを囲んでいます。
動物たちは力を合わせ、ロバが土台、犬がロバの上、猫がその上、最後に鶏が一番上に乗り、「音楽」を鳴らしながら家に突入。驚いた盗賊たちは逃げ出します。
動物たちは家を占拠し、ごちそうを食べて休みます。
後で盗賊の1人が様子を見にこっそり台所に入り、明かりをつけようとします。猫のぎらぎら光る目を炭火と勘違いし、硫黄のマッチをそこに近づけます。すると猫が突然顔に飛びかかって、ひっかき、かみつきます。盗賊は恐怖でパニックになり、裏口から逃げようとしますが、そこにいた犬が飛びかかって足に噛みつきます。中庭を走り抜けようとしたところで、ロバが後ろ足で一撃をくらわせます。そして最後に、目を覚ました鶏が梁の上から「コケコッコー!」と叫ぶと、「魔物の巣だ」と思いこみ、仲間の元へ逃げ帰ります。
こうして、4匹の動物たちはその家に住みつき、ブレーメンには決して辿り着かないまま 、幸せに暮らしました。
初版は「上27 死神とガチョウ番」
原文(1812年初版)
Es ging ein armer Hirt an dem Ufer eines großen und ungestümen Wassers, hütend einen Haufen weißer Gänse. Zu diesem kam der Tod über Wasser, und wurde von dem Hirten gefragt, wo er herkomme, und wo er hin wolle? Der Tod antwortete, daß er aus dem Wasser komme und aus der Welt wolle. Der arme Gänsehirt fragte ferners: wie man doch aus der Welt kommen könne? Der Tod sagte, daß man über das Wasser in die neue Welt müsse, welche jenseits gelegen. Der Hirt sagte, daß er dieses Lebens müde, und bat den Tod, er sollte ihn mit über nehmen. Der Tod sagte, daß es noch nicht Zeit, und hätte er jetzt sonst zu verrichten.
Es war aber unferne davon ein Geizhals, der trachtete bei Nachts auf seinem Lager, wie er doch mehr Geld und Gut zusammenbringen mögte, den führte der Tod zu dem großen Wasser und stieß ihn hinein. Weil er aber nicht schwimmen konnte, ist er zu Grunde gesunken, bevor er an das Ufer kommen. Seine Hunde und Katzen, so ihm nachgelaufen, sind auch mit ihm ersoffen.
Etliche Tage hernach kam der Tod auch zu dem Gänsehirten, fand ihn fröhlich singen und sprach zu ihm: „willst du nun mit?“ Er war willig und kam mit seinen weißen Gänsen wohl hinüber, welche alle in weiße Schafe verwandelt worden. Der Gänsehirt betrachtete das schöne Land und hörte, daß die Hirten der Orten zu Königen würden, und indem er sich recht umsahe, kamen ihm die Erzhirten Abraham, Isaac und Jacob entgegen, setzten ihm eine königliche Krone auf, und führten ihn in der Hirten Schloß, allda er noch zu finden.
※原文は古いドイツ語綴り・構文が残っており、現在の標準ドイツ語とはやや差異があります。
日本語訳(死とガチョウ飼い)
ある日、ある貧しい羊飼い(ガチョウ飼い)が、大きく荒れた水のほとりで、白いガチョウの群れを番していた。すると死が水の上からやって来て、その羊飼いに、どこから来たのか、どこへ行くのかと尋ねられた。死は答えた。自分は水から来て、世の中の外へ行こうとしていると。貧しいガチョウ飼いはさらに尋ねた。どうすれば世の中の外へ行けるのかと。死は言った。水を越えて、その向こうにある新しい世界へ行かなければならないと。ガチョウ飼いは言った。自分はこの生を疲れ果てている、どうか死よ、自分も一緒に連れて行ってくれと頼んだ。死は言った。まだその時ではない、今は他に為すべきことがあるのだと。
ところがそのそばに、ある欲深い金持ちがいた。その男は夜、寝床でどうしたらもっと金や財産を集められるかと思い巡らしていた。すると死はその男を大きな水へと導き、彼を水中に突き落とした。しかしその男は泳げなかったので、岸にたどり着く前に沈んで死んでしまった。彼に従って来た犬や猫も皆一緒に溺れ死んだ。
数日後、死はそのガチョウ飼いのところへもやって来て、彼が楽しげに歌っているのを見つけ、「さあ、今来るか?」と言った。彼は快く承知し、白いガチョウたちと共にうまく水を越えて行った。すると白いガチョウはすべて白い羊に変わっていた。ガチョウ飼いは美しい国を眺め、その地の羊飼いたちが王になっていると聞いた。そしてきちんと辺りを見渡していると、アブラハム、イサク、ヤコブという偉い羊飼いが彼に近づいて来て、王の冠を彼に載せ、羊飼いの城へと導いた。そこに彼は今もいる。
あらすじ
・ある男の人がロバを1頭飼っていた
・穀物の袋を水車小屋に運ぶのがこのロバの仕事だったが、年を取って役に立たなくなった
・主人はロバに餌をやるのを止めようと考えた
・ロバはそれに気付いて逃げだし、ブレーメンの町へ行けば町の楽士になれるかも知れないと考えた
・ロバは道中、猟犬が道に寝ているのを見つけた
・犬は年を取って弱り、もう狩りにも出られず、走り疲れたようにハアハア言っていた
・犬の主人が撃ち殺そうとしたので逃げて来たが、「どうやってパンを稼いだらいいものやら」と犬は途方に暮れていた
・「一緒にブレーメンに行って楽隊に雇われたらどうだい。ぼくはリュート(リュート:洋ナシをたて半分にわったような形の胴に弦をはった弦楽器)を弾くから、きみはティンパニーを叩けばいいよ」とロバは言った
・犬もこれに満足して一緒に歩いていった
・道中、道端に猫が仏頂面をして座っていた
・猫は「年が年で歯が鈍らになって、ネズミを追えなくなってストーブの後ろにうずくまってたら、おかみさんが私を水に突っ込んで溺れ死にさせようとしたんで逃げ出したものの、どこへ行ったものか知恵も浮かばないのさ」と言った
・「一緒にブレーメンに行かないかい。君はセレナーデが上手いじゃないか。町の楽士になれるよ」とロバは言った
・猫は「そいつはいい」と思って一緒に行った
・3匹の逃げだし組がある農家の屋敷の前を通りかかると、オンドリが門の上で力いっぱい鳴いていた
・「天気がいいって知らせたのさ。今日は、聖母マリアさまの日で、聖母さまが幼いキリストさまの肌着を洗って、かわかそうとなさる日だからさ。 ところが、おかみさんは『明日の日曜日にはお客が来るんで、ぼくをスープにして食べる』って料理女に言ったのさ。ぼくは今晩首を切られから、鳴ける間は喉が割けるまで鳴くんだよ」とオンドリは言った
・「一緒にブレーメンにおいでよ。どこに行ったって死ぬよりはましさ。君はいい声をしている。一緒に音楽をやったら凄いものになるぜ」とロバは言った
・オンドリはその提案が気に入って、4匹で旅を続けることになった
・1日ではブレーメンに着かないので、一行は森の中で夜を明かすことにした
・大きな木の枝に登ったオンドリが遠くに明かりがついた家を見つけた
・「ここを出て、そこまで行かなくちゃ」とロバが言った
・4匹が向かった明かりは泥棒の家だった
・一番大きいロバが窓を覗き込むと、御馳走が並んだテーブルと泥棒どもが座っているのが見えた
・動物たちは泥棒を追い出す相談をした
・ロバが前足を窓にかけ、犬がロバの背に飛び乗り、猫が犬の上によじ登り、最後にオンドリが猫の頭の上に止まって、皆が一斉にめいめいの音楽を奏で始めた
・それから4匹が窓から部屋に突入したのでガラスがガチャガチャバリンと割れた
・泥棒たちは驚いて飛び上がり、お化けが入って来たと縮み上がって森の中に逃げ出した
・4匹はテーブルに向かって、残っている御馳走をガツガツ食べた
・食事を済ませた4人組の楽士たちは明かりを消して、ロバは肥しの上に、犬は戸の後ろに、猫は竈の暖かい灰の側へ、オンドリは天井の梁の上に停まって眠り込んだ
・真夜中が過ぎて家の明かりが消えているのを泥棒たちは遠くから見ていた
・泥棒の頭が手下の1人を偵察に出した
・この手下は明かりを点けるために台所に入った
・火のように光る猫の目を炭だと思ってマッチに火を点けようとした
・猫はギャツと怒って、泥棒の顔に飛び掛かって爪で引っ掻いた
・泥棒は驚いて裏の戸口から外に出ようとしたため、そこに寝ていた犬が飛び上がって泥棒の足に噛みついた
・泥棒が中庭を通って肥しの側を走りかかるとロバが後ろ足で蹴とばした
・物音で目覚めたオンドリが梁の上から「コケコッコー」と大声で鳴いた
・泥棒は頭の所に帰って、「家には恐ろしい魔女がいて長い指で私の顔を引っ掻き、戸の手前ではナイフをもった男が私の足をつき刺し、中庭には黒い怪物が棍棒で私に打ってかかり、屋根の上には裁判官がいて『悪者を連れてこい』と怒鳴ったので必死に逃げてきました」と言った
・泥棒たちはその家にはもう入ろうとはしなかったので、4匹のブレーメンの楽士たちはそこが気に入って、二度と出ていこうとしませんでした
・この話を一番最後にした人の口は、まだ暖かいですよ。 (物語の最後によく使われる言いまわし。この話がまだ湯気の立つような、最近聞いたばかりのもの、またよく聞かれる話である、という意味。)
028. 歌う骨 Der singende Knochen
あらすじ
・国を荒らす猪に悩んでいた王さまは「猪を倒した者には娘を妻にとらせる」とおふれを出した
・(注1) これに挑む3人の兄弟 がいた(兄はずる賢くて利口、2番目の兄は普通 、末っ子は無邪気で頭が足りない)
・(注2) 2人の兄は連れ立って、末っ子は一人で森に入った
・末っ子(弟)は出会った小人から黒い槍をもらい、猪を仕留める
・帰路の途中、兄(達)が1軒の家で酒盛りをしており、弟(末っ子)も合流する
・弟は兄(達)にその日の武勇伝を話す
・帰路の途中、弟は兄(達)に殺されて橋の下に埋められてしまう
・長男が成果を横取りして王女と結婚する
・数年後、橋の下を羊飼いが通りかかり、真っ白な骨を見つけて角笛のマウスピースを作る
・角笛を吹こうとすると兄達の悪事を勝手に歌い始める
・羊飼いが王さまにも歌を聞かせたので、弟の骨が掘り出される
・兄は罰せられて水に溺れさせられ、弟の骨は教会の墓地に埋葬された
収録:上28 歌う骨
特徴
・(注1) ある貧しい男には、これに挑む2人の兄弟 がいた(兄は悪知恵が働き、抜け目がなく傲慢、弟は無邪気でのんびり屋で善人)
・(注2) 兄は西から、弟は東から森に入った
029. 金の毛が3本ある悪魔 Der Teufel mit den drei goldenen Haaren
あらすじ
・(注1) 木こりが城の前で木を伐っていた。それを見ていたお姫さまと相思相愛になるが、気に入らない王さまは「花婿になる者は悪魔の頭から三本の金の髪の毛を取って来た者だけだ。」という条件を出す
・(注2) 翌朝、木こりは旅に出る
(以下、若者:初版では木こり、第7版では福の子)
・若者が大きな町に着くと、門番が職業と知識力を問いただした
・(注3) 「何でも知っている」と若者が答えたので、門番は「お姫さまを元気にして欲しい」と訊いた
・若者が「戻ってきた時に」と答えて次の町に行くと、やはり知識力を訊かれた
・(注4) 「何でも知っている」と若者が答えたので、門番は「広場の井戸が干上がった理由」を訊いた
・(注5) 若者が「戻ってきた時に」と答えて先へ進むと、枯れかかったイチジクの木の脇にいた男に知識力を訊かれた
・(注6) 「何でも知っている」と若者が答えたので、男は「イチジクの木が枯れて実がならない理由」を訊いた
・若者が「戻ってきた時に」と答えて先へ進むと、大きな川辺で渡し守をする漁師に知識力を訊かれた
・「何でも知っている」と若者が答えたので、渡し守は「いつになったら交替してもらえるのか」を訊いた
・川を渡った若者は地獄にやってきた
・(注7) 悪魔は留守でおかみさん だけが居た
(以下、女性:初版ではおかみさん、第7版ではお婆さん)
・若者は女性に「悪魔の頭の3本の金の毛が欲しい」理由を告げる
・(注8) 若者はさらに道中で先送りした4つの疑問を伝えると、女性は協力すると言って若者をベッドの下に隠れさせた
・帰宅した悪魔は部屋の異変を感じるが、飲み食いして寝てしまった
・女性は悪魔の金の毛を1本抜いて、怒る悪魔を誤魔化すように1つ目の疑問を投げかけて答えを得る
・女性は再び寝入った悪魔の金の毛を1本抜いて、2つ目の疑問を投げかけて答えを得る
・女性は再び寝入った悪魔の金の毛を1本抜いて、3つ目の疑問を投げかけて答えを得る
・(注9) 女性は再び寝入った悪魔の鼻をつまんで、4つ目の疑問を投げかけて答えを得る
・(注10) 3本の金の毛と疑問の答えを得た若者は悪魔の家を出て渡し守のところに戻る
・若者は最初に川を渡してもらってから渡し守に回答を伝えて帰路に着く
・(注11) 若者は3つ目の疑問を解決して、お礼に「歩兵連隊」を得る
・(注12) 若者は2つ目の疑問を解決して、お礼に「騎兵連隊」を得る
・(注13) 若者は1つ目の疑問を解決して、お礼に「金を積んだ馬車を四台」を得る
・(注14) 若者は王さまに「三本の金の毛」を渡すが、王さまはお姫さまとの結婚を渋る
・(注15) 若者は道中で得た財産を王さまに見せつけて結婚を祝福される
収録:上29 三本の金の髪の毛をもつ悪魔の話
特徴
・(注1) 前段は全く異なる内容貧しい女に男の子が生まれた 男の子は「福の皮(羊膜)」を被って生まれたので「14歳になるとお姫さまと結婚するだろう」と予言された それを知った王さまは腹を立てて、両親を騙して子供を預かると箱に入れて川に流してしまった 箱は粉ひきの若者が拾い、子供のいない粉屋の夫婦に引き取られた 男の子が14歳になった時、旅に出ていた王さまの知るところとなり、王さまは改めて殺害を計画する 王さまは男の子を殺す旨の手紙を書いて、男の子に持たせて城に向かわせた 男の子は城に向かう途中で道に迷い、盗賊の家に泊まることになる 盗賊は手紙を勝手に読んで哀れに思い、お姫さまと結婚する内容に書き換えてしまう 城に着いた男の子はお姫さまと結婚し、予言が叶った 旅から帰った王さまはそれを知って激怒し、「地獄から悪魔の頭の金の毛を三本取ってこなければならない。」という条件を出す
・(注2) 福の子は直ぐに旅に出る
・(注3) 「何でも知っている」と若者が答えたので、門番は「ワインが湧いていた広場の泉が水さえ出なくなった理由」を訊いた
・(注4) 「何でも知っている」と若者が答えたので、門番は「金のリンゴがなっていた広場の木が葉さえ出ない理由」を訊いた
・(注5、注6) この出来事は削除(イチジク⇒リンゴ)
・(注7) 悪魔は留守でお婆さん だけが居た
・(注8) お婆さんは協力すると言って福の子を蟻に変身させる と、スカートのひだに隠れさせた。福の子はさらに道中で先送りした3つの疑問を伝えた
・(注9) この出来事は削除
・(注10) お婆さんは蟻を人間に戻し 、3本の金の毛と疑問の答えを得た若者は悪魔の家を出て渡し守のところに戻る
・(注11) この出来事は削除
・(注12) 若者は2つ目の疑問を解決して、お礼に「金を積んだロバを2頭」を得る
・(注13) 若者は1つ目の疑問を解決して、お礼に「金を積んだロバを2頭」を得る
・(注14) 若者は王さまに「三本の金の毛」を渡し、王さまは「金を積んだロバを4頭」に満足してお姫さまとの結婚を祝福する
・(注15) 王さまは事の経緯を聞き出して自らも出かけていくが、渡し守と交替する羽目 になる
030. シラミとノミ Läuschen und Flöhchen
あらすじ
※会話の累積が面白さと思われる
・シラミとノミが所帯を持って一緒に暮らす
・卵の殻でビールを作っているところから悲しみの連鎖が始まる
・シラミが殻に落ちて火傷をする
・それを見てノミが泣く
・それを見て扉がきいきい言う
・それを見て小さなほうきが掃く
・それを見て小さな車が走りだす
・それを見て堆肥が燃えだす
・それを見て木さんが体を揺すって葉を落とす
・それを見て女の子が水差しを割る
・それを見て泉が流れ出す
・(注1) 流れ出した水に何もかも呑み込まれてしまう
収録:上30 しらみとのみ
特徴
・(注1) 流れ出した水に何もかも溺れて死んでしまう
031. 手なし娘 Das Mädchen ohne Hände
あらすじ
・貧しい粉ひきの男には水車と、その裏にある1本の大きなリンゴの木しか持ち物がなかった
・男が森へ薪を取りに行った時、見知らぬおじいさんに「水車小屋の裏にあるものを3年後にくれるなら金持ちにしてやる」と持ち掛けられる
・(注1) 男はリンゴの木のことと解釈して約束する
・家に帰ると「家中の箱がお金でギッシリ」とおかみさんが男に告げた
・男は経緯を話すが、おかみさんは「水車小屋の裏にあるもの」は掃除をしていた娘で、「おじいさんは悪魔」だと気付く
・約束の3年が過ぎた日、信心深く過ごしていた娘は身を清めて、自分のまわりにチョークで輪を描いた
・娘に近付けない悪魔は怒って、娘から水を取り上げるように命じてこの日は帰った
・翌日、娘が顔に手を当てて泣いていたので体が清められており、悪魔は娘に近付けなかった
・怒った悪魔は「娘の手を切り落とさないと父親を連れて行く」と命じてこの日は帰った
・怯えた男を察して娘は両手を切り落とさせた
・翌日、娘が手の無い腕を涙で濡らしていたため、やってきた悪魔は近付けずに全ての権利を失った
・男は「生涯大切にする」と娘に告げたが、ここには居られないと思った娘は切り落とされた両腕を背中に縛ってもらって旅に出た
・(注2) 歩き続けた娘は、夜になって王の庭に着くとリンゴの木から実を取って食べた
・(注3) 3日目には庭の番人に見つかって牢屋に入れられるが、王子の慈悲でニワトリ番として雇われる。その後、王子 に気に入られて結婚することとなり、そのあとまもなく王が亡くなったのでお妃となった
・(注4) 王が戦争 に出かけている間にお妃は子ども を産んだ
・お妃は手紙を書いて王に知らせようとするが、悪魔が手紙を差し替えて「鬼っ子(取り替えっ子)を産んだ」と伝えた
・王は悲しんだが「お妃と子どもを大切にするように」と返信した
・(注5) この手紙も悪魔によって差し替えられ「お妃と子どもを国から追い払うように」 と伝えられた
・(注6) お妃は子どもと両腕を背中に縛り付けてもらって旅に出た
・(注7) お妃は森でおじいさんに出会い、授乳を手伝ってもらった。おじいさんに「1本の太い木に切られた腕を3回絡ませなさい」と言われて、そのようにすると両腕が生えてきた。おじいさんはさらに住み家を与えた
・(注8) 城に帰った王は2人の不在を知ると、家来を1人だけ連れて 直ぐさま探す旅に出る
・(注9) 長い旅の末、ようやく2人がいる森の家までたどり着く
・(注10) 王は直ぐにお妃に気付き、皆で城へ戻る背後では家が消えてしまった
収録:上31 手なし娘
特徴
・(注1) 男はリンゴの木のことと解釈して証文 を書いて約束した
・(注2) 歩き続けた娘は、夜になって王の庭に着くと果実の木々が見えた。神様に祈ると天使が現れて、天使に導かれて庭に入り 洋ナシを食べた
・(注3) この様子は庭師に見られており、翌日には王さまに捕まるが、天使と一緒にいる信心深さを見初められて、王さまは「銀の手」を作ってお妃とした
・(注4) 王が旅 に出かけている間にお妃は男の子 を産んだ
・(注5) この手紙も悪魔によって差し替えられ「お妃と子どもを一緒に殺すように」 と伝えられた
・(注6) 王の母は雌鹿の舌と目玉を切り取らせて証拠を偽装し、お妃の背中に子どもを縛り付けて旅に出した
・(注7) お妃は深い森で跪いて神に祈ると、天使が現れて小さな家に導いた。中から白い服を着た娘(天使)が出てきて授乳を手伝い、以後7年間そこで過ごした。その間に神さまのめぐみでお妃の切り取られた両手も元に戻った
・(注8) 城に帰った王は2人の不在を知ると、1人だけ で直ぐさま探す旅に出る
・(注9) 7年の旅の末、ようやく2人がいる森の家までたどり着く
・(注10) 白い天使が出迎えて王に食事を出すが手を付けない。それを確認すると天使はお妃と子ども(Schmerzenreich)に会わせる。王は両腕が完全なことを問うが、お妃が銀の手を見せて解決する。3人は食事を取り、城へ戻るともう一度結婚式を挙げた
032. りこうなハンス Der gescheite Hans
Ⅰ
あらすじ
・登場人物はハンスと母親、そして婚約者のグレーテル
・ハンスがグレーテルの所へ行って何かをもらって帰ってくる過程が繰り返される
ハンスは手ぶらでグレーテルの所へ行き、グレーテルはハンスに針をあげる。ハンスは帰路で干し草を積んだ車に針を刺す(車の後をつけて帰る)。それを聞いた母親は「袖に刺す」と教える
(注1) 同様に、グレーテルはハンスにナイフをあげ、ハンスは袖に刺して帰路につく。それを聞いた母親は「ポケットに入れる」と教える
同様に、グレーテルはハンスに山羊の子をあげ、ハンスはポケットに入れて帰路につく(山羊は窒息死)。それを聞いた母親は「紐につなぐ」と教える
同様に、グレーテルはハンスにベーコンをあげ、ハンスは紐につないで帰路につく(道中で犬が食いちぎる)。それを聞いた母親は「頭に乗せる」と教える
同様に、グレーテルはハンスに仔牛をあげ、ハンスは頭に乗せて帰路につく(仔牛が頭を蹴る)。それを聞いた母親は「引いてきて、飼葉の棚の所に立たせる」と教える
同様に、グレーテルはハンスと一緒に行くと言い、ハンスはグレーテルを紐で引いて飼葉の棚の所に立たせて、草を投げておいた。それを聞いた母親は「優しい目を投げる」と教える
・ハンスは仔牛と羊の目玉を取ってグレーテルの顔に投げた。グレーテルは怒って帰り、破談になった
Ⅱ
あらすじ
・ゲスリンガー谷に金持ちの未亡人と一人息子が住んでいた
・息子は谷一番の馬鹿だったが、ザールブリュッケンに行く途中で立派な男の美しい娘に出会う
・息子は母親の力で娘を妻にすることを懇願する
・娘の両親は良い家の出であったが貧しかったので、この求婚は容易に事が運んだ
・娘はコルドバ革で手袋を作って息子に贈った
・息子は手袋をはめると、激しい雨でも外さず、沼地に落ちて泥だらけになったので、帰宅した時には手袋はただの肉切れになった
・母親は嘆いて「手袋をハンカチに包んでポケットに入れとけば良かったのに」と言った
・息子は娘に正直に話したので、娘は笑い、今度は青鷹をあげた
・息子は青鷹の首をひねってスカーフにくるみ、ふところに入れて帰宅した
・母親は怒って「そっと手に乗せて持ってこなくてはならないのに」と言った
・娘は息子が正真正銘の愚か者だと思い、今度はまぐわ(種まき用の道具で牛馬に引かせる鍬)をあげた
・息子はまぐわを手に乗せて帰宅した
・母親は怒って「まぐわは馬に結わえ付けて家まで引かせてこなくてはならないのに」と言った
・息子と縁を切りたくなった娘は大きなベーコンのかたまりを息子のポケットに入れた
・息子はベーコンを馬の尾に結わえ付けて、馬に乗って帰宅した
・ベーコンは道中で犬が食いちぎっていたので無くなっていた
・母親は破談を案じて娘の両親の所へ行く
・母親が不在となった自宅では、息子がワイン樽の栓を失くして地下室に流れ出し、卵を温めていたガチョウを殺してしまい、自らに蜂蜜を塗ってベッドの中の羽毛をまとい、ガチョウの卵を代わりに温める
・帰ってきた母親は「嫁(娘)が来たら、ありさつをして、心のこもった眼差しを投げる」と教える
・息子は家畜小屋の羊の目を全て取ってふところに押し込み、やって来た嫁の顔に投げつける
・嫁は手を切って帰宅し、息子はガチョウの雛を温めている
収録:上32 ものわかりのいいハンス(Ⅰ&Ⅱ)
特徴
・Ⅰのみ
・(注1) 同様に、グレーテルはハンスにナイフをあげ、ハンスは袖に刺して帰路につく。それを聞いた母親は「袋 に入れる」と教える
・Ⅱは削除
033. 3種類のことば Die drei Sprachen第2版以降で差し替え 初版は「上33 長靴をはいた牡猫」
あらすじ
ある粉ひきに、三人の息子と、粉ひき場と、一頭のろばと、一匹の牡猫がありました。粉をひくのは息子たちの仕事でした。ろばは穀物をもってきて、ひいた粉を運び出し、牡猫はねずみを 捕まえるのが仕事でした。粉ひきが死んだとき、三人の息子は残った財産を分けました。一番年上の息子は粉ひき場をもらいました。二番目の息子はろばを、三番目の息子は牡猫をもらいました。三番目の息子には、それ以外になにも残っていなかったのです。そこで三番目の息子はがっかりして、ひとりごとを言いました、「おれはよりによって一番の貧乏くじを引かされた。一番上のあにきは粉をひけるし、二番目のあにきは、ろばなら乗ることができる。おれは牡猫で、これからどうしろっていうんだ?猫の皮で毛皮の手袋をこさえたら、それっきりじゃないか」「まあ、聞いてください」、牡猫は三男の言ったことがすっかりわかって、話しはじめました、「わたしを殺して、毛皮で粗末な手袋をこしらえるにはおよびません。外に出かけていけるように、どうかわたしに長靴を一足こしらえて、人びとの目に触れるようにしてください。そうしてくだされば、きっとあなたのお役に立てるでしょう」。粉ひきの息子は、猫がこんなふうに言うのを聞いて、不思議に思いましたが、ちょうどそのとき、靴屋が通りかかったので、声をかけてうちへ来てもらい、長靴の寸法を取ってもらいました。靴ができ上がると、牡猫はその靴をはき、袋をもってきて、底を麦でいっぱいにし、上に紐をつけて袋の口をぎゅっと閉られるようにしました。そして袋を背中に背負うと、まるで人間みたいに二本足で歩いて戸口から出ていきました。
そのころ、ひとりの王さまがこの国をおさめていました。王さまは山うずらが大の好物でしたが、飢饉の最中だったので、一羽も手に入りませんでした。山うずらは森のどこにでもいるのでとても臆病で、狩人はどうしても近づくことができません。牡猫はこのことを知っていて、自分はもっとうまくやってやろう、と考えました。牡猫は森にやってくると、袋を開けて、麦をその中にひろげ、紐を草のあいだに隠れるようにして茂みのうしろへ引き込みました。牡猫はそこに隠れると、そのあたりをしのび足で歩きながら待ち伏せしました。まもなく山うずらがよってきて、麦を見つけると、一羽また一羽とぴょんぴょんはねて袋の中に入っていきました。袋の中に山うずらがたくさん入ると、牡猫は紐を引き、袋へかけ寄って、山うずらの首をひねりました。そして袋を背中にかつぐと、まっすぐに王さまの城へ向かいました。番兵がどなりました、「止まれ! どこへ行くんだ」――「王さまのところへ」と、牡猫はさらりと答えました。「おまえは頭がおかしいんじゃないか。牡猫が王さまのところへ行くだなんて」――「まあいいから通してやれよ」と、もうひとりの番兵が言いました、「王さまは、よく退屈しておられるじゃないか。ひょっとしたら、この牡猫のごろごろいう鳴き声をお喜びになられるかもしれない」。牡猫は王さまの前にやってくると、お辞儀をして言いました、「わたくしの主人、伯爵(このとき伯爵の名前として牡猫は、長々しく、もったいぶった名前を申し立てました)が、王さまによろしくお伝えするように、そしてちょうどわなで捕らえました山うずらをお届けするようにとの仰せでした」。王さまは丸まる太った、りっぱな山うずらに驚き、嬉しくてじっとしていられないほどでした。そこで牡猫に、宝物庫から持てるだけの金を袋につめていくがいい、と命じました。「それをおまえの主人に持っていって、進物の品に対して幾重にも礼を申し伝えてくれ」
あわれな粉ひきの息子は家の窓辺で、頬杖をついてすわっていました。そして、牡猫に有り金をはたいて長靴を作ってやったが、あいつはなにかたいしたものでも持ってこられるのだろうか、と考えていました。そこへ猫が入ってきて、背中から袋をほうりだすと、紐をほどいて、金を粉ひきの目の前にざあっとぶちまけました。「さあ、すごいものが手に入りましたよ。王さまからあなたによろしく申し上げ、ぜひともお礼を伝えるように仰せつかってまいりました」。粉ひきは、いったいどんないきさつでこんなことになったのかわからないまま、金持ちになったことを喜びました。ところが牡猫は靴をぬぎながらなにもかも話すと、言いました、「さて金はじゅうぶん手に入りましたが、だからといってこのままではいけません。明日わたしはまた長靴をはいて出かけます。あなたをもっと金持ちにいたしましょう。わたしは王さまに、あなたは伯爵だ、とお話ししてあります」。次の日、牡猫は、言ったとおりきちんと長靴をはいて、猟に出かけました。そして王さまにたくさんの獲物をさしあげました。毎日毎日同じようにしました。そして猫は毎日、金を家へ持って帰りました。そして牡猫は、おそばに仕える者のように王さまにとても気に入られて、自由に城を出入りすることも、城の中を歩きまわることも許されました。あるとき、牡猫が王さまの厨房のかまどの横で暖まっていると、御者がやってきてぶつぶつ文句を言いました、「王さまなんて、王女さまともども、首吊りにでもなっちまえばいい。飲み屋に行って、ちょこっと飲んでトランプでもしたいと思っていたのに、湖までお散歩のお供をしなくちゃいけねえとは」。牡猫はこれを聞くと、こっそり家へ帰り、主人に話しました、「伯爵になって、金持ちになりたいのなら、いっしょに湖に行って、水浴びしてください」。粉ひきはどう答えていいかわかりませんでしたが、牡猫の言うとおり、いっしょに出かけて、まっぱだかになって水にとびこみました。ところが牡猫は服を集め、どこかへ持ちさると、隠してしまいました。どうにかやり終えたところに、王さまが馬に乗って通りかかりました。牡猫はすぐにあわれな声で嘆き、うったえ始めました、「ああ、世にもなさけ深い王さま! 我が主人がこの湖で水浴びをしていましたところ、盗人がやってきて岸に脱ぎ捨ててあった服をかっさらって行ってしまいました。そこで伯爵さまはこうして水に入ったまま外に出ることもなりません。もしこれ以上、水の中にいたら、風邪を引いて死んでしまうでしょう」。王さまはこれを聞くと、馬を止めさせ、家来のひとりを急いで城へ馬で駆けていかせ、王さまの服を取ってこさせました。伯爵は豪華な服を身にまといました。王さまは伯爵から山うずらをもらっていると思っていて、どのみち伯爵に好意をよせていたので、伯爵はどうしても王さまの馬車に乗らないわけにはいきませんでした。王女もいやな顔をしませんでした。というのも、伯爵が若く美しかったので、たいそう王女の気に入ったのです。
しかし牡猫は先まわりして、広い牧草地へ来ていました。そこでは百人をこえる人たちが干し草を作っていました。「みなさん、この牧草地はだれのものだい?」牡猫がたずねました。「魔法使いさまのものです」「いいかい、まもなく王さまがここをお通りになる。そこで王さまが、この牧草地はだれのものか、おたずねになるから、こうお答えしろ。伯爵さまのものですって。もし、そう答えなかったら、みんななぐり殺されることになるぞ」。それから牡猫は先へ歩いていきました。そして麦畑へやってきました。その麦畑はとても大きく、すべてを見わたすことはできませんでした。そこには二百人以上の人がいて、麦を刈っていました。「みなさん、この麦はだれのものだい?」「魔法使いさまのものです」「いいかい、まもなく王さまがここをお通りになる。そこで王さまが、この麦はだれのものか、おたずねになるから、こうお答えしろ。伯爵さまのものですって。もし、そう答えなかったら、みんななぐり殺されることになるぞ」。とうとう牡猫はうっそうとした森までやってきました。そこには三百人以上の人がいて、樫の大木を伐り倒して、薪を作っていました。「みなさん、この森はだれのものだい?」「魔法使いさまのものです」「いいかい、まもなく王さまがここをお通りになる。そこで王さまが、この森はだれのものか、おたずねになるから、こうお答えしろ。伯爵さまのものですって。もし、そう答えなかったら、みんななぐり殺されることになるぞ」。牡猫は先へ歩いていきました。みんなは牡猫のあとを見送りましたが、牡猫が奇妙なかっこうで、人間みたいに長靴をはいて歩いているのを見て、おそろしいと思いました。まもなく牡猫は魔法使いの屋敷へやってくると、ずかずかあがりこんで魔法使いの前へすすみ出ました。魔法使いは牡猫をばかにしたようににらみつけると、なんの用事だ、と聞きました。牡猫はお辞儀をして答えました、「聞きましたところ、あなた様はご自分の意のままにどんな動物にでも姿を変えることがおできになるそうで。犬とか狐とか狼というのならまあ信じることもできますが、話が象ということになれば、わたくしにはこれはいくらなんでも無理ではないかと思われます。そこで自分の目で確かめたくてこうしてやってきたしだいです」。魔法使いが得意気に答えました、「そんなこと、おれにはわけないことだ」。そしてあっというまに象に姿を変えました。「けっこう、けっこう。では、ライオンはいかかですか?」「そんなことおちゃのこさいさい」。魔法使いはそう言うと、ライオンの姿になって牡猫の前に立っていました。牡猫は驚いたふりをして叫びました、「いやあ、信じられません。こんなこと話に聞いたこともありません。夢にも思いませんでした。ところで、ねずみのように小さな動物に姿を変えられたりしましたら、それこそなににもましてすばらしいことですね。あなたさまはほかのどんな魔法使いよりも力がおありになることはわかっていますが、いくらあなたさまでも、これはご無理でしょうね」。魔法使いは牡猫のお世辞に、嬉しそうに言いました、「おい、牡猫くん。そんなことだってわけないことさ」。そしてねずみに姿を変えて部屋の中を走りまわりました。牡猫はねずみのあとを追いかけて、さっと捕まえると、パクリと呑み込んでしまいました。
ところで王さまは、伯爵と王女といっしょに馬車で散策をつづけていました。そして広い牧草地へやってきました。「この干し草の持ち主はだれかな?」王さまが聞きました。「伯爵さまです」、みんなは牡猫に命じられたように大声で答えました。「伯爵どの、りっぱな土地をお持ちですな」、王さまが言いました。それからみんなは麦畑へやってきました。「お前たち、この麦畑の持ち主はだれかな?」「伯爵さまです」「なんと! 伯爵どの、なんて広くて、りっぱな領地をお持ちだ!」そのあと森へやってきました。「お前たち、この森の持ち主はだれかな?」「伯爵さまです」。王はこれを聞き、ますます驚いて言いました、「あなたはまちがいなく金持ちでいらっしゃる。伯爵どの、わたしの国にこんなすばらしい森があるなんて信じられないことです」。とうとうみんなが屋敷までやってくると、階段の上に牡猫が立っていました。馬車が止まると、牡猫がかけ下りてきて馬車の戸を開けて言いました、「王さま、わが主人伯爵の屋敷へご到着あそばされました。このたびの栄誉、伯爵、一生光栄に存じたてまつりましょう」。王さまは馬車から下りると、豪勢な屋敷を見てびっくりしました。屋敷は王さまの城よりも大きく、りっぱなほどでした。伯爵は、王女といっしょに階段を上ると、金と宝石できらめく大広間へ案内しました。
そこで王女は伯爵と結婚の約束をしました。そして王さまが死ぬと、伯爵は王さまになり、長靴をはいた牡猫は総理大臣になりました。
あらすじ
・スイスに年老いた伯爵と息子が住んでいた
・息子はまぬけで何も習うことができなかった
・父親は息子の教育を断念し、名高い師匠に任せると伝えた
・若者は見知らぬ町の師匠の元で1年間留まった
・その期間が過ぎて故郷へ戻った息子は「犬が吠えるときに何と言っているかを学んで参りました」と父親に答えた
・父親は「なんと情けない」と言うと、息子を他の町の別の師匠に預けた
・若者はその師匠の元に1年間留まり、父親に「学んだのは鳥たちが何を話しているかということです」と答えた
・父親は「大切な時間を無駄にして何も習わなかったとは」とカンカンに怒って、「今度また何も習わなかったら、もうおまえの父ではないぞ」と言って3人目の師匠のところに送った「
・息子は3人目の師匠の元で1年留まり、戻って来ると「この1年学んだことはカエルたちがゲロゲロ鳴いて何を言っているかということです」と答えた
・父親は怒り心頭に達して、「こいつはもうわしの息子ではない。森へ連れて行って命を奪うように」と家来たちに命じた
・家来たちは殺すのは可哀想になり、息子を逃がしてノロジカの目玉と舌を切りとって年老いた主人に証拠として持ち帰った
・行く当ても無い若者はあるお城にやって来て一晩の宿を乞うた
・「下の古い塔に泊まる気があれば」と城主は了承した
・ただし、「塔には山犬がうようよいて、そいつらは時間になる度に1人の人間を食べてしまうので命がけだよ」と忠告した
・若者は少しも恐れず、犬たちに投げ与える与える餌を貰って塔に行った
・犬たちは若者に向かって吠えるどころか、尻尾を振って餌を貰い、何の害も加えなかった
・翌朝、元気で現れた若者に皆が驚いた
・若者は「犬たちは魔法に掛けられて下の塔にある莫大な宝を守らねばならず、その宝が取り出されるまでは休めないのです」と城主に伝えた
・「それを首尾よくやり遂げたら、養子に貰い受ける」と城主は言った
・若者は「どうすべきか」を犬から聞いていたので完全にやり遂げ、黄金の詰まった長もちを運び出した
・山犬たちは姿を消し、この国は苦しみから解放された
・しばらくして若者はローマへ行こうと思い立った
・途中、沼地のそばでカエルたちの話を聞いて、半信半疑で考え込んだ
・若者がローマに到着したちょうどその時に教皇が亡くなった
・枢機卿(枢機卿:カトリック教会において教皇につぐ地位。法王を選ぶ権利をもち、法王を補佐する)は「神さまの奇跡の印が現れる人が教皇に選ばれるべきだ」ということで一致した。
・若者が教会へ入って行くと、白いハトが2羽飛んで来てこの若い伯爵の両肩に停まって動かなかった
・枢機卿たちは「神の印」を認め(白いハトが両肩にとまるのは救世主が現れたことを表す)、この若い伯爵に「教皇になる気があるか」と尋ねた
・若い伯爵は決心が付かなかったが、ハトたちがそうするようにと説得したので「はい」と答えた
・伯爵は聖なる油を塗られて聖別された(聖別:キリスト教において、神聖なものになるため、きよめて世俗から区別すること。聖職の地位に任命すること。)
・カエルたちが言っていた「伯爵は聖なる教皇さまに御成りになる」という言葉が本当になった
・伯爵はミサを唱えなければならなかったが、その言葉を知らなかった
・2羽のハトがずっと伯爵の肩に停まって何もかも耳打ちしてくれた
034. かしこいエルゼ Die kluge Else
類話:KHM059
第2版以降で差し替え 初版の「上34 ハンゼンのトリネ」は注釈に記載
原文(1812年初版)
Hansens Trine war so dumm, daß sie nicht wußte, was sie reden sollte. Eines Tages schickte sie ihre Mutter in den Keller, Bier zu holen. Als sie aber hinabkam, setzte sie sich vor das Faß und dachte nach, was sie reden sollte, wenn sie wieder heraufkäme. Sie saß lange Zeit und dachte und dachte, und vergaß darüber das Bier.
Da kam die Mutter herunter und fragte:
»Trine, was machst du denn?«
Trine antwortete:
»Ich denke nach, was ich reden soll, wenn ich wieder hinaufkomme.«
Da sprach die Mutter:
»Du bist recht dumm, geh nur wieder hinauf.«
Trine ging hinauf und hatte das Bier vergessen.
日本語訳(ハンスのトリーネ)
ハンゼンのトリーネは、何をしゃべればよいのか分からないほど愚かだった。
ある日、母親は彼女を地下室にやり、ビールを取ってくるよう言いつけた。
ところが地下に降りると、彼女は樽の前に座り込み、戻ったときに何を話せばよいかを考え始めた。
彼女は長いあいだ、考えて、考えて、そのあいだにビールのことをすっかり忘れてしまった。
そこへ母親が降りてきて言った。
「トリーネ、何をしているの?」
トリーネは答えた。
「戻ったときに、何をしゃべればいいか考えているの。」
すると母親は言った。
「本当にお前は愚かだね。もう上に行きなさい。」
トリーネは上へ行ったが、ビールのことは忘れたままだった。
※名前の形式「Hansens Trine」は所有格 -s をもつ民間口語的表現で「ハンスのトリーネ」
あらすじ
・1人の男に“かしこいエルゼ”と呼ばれている娘がいた
・娘が年頃になったとき両親は結婚させようと話していた
・遠方からハンスと言う男がやってきて、エルゼを嫁に欲しいと言った
・ただし、ハンスは「かしこいエルゼが本当に聡明であるなら」という条件を出した
・「あの子は利口ですよ」と父親が言い、母親は「あの子は小道を風が吹き抜けるのを見たり、ハエが咳をする音を聞いたりしますよ」と言った
・「そうですか。利口でなかったら嫁に貰いませんよ」とハンスは言った
・皆で一緒に食事を終えると、母親はエルゼにビールを取って来るように言った
・かしこいエルゼは壁の棚からビールジョッキを取ると地下室へ行き、途中、退屈しないようにと ジョッキの蓋でパタンパタンと音を立てた
・エルゼはビア樽のコックを捻ってビールを注ぐ間、目を無駄にしないように あちこちを見まわしていると真上にツルハシが壁に打ち込んだままになっているのを見つけた
・かしこいエルゼは泣き出し、「ハンスと所帯を持てば子どもができ、その子が大きくなるとビールを入れに地下室へ行かせるわ。するとツルハシが頭に落ちて打ち殺してしまうわ」と言った
・かしこいエルゼが戻って来ないので、母親は「地下室へ降りてエルゼを見てきて」と女中に言った
・エルゼが樽の前で泣き叫んでいるのを見つけで、「どうして泣いているの」と女中が尋ねた
・「これが泣かずにいられる? ハンスと所帯を~打ち殺してしまうわ」とエルゼは答えた
・女中は「エルゼはなんと賢いのでしょう!」と言って一緒に泣き出した
・女中が帰って来ないので、父親は「地下室へ行ってエルゼと女中を見てきて」と下男に言った
・かしこいエルゼと女中が一緒に泣いていたので、「どうして泣いているの」と下男が尋ねた
・「これが泣かずにいられる? ハンスと所帯を~打ち殺してしまうわ」とエルゼは言った
・下男は「エルゼはなんと賢いのだろう!」と言って大きな声で泣き出した
・下男が帰って来ないので、父親は「地下室へ行ってエルゼを見てきて」と母親に言った
・母親が降りていくと3人が悲しんでいるのを見つけ、その理由を尋ねた
・「ハンスと所帯を~打ち殺してしまうわ」とエルゼは母親に話した
・母親も「エルゼはなんて賢い子だろう!」と言って一緒に泣いた
・母親が戻って来ないので、「わしが地下室へ行ってエルゼを見てこなくちゃ」と父親は言った
・地下室へ降りていくと皆一緒に泣いていたので、父親がその理由を聞いた
・「ハンスと所帯を~打ち殺してしまうわ」とエルゼは父親に話した
・父親は「なんて賢いエルゼだろう!」と言って一緒に泣いた
・誰も戻って来ないので、花婿は「皆は下で自分を待っているんだろう。自分もそこへ行って見てこなくちゃ」と考えた
・花婿が降りていくと5人が大声で悲しんでいたので、「どんな災難が起きたのですか」と尋ねた
・「私達が所帯を~打ち殺してしまうわ」とエルゼはハンスに言った
・「お前は賢いエルゼだ。お前を貰うよ」とハンスは言うと、エルゼの手を取って上へ連れて行って結婚式を挙げた
・暫くして、ハンスは「私が働いている間に、畑に行ってパンを焼くためのライ麦を刈ってきておくれ」とエルゼに頼んだ
・エルゼはおいしい粥を作り、それを持って畑へ行った
・エルゼは畑にやってくると「刈るのを先にしようか、それとも食べるのを先にしようか。先に食べちゃおう」と独り言を言った
・エルゼは鍋一杯の粥をぺろりと食べてお腹一杯になった
・エルゼは「刈るのを先にしようか、それとも寝ねるのを先にしようか。まず寝よう」と言った
・エルゼはライ麦の間に横になって寝こんでしまった
・ハンスは家に帰っていたがエルゼは帰って来そうになかった
・ハンスは「エルゼはなんと素晴らしいのだろう。仕事に精を出して家に帰らず食事すらしない」と言った
・しかし日が暮れてもエルゼは帰って来なかった
・ハンスがエルゼの様子を見に行ってみると、エルゼはライ麦をひとつも刈らずに眠り続けていた
・ハンスは家から小さな鈴が付いた鳥の捕獲網を取ってきてエルゼに被せた
・ハンスは家に帰って玄関のカギを掛けると、椅子に座って仕事をした
・辺りが真っ暗になってかしこいエルゼは目を覚まし、起きあがると体の周りがガサガサと音を立て、歩くたびに鈴がチリンチリンと鳴った
・驚いたエルゼは「これ、私なの、それとも私ではないの」と言って、しかし、何と答えたらいいかわからず茫然と突っ立ったままでいた
・エルゼは「家に帰って聞いてみよう」と考えて、玄関が閉まっていたので、窓をノックした
・「ハンス、家にはエルゼがいる?」とエルゼは尋ねた
・「彼女は中にいるよ」とハンスは答えた
・エルゼは「大変だ、じゃあこれは私ではないのだ」と言って他所の戸口へ行った
・人々は鈴の音を聞くと開けようとはしなかったので(*注)、エルゼはどこにも泊まることができなかった
・こうして、エルゼは村から出ていってしまい、二度とエルゼを見た人はいなかった
*注:中世の夜警は、火事やどろぼう、敵の軍勢などから市民を守るほかに、鈴やホルンなどをもって、戸閉まりをうながしたり時間を知らせる役目を果たしていた。エルゼの鈴がその夜警の音だと思って人々は戸を開けなかった。
035. 天国の仕立て屋 Der Schneider im Himmel第2版以降で差し替え 初版は「上35 スズメと四羽の子どもたち(KHM157 )」
あらすじ
・神さまがある晴れた日に天国の庭を散歩しようと思って使徒と聖者たち皆を連れていった
・天国にただ1人残った聖ペテロに、神さまは「自分がいない間はだれも天国に入れないように」と命じていた
・ペテロは天国の門に立って門番をしていた
・門をノックする者がいたので、ペテロは「誰か、用事は何か」と尋ねた
・「貧乏で正直な仕立て屋です」とか細い声で、「どうぞ、入れてください」と返ってきた
・「正直だと? お前は人々から端切れを盗んだくせに。天国には入れないぞ。神さまが何人たりとも入れないようにとおっしゃったんだ」とペテロは言った
・「ひとりでに仕立て台から落ちた僅かな端切れなんて盗みじゃございません」と仕立て屋はお慈悲を求めた
・さらに「私は足が悪くて足にまめができたので戻るなんてできません。嫌な仕事を何でもやりますよ。子どもたちの世話や服も繕います」と言った
・聖ペテロは可哀想になり、この足の不自由な仕立て屋の痩せ細った体が入れるほどの広さに天国の門を開けてやった
・仕立て屋は扉の後ろの片隅で静かにじっとしていた
・聖ペテロが扉から出て行った時、仕立て屋は好奇心から天国の隅から隅まで見て回った
・仕立て屋は綺麗で豪華な椅子が並ぶ中央に宝石が散りばめられた純金の肘掛け椅子を見つけた
・この椅子は神さまが座る肘掛け椅子で、そこから下界で起きることを何もかも見ることができた
・仕立て屋は我慢できなくなってその椅子に腰を下ろした
・仕立て屋は下界で「1人の醜い老婆がベール2枚を盗む」のが目に入った
・仕立て屋は腹を立てて金の足台をその年よりの泥棒女に投げ付けた
・足台を下界から拾い上げれなかったので、バレないように扉の後ろの元の場所へ座って素知らぬ顔をしていた
・主なる神さまが天国のお供と一緒に戻ってきた
・仕立て屋がいることに気付かないまま神さまが肘掛け椅子に座った
・足台が無くなっている事を聖ペテロにお尋ねになったが、ペテロは知らなかった
・そこで神さまは「誰かを中に入れたか」とお尋ねになった
・「誰も入れません。ただ足の悪い仕立て屋は扉の後ろにずっと座っております」とペテロは返事をした
・神さまは仕立て屋に「足台を持ち去ったか、それをどこへやったか」とお尋ねになった
・仕立て屋は「あんまり腹が立ったものですから、そいつを下界の婆さんに投げてやったんです。その婆さんが洗濯の時にベールを2枚くすねるのを見たんですよ」と喜んで返事をした
・「この、悪党め」と神さまは言った
・「お前のように私が裁いていたら、もう椅子やベンチ、肘掛け椅子、いや、火かき棒もないはずだ、何もかも全部罪人たちへ投げてしまっていることだろう」と言った
・さらに「お前はもう天国に留まることができないどころか天国の門から出ていかなくてはならん。ここでは罰せられるのは主である私だけなのだぞ」と言った
・ペテロは仕立て屋をまた天国から外へ連れだ出さねばならなかった
・仕立て屋は擦り減った靴を履き、両足にまめを作っていたので杖を手に取った
・仕立て屋は信心深い兵隊たちが楽しくやっている天国と地獄の間にある待合の村へ向かって歩いて行った
036. テーブルよ、食事のしたくを、金を吐きだすロバ、こん棒よ、袋から出ろ Tischchen deck dich, Goldesel und Knüppel aus dem Sack
Ⅰ
特徴
・靴屋と3人の息子と山羊 の話
•嘘をつく山羊に騙された靴屋は息子たちを家から追い出す
・長男は指物師に弟子入り
・長男が見習い期間を終えて修行に出る時に「おぜんよごはんのしたく」を親方からプレゼントされる
・長男が帰路に向かう途中で泊まった宿屋の大勢の客の前で 「おぜんよごはんのしたく」を披露する
・宿屋の主人に「おぜんよごはんのしたく」をすり替えられてしまう
・長男と父親は親戚を集めて 「おぜんよごはんのしたく」を披露しようとするが恥をかいてしまう
・次男は粉ひき職人に弟子入り
・次男が見習い期間を終えると親方から「ブリックレーブリット(ロバの名)」をプレゼントされる
・次男が帰路に向かう途中で長男と同じ宿屋に泊まり、支払いに使う金貨をロバが吐き出す光景を宿の主人に見られてしまう
・宿屋の主人に「ブリックレーブリット」をすり替えられてしまう
・長男と父親は親戚を集めて 「ブリックレーブリット」を披露しようとするが恥をかいてしまう
・三男はろくろ職人に弟子入り
・三男が見習い期間を終えて修行に出る時に「棍棒の入った袋」を親方からプレゼントされる
・三男は兄2人と同じ宿屋で仕返しをする
・三男は「おぜんよごはんのしたく」と「ブリックレーブリット」を取り戻し、父親と3人の息子は幸せに暮らす
・山羊の後日談
Ⅱ
特徴
・仕立て屋と3人の息子の話
•仕立て屋はパンケーキと1ヘラー(通貨単位)を持たせて息子たちを世に送り出す
・長男は金持ちの小人の家畜番をする
・長い期間を経て、長男はある時に家畜番に失敗するが「おぜんよごはんのしたく」を小人からプレゼントされる
・長男が帰路に向かう途中で泊まった宿屋でこっそりと 「おぜんよごはんのしたく」を使うのを宿屋の主人が覗き見する
・宿屋の主人に「おぜんよごはんのしたく」をすり替えられてしまう
・長男は父親に 「おぜんよごはんのしたく」を披露しようとするが恥をかいてしまう
・次男は長男と同じ主人 に仕える
・長男と同じように家畜番に失敗するが「金を出すロバ」をプレゼントされる
・長男と同じ宿屋の主人にすり替えられ、ロバを父親に披露しようとするも失敗する
・三男も長男と同じ主人 に仕える
・三男は家畜番に失敗することなく任期を終え、「棍棒の入った袋」を親方からプレゼントされる
・三男は兄2人と同じ宿屋で仕返しをする
・三男は「おぜんよごはんのしたく」と「ブリックレーブリット」を取り戻し、父親と3人の息子は裕福に、とても幸せに暮らす
収録:上36 おぜんよごはんのしたくと金貨を出すろばと袋の棍棒の話(Ⅰ&Ⅱ)
特徴(2つの話を合成)
・仕立て屋と3人の息子とヤギの話
•嘘をつく山羊に騙された仕立て屋は息子たちを家から追い出す
・長男は家具職人に弟子入り
・長男が見習い期間を終えて修行に出る時に「おぜんよごはんのしたく」を親方からプレゼントされる
・長男が帰路に向かう途中で泊まった宿屋の大勢の客の前で 「おぜんよごはんのしたく」を披露する
・宿屋の主人に「おぜんよごはんのしたく」をすり替えられてしまう
・長男と父親は親戚を集めて 「おぜんよごはんのしたく」を披露しようとするが恥をかいてしまう
・次男は「上36 I」と同じ
・三男はろくろ職人に弟子入り
・三男が見習い期間を終えて修行に出る時に「棍棒の入った袋」を親方からプレゼントされる
・三男は兄2人と同じ宿屋で仕返しをする
・三男は「おぜんよごはんのしたく」と「ブリックレーブリット」を取り戻す
・三男は親戚を集めて「おぜんよごはんのしたく」と「ブリックレーブリット」を披露して名誉挽回
・山羊の後日談は「上36 I」と同じ
037. 親指小僧 Daumesdick暗黙の整合性 第2版以降で差し替え 類話:KHM045 暗黙の整合性
民話学的にはKHM037「Daumesdick(親指小僧)」とKHM045「Daumerlings Wanderschaft(親指小僧の遍歴)」は「同一主人公による連作(Zyklus)」と呼ぶのが最も正確です。とは言え、KHM037を入れ替えてKHM045より前に配したのは「意図的な続編的位置づけ」とも解釈できます。
関係性の整理
主人公の同一性
•Daumesdick(親指小僧)= Daumerling
•45番では明確に、37番で生まれた小人が成長(といっても体は小さいまま)し、旅に出た後の話として描かれます。
•名前の使い分け(Daumesdick / Daumerling)は指小僧系類話の揺れで、別人ではありません。
物語内容の連続性
•KHM 037
→ 誕生譚+家族内でのエピソード(盗賊・牛・狼など)
•KHM 045
→ 家を出た後の遍歴譚(職人・料理人・盗賊再登場・狐など)
👉「家の中・近隣での冒険」から「外界を巡る遍歴」という、民話でよくある二部構成になっています。
グリム童話全体の 中での特殊性
•明確な“続編関係”を持つ話は、KHM中でもかなり珍しい
•他に近い例としては《Hans im Glück》周辺のハンス像や《Der starke Hans》系がありますが、番号を分けて「続き」を提示している点でDaumesdick → Daumerlings Wanderschaft は最も分かりやすい例です。
初版の「上37 ナプキン、背嚢、大砲の帽子、角笛」は類話「背嚢と帽子と角笛」(KHM054 )に統一
あらすじ
・貧乏な農夫とおかみさんには子どもが無くて静かで、他の家が大声で楽しそうにしているのを嘆いていた
・おかみさんは「たった1人の子でいいの。例えどんなに小さくても、ほんの親指くらいの大きさでも充分満足だわ」とため息をついて言った
・おかみさんの体が変調をきたし、7か月たって1人の子どもを産んだ
・その子は五体満足だったが親指ほどの大きさしかなかった
・2人は望んだ通りの子どもに満足して「親指小僧」と名付けた
・2人は栄養のある物をたっぷりと与えたが、いつまでも生まれた時の大きさだった
・それでも目は利発そうに輝き、賢くて、手際よくやる子で、やることは何もかも上手くいった
・農夫は森へ木を切りに行く準備をし、親指小僧が荷馬車で迎えに行くことになった
・親指小僧は馬の耳の中に座って指示を出す目論見だった
・時間が来ると、母親が車に馬を繋いでぎ親指小僧を馬の耳の中へ座らせた
・おちびさんが馬に声を掛けると、馬は親方の時と同じように歩いて荷馬車は森へ向かった
・荷馬車が「左へ、左へ」という呼びかけで角を曲がる時に、2人の見知らぬ男と鉢合わせた
・「荷馬車がひとりでに走っているが、馬に呼びかけている御者の姿が見えない」と1人の男が言った
・「付いていって、どこに止まるか見てやろう」ともう一人が言った
・荷馬車は森の奥深くへ入り、木が切り倒されている場所へ着いた
・父親が親指小僧を馬の耳から取り出すの見て、2人の見知らぬ男たちは驚いた
・1人の男は相棒に「このちびを大きな町で金を取って見世物にしたら一儲けできるぜ。こいつを買おうよ」と言った
・2人は農夫に「大事に致しますからそのおちびさんを売ってください」と言ったが、父親は「世界中のお金を全部積まれても売りませんよ」と断った
・その話を聞いていた親指小僧は「僕を売っておくれよ。きっと直ぐに戻ってくるよ」と父親に囁いた
・父親はたくさんのお金を貰って親指小僧を2人の男に渡した
・2人の男たちは親指小僧を帽子の鍔の上に乗せて日が暮れるまで歩いた
・おちびさんは「ちょっと下ろしたくれよ。用を足すんだよ」と言った
・男はおちびさんを道端の畑の上に置いてやると、おちびさんは前から探しておいたネズミの穴の中へ潜り込んだ
・「さよなら」と親指小僧は2人に向かって大声で言うと大笑いした
・2人は腹を立て、財布はからっぽのままで家へ帰らねばならなかった
・親指小僧はカタツムリの抜け殻を見つけると「ここで今晩は無事に過ごせるぞ」と言って中に座った
・しばらくして(別の)2人の男たちが「金持ちの牧師から金と銀を巻き上げるにはどうしたらいいかな?」と言っているのを聞いた
・「僕が教えてやるよ」と親指小僧が口を出した
・「地面を探しなよ」と親指小僧が言い、泥棒たちは見つけて持ち上げた
・小僧は「窓に嵌っている鉄の棒の間から牧師の部屋へ潜り込んで、あんた達が欲しいものを取って来てやるよ」と答えた
・3人が牧師館にやってくると、親指小僧は部屋の中へ潜り込んで大声で「ここにある物が全部欲しいのかい?」と叫んだ
・泥棒達は驚いて「小さな声で喋れよ」と言ったが、親指小僧はまた大声で繰り返した
・隣の部屋で寝ていた料理女が聞いてベッドの上に起き上がって耳を澄ませた
・泥棒達はびっくりして少し離れた所へ逃げ戻った
・これを繰り返していると、聞き耳を立てていた女中がはっきりと聞いてドアから入ってきた
・泥棒達は慌てて走って逃げ、親指小僧は外の納屋の中へ入っていた
・親指小僧は干し草の山の中を寝床にして眠った
・夜が明け始めると女中が家畜に干し草のえさをやり、その中で寝ていた親指小僧は気付かないまま牛の胃の中に入ってしまった
・ほし草が次々と入って来るので、狭くなった小僧は「新しい餌はもう結構だよ」と叫んだ
・牛の乳搾りをしていた女中は、声は聞こえるものの姿は見えず、主人の所へ走っていって「牧師さま、牛が口を利きました」と言った
・牧師は自分で確かめようと牛小屋へ足を踏み入れた時、親指小僧がまたも「新しい餌はもう結構だよ」と大声で叫んだ
・牧師は悪霊が牛の中へ入ったのだと考えて殺すように命じた
・親指小僧が入っていた胃袋は捨てられたがお腹を空かしたオオカミが走ってきて飲み込んでしまった
・親指小僧はオオカミの太鼓腹の中から「素晴らしい餌のあるところを知っているぜ」と話しを持ち掛けた
・オオカミが話に乗ってきたので、「下水溝を這っていかないとだめだよ」と言いつつ自分の父親の家を細かく教えた
・オオカミは家の中に忍び込んで食料貯蔵室で心ゆくまで食べた
・満腹になったオオカミはずらかろうと思ったが、お腹が大きくなり過ぎて、同じ道を通れなかった
・親指小僧は大声を出すと父親と母親が目を覚ました
・2人はオオカミがいるのを見ると、亭主がオノをオオカミの頭めがけて一発打ち下ろした
・オオカミは倒れて死んでしまい、2人はナイフとハサミでお腹を切り開けて親指小僧を引き出した
・「僕は世の中を随分周ってきたよ」と親指小僧は言った
・「どこに行っていたんだい?」と父親は返した
・「ネズミの穴やウシのお腹、オオカミの太鼓腹に居たんだよ」と親指小僧は答えた
・「もうお前を売るようなことはしないよ」と両親は言い、親指小僧にキスをした
・2人は親指小僧に食べ物や飲み物を与え、新しい服を作らせた。何故って、旅の途中でぼろぼろになっていたから
幼児向け紙芝居
お使いのブラウザは動画タグに対応していません。
参考:一寸法師
お使いのブラウザは動画タグに対応していません。
038. 奥さまギツネの婚礼 Die Hochzeit der Frau Füchsin
Ⅰ
あらすじ
・尻尾が9本ある古キツネがいた
・古キツネは奥さんの貞節を確かめようと死んだふりをした
・奥さんキツネは悲しんで部屋に閉じこもってしまった
・若いキツネがやってきて奥さんに求婚するが、尻尾が1本だったので断られる
・次に尻尾が2本、3本から8本まで順番にやってくるが、皆が断られる
・最後に尻尾が9本のキツネがやってくると、結婚式の準備が進められる
・いざ結婚式という時に古キツネが現れて、奥さんも含めて皆を家から追い出してしまう
Ⅱ
あらすじ
・古キツネが亡くなった
・奥さんキツネは悲しんで部屋に閉じこもってしまった
・オオカミがやってきて奥さんに求婚するが、赤いズボンではなく、とがった口をしてなかったので断られる
・次に犬、鹿、ウサギ、熊、ライオン、その他の森の動物が求婚するが、何かひとつ欠けていて皆が断られる
・最後に若いキツネがやってくると、赤いズボンで、とがった口をしていた
・奥さんキツネは亡くなった古キツネを窓から捨てて、悪口を言うと、若いキツネと結婚式をあげて踊り続けた
収録:上38 奥さまきつね(Ⅰ&Ⅱ)
Ⅰ
特徴
・翻訳の差異以外は同じ
Ⅱ
特徴
・翻訳の差異以外は同じ
039. 家にすむこびとたち Die Wichtelmänner
Ⅰ(小人に仕事をやってもらった靴屋の話)
あらすじ
・貧しい靴屋の手元には靴1足分の革しか残ってなかった
・(注1) 翌日に縫おうと思って裁断だけして寝床に入った
・(注2) 翌朝、仕事をしようとすると靴がきれいに出来上がっていた
・いつもより高く売れたので、靴2足分の革を買うことができた
・翌日に縫おうと思って靴2足分の裁断をして寝床に入った
・翌朝、靴がきれいに出来上がっていて高く売れたので、靴4足分の革を買うことができた
・この生活が繰り返されて靴屋は金持ちになった
・クリスマスの少し前の晩、いつも通り革を裁断して寝ようとしていたが、おかみさんと一緒に寝ずの見張りをして誰が縫っているのか確かめようとした
・真夜中に2人の裸の小人が靴を縫っているのが分かった
・靴屋夫婦は2人の小人に、シャツ、上着、チョッキ、ズボン、靴下、そして小人用の靴を用意した
・小人達は裁断した靴の革の代わりに置いてあった、衣類を喜び、身に着けると帰っていった
・(注3) それ以来、小人達は2度と帰って来なかった
Ⅱ(洗礼の立ち会い人になった女中の話)
あらすじ
・貧しいけど働き者できれい好きな女中がいた
・女中がいつも通りゴミを掃いて戸口の外に積み上げると、一番上に一通の手紙があった
・(注4) 手紙は小人夫婦が子どもの洗礼式の立ち会い を依頼する招待状だった
・(注5) 3人の小人がやってきてがらんどうの山 に連れて行った
・そこは何もかも小さいけれど上品で豪華だった
・洗礼式を終えて女中が帰ろうとすると、小人達は3日間滞在してくれるように頼んだ
・3日が過ぎて女中が帰ろうとすると、小人達はポケットいっぱいに金を詰め込んで連れて帰った
・(注6) 女中が家に帰ると3日ではなく1年が過ぎていた
Ⅲ(子どもを取り替えられた女の人の話)
あらすじ
・あるお母さんが揺りかごの子どもを小人達に連れ去られた
・(注7) 小人達は代わりに目のすわった、大きな頭の「取り替えっ子」を置いていった
・「取り替えっ子」は飲み食いするだけだったので、困ったお母さんは隣の女の人に相談する
・(注8) 女の人は「取り替えっ子 を炊事場のかまどの上に座らせて、卵の殻2つでお湯を沸かす」とアドバイスする
・(注9) それを見て取り替えっ子 は笑い出し、大勢の小人が現れて本当の子どもと入れ替えて去っていった
収録:上39 小人たちの話(Ⅰ,Ⅱ&Ⅲ)
Ⅰ(第1の話)
特徴
・(注1) 翌日に縫おうと思って裁断だけして寝床に入った。良心にやましいところがなく、安らかに床につき、これから先のことは神様にゆだねて眠った
・(注2) 翌朝、お祈りをしてから 仕事をしようとすると靴がきれいに出来上がっていた
・(注3) それ以来、小人達は2度と帰って来なかったが、靴屋は一生幸せで、なんでも上手くいきました
Ⅱ(第2の話)
特徴
・(注4) 手紙は小人夫婦が子どもの洗礼の名付け親(意味は同じ) を依頼する招待状だった
・(注5) 3人の小人がやってきて自分たちが住む洞穴のある山 に連れて行った
・(注6) 女中が家に帰って仕事に戻ろうとすると見知らぬ人が出てきた。3日ではなく7年 が過ぎていて、前の主人は亡くなっていた
Ⅲ(第3の話)
特徴
・(注7) 小人達は代わりに目のぎょろぎょろした 、大きな頭の「取り替えっ子」を置いていった
・(注8,9) 「取り替えっ子」⇒「鬼っ子」
040. 盗賊のお婿さん Der Räuberbräutigam
特徴
・登場人物は、王女である花嫁と王子を自称する花婿
・森を通るのが怖い花嫁は花婿に逢いに行くのを躊躇
・花婿は自宅への道中、迷わないように森の木に布を結わえておく
・花嫁は花婿の自宅に到着するが、そこで働くおばあさんに身を隠すように促される
・花婿(自称王子)と悪党が盗みを終えて帰って来る
・一緒に連れ帰った「花嫁のおばあさん」 を殺害
・悪党が寝入った隙に花嫁は脱出し、月明りのお陰で 自宅に戻る
・翌日 、花婿と悪党は城に出向くが、花嫁の証言によって悪事がバレて死刑になる
収録:上40 どろぼうのお婿さん
特徴
・登場人物は、粉屋の娘である花嫁と裕福な求婚者
・花嫁は求婚者を信用できず好きになれなかった
・求婚者は自宅への道中、迷わないように森の道路に灰をまいておく
・花嫁は「人殺しの巣窟」(求婚者の自宅)に到着するが、そこで働くおばあさんに身を隠すように促される
・人殺し連中は一緒に連れ帰った「若い娘」 を殺害
・人殺し連中が寝入った隙に花嫁はおばあさんと一緒に神の助けで 「人殺しの巣窟」から脱出
・婚礼の日 、花嫁の証言によって花婿一行の悪事がバレて、裁判所によって 処刑される
041. コルベスさん Herr Korbes
※話の展開や登場人物は「KHM010 ろくでなし」に酷似
あらすじ
・めんどりとおんどりがいて、いっしょに旅をする
・おんどりが赤い車輪の四つ着いた車を作ってねずみ四匹に引かせた
・コルベスさまの家へ向かう道中で出会った猫、石臼、卵、鴨、留め針、そして縫い針を車に乗せた
・コルベスさまの家に着いたが留守だった
・ねずみたちは車を納屋に入れた
・めんどりはおんどりといっしょに一本の梁の上に飛び上がった
・猫は暖炉の中にすわった
・鴨は水桶の中に入った
・留め針は椅子のクッションの中へ入った
・縫い針はベッドの枕の中へ入った
・石臼は戸口の上に横になった
・卵は手ぬぐいの中にくるまった
・コルベスさまが帰ってきて暖炉の火を起こそうとした
・猫がコルベスさまの顔じゅうに灰をぶつけた
・コルベスさまは台所で顔を洗おうと水桶のところへ来ると、鴨が顔に水をひっかけた
・コルベスさまが顔をふこうとすると手ぬぐいの卵が割れて目に貼りついた
・コルベスさまが椅子に腰を下ろしたら留め針が刺した
・コルベスさまがベッドの枕に頭を下ろしたら縫い針が刺した
・コルベスさまは家の外にとび出そうとしたが、戸口のところで石臼が落ちてきて殺してしまった
収録:上41 コルベスさま
特徴
・隠れる順序違い :ネズミたち、メンドリとオンドリ、猫、カモ、卵 、とめ針、ぬい針、石臼(コルベスさんをやっつける順)
・「コルベスさんは、よほど悪者だったにちがいありません。」 を最終行に付加(殺される理由付け)
042. 名づけ親さん Der Herr Gevatter
あらすじ
・貧しい男にはたくさん子どもがいて、世間の人たちみんなに名付け親をたのんでしまっていた
・もうひとり子どもが生まれたとき、名付け親を頼む人がいなかった
・門の外に出てはじめに出会った人に名付け親を頼むように、という夢を見たのでそのようにした
・(注1) 名付け親は男に水の入った小さなコップを贈り、「死神が頭の方に立っていたら、これでどんな病人でも治すことができる。でも、もし足の方に立っていたら、病人は死ななくてはならない」と伝えた
・王さまの子どもが病気になり、男に仕事が舞い込む
・死神が頭の方に立っていたので男はその水で子どもを治し、二度目も治したが三度目は死神が足の方に立っていた
・男は名付け親のところへ行った
・名付け親の家は不気味で、階段の一段目ではシャベルとほうきが取っ組み合い、二段目には死んだ指がたくさんころがり、三段目には死んだ頭が一山ころがり、四段目には自分の体を火にかけて焼いている魚がいた
・階段の五段目に部屋があり、名付け親が二本の長い角をはやしていました
・(注2) 男が入っていくと、名付け親は慌てて角 をベッドの上へ下ろして布団をかぶせた
・男が「階段の一段目でシャベルとほうきが取っ組み合いをしていた」と言うと、名付け親は「下男と女中が話をしていたんだ」と答えた
・男が「階段の二段目には死んだ指がころがっていた」と言うと、名付け親は「それはごぼうだ」と答えた
・男が「階段の三段目には死んだ頭が一山あった」と言うと、名付け親は「それはキャベツだ」と答えた
・男が「階段の四段目では魚が自分を料理していた」と言うと、魚たちが出てきて自分で食卓の上に並んだ
・男が「階段の五段目で鍵穴をのぞくとあなたが長い角をはやしていました」と言うと、名付け親は「いや、そんなことはあるわけない」と答えた
収録:上42 名付け親
特徴
・(注1) コップを贈って死神の見方を伝えた後に、「男はその技で有名になり、たくさんのお金を儲けることができた 」を付加(話の展開が唐突だったので補完)
・(注2) 男が入っていくと、名付け親は慌ててベッドに入って身 を隠した
・「男はおそろしくなって、走って逃げました。逃げなかったら、名づけ親さんがこの男になにをしたか、わかったもんじゃありません。」 を最終行に付加(話が唐突に終わるので補完)
043. トゥルーデばあさん Frau Trude第3版以降で差し替え 初版と第2版は「上43 奇妙な饗宴」
原文(1812/1819版に基づく)
Auf eine Zeit lebte eine Blutwurst und eine Leberwurst in Freundschaft, und die Blutwurst bat die Leberwurst zu Gast. Wie es Essenszeit war, ging die Leberwurst auch ganz vergnügt zu der Blutwurst, als sie aber in die Hausthüre trat, sah sie allerlei wunderliche Dinge. Auf jeder Stiege der Treppe, deren viele waren, war immer etwas anderes: da war etwa ein Besen und eine Schippe, die sich miteinander schlugen, dann ein Affe mit einer großen Wunde am Kopf und dergleichen mehr.
Die Leberwurst war ganz erschrocken und bestürzt darüber, doch nahm sie sich ein Herz, trat in die Stube und wurde von der Blutwurst freundschaftlich empfangen. Die Leberwurst hub an, sich nach den seltsamen Dingen zu erkundigen, die draußen auf der Treppe wären, die Blutwurst tat aber, als hörte sie es nicht oder als sei es nicht der Mühe wert davon zu sprechen; oder sie sagte etwa von der Schippe und dem Besen:
„Es wird meine Magd gewesen sein, die auf der Treppe mit jemand geschwätzt hat,“
und brachte die Rede auf etwas anderes.
Die Blutwurst ging darauf hinaus und sagte, sie müsse in der Küche nach dem Essen sehen, ob alles ordentlich angerichtet werde und nichts in die Asche geworfen. Wie die Leberwurst derweil in der Stube auf und ab ging und immer die wunderlichen Dinge im Kopf hatte, kam jemand — ich weiß nicht, wer’s gewesen ist — herein und sagte:
„Ich warne dich, Leberwurst, du bist in einer Blut- und Mörderhöhle, mach dich eilig fort, wenn dir dein Leben lieb ist.“
Die Leberwurst besann sich nicht lang, schlich zur Tür hinaus und lief, was sie konnte; sie stand auch nicht eher still, bis sie aus dem Haus mitten auf der Straße war. Da blickte sie sich um und sah die Blutwurst oben im Bodenloch stehen mit einem langen, langen Messer, das blinkte, als wär’s frisch gewetzt, und damit drohte sie und rief herab:
„Hätt ich dich, so wollt ich dich!“
日本語訳(不思議なおよばれ)
ある時、血入りソーセージとレバーソーセージが仲良く暮らしていました。
ある日、血入りソーセージがレバーソーセージを家に招きました。
食事の時間になると、レバーソーセージは喜んで出かけました。
ところが、家の入り口に足を踏み入れたとたん、不思議な光景が次々と目に入ります。
•階段には、ほうきとちりとりが殴り合いをしている
•大きな頭の傷を負った猿がいる
•そのほかにも奇妙なものがいくつも
レバーソーセージは驚き、怖くなりましたが、勇気を出して部屋に入りました。
血入りソーセージは、まるで何事もなかったかのように友好的に迎えました。
レバーソーセージは、さっき見た奇妙な光景について尋ねようとしましたが、血入りソーセージはまるで聞こえなかったかのように無視したり、あるいは
「ああ、それはお手伝いが階段で誰かと話していたせいだろう」
と言って話題を変えました。
血入りソーセージは、食事の準備が整っているか確認するために台所に行きました。
その間に、レバーソーセージは部屋の中を行ったり来たりしながら、あの奇妙な出来事が頭から離れませんでした。
すると、誰か(誰かは分かりません)が部屋に入り、警告しました。
「気をつけろ、レバーソーセージ。ここは血と殺人の巣だ。命が惜しければ、すぐに立ち去れ。」
レバーソーセージは迷わず、急いで家を飛び出しました。
道の真ん中まで走って、ふと振り返ると、血入りソーセージが床穴の上に立って、長く光るナイフを振りかざしながら叫んでいました。
「もし捕まえたら、食べてやるぞ!」
あらすじ
・昔、小さな女の子がいた
・その子は我儘で出しゃばりで両親が何を言っても言うことを聞かなかった
・こんな子が上手くいった例(ためし)があったでしょうか
・女の子は両親に「トゥルーデばあさんの事を聞いたわ。変わってるって噂してるし、奇妙な物がたくさんあるって話だから行ってみたくなったのよ」と言った
・両親は女の子を強く諫めて「あのトゥルーデばあさんは悪い女で神をも恐れない ことをやっている。もし行くならもう家の子じゃあないよ」と言った
・女の子は両親が止めるのも聞かずに行ってしまった
・トゥルーデばあさんは女の子に「どうしてそんなに青い顔をしているんだい」と尋ねた
・女の子は「今しがた見たものでビックリしているの」と答えた
・「何を見たんだい」
・「階段で黒い男の人を見たの」
・「それは炭焼き職人だったんだよ」
・「それから緑の男の人を見たわ」
・「それは猟師だったんだよ」
・「その後、血のように赤い男の人を見たわ」
・「それは肉屋だったんだよ」
・「窓越しにあなたではなく頭に火の燃えている悪魔を見たの」
・「へえ、そうかい」
・続けて「お前が見たのはおめかしをした魔女だったのさ。私はもう長いことお前を待っていて、お前が欲しかったのさ。私のために赤々と燃えておくれよ」
・おばあさんは女の子を丸太に変えて火にくべた
・丸太が赤々と燃え上がると側に腰を下ろして暖まりながら言った
・「こいつはなんとも明るく燃えているねえ」
044. 死神の名づけ親 Der Gevatter Tod
※話の展開は「KHM042 名づけ親さん」に酷似
あらすじ
・十二人の子どもを持つ男に十三番目の子 どもが生まれる
・(注1) 男は困り果てて森へ入っていった
・(注2) 男は神様に出会い、神様は名付け親を申し出るが、男は「あなたはお金持ちには与え、貧乏人にはひもじい思いをさせる」と答えて断る。
・(注3) 男は神様を残して先へ進む
・男は死神に出会う
・(注4) 死神は「私が名付け親になってその子を医者 にしてやろう」と申し出る
・男は「死神はわけへだてなく、お金持ちも貧乏人も連れていく。」と言って承諾する
・翌日曜の朝、死神がやってきて子どもの洗礼に立ち合う
・(注5) その子が大きくなったとき、死神は再びやってきて森へ連れていった
・(注6) 死神は子どもに「医者になるんだ。」と言い、病人を診る時に、私(死神)が病人の頭の方に立っていたら、渡した瓶の匂いを嗅がせて中身を足に塗るようにと伝えた
・(注7) もし私(死神)が足の方に立っていたらそいつは私のものなので治してやろうとするな、とも伝えた
・子どもは言いつけを守って有名な医者になった
・医者(子ども)は重い病気の王さまのところへ呼ばれた
・死神は王さまの足の方に立っていた
・医者は死神をだましてやろうと思いつき、王さまを逆さに置いた
・王さまは治療で元気になった
・騙された死神は激怒して「もう一度私をだまそうとしたら、おまえの首をひねってやる」と警告した
・まもなく王さまの美しい娘が病気になり、王さまは「姫を治すことができた者にはほうびに姫をあげる」とおふれを出した
・医者(子ども)がやってくると、死神は足の方に立っていた
・姫が美しいのに驚き、医者は警告を忘れて姫の向きを変えて治療した
・怒った死神は医者を地面の下の洞穴に連れていった
・そこには何千ものろうそくが灯っており、「これはみんな生きている者たち。」と死神が言った
・(注8) 「もうあとほんのすこし燃えて、じきに消えようとしているこの火が、おまえの命だ。気をつけな!」と忠告した
収録:上44 死神の名付け親
特徴
・(注1) 男は外に出てはじめに出会った人に名付け親になってもらおうと思った
・(注2) 「そこように男が言ったのは、神さまはどんなに良く物事を考えて富とまずしさを分けておられるかを男は知らなかったから」と追記
・(注3) 次に悪魔に出会う展開が追記されており、「わしを名づけ親にしたいのなら、その子にたっぷりの金とこの世の楽しみをすべてやろう」と悪魔が言うが、男は「あなたは人間たちをだますか、誘惑するかだから」と断る
・(注4) 死神は「私が名付け親になってその子を金持ちにして有名 にしてやろう」と申し出る
・(注5) その子が大きくなったとき、死神は再びやってきて森へ連れていって薬草 を贈った
・(注6) 死神は子どもに「医者になるんだ。」と言い、病人を診る時に、死神が病人の頭の方に立っていたら、渡した薬草を与える ようにと伝えた
・(注7) もし私(死神)が足の方に立っていたらそいつは私のものなので治してやろうとするなと伝え、「わしの意に反してこの薬草を使うな」と釘を刺した
・(注8) 医者が自分のロウソクを見せてくれと頼んだので 「もうあとほんのすこし燃えて、じきに消えようとしているこの火が、おまえの命だ。気をつけな!」と忠告した。しかし直後に死神がワザと火を消して男を殺してしまう (騙して仕返しをした)
045. 親指小僧の修業の旅 Daumerlings Wanderschaft暗黙の整合性
あらすじ
※主人公の表現が「親指小僧」と「小さな仕立て屋」で揺れている
・ある仕立て屋の息子は生れつき小さくて親指小僧と呼ばれていた
・親指小僧が修業の旅に出たいと父親に告げると、父親はかがり針を剣に仕立てて持たせた
・(注1) 小さな仕立て屋はその剣を持って世の中に出ていく
・小さな仕立て屋はひとりの親方のもとで働くことになる
・親指小僧は食事が不満でおかみさんと喧嘩をし、家から追い出されてしまう
・小さな仕立て屋は旅を続け、大きな森にやってくると盗賊の一団に出会った
・(注2) 盗賊たちは王さまの宝を盗む時に親指小僧がえらく役に立つ と考えて勧誘した
・仕立て屋はその話に乗って強盗に参加した
・親指小僧は計画通り窓の下にいる盗賊たちにターラー銀貨を放り投げた
・(注3) 親指小僧は最後の一枚に自分がすわって銀貨といっしょに 窓から飛び降りた
・(注4) 盗賊たちは親指小僧を誉めちぎり、その気があるなら自分たちのおかしらにすると言った
・親指小僧は盗み出したお金からクロイツァー1枚をもらった
・(注5) 親指小僧は旅に戻った
・(注6) 職人仕事はおもしろくなかったので ある宿屋で下男に雇われた
・親指小僧は女中たちがこっそりやっていることをみんな見ていてつげ口をしたので、女中たちは我慢ならなかった
・(注7) 親指小僧が草地を散歩 していると、女中が親指小僧を草といっしょに刈り取ってしまった
・(注8) 刈り取った草を牛たちの前に投げたので黒牛 が親指小僧を呑みこんでしまった
・晩になって牛はつぶされたが、親指小僧は運よく刀はあたらずソーセージになる肉にまざった
・ソーセージになった親指小僧は燻製にするために煙突の中に吊され、冬になってソーセージが食べられるまでぶらさがっていた
・親指小僧はソーセージが輪切りにされるときに跳び出して走って逃げた
・仕立て屋は旅を続けていたところ、狐にばったり出くわしてパックリくわえられてしまった
・(注9) 仕立て屋は「ここに いるから放しておくれ」と叫んだ
・(注9) 仕立て屋は「のどに引っかかって いるから放しておくれ」と叫んだ
・(注10) 狐は「おまえの父さんの農場 にいるにわとりをみんな よこす」を条件にした
・(注11) 親指小僧はそれを約束して解放された
・(注12) 狐は親指小僧を家まで送り届け、農場のにわとりをのこらず手に入れた
・小さな仕立て屋は旅で儲けたクロイツァーを、父親に持って帰った
・父親は「にわとりより、わが子のほうがずっとかわいい!」と言った
収録:上45 仕立て屋の親指小僧の遍歴 関連:KHM037
特徴
・(注1) 小さな仕立て屋は母親と最後の晩餐 をするが、鍋を覗き込んだらとたんに湯気と共に煙突から飛び出してしまう
・(注2) 盗賊たちは王さまの宝を盗む時に親指小僧が合い鍵の代わりになる と考えて勧誘した
・(注3) 親指小僧は最後の一枚を投げてからすばやく飛び乗って 銀貨といっしょに窓から降りた
・(注4) 盗賊たちは親指小僧を誉めちぎり、その気があるなら自分たちのおかしらにすると言ったが、親指小僧はお頭の申し出を断った
・(注5) 親指小僧は盗賊にサヨナラと言ってから 旅に戻った
・(注6) 気に入った仕事がなかったので ある宿屋で下男に雇われた
・(注7) 親指小僧が庭で草刈りを していると、女中が親指小僧を草といっしょに刈り取ってしまった
・(注8) 刈り取った草を牛たちの前に投げたので黒く大きい牝牛 が親指小僧を呑みこんでしまった。親指小僧は乳搾り中に大声を出してみたが 誰も気付かなかった
・(注9) 仕立て屋は「のどに引っかかって いるから放しておくれ」と叫んだ
・(注10) 狐は「おまえの父さんの庭 にいるにわとりを よこす」を条件にした
・(注11) 親指小僧は「ニワトリを残らず 手にすればいい」と約束して解放された
・(注12) 狐は親指小僧を家まで送り届け、父親は息子の帰宅をよろこんで、キツネにニワトリを全部あげた
幼児向け紙芝居
お使いのブラウザは動画タグに対応していません。
046. フィッチャーの鳥 Fitchers Vogel
特徴
・魔法使いは泥棒(人さらいの意か?)
・三女が出てきて3姉妹と分かる
・次女は簡潔に「同じように」と記述
・姉2人を入れた籠を担ぐ魔法使いに対して「休もうとしても(籠の)板の隙間 から見える」と警告
・三女はベッド を切り裂いた羽毛で「フィッチャーの鳥」になる
収録:上46 フィッチャーの鳥
地下室の類話
類話:上62 青髭 (地下室の話)
原文の抜粋(1812年初版)
Es war einmal ein Mann, der hatte einen blauen Bart; darum nannten ihn alle Blaubart.
Er war reich und hatte schöne Häuser in der Stadt und auf dem Lande, goldene und silberne Gefäße, gestickte Möbel und vergoldete Kutschen. Aber man fürchtete ihn, denn niemand wusste, was aus seinen früheren Frauen geworden war.
Er freite um eine junge Frau; sie wusste nicht recht, ob sie ihn nehmen sollte, denn sein Bart machte sie scheu. Endlich entschloss sie sich doch, ihn zu heiraten.
Als sie vermählt waren, sagte Blaubart eines Tages, er müsse verreisen, und gab seiner Frau alle Schlüssel von Haus und Hof. »Du darfst alles sehen und alles öffnen«, sprach er, »nur dieses kleine Kämmerlein nicht. Hüte dich, es aufzuschließen.«
Sobald Blaubart fort war, konnte die junge Frau der Neugier nicht widerstehen. Sie ging von einem Zimmer ins andere, öffnete schließlich auch das verbotene Kämmerlein.
Da sah sie Blut am Boden und die Leiber der früheren Frauen, die Blaubart ermordet hatte. Vor Schrecken ließ sie den Schlüssel fallen, und der Schlüssel wurde vom Blut befleckt, das sich nicht abwaschen ließ.
Als Blaubart zurückkam, bemerkte er es sogleich. »Du bist in dem verbotenen Zimmer gewesen«, sprach er, »nun sollst du auch sterben.«
Die junge Frau bat um Zeit zum Gebet, und währenddessen kamen ihre Brüder herbeigeeilt. Sie erschlugen Blaubart und retteten ihre Schwester.
Sie aber erbte sein ganzes Vermögen und lebte von da an in Frieden.
日本語訳(青髭)
むかし、青いひげを生やした男がいました。そのため人々は彼を青ひげと呼びました。彼はたいへん裕福で、町にも田舎にも立派な館を持ち、金銀の器、刺繍を施した家具、金色に飾られた馬車を所有していました。しかし人々は彼を恐れていました。というのも、以前の妻たちがどうなったのか、誰も知らなかったからです。
青ひげはある若い娘に求婚しました。娘は、彼のひげの色が気味悪く、なかなか承知できませんでしたが、ついに結婚する決心をします。
結婚してしばらくすると、青ひげは旅に出ることになり、妻に家中すべての鍵を渡しました。「どの部屋を見てもよいし、どの扉を開けてもよい。ただし、この小さな部屋だけは決して開けてはならない。それだけは固く守れ」と言いました。
青ひげが出かけると、若い妻は好奇心に抗えず、部屋から部屋へと歩き回り、ついに禁じられた小部屋を開けてしまいます。
そこには、床に血が流れ、青ひげが殺した以前の妻たちの亡骸がありました。恐怖のあまり、彼女は鍵を落としてしまい、その鍵は血に染まり、どんなに洗っても落ちませんでした。
青ひげが戻ると、すぐにそれに気づきました。「おまえは禁じられた部屋に入ったな。ならば、おまえも死なねばならぬ」と言います。
若い妻は祈る時間を願い、その間に兄たちが駆けつけ、青ひげを打ち倒しました。
こうして彼女は命を救われ、青ひげの全財産を相続し、その後は平穏に暮らしました。
類話:上73 人殺し城(3人娘と地下室の話)
原文の抜粋(1812年初版)
Es war einmal ein Schuhmacher, welcher drei Töchter hatte; auf eine Zeit als der Schuhmacher aus war, kam da ein Herr, welcher sehr gut gekleidet war, und welcher eine prächtige Equipage hatte, so daß man ihn für sehr reich hielt, und verliebte sich in eine der schönen Töchter, welche dachte, ihr Glück gemacht zu haben mit so einem reichen Herrn, und machte also keine Schwierigkeit mit ihm zu reiten. Da es Abend ward, als sie unterwegs waren fragte er sie:
„Der Mond scheint so hell meine Pferdchen laufen so schnell süß Lieb, reut dichs auch nicht?“
– „Nein, warum sollt michs reuen? ich bin immer bei Euch wohl bewahrt,“ da sie doch innerlich eine Angst hatte. Als sie in einem großen Wald waren, fragte sie, ob sie bald da wären? – „Ja, sagte er, siehst du das Licht da in der Ferne, da ist mein Schloß;“ endlich kamen sie da an, und alles war gar schön.
Am andern Tage sagte er zu ihr, er müßt auf einige Tage sie verlassen, weil er wichtige Affairen hätte, die nothwendig wären, aber er wolle ihr alle Schlüssel lassen, damit sie das ganze Castell sehen könnte, von was für Reichthum sie all Meister wär. Als er fort war, ging sie durch das ganze Haus, und fand alles so schön, daß sie völlig damit zufrieden war, bis sie endlich an einen Keller kam, wo eine alte Frau saß und Därme schrappte. „Ei Mütterchen, was macht sie da?“ – „Ich schrapp Därme, mein Kind, morgen schrapp ich eure auch!“ Wovon sie so erschrack, daß sie den Schlüssel, welcher in ihrer Hand war, in ein Becken mit Blut fallen ließ, welches nicht gut wieder abzuwaschen war: „Nun ist euer Tod sicher, sagte das alte Weib, weil mein Herr sehen kann, daß ihr in der Kammer gewesen seyd, wohin außer ihm und mir kein Mensch kommen darf.“
(Man muß aber wissen, daß die zwei vorigen Schwestern auf dieselbe Weise waren umgekommen.)
Da in dem Augenblick ein Wagen mit Heu von dem Schloß wegfuhr, so sagte die alte Frau, es wäre das einzige Mittel, um das Leben zu behalten, sich unter das Heu zu verstecken, und dann damit wegzufahren; welches sie auch thät. …
(続きます)
*注:上記はドイツ語原文の始まり部分です(公開されている原文に基づく)。
日本語訳(殺人城)
むかしむかし、ある仕立て屋が三人の娘を持っていました。あるとき仕立て屋が留守にしていると、立派な服を着て豪華な馬車を引く男がやって来て、三人の娘のうち一人に心を奪われました。娘はその富豪に気に入られたと思い、ためらうことなく彼と一緒に乗って行きました。
夜になると、道中その男は娘に尋ねました。
「月はこんなに明るく照っているよ。馬はこんなに速く走るよ。ねえ、愛しい人よ、後悔していないかい?」
娘は内心不安でありながらも、「いいえ、後悔なんてありません。あなたと一緒なら安全ですから」と答えました。やがて二人は大きな森に入り、娘が「もうすぐ着きますか」と聞くと、男は「遠くに見える光が私の城だよ」と言いました。そして彼らは美しい城にたどり着きました。
次の日、男は用事のため数日留守にすると言い、城のすべてを見るようにと全ての鍵を娘に渡しました。娘は家中を見て回り、その富と美しさに満足していました。しかし、やがて彼女は地下室にたどり着き、そこで一本の椅子に座っている老女が人間の腸をはがしているのを目撃しました。娘は驚き、「おばあさん、何をしているの?」と尋ねると、老女は言いました。
「私は腸をはがしているのよ、私の子よ。明日はあなたのもはがすわよ!」
娘は恐ろしくなり、手に持っていた鍵を血の入った盆に落としてしまいました。その血は簡単には落ちませんでした。老女は言いました。「もう助からないよ。主人がこれを見れば、あなたが立ち入り禁止の部屋に入ったのがわかるからね。」この部屋には主人と老女以外誰も入ってはいけないのです。
(実はこのような目に遭ったのは、二人の姉たちも同じだったのです。)
まさにそのとき、城から干し草を積んだ荷馬車が出ていきました。老女は「これが唯一の逃げ道よ」と言い、娘に干し草の下に隠れるように勧めて、逃がしてくれました。娘はその通りにして、荷馬車で城を離れました。…(物語は続きます)
特徴
・ベテランの 魔法使い
・3姉妹であることを冒頭に明記
・卵と鍵の記述順序が逆
・卵を肌身はなさず持っていないと、「失くしたら不幸になる」と警告
・長女を殺害する様子が具体的に 詳述されている
・次女は簡潔に「同じように」と記述
・三女が「卵をしまう」のは追記した「肌身はなさず」と矛盾
・三女が姉2人を生き返らせた直後に「喜んでキスしあい~」を追記
・姉2人を入れた籠を担ぐ魔法使いに対して「休もうとしても(家の)窓 から見える」と警告
・三女は羽根布団 を切り裂いた羽毛で「フィッチャーの鳥」になる
047. ネズの木の話 Von dem Machandelboom
※序文は「KHM053 白雪姫」に酷似
あらすじ
・二千年ほど前、ひとりのお金持ちの男がいた
・男には美しく敬虔な妻がいたが子どもがなく、子どもを願って昼夜を問わずお祈りをしていた
・妻がねずの木の下でりんごをむいているうちに、自分の指を切って血が雪の中に落ちました
・妻は「血のように赤く、雪のように白い子どもがあったなら」 と言うと、自分の言ったとおりになるような気がして嬉しくなった
・七ヶ月後に妻は病気になり、八ヶ月後には「私が死んだら、ねずの木の下に埋めてください!」と言って安心して喜び、九ヶ月が過ぎて雪のように白く、血のように赤い子どもを産んだ
・妻はその子どもを見て喜ぶが、喜びすぎて死んでしまった
・夫は妻をねずの木の下に埋め、しばらくの間は泣いて過ごしたが、もうしばらくすると二人目の妻をもらった
・二人目の妻との間に娘がひとりできた(前出の子は男)
・前出の子は男で、二人目の妻には嫌われていた
・その心に悪魔がつけこんで継母は男の子を虐めていた
・りんごの入った箱から男の子がひとつ取ろうとした時、悪魔が妻に指図をしてふたを閉めたので、男の子の首は飛んで赤いりんごの中に落ちた
・妻は恐ろしくなって偽装工作を考えた
・(注1) 妻は上(誤記?)の 自分の部屋のたんすの一番上の引き出しから白い布を取り出した
・妻は男の子の頭を元どおり首の上にのせて白い布をぐるぐる巻きつけ、男の子を戸の前の椅子にすわらせて手にりんごを持たせた
・(注2) 台所にいる母親のところにマルレーンちゃん(誤訳?) がやってきた
・母親は「お兄ちゃんにりんごをくれるように頼んで、返事をしないなら耳をぶっておやり」とマルレーンちゃんをそそのかす
・マルレーンちゃんが言われた通りに耳をぶつと頭が落ちたので、自分が殺したと思い込んでしまう
・(注3) 母親は責任転嫁をして口封じをすると、「お兄ちゃんをお酢で煮る としよう」と証拠隠滅を図る
・母親は男の子を刻んで鍋に入れて、煮てしまった
・父親が帰って来て男の子の不在に気付くが、、母親は大伯父さんのところへ行ったと嘘をつく
・父親は食事を始め、煮込まれた男の子を独り占めして食べてしまう
・父親は骨をテーブルの下に投げ捨てたので、マルレーンちゃんは絹の布で骨を残らず包み、ねずの木の下の緑の草の中に置いた
・ねずの木が動きだし、霧のようなものが出てきて、靄の中に火が燃え上がり、火の中から一羽の美しい鳥が飛び出した
・鳥は金細工師の家の上まで飛んでいくと、そこにとまって歌いだした
「おかあさんがぼくを殺し、
おとうさんがぼくを食べた。
妹のマルレーンちゃんが、
ぼくの骨を残らずさがし、
絹の布に包んで、
ねずの木の下に置いた。
キヴィット、キヴィット!なんてきれいな鳥だろ、ぼくは!」
・金細工師は美しい歌声だと思い、「もう一度、歌っておくれよ」と頼んだ
・鳥は金細工師が持っていた金の鎖と引き換えにもう一度歌うと答え、それを右足の鉤爪でつかむと歌い出した
・鳥は歌い終わると飛び去り、靴屋へ行って屋根で歌い出した
・靴屋は美しい歌声だと思い、職人や家族を呼んで「もう一度、歌っておくれよ」と頼んだ
・鳥は靴屋が持っていた赤い靴と引き換えにもう一度歌うと答え、それを左足でつかむと歌い出した
・鳥は歌い終わると飛び去り、水車小屋まで行って前に立っている菩提樹にとまって歌い出した
・美しい歌声に、二十人の粉ひきの若者が順次手を止め始め、最後の若者も仕事をやめると「もう一度、歌っておくれよ」と頼んだ
・鳥は石臼と引き換えにもう一度歌うと答え、それを首にはめて歌い出した
・鳥は歌い終わると金の鎖と赤い靴と石臼を身に着けたまま飛び去り、遠く離れたおとうさんの家へ飛んでいった
・おとうさんと、おかあさんと、マルレーンちゃんは食卓についていて、鳥はねずの木の上にとまって歌い出した
・おかあさんは耳をおさえたがおとうさんは外へ出てみた
・鳥は歌い終わると金の鎖を落とし、ちょうどおとうさんの首にかかった
・鳥はまた歌い出した
・(注4) 母親は「ああ、千尋 も地面の下に潜っていられたら、これを聞かずにすむのに!」と言った
・今度はマルレーンちゃんが外に出た
・鳥は歌い終わるとマルレーンちゃんに靴を投げ落とした
・マルレーンちゃんは心がはずんで楽しくなり、新しい靴をはいて踊りながら家の中に跳んで入った
・それを見た妻が自分の心も軽くなるかと思って外へ出ると、鳥が石臼を頭の上に落とした
・妻は押しつぶされて、そこから靄と炎が立ちのぼっていた
・それが消えるとお兄ちゃんが立っていて、三人は大喜びで家の中に入って食事をした
収録:上47 ねずの木の話
特徴
・(注1) 妻は下に降りて 自分の部屋のたんすの一番上の引き出しから白い布を取り出した
・(注2) 台所にいる母親のところにマルレーネちゃん(Marlene)がやってきた
・(注3) 母親は責任転嫁をして口封じをすると、「お兄ちゃんを煮込み料理 にしよう」と証拠隠滅を図る
・(注4) 母親は「ああ、1000クラフター(翻訳の揺れ?) も地面の下に潜っていられたら、これを聞かずにすむのに!」と言った
048. 老犬ズルタン Der alte Sultan
あらすじ
・(注1) あるお百姓 が忠実な犬を飼っていた
・犬は年をとって、もうなにもしっかりと噛むことができなかった
・お百姓はおかみさんに「ズルタンじいさんは役に立たないから、明日、撃ち殺そうかと思う」と言った
・(注2) 犬は夫と妻が話し合っていたことをみんな聞いていた
・犬は親友の狼のところへ行って、「ご主人様が明日、自分を撃ち殺すつもりだ」と悩みを話した
・狼はふたりの子どもを偽装誘拐し、ズルタンが救出することを提案する
・約束したとおりに事がすすみ、お百姓はズルタンじいさんを殺さないで死ぬまで喰わしてやろうと心変わりする
・狼はうまくいったことを喜び、犬に「君のご主人から羊を一頭かっぱらったとしても、文句もなく、手を貸してくれるだろうね」と見返りを求めた
・(注3) ズルタンは「当てにされても困る。私は主人に忠実だ。」と返した
・ズルタンは狼がたくらんでいることをご主人に告げたので、お百姓は納屋で見張っていて狼をこっぴどく打ちのめした
・(注4) 狼は腹を立てて、片をつけようとズルタンじいさんに戦いをいどんだ
・狼と犬は森の手前で待ち合わせ、それぞれ立会人を連れて行くことになった
・狼は猪を味方に連れていき、先に約束の場所に着いた
・犬はびっこの猫しか味方につけることができなかった
・(注5) 彼らが遠くからやってくるのを見た狼と猪は、猫がひっきりなしに跳ねているのはその度に石を拾い上げているのだと思った
・狼と猪は恐ろしくなって、猪は生い茂った葉の中に隠れ、狼は木の上に跳び上がりった
・(注6) 到着した猫は葉の茂みの中にいる猪が耳をぴくぴくと動くのを見て、とびかかり、噛みつき、ひっかきいた
・猪は叫び声をあげて逃げながら、「あの木の上にいるやつが悪いんだ」と叫んだ
・(注7) 木から下りてきた狼は仲直りをしなければならなかった
収録:上48 老犬ズルタン
特徴
・(注1) ある農夫 が忠実な犬を飼っていた(翻訳の揺れ?)
・(注2) 犬は近くの日なたに寝そべっていたので 夫と妻が話し合っていたことをみんな聞いていた
・(注3) ズルタンは主人に忠実だったので 「当てにされても困る。私は主人に忠実だ。」と返した
・(注4) 狼は腹を立てて、片をつけようと猪を使いに出して ズルタンじいさんに戦いをいどんだ
・(注5) 彼らが遠くからやってくるのを見た狼と猪は、猫が高く伸びばしたしっぽをサーベルと勘違いし、 ひっきりなしに跳ねているのはその度に石を拾い上げているのだと思った
・(注6) 到着した猫は葉の茂みの中にいる猪が耳をぴくぴくと動くのを見てネズミがいると勘違いして 、とびかかり、噛みつき、ひっかきいた
・(注7) 木から下りてきた狼は臆病に隠れていたのが恥ずかしくて、犬からの申し出を受け入れて 仲直りをしなければならなかった
049. 6羽の白鳥 Die sechs Schwäne
あらすじ
・ひとりの王が森で狩りをしていて道に迷った
・(注1) 王は出会った魔女 に森の外へ出る道を教えてくれるようにたのんだ
・魔女は「王はもう二度と外へ出ることはできず、森の中で命を失わなければならない」と告げた
・(注2) ひとつだけ助かる道があり、それは王が魔女の娘と結婚することだ、と言った
・王は命が惜しかったので「そうする」と返事をしました
・(注3) 魔女は王のところに娘を連れてきた
・娘は若く美しかったが、王はその娘を見て恐怖を感じた
・それでも王は約束を守り、魔女に教えられた道を通って城に帰り、魔女の娘は王の妻となった
・王には前妻との間に七人の子ども(男6人、女1人)があり、継母にいじめられるのを心配して森の真ん中に立つ城にかくまった
・そこに行く道を知る者はなく、女預言者がくれた糸玉が城への道を示すのみだった
・王が頻繁に城へ出かけたので、不審に思った王妃は家来たちを問い詰めて糸玉の秘密を知った
・(注4) 王妃は小さなシャツを七枚持って森へ出かけていった
・六人の王子たちは父親が来たと思い、王妃に向かって走って行った
・王妃が王子たちにシャツを投げると、シャツが体に触れたとたんに王子たちは白鳥の姿になって空中に舞い上がり、飛んでいってしまった
・王妃はこれで継子たち全員を片づけたと考えて城に戻ったので、自分の部屋に残っていた女の子は助かった
・翌日、王が女の子から事態を聞き、六人の兄が落としていった羽根を見せられる
・王は驚いたが王妃の仕打ちとは考えが及ばず、女の子を城に連れ帰ろうとする
・女の子は、継母が恐ろしかったので城に残ることを王に懇願する
・(注5) その夜、女の子は逃げ出しまして、 どんどん森の奥へと入って行った
・(注6) 女の子は一日じゅう晩まで歩き続けて、 一軒の小屋に出た
・小屋には小さなベッドの六つある部屋があった
・(注7) 女の子は疲れていたのでベッドのひとつに入ってその晩はそこで眠ろうと思った
・ところが日が沈むと、六羽の白鳥になった兄たちが窓から入ってきた
・兄たちは毎晩、十五分だけ人間の姿に戻ることができた
・兄たちは女の子に「ここは泥棒の隠れ家だからいることはできない」と伝えた
・(注8) 兄たちは女の子に「救ってくれるためには、六年の間、口をきかず、笑わずにゆうぜん菊 でシャツを六枚縫わなければならない」と伝えた
・(注9) 十五分の時間が過ぎ、兄たちはまた白鳥になってしまった
・翌朝から、女の子は高い木の上に登ってシャツを縫い始めた
・あるとき、その国を治める王がその森で狩りをした
・女の子は狩人たちに見つかるが、質問に答えることもなく王のところへ連れていかれた
・(注10) 王は女の子の美しさに驚き、マントにくるんで馬にのせ、城へ連れて帰った
・王は女の子を妻にしたが、王の母君(姑)はそのことをこころよく思っていなかった
・王妃が一人目の王子を産むと、姑はその子を王妃から取り上げて「王妃が自分の子どもを食べた、王妃は魔法使いだ」と王に言い立てましたがが、王は信じなかった
・(注11) 王妃が二人目の王子を産むと、姑は同じように子どもをだまし取って再び王に言いつけた
・(注12) 王妃は口をきくことができなかったので王は王妃の命を救うことができなかった
・王妃は火あぶりに処せられることになった
・判決が執行される日はちょうど六年の最後の日だった
・王妃は六枚のシャツを縫い終えようとしていましたが、最後のシャツの左の袖だけがまだできあがっていなかった
・王妃は薪の山に連れていかれるときに六枚のシャツを持っていった
・薪に火が点けられようとしたとき、六羽の白鳥が飛んできた
・王妃が投げたシャツが触れたとたん、白鳥は六人のお兄さんとなって王妃の前に立った
・ただ六番目のお兄さんだけは左腕がなく、かわりに白鳥の翼が背中についていた
・王妃は再び口をきけるようになり、姑の行いを暴露した
・姑は薪の山へ連れていかれて焼き殺され、王妃は王と六人のお兄さんたちと長く幸せに暮らした
収録:上49 六羽の白鳥
特徴
・(注1) 王は出会った老婆 に森の外へ出る道を教えてくれるようにたのんだ(老婆は魔女と明かされているが、話は「老婆」として展開する )
・(注2) 王が老婆の娘と結婚するという条件を守ってくれたら教えてあげる、と言った
・(注3) 老婆は王さまを自分の小さい家に案内した
・(注4) 王妃は小さなシャツを縫い、母親から習った魔法を縫い込んで 森へ出かけていった(枚数は削除 )
・(注5) その夜、女の子は兄を探すために出発して、 どんどん森の奥へと入って行った
・(注6) 女の子は一日じゅう、さらに夜通し歩き続け、あくる日も歩き続けて、 一軒の小屋に出た
・(注7) 女の子は疲れていたのでベッドの下に潜り込んで、硬い床の上で一晩過ごそうと思った
・(注8) 兄たちは女の子に「救ってくれるためには、六年の間、口をきかず、笑わずに星の花(Sternblume) でシャツを六枚縫わなければならない」と伝えた
・(注9) 十五分の時間が過ぎ、兄たちはまた白鳥になって窓から飛んでいった
・(注10) 女の子は王の問いかけるにも答えなかったが、 王は女の子の美しさに驚き、マントにくるんで馬にのせ、城へ連れて帰った
・(注11) 王妃が二人目の王子を産むと、姑は同じように子どもをだまし取って再び王に言いつけたが、この時も王は王妃を信じた。そして3人目の子どもの時にも同じ仕打ちを受けた
・(注12) 王妃は口をきくことができなかったので王はお妃を裁判にかけなければならなかった
050. イバラ姫 Dornröschen
特徴
・王と王妃の間に女の子が生まれると予言するのはザリガニ
・王が祝いの宴に招待したのは12人の妖精
・招待されなかった13番目の妖精は「おまえたちが私を招かなかったから」と前置きして 「娘が15歳になったら糸巻きのつむが刺さって死ぬ」と予言する
・あるときに 登場した王子が城に向かうとイバラが道を空ける(理由の説明なし)
・王子がイバラ姫にキスをすると全てが目を覚ます
収録:上50 いばら姫
特徴
・王と王妃の間に女の子が生まれると予言するのはかえる
・王が祝いの宴に招待したのは12人のかしこい女(神と人の中間で、生まれた子に予言や才能を与える)
・招待されなかった13番目のかしこい女は誰にも挨拶しないでいきなり 「娘が15歳になったら糸巻きのつむが刺さって死ぬ」と予言する
・100年経過した王女が目覚める日(イバラが道を空ける理由)、 王子が登場する
・王子にイバラ姫の説明をしたおじいさんは城に行かないように忠告
・王子がイバラ姫にキスをすると全てが目を覚ます
ジャンバティスタ・バジーレ版『眠れる森の美女』
原題《太陽・月・タリア(Sole, Luna e Talia)》
特徴
・女の子が生まれる予言は無し
・占星術師たち が「亜麻の繊維によって危険にさらされる」と予言
・予言に年齢指定は無し
・予言通り眠りについた王女タリアを通りかかった王子が妊娠させる
・タリアは眠ったままで双子(太陽と月)を出産
・タリアが目覚めるのは赤ん坊の一方が指に刺さった亜麻を吸い取ったため
・再訪した王子がタリアと双子を連れ帰る
・タリア母子は王子の正当な妻である王妃に命を狙われるが、逆に王妃が命を落とす
・王子とタリアが結婚してめでたしめでたし(???)
あらすじ
昔々、ある王にタリアという娘が生まれました。占星術師たちは「娘は亜麻の繊維によって危険にさらされる」と予言します。父はその予言を恐れて、亜麻に関係するものすべてを遠ざけます。
しかしある日、成長したタリアは見知らぬ老婆が紡いでいる糸を見て興味を持ちます。彼女がそれに触れた瞬間、亜麻の繊維が指に刺さり、気を失って倒れてしまいます。父は娘が死んだと思い、城に彼女を横たえ、鍵をかけて放置してしまいます。
やがてある王が狩りの途中でその城を発見し、中に入ると美しいタリアを見つけます。彼女は眠ったままですが、王は彼女を抱き、そのまま去ります。
数か月後、タリアは目を覚まし、太陽と月という双子を出産していることに気づきます。赤ん坊が母の指に刺さった亜麻を吸い取ったことで、タリアは目を覚ましたのです。
後に王は再び城を訪れ、タリアとその子どもたち(太陽と月)を見つけて再会を喜びます。しかし、王には嫉妬深い王妃がいました。王妃はこの秘密を知り、タリアと子どもを宮殿に連れてこさせ、子どもを殺して料理にするよう料理人に命じます。
しかし、料理人は哀れに思い、子どもの代わりに動物の肉を使い、太陽と月を密かに育てます。王妃は次にタリアを火あぶりにしようとしますが、王が現れて全てを知り、怒って王妃を火に投げ込みます。
最後は、王とタリアが正式に結婚し、太陽と月と共に幸せに暮らします。
シャルル・ペロー版(1697年フランス、La Belle au bois dormant)
特徴
・女の子が生まれる予言は無し
・洗礼式に7人の妖精が招待されて、各々が王女に予言を授ける
・呪いをかけるのは招かれなかった8番目の妖精
・6人の妖精が予言を行い、「8番目の妖精」が「15歳のときに糸車の針に刺されて死ぬ」と呪いをかける
・「7番目の妖精」が「死ぬのではなく、100年の眠りにつく」と予言を緩和
・予言通りとなり、王女が眠りにつくと同時に城は茨で覆われる
・100年後に通りかかった王子のキスで王女は目を覚ます
・王子の母が人食い鬼という後日譚 が付いている
あらすじ
昔々、ある国に子どもが授からずにいた王と王妃がいました。ようやく美しい王女が生まれると、盛大な洗礼式が開かれ、7人の妖精が招待されました。彼女たちは王女に贈り物としてそれぞれ素晴らしい才能を授けます。
ところが、招かれていなかった8人目の年老いた妖精が突然現れ、怒りから「王女は15歳のときに糸車の針に刺されて死ぬ」と呪いをかけてしまいます。最後の若い妖精がそれを和らげ、「死ぬのではなく、100年の眠りにつく」と予言します。
王はすべての糸車を国中から取り除かせました。しかし、15歳になった王女は偶然城の塔で老女が使っていた糸車を見つけ、針に指を刺してしまいます。そして予言通り、深い眠りにつき、城全体も一緒に眠りにつきます。バラの茨が城を包みこみ、誰も近づけなくなります。
100年後、ある王子が森を通りかかり、この不思議な伝説を聞いて城に入り込みます。茨が不思議と道を開き、王女の眠る部屋にたどり着いた王子は彼女にキスをします。すると、王女は目を覚まし、城全体も再び動き出します。二人は恋に落ち、結婚します。
ペロー版の結末(後日譚)
王子と姫(眠っていた王女)は結婚し、2人の間には**「夜明け(Aurore)」と「昼(日光)(Jour)」**という名前の子どもが生まれます。
王子は実は別の国の王の息子で、母親である王妃は**人食い鬼(オーガ)**だったという設定があります。彼はしばらくの間、王女と子どもたちの存在を隠していました。
やがて王が亡くなり、王子が王位を継ぎ、王女と子どもたちを宮廷に迎え入れます。しかし、オーガの血を引く王妃(姑)は激怒し、王子が戦争に出かけた隙に、
•姫を火に投げ入れようとし、
•孫である夜明けと昼も殺してスープにして食べようとする
という恐ろしい計画を実行しようとします。
ところが、忠実な料理人が彼らを密かに助けてかくまっており、代わりに動物の肉を使って王妃を騙していたのです。
真相が明るみに出たとき、王子は怒り、王妃は自ら煮えた大鍋に飛び込んで死にます。
その後、王子は家族と共に平和に暮らしました。
ペローの意図
この「後日譚」は現代の読者には残酷に感じられるかもしれませんが、当時の童話には教訓や道徳的教えが重視されていました。ペローはこの物語の最後に、次のようなモラル(教訓)を添えています:
真実の愛があれば、どんな困難も乗り越えられる。
だが、物事がうまく進むには「待つこと」も必要。
ディズニー版(1959年『眠れる森の美女』)
(原題:Sleeping Beauty)
特徴
・ペロー版がベース
・呪いをかけるのは魔女マレフィセント
・眠る理由は同じ(紡錘に刺される呪い)
・眠りの期間は未設定
・王子フィリップがドラゴンと戦い、キスで目覚めさせる
・悪役(マレフィセント)がドラゴンに変身に、王子が剣で倒す
・王子と姫が結ばれ、王国で祝福される
あらすじ
昔々、とある王国にオーロラ姫が誕生します。国王と王妃は喜び、3人の善良な妖精――フローラ、フォーナ、メリーウェザーを洗礼式に招きます。フローラとフォーナはそれぞれ「美しさ」と「歌の才能」を姫に贈ります。
ところが、招かれなかった邪悪な妖精マレフィセントが現れ、怒りから呪いをかけます:
「姫は16歳の誕生日に糸車の針に指を刺し、死ぬ!」
メリーウェザーはまだ魔法を使っていなかったため、呪いを「死ぬ」のではなく「深い眠りにつく」に変えます。そして、真実の愛のキスでのみ目を覚ますと予言します。
王は国中の糸車を焼き払い、妖精たちは姫を守るため、正体を隠して森の中で「ブライア・ローズ」という名前で育てます。
16歳の誕生日、オーロラは森で出会った青年フィリップ王子と恋に落ちます。彼こそが幼い頃に婚約していた王子でした。
その夜、オーロラは城に戻されますが、マレフィセントの魔法に導かれ、隠された糸車に指を刺してしまいます。予言通り、彼女は深い眠りに落ちます。
マレフィセントはフィリップ王子を捕らえますが、妖精たちが助けに来て、王子に**「真実の愛の剣」と盾**を与えます。フィリップはマレフィセント(巨大なドラゴンに変身)との激しい戦いの末、これを倒します。
最後に、眠るオーロラ姫にキスをすると、呪いは解け、姫は目を覚まします。二人は城で再会し、王国は祝福に包まれます。
実写映画『マレフィセント』(2014年)
※マレフィセント視点で再解釈したダーク・ファンタジー
あらすじ
妖精界「ムーア国」に住む翼を持つ妖精マレフィセントは、心優しい少女でした。ある日、人間界の少年ステファンと出会い、友情と恋を育みます。しかし、成長したステファンは王になるためにマレフィセントを裏切り、彼女の翼を奪ってしまいます。
裏切りに深く傷つき、怒りと復讐に燃えるマレフィセントは、ステファンの娘オーロラ姫の洗礼式に現れ、「16歳の誕生日、糸車の針に刺されて永遠の眠りにつく」という呪いをかけます。ただし、彼女自身が「真実の愛のキス」で目覚める可能性を残します。
オーロラは3人の妖精によって森で育てられますが、マレフィセントは彼女を影から見守るうちに、母のような愛情を抱くようになります。やがてオーロラもマレフィセントを「フェアリー・ゴッドマザー」と慕うように。
16歳の誕生日、呪いは防げずオーロラは眠りにつきます。王子フィリップがキスしても目覚めません。しかし、涙ながらにマレフィセントがオーロラに額にキスをすると、彼女は目覚めます。それこそが「真実の愛」だったのです。
最後にマレフィセントは王と戦い、オーロラはムーア国と人間界の平和の象徴として女王となります。
『マレフィセント2/マレフィセント:ミストレス・オブ・イーヴル』(2019年)
あらすじ
数年後、オーロラは成長し、フィリップ王子と婚約します。しかし、その母であるイングリス王妃はマレフィセントを警戒し、ムーア国を滅ぼそうと企てます。
マレフィセントは誤解と陰謀で追い詰められながらも、自分と同じような羽根を持つ種族「ダーク・フェイ」と出会い、内なる葛藤と戦いながら、自らの居場所と信念を見つけていきます。
最後はオーロラの機転とマレフィセントの自己犠牲により戦争は回避され、真実が明かされて平和が戻ります。
051. みつけ鳥 Fundevogel
あらすじ
・(注1) 山林の番人 が森に狩りに出かけた
・番人はちいさな子ども(補足:einen kleinen Knabenは男の子 )が高い木の上で泣いているのを見つけた
・(注2) 木の下には女の人が横になって寝ていたが、番人は木に登って子どもを下ろすと「この子をいっしょに連れて帰ろう。そしてレンちゃん といっしょに育てよう」と考えた(誘拐???)
・木の上で見つけられた子どもは「めっけ鳥」と名付けられ、ふたりの子どもは仲よく育った
・ある晩のこと、料理番のザンネばあさんがたくさんの水を用意していた
・ザンネばあさんは誰にも話さないという約束で「あしたの朝早く、番人が狩りに出かけたら、めっけ鳥を料理しちまうのさ」とレンちゃんに話した
・翌朝、番人が狩りに出かけると、レンちゃんがめっけ鳥に話しかけた
・(注3) 「めっけ鳥、わたしをおいていかないでね。そしたらわたしもあなたをおいていかないから 」(※ )
・めっけ鳥が約束すると、レンちゃんはザンネばあさんの企みを話した
・料理番のおばあさんはふたりともいなくなっているのに気付き、三人の下男にあとを追いかけさせた
・森の手前にすわっていた子どもたちは下男が遠くから駆けてくるのを見て、レンちゃんがめっけ鳥に言った
・(※を繰り返し )
・めっけ鳥が約束すると、レンちゃんは「あなたはバラの枝になって。わたしはそこに咲くちいさなバラの花になるから」と言った
・下男はバラの茂みとバラの花しかなかったので、家に戻って料理番にそう話すと、料理番のおばあさんは「この間抜けどもが!バラの枝なんかまっぷたつに切って、それからバラの花をもぎとって家に持って帰ってこなくちゃだめだろう。とっとと行って、そうしてくるんだ!」としかりつけた
・子どもたちには三人が遠くからやってくるのが見えたのでレンちゃんが言った
・(※を繰り返し )
・めっけ鳥が約束すると、レンちゃんは「あなたは教会になりなさい。わたしはその中のシャンデリアになるから」と言った
・下男は教会と中のシャンデリアしかなかったので、家に戻って料理番にそう話すと、料理番のおばあさんは「この馬鹿者どもが!なんで教会をめちゃめちゃに壊して、シャンデリアを持って帰らないんだ?」としかりつけた
・料理人のおばあさんは自分で出かけていくことにした
・子どもたちには三人が遠くからやってくるのが見え、そのうしろを料理人のおばあさんがよろよろ歩いていたのでレンちゃんはめっけ鳥に言った
・(※を繰り返し )
・めっけ鳥が約束すると、レンちゃんは「あなたは池になって、わたしはそこで泳ぐ鴨になるから!」と言った
・料理番は池に体をかがめて、水を飲みほしてやろうと思った
・鴨がすばやく泳いでくると、くちばしでおばあさんをつかまえて水の中に引きずりこんだ
・年とった魔女は溺れてしまった
・子どもたちはいっしょに家に帰って心から喜んだ
・もしふたりが死んでいなければ、いまでもふたりは生きているでしょう
収録:上51 めっけ鳥
特徴
・(注1) 番人⇒森林官 (以降も同じ)
・(注2) レンちゃん⇒レンヒェン (以降も同じ)
・(注3) 「めっけ鳥、わたしを見捨てないでね。そしたらわたしもあなたを見捨てないから 」(※ )
052. つぐみひげの王さま König Drosselbart
あらすじ
・王さまに美しいがうぬぼれの強いひとり娘がいた
・王さまは盛大な宴を催して娘と結婚をしたいと思っている男たちを全員そこに招待した
・男たちは身分や家柄にしたがって一列に並ばされた(先頭に王さま、次に公爵、侯爵、伯爵、男爵、そして最後に貴族)
・(注1) お姫さまはどの男にも必ずなにかケチをつけた
・なかでも、先頭近くの立派な王さまを、あごが曲がっていたので「つぐみの髭」と呼んだ
・お姫さまの王さまは人のことを馬鹿にしているのに腹を立てて、「娘には誰でもいいから一番最初に戸口にやってきた乞食と結婚させる」と宣言した
・(注2) ある日、吟遊詩人 がやってきてお姫さまの部屋の窓の下で歌をうたい始めた
・王さまはその汚ない身なりの男をお婿さんとして結婚式を行ない、乞食とお姫さまを城から出した
・ふたりは大きな森を通りがかり、お姫さまは「まあ、この素晴らしい森は誰のものかしら?」と乞食に聞いた
・乞食は「つぐみの髭の王さまのものさ、王さまと結婚していたらこの森はあなたのものだったのに!」と答えた
・お姫さまは「わたしったら、かわいそうな娘だこと、ああ、つぐみの髭の王さまと結婚しとけばよかったわ!」と返した(※)
・ふたりは草原を通り、お姫さまは「この素晴らしい緑の草原は誰のものかしら?」と聞いた
・乞食は「つぐみの髭の王さまのものさ、王さまと結婚していたらこの草原はあなたのものだったのに!」と答えた
・(※を繰り返し )
・ふたりはある町を通り、お姫さまは「ねえ、この素晴らしい大きな町は誰のものかしら?」と聞いた
・乞食は「つぐみの髭の王さまのものさ、王さまと結婚していたらこの町はあなたのものだったのに!」と答えた
・(※を繰り返し )
・お姫さまの返答に吟遊詩人はきげんが悪くなった
・ふたりがちいさな家に来た時に、お姫さまは「まあ、なんてちっぽけな家なのかしら。こんなみじめなちっぽけな家、誰のものかしら?」と聞いた
・(注3) 乞食は「この家がおれたちが住む家さ」と答えた。
・「火を起こして、水を火にかけて、おれに食事を作ってくれ」と男に言われたが、娘は料理を知らず、男が手伝ってどうにか食事を終え、ベッドに入って眠った
・(注4) 朝になると、お姫さまは早起きをして働かなくては ならなかった
・何日か過ぎて、男は「稼がないと暮らしは続かないのでおまえは籠を編んでくれ」と告げる
・男が柳の枝を切って、お姫さまは籠を編み始めたが枝が手に刺さって傷になった
・男は「糸紡ぎのほうがいいだろう」と言ったが、お姫さまが糸を紡ぐと、糸が指にくいこんで血がしたたり落ちた
・(注5) 男はあきれて、「つぼの商売を始めるから、おまえは市場へ行って売ってくるんだ」と言った
・商売はうまくいき、人びとは美しい女から言い値でつぼを買うだけでなく、お金だけ払ってつぼを受け取らない客もたくさんいた
・男は新しいつぼを仕入れ、お姫さまはまた市場に行くが、ひとりの酔っ払った軽騎兵が馬でやってきてつぼの真ん中へ乗りこんできたので何千ものかけらになって飛び散ってしまった
・(注6)
女は恐ろしくなって、一日じゅう家へ帰る勇気が出なかった
女がようやく家に帰ると乞食はいなくなっており、しばらく貧しく暮らした
ひとりの男がやってきて女を結婚式に招待した
女は残りものを持ち帰ろうとして、コートの下に隠したつぼをスープでいっぱいにし、大きな革の袋には料理の残りを詰めこんだ
女が帰ろうとした時、招待客のひとりが踊りに誘った
女は断り切れずにいっしょに行こうとしたとき、つぼが落ちてスープが床に流れ、袋から料理がとび出した
お客たちはそれを見て大笑いして、あざけった
女は恥ずかしくて戸口からとび出して逃げ帰ろうとしたが、階段の途中でひとりの男に連れ戻された
・それはつぐみの髭の王さまで、「わたしと乞食は同じ人間だったのだよ。それにつぼを粉々にした軽騎兵もわたしだったのさ。これもみんなおまえをよくしてやろう、そしておまえを罰してやろうとして、したことなんだ。だっておまえは以前わたしを馬鹿にして笑っただろう」と明かした
・つぐみの髭の王さまは「今からわたしたちの結婚式を祝うとしよう」と言った
・父親の王さまと城の家来たちもみんなやってきた
・女はお姫さまにふさわしくきらびやかに着飾り、つぐみの髭の王さまとの結婚の祝宴が催された
・(注7) (ここで終わり)
収録:上52 つぐみの髭の王さま
特徴
・(注1) お姫さまはどの男にも必ずなにかケチをつけた。具体例の挿入:
1人は太りすぎていたので「ワイン樽」
もう1人は背が高すぎたので「のっぽのひょろひょろ歩けやしない」
3人目は足が短かったので「短足のでぶで、ぶきっちょ」
4人目は青白かったので「青ぴょうたんの死神」
5人目は赤ら顔をしていたので「赤いとさかのオンドリ」
6人目はからだが曲がっていたので「オーブンのうしろでかわかしたような生木」
とつぎつぎにあら探しをした
・(注2) 吟遊詩人⇒楽士 (以降も同じ)
・(注3) 乞食は「この家がおれたちが住む家さ」と答えた。挿入: お姫さまは低いドアを通るためにかがまねばならず、「どこに召使いがいるの」とお姫さまが聞きくと、楽士は「してもらいたいことは、自分でやらなくてはならん。」と言いかえした。
・(注4) 朝になると、お姫さまは早起きをして家事をしなくては ならなかった
・(注5) 男はあきれて、「つぼの商売を始めるから、おまえは市場へ行って売ってくるんだ」と言った。挿入: 「父の国から人々が市場にやってきて私を見たら、なんと言ってあざ笑うでしょう」とお姫さまは思ったが、飢え死にしたくないので言われたようにするしかなかった
・(注6) 別の展開:
お姫さまはどうしていいかわからずに泣きだし、「主人になんと言ったらいいかしら」と声をあげた
お姫さまは走って家に帰るとこのできごとを夫に話した
夫は「ちゃんとした仕事には使いものにならん」と言うと、王さまのお城で台所の下ばたらきに雇ってもらう約束をしてきた
お姫さまは台所の下ばたらきとして料理人の手伝いをし、2つの小さなつぽの中にもらった残り物を入れて持ち帰って食べる暮らしをした
一番上の王子の結婚式が開かれることになった
女は上にあがってホールのドアの前に立って見物した
美しく着かざった人たちを見て、お姫さまは貧乏におとしいれることになった自分の気位の高さとごうまんさを呪った
お姫さまは召使いたちが投げてくれる料理のかけらを小さなつぼに入れて持ち帰ろうとしていた
ビロードと絹の服を着て金のネックレスを身につけた王子が入ってくると、ドアのところに立っていたお姫さまの手をとってダンスにさそった
お姫さまはそれがつぐみひげの王さまと気付いてびっくりした
抵抗するお姫さまを王子はぐいっと広間に連れだしたため、つぽが落ちてスープが流れだし、ごちそうのかけらがまわりにとびちった
そこにいた人々はそれを見てあざ笑った
お姫さまははずかしくてドアからとびだして逃げようとしたが、階段の上で一人の男に追いつかれて連れもどされた
・(注7) 挿入: わたしは思うのだけど、きみもわたしも、その場にいあわせていたらよかったのにね。
053. 白雪姫 Schneewittchen
特徴
・「雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒く」が具体的に何を指すか明記していない
・王妃は実の母親(出産後も健在)
・白雪姫が7歳の話
・王妃は狩人に、殺害して肺と肝臓を持ち帰るように命令
・狩人は殺害を実行せず、猪の肺と肝臓を持ち帰る(王妃が食べる)
・7人の小人の名前は明記していない
・王妃自らの殺害は3色(黄赤青)の絹糸 の胸紐、毒の櫛(くし)、毒リンゴの3回
・遺体を欲した王子が家来に棺を運ばせる途中で、腹立たしく思った家来が棺を開けて白雪姫の背中を殴った拍子に 毒リンゴが喉から取れる
・結婚式が開かれて王妃も招待され、赤く焼けた鉄の靴を履かされて踊り死ぬ
収録:上53 白雪姫
特徴
・雪のように白いのは「肌」 、血のように赤いのは「ほお」 、黒檀のように黒いのは「髪」
・王妃は継母(第2版以降では実母は出産直後に死亡)
・白雪姫が7歳の話
・王妃は狩人に、殺害して肺と肝臓を持ち帰るように命令
・狩人は殺害を実行せず、猪の肺と肝臓を持ち帰る(王妃が食べる)
・7人の小人の名前は明記していない
・王妃自らの殺害は色とりどりの絹糸 の胸紐、毒の櫛(くし)、毒リンゴの3回
・遺体を欲した王子が家来にガラスの棺を運ばせる途中で、家来が躓いて揺れた拍子に 毒リンゴが喉から飛び出す
・結婚式が開かれて王妃も招待され、赤く焼けた鉄の靴を履かされて踊り死ぬ
ディズニー版(1937年)
・王妃は継母
・白雪姫が10代後半の話
・7人の小人に名前がある
Doc(ドック) – リーダー格で物知りだがちょっと言葉がつっかえる
Grumpy(グランピー) – 不機嫌で頑固だが本当は優しい
Happy(ハッピー) – いつも陽気でニコニコ
Sleepy(スリーピー) – 眠そうにしている
Bashful(バッシュフル) – 恥ずかしがり屋で照れ屋
Sneezy(スニージー) – よくくしゃみをするアレルギー体質
Dopey(ドーピー) – 無口でちょっとドジ、末っ子のような存在
・殺害方法は毒リンゴのみ
・王子が棺の中の白雪姫にキスをする
・王妃の最期は崖から落ちて死ぬ(雷に打たれ転落)
054. 背嚢と帽子と角笛 Der Ranzen, das Hütlein und das Hörnlein第2版以降で差し替え
タイトル変更:上37 ナプキンと背嚢と砲蓋と角笛
あらすじ
・シュバルツェンフェルゼに住む 貧しい3人の兄弟がスペインを目指して 旅にでる
・3人は銀でできた山に到着する
・長男はこれで満足して持てるだけの銀を持って家に帰る
・残る2人は旅を続けて、金でできた山に到着する
・次男はこれで満足して持てるだけの金を持って家に帰る
・三男は旅を続けるが、森の中で道に迷う
・三男は「おなかいっぱい食べたい」という願いを叶えてくれるナプキン を手に入れる
・三男は旅を続けて炭焼きに出会う
・三男は炭焼きにナプキンで食事を提供し、ナプキンと背嚢(鉄砲を持った上等兵と6人の兵隊が出てくる)を交換する
・三男は背嚢の兵隊を使ってを炭焼きからナプキンを奪う
・三男は別の炭焼きにナプキンで食事を提供し、ナプキンと帽子(大砲の列が出てくる)を交換する
・三男は背嚢の兵隊を使ってを2番目の炭焼きからナプキンを奪う
・三男は3番目の炭焼きにナプキンで食事を提供し、ナプキンと角笛(町が瓦礫になる)を交換する
・三男は背嚢の兵隊を使ってを3番目の炭焼きからナプキンを奪う
・三男はようやく帰宅するが、兄2人、町の人、王さまと敵対する
・三男は背嚢の兵隊、帽子の大砲、角笛を使って町を破壊して一人ぼっち になる
初版は上54 愚かなハンス
原文の抜粋(1812年初版)
Es war ein König, der lebte mit seiner Tochter, die sein einziges Kind war, vergnügt: auf einmal aber brachte die Prinzessin ein Kind zur Welt, und niemand wußte, wer der Vater war; der König wußte lang nicht, was er anfangen sollte, am Ende befahl er, die Prinzessin solle mit dem Kind in die Kirche gehen, da sollte ihm eine Citrone in die Hand gegeben werden, und wem es die reiche, solle der Vater des Kinds und Gemahl der Prinzessin seyn. Das geschah nun, doch war der Befehl gegeben, daß niemand als schöne Leute in die Kirche sollten eingelassen werden. Es war aber in der Stadt ein kleiner, schiefer und buckelichter Bursch, der nicht recht klug war, und darum der Hans Dumm hieß, der drängte sich ungesehen zwischen den andern auch in die Kirche, und wie das Kind die Citrone austheilen sollte, so reichte es sie dem Hans Dumm. Die Prinzessin war erschrocken, der König war so aufgebracht, daß er sie und das Kind mit dem Hans Dumm in eine Tonne stecken und aufs Meer setzen ließ. … Da freute sich der König und sie lebten vergnügt zusammen, und nach seinem Tod ward Hans Dumm König.
(※全文は非常に長いため、上で示した冒頭と結び部分の代表的な抜粋です。内容は同じく原文全文がウィキソースに掲載されています。)
日本語訳(ハンスのばか)
昔々、ある王が娘と幸せに暮らしていました。その娘が突然子どもを産みましたが、誰が父親かわかりませんでした。王は困り果て、ついに娘に子どもを連れて教会へ行かせました。そこで子どもが手に持つレモンを男に渡した人が、その子の父親であり、娘の夫になるようにと命じたのです。しかし教会には上品な人しか入れないはずでした。
町には背の低い、曲がっていて、少し知恵の足りない若者がいました。そのため「Hans Dumm(ばかのハンス)」と呼ばれていましたが、彼は人々の間にまぎれて教会に入り込み、子どもからレモンを渡されてしまいました。
姫は青ざめ、王も激怒して、姫と子ども、それにハンスを樽に入れて海に流しました。樽はすぐに流れ、海の上で三人きりになると、姫はハンスに罵声を浴びせましたが、ハンスは「私はあなたに子どもができることを願ったことがある。それがかなったのだ」と言いました。そこで姫は食べ物を願うように頼み、ハンスはじゃがいもの山盛りを出しました。
空腹が満たされると、ハンスは立派な船を願い、それが現れました。船は陸へ向かい、着くとハンスは城を願い出て、そこに豪華な城が現れました。やがてハンス自身も若く聡明な王子になるように願い、その通りになり、姫と結婚して幸せに暮らしました。
ある日、年老いた王が迷ってその城にたどり着きました。娘は父とわかりましたが、父は娘だと気づきませんでした。帰るとき、娘は父のポケットに黄金の杯をそっと入れました。父は盗んだと誤解されましたが、娘は自分だと名乗り出て、父に「人をすぐに疑ってはいけない」と教えました。王は喜び、皆で幸せに暮らし、やがてハンスが王になったのでした。
特徴
・貧しい3人の兄弟が飢えに苦しんで 旅にでる
・三男は「おなかいっぱい食べたい」という願いを叶えてくれるテーブルクロス を手に入れる
・このテーブルクロスがKHM036 のテーブル(クロス) だと認識する
・三男は町が完全な瓦礫となる前に角笛を吹くのを止めて 王位について国を治めた
055. ルンペルシュティルツヒェン Rumpelstilzchen
特徴
・粉ひきが王様に「娘は藁を金に換える術を持っている」と語り、小人が登場して代行するまでがあらすじのように 語られている
・2日目と3日目も同様(あらすじ風)
・小人の名前を当てる猶予期間3日の内、名前を言うのは3日目だけ
・正解のヒントを与えるのは狩りから戻った王様
・3日目にやってきた小人を「やっかいものの小人」 と記述
・名前を当てられた小人は2度とやって来なかった
収録:上55 ルンペルシュティルツヒェン
特徴
・粉屋は王さまに見栄をはって 「娘はワラをつむいで 金にすることができる」と語る(発言の理由付けと手段の明示)
・王さまの命令、小人の登場、金をつむぐ過程が肉付けされている
・2日目も同様に肉付けされている
・3日目に小人側から要求を出すのは娘が「何もあげるものがない」と言ったから (理由付け)
・小人の名前を当てる猶予期間3日の内、1日目と2日目にも名前を言っている
・正解のヒントを与えるのはお妃(粉屋の娘)が出した使いの者
・名前を当てられた小人は悔しがって自分を真っ二つに引き裂いた
056. 恋人ローラント Der Liebste Roland
あらすじ
・(注1) ひとりのおかあさんがいた
・おかあさんは実の娘ばかりかわいがって、継娘は憎んでいた。ところが継娘のほうがほんとうの娘よりも千倍も美しく、気立てのいい子だった
・継娘の前掛けを見て、実娘はその前掛けを欲しいとおかあさんにたのんだ
・おかあさんは「前掛けをおまえのものにしてあげるよ。今晩、おまえはベッドのうしろのほうに寝て、姉さんをずっと前のほうに押し出しとけば寝ちまったら首をちょん切ってやるから」と告げた
・(注2) 継姉さんは話をすべて聞いていて、妹を先にベッドの後方で寝させて、寝こんでから妹を前の方へ寝かせて自分はずっとうしろのほうに横になった
・おかあさんは手さぐりで確認すると、斧で実の娘の首を切り落としてしまった
・(注3) おかあさんが行ってしまうと、娘は恋人のローラントのところへ行って成り行きを話し、逃げようと提案する
・(注4) 娘は「かあさんの魔法のつえを取ってきたの。きっと役に立つわ」と言う
・ふたりで死んだ妹の頭を取り上げて血のしずくを三滴(一滴をベッドの前、一滴を台所、一滴を階段)たらしてから逃げた。
・(注5) 朝になって、おかあさんが自分の娘を「どこにいるんだい?」と呼ぶと、「ほら、こっちの階段。掃いてるとこよ」と血のしずくが答えたので、おかあさんはおもて へ行った
・階段には誰もおたず、次に「ほら、こっちの台所。かまどで暖まってるとこよ」と二番目の血のしずくが言うが誰も見つからず、最後に「ほら、こっちのベッド。寝てるとこよ」と三番目の血のしずくが言うと血まみれになっている自分の娘を見つけた
・おかあさんは怒り、遠くまでも見ることができる魔女の力で二人が走って逃げていくのを見つけた
・(注6) おかあさんは「七マイル靴」を履いてすぐに追いつくが、娘は魔法のつえで自分は湖に、ローラントを湖を泳ぐガチョウ に姿を変えた
・継母はガチョウをパンでおびき寄せようとしたが、夜になってもうまく行かず家に戻った
・ふたりは人間の姿に戻って先へ逃げるが、夜が明けるとまた魔女に追いかけられた。
・娘はいばらの生け垣の真ん中に咲く美しい花に姿を変え、ローラントをヴァイオリン弾きに変えた
・魔女のおばあさんはヴァイオリン弾きに「花を折ってもいいか」と聞き、生け垣の中に這っていって花に向かって手をのばした
・(注7) 「ぼくはそれに合わせてヴァイオリンを弾こう」とヴァイオリン弾きは言うと、魔女が生け垣の真ん中に来た時に弾きはじめた。
・魔女は踊らずにはいられず、やめることができできなかったので、いばらの棘で服が体から引きちぎられて血だらけになって倒れて死んでしまった
・ふたりは自由になり、ローラントは「父親のもとに帰って結婚式の用意をする」と伝えた
・娘は「そのあいだ赤い野の石に姿を変えて、戻ってくるまでここで待っています」と返したが恋人は戻って来なかった
・(注8) ローラントは娘のことなど忘れてしまっていた
・娘はとても悲しくなって花に姿を変えた
・羊飼いがこの花を見つけて家に持ち帰った
・このときから羊飼いの家では不思議なこと(朝には家事が片付いている、昼には食事がテーブルに用意されている)が起こった
・羊飼いが女占い師に聞いてみると「それは魔法だから、朝早く起きて動くものが見えたら白い布を投げかけなさい」と言った
・羊飼いが実行すると、花がもとの姿に戻って娘が立っていた
・羊飼いは結婚を申し出るが、娘はただお仕えして家の中の仕事をしていたいと言って断った
・ローラントが別の女の人と結婚式を挙げようとしていると耳に入り、昔からのしきたりに従って国じゅうの人が結婚式で歌を歌うことになった
・(注9) 忠実な 娘も出かけていった
・娘は最後まで歌おうとしなかったが、歌い始めるとローラントはすぐに誰であるか分かった
・ローラントは「そこにいる人こそ、わたしの花嫁さん、ほかの誰とも結婚するつもりはありません」と言って娘と結婚した
・娘の悲しみは終わり、喜びが始まった
収録:上56 恋人のローラント
特徴
・(注1) ひとりのおかあさんがいた。(挿入&ネタばらし) おかあさんは本物の魔女で2人の娘がおり、一方の実の娘は醜くて意地悪だった
・(注2) 継姉さんは先にベッドに入らされるが、妹が眠ってしまうと入れ替わった
・(注3) ローラントは別の家 に住んでいる(同棲は宗教的な問題があったと思われる)
・(注4) 魔法の杖を取ってくるのはローラントの発案 で、二人で杖を取りに戻る
・(注5) 「おもて」と特定していないので2階への階段の可能性もある
・(注6) おかあさんは「七マイル靴」を履いてすぐに追いつくが、娘は魔法のつえでローラントを湖に、自分はカモ に姿を変えた
・(注7) 「ぼくはそれに合わせてヴァイオリンを弾こう」とヴァイオリン弾きは言うと、魔女が生け垣の真ん中に来た時に弾きはじめた。(挿入) それは魔法の踊りの曲だった
・(注8) ローラントは他の女の罠にかかっていた
・(注9) 娘は本当は行きたくなかったが、他の娘たちが誘いに来て連れて行かれた
057. 金の鳥 Der goldene Vogel
あらすじ
・(注1) ある王さまが大きな庭園をもっていて、金のりんごが実るりんごの木が一本あった
・りんごが熟した翌朝、りんごがひとつなくなっていた
・(注2) 王さまは庭師 に毎夜の見張りを命じた
・庭師は一番上の息子に見張らせたが、夜中の十二時に眠ってしまいりんごがまたひとつなくなっていた
・翌晩、庭師は二番目の息子に見張らせたが、この息子も夜中の十二時に眠ってしまいさらにひとつりんごがなくなっていた
・三番目の息子の見張りには気が進まなかったが、結局、見張りを許した
・三番目の息子は純金でできた鳥がりんごをついばむのを見て矢を放つが、金の羽を一枚射落としただけで飛び去ってしまった
・金の羽は王さまに届けられるが、その価値を知った王さまは鳥をまるまる一羽手に入れることを望んだ
・(注3) 一番上の息子が出かけていき、森の手前にきつねがいたので小銃 をかまえた
・きつねは命乞いをして「金の鳥を探すなら、夕方にたどりつく二件の宿屋の内、見かけが悪い方へお入りなさい!」と忠告するが、息子は無視して発砲し、きつねは森へ逃げていった
・息子は二軒の宿屋がある村へやってきて、楽しそうな宿屋に入ると贅沢三昧して鳥のことも家のことも忘れてしまった
・二番目の息子にもまったく同じことが起こり、大騒ぎをしている宿屋から声をかける兄の誘惑に負けて上機嫌に暮らした
・(注4) 末の息子が出かけると言ったが、おとうさんはこの息子をたいそうかわいがっていたので帰ってこないことを恐れて 、許そうとしなかった
・末の息子にようやく許可が下りると、同じように森の手前できつねに出会って忠告を受けた
・末の息子はきつねの命を奪おうとしなかったので、きつねは尻尾の上に乗せると飛ぶように村の前まで連れて行き、息子は忠告どおり貧しそうな宿屋へ入って一晩休んだ
・(注5) 翌朝、きつねが道に立って いた
・きつねはまっすぐ行くと城があり、眠っている兵隊にかまわず中に入り、最後の部屋に金の鳥が木の籠にぶらさがっていると教えた
・(注6) ただし、となりにある豪華な金の籠に鳥を移し替えようとするとまずいことになると忠告した
・きつねは尻尾の上に乗せると飛ぶように城の前まで連れて行った
・きつねの言ったとおりに息子が部屋に入っていき、木の籠に入った金の鳥を見つけるが、みすぼらしい籠では笑いものだと考えて金の籠へ移した
・鳥が騒いだので兵隊たちが目をさまし、捕まった息子は翌朝、裁判で死刑を言い渡された
・(注7) けれども、「風のように速く走る馬を持ってきたら命を助けて金の鳥も与える」と王さまは交換条件を伝えた
・息子は途方に暮れるが、きつねが再び助け舟を出す
・道をまっすぐに行った先にある城のうまやに金の馬がいて、うまや番たちは眠りこけているのでそっと連れだすことができる、と教えた
・ただし、馬に着けるのは木と革でできたみすぼらしい鞍で、横に掛けてある金の鞍ではだめだと忠告した
・きつねは尻尾の上に乗せると飛ぶように城の前まで連れて行った
・(注8) なにもかもきつねの言ったとおりで、うまや番たちはいびきをかいていた。そして手に金の鞍を持っていた
・(注9) 息子は金の馬にふさわしいりっぱな鞍を着けようとして、うまや番からりっぱな鞍を取ろうとしたので うまや番が目をさました
・うまや番に捕まった息子は翌朝、死刑を言い渡された
・(注10) けれども、「美しいお姫さまを連れてきたら、命は助けて金の鳥と金の馬 も与える」と交換条件が出された
・息子は途方に暮れるが、きつねが再び助け舟を出す
・(注11) まっすぐに行くと夕方にはお城 に着く、夜十二時になると お姫さまが湯殿で湯を浴びるので入っていってキスをすればお姫さまを連れてくることができる、と教えた
・ただし、お姫さまがご両親に別れのあいさつをするのを許してはいけない、と忠告した
・きつねは尻尾の上に乗せると飛ぶように金の城の前まで連れて行った
・なにもかもきつねの言ったとおりで、息子はお姫さまに湯殿でキスをした
・お姫さまと一緒に行くことになったが、暇乞いを許したため捕まえられてしまう
・(注12) 王さまは「窓の前にそびえている山を八日間 で崩して平らにしたら娘をやる」と交換条件を出す
・息子は七日も働いたがはかどらず、七日目の晩にきつねが助け舟を出す
・翌朝には山は跡形もなくなっており、若者はお姫さまと城を出る
・きつねがやってきて、お姫さまと馬と鳥の三つとも手に入れる指南をする
・最初に、「美しい姫を命じた」王さまにお姫さまを渡して金の馬をもらい、馬上で城のみんなにお別れの握手をし、一番最後にお姫さまと握手をしながら馬の上に引き上げて走って帰る
・次に、「金の馬」を命じた」王さまの所で馬に乗ったまま金の鳥を受け取って大急ぎで逃げる
・若者とお姫さまが大きな森まで来ると、きつねがやってきて「自分を撃ち殺して、首と四本の脚を切り落としてください」とたのんだ
・若者が拒むと、きつねは代わりに「絞首台の肉を買わないことと、井戸のへりに腰かけないこと!」のふたつの忠告をした
・二人は旅を続け、兄達がいる村にやってきた
・兄達が首吊りになろうというところだったが、弟は要求された金を払って兄達を自由の身とした
・4人はきつねにはじめて出会った森へやってきて、ふたりの兄さんは「この井戸端で一休みしよう」と提案する
・弟が井戸のへりに腰をかけると、兄さんたちは弟を井戸の中へ投げ落とし、お姫さまと馬と鳥を連れて王さまのところへ行った
・王さまに手柄を報告するが、馬は食べなくなり、鳥はさえずらなくなり、お姫さまは泣いてばかりだった
・末の弟が落ちたのは空井戸で、骨はどこも折れていなかった
・おなじみのきつねがまたやってきて弟を助け出すと、弟は貧しい人の服装をして王さまの屋敷に戻った
・弟がやってくると、馬は食べ始め、鳥はさえずり、お姫さまは泣きやんだ
・(注13) 弟は 王さまの前にやってくると、兄さんたちの悪事と事のてんまつをすべて明らかにした
・(注14) 兄さんたちは捕まって死刑になり、弟はお姫さまを、そして王さまが死んだあとには 王国ももらった
・しばらくして弟がもう一度あの森へ出かけていくと、きつねが再び「自分を撃ち殺して、首と四本の脚を切り落としてくれ」と必死にたのんだ
・弟がそうしてやるときつねは人間に姿を変えました。きつねは女王さまの兄弟で、とうとう救われた
収録:上57 金の鳥
類話:「上64 愚か者の話-I」
愚か者の話-I. 白い鳩
ある王さまの屋敷の前 に、一本のりっぱな梨 の木があった。毎年みごとな実をつけたが、実が熟れると一晩のうちに残らず取られてしまい、誰の仕業か誰にもわからなかった。
王さま には三人の息子があり、一番下の息子は馬鹿者だと思われていて、ぼけなすと呼ばれていた。
王さまは一番年上の息子に、一年のあいだ 、毎晩、梨の木の下で見張りをして泥棒を捕まえるように命じた。一番上の息子は言われたように見張りをして、梨に実が実って熟れ始めると、より一層見張りにはげんだ。いよいよ明日には摘み取ろうという最後の夜、息子は眠りこんでしまい、目をさましてみると実はすべてなくなっていた。
そこで王さまは二番目の息子に命じたが、この息子も最後の晩に眠気を我慢することができず、翌朝、梨はひとつ残らず摘み取られていた。
とうとう王さまがぼけなすに見張りを命じると、屋敷にいる誰もが笑った。ところが、ぼけなすは最後の夜も眠気をはねのけて、一羽の白い鳩が最後の実を持って飛び去ろうとしたときにあとを追いかけた。鳩は高い山の上へ飛んで行って岩の裂目に消えてしまった。
ぼけなすが振り返ると、小さな白髪の小人が横に立っていたので、「神のお恵みがありますように!」と話しかけると、「あなたのお言葉のおかげで、まさにこの瞬間、わたしに神のお恵みがありましたよ。あなたの言葉が、わたしを魔法から救ってくれました。さあ、岩を降りていきなさい。そうすれば幸運にめぐり会えるでしょう」と小人は答えた。
ぼけなすはいくつもの階段がずっと下までつづいている岩を降りていった。下まで降りていくと、白い鳩が蜘の巣に絡みつかれて動けなくなっていたが、最後の糸をどうにか断ち切って巣から抜け出て来ると、目の前には美しいお姫さまが立っていた。魔法が解かれたお姫さまはぼけなすの奥方になり、ぼけなすは金持ちの王さまになって賢く国を治めた。
特徴
・(注1) ある王さまが城の裏に遊歩道のある 庭園をもっていて、金のりんごが実るりんごの木が一本あり、熟したりんごの数が数えられた
・(注2) 王さまは自身の息子(以下、庭師→王様) に毎夜の見張りを命じた
・(注3) 一番上の息子が出かけていき、森の手前にきつねがいたので火打ち石銃 をかまえた
・(注4) 末の息子が出かけると言ったが、おとうさんはこの息子には一番かんじんなものが欠けていると思って 、許そうとしなかった
・(注5) 翌朝、きつねが野原に座って いた
・(注6) ただし、となりにある空っぽの 豪華な金の籠に鳥を移し替えようとするとまずいことになると忠告した
・(注7) けれども、「風のように速く走る金の 馬を持ってきたら命を助けて金の鳥も与える」と王さまは交換条件を伝えた
・(注8) なにもかもきつねの言ったとおりで、馬丁たちはいびきをかいていた(うまや番が手に持っている記述を削除)
・(注9) 息子は金の馬にふさわしいりっぱな鞍を着けようとして、金の鞍が馬に触れると馬が大きな声でヒヒーンと鳴いたので 馬丁たちが目をさました
・(注10) けれども、「美しいお姫さまを連れてきたら、命は助けて金の馬 も与える」と交換条件が出された
・(注11) まっすぐに行くと夕方には金のお城 に着く、何もかもが寝静まったら お姫さまが湯殿で湯を浴びるので入っていってキスをすればお姫さまを連れてくることができる、と教えた
・(注12) 王さまは「窓の前にそびえている山を一週間 で崩して平らにしたら娘をやる」と交換条件を出す
・(注13) お姫様は 王さまに兄さんたちの悪事と事のてんまつをすべて明らかにした
・(注14) 兄さんたちは捕まって死刑になり、弟はお姫さまをもらって王様の後継になった
058. 犬とスズメ Der Hund und der Sperling
あらすじ
・(注1)
一匹のめす鹿が子どもを生んで、きつねに洗礼の立会人をたのんだ
きつねはすずめもそこへ呼び、すずめは仲のよい友達の飼い犬も招待したいと言った
飼い犬は飼い主に綱でゆわえつけられていたが、すずめは綱の糸を一本一本ついばんでほどいたので犬は自由になった
みんなが洗礼のごちそうに出かけていったが、犬はいい気になってぶどう酒を飲みすぎた
犬は頭が重たくて、帰路の途中で道の真ん中に寝ころんでしまった
・(注2) そこへ馬方が荷馬車に乗って やってくるとそのまま犬の体の上を通り過ぎようとした
・(注3) すずめが大声で「やめろ、そんなことをするとおまえの命をもらうぞ!(※) 」と言ったが車輪が犬の脚をくだいてしまった
・(注4) きつねとすずめは犬をひきずって帰り、犬を見た飼い主は馬方に埋葬するように言い、馬方は犬を荷馬車にのせると去っていった
・(注5)
すずめは馬車の横を離れずに飛んで大声で言った
(※を2回繰り返し)
それから一頭の馬の頭にとまって大声で言った
(※を2回繰り返し)
馬方は腹を立てて鉈を振り上げたが、鳥は空高く飛んで逃げてしまい馬の頭をなぐりつけて死んでしまった
・(注6) 馬方はその馬を置きっぱなしにして 残った二頭の馬と行くしかなかった
・(注7) すずめがまた戻ってきて 一頭の馬の頭の上にとまって大声で言った
・(※を繰り返し )
・馬方は「今度こそ」と打ちかかったが、またも馬を倒してしまった
・(注8) すずめは残った一頭の馬の頭の上にとまると大声で言った
・(※を繰り返し )
・馬方は腹を立ててなにも考えずに打ちかかったので、三頭ともみんな死んでしまった
・馬方は荷馬車を置きっぱなしにして行かなくてはならなかった
・(注9) 馬方は腹を立て、むしゃくしゃして家に帰った
・馬方がストーブのうしろに腰を下ろすと、馬方のあとを飛んできていたすずめが窓の外にとまって大声で言った
・(※を繰り返し )
・馬方は鉈で窓をたたき割ったがすずめには命中せず、すずめはストーブの上にとまって大声で言った
・(※を繰り返し )
・馬方は怒り狂ってストーブをたたき壊し、すずめがあちこちに飛ぶたびに家具、鏡、椅子、長椅子、机、そして最後には家の壁までたたき壊してしまった
・馬方はとうとうすずめを捕まえると口にほおばって呑みこんでしまった
・すずめは馬方のお腹の中ではばたき、口から頭を突き出して大声で言った
・(※を繰り返し )
・馬方は鉈をおかみさんに渡して「口の中のすずめをたたき殺してくれ!」と言った
・おかみさんは的をはずして馬方は死んでしまい、すずめはどこかへ飛んでいってしまった
収録:上58 忠実なスズメの名付け親 第二版以降は「犬と雀」という題になり、大が荷馬車に轢かれる前半部分がフィーメンニンの話によって差し替えられている。
特徴
・(注1) 別の展開:
牧羊犬の主人は性質が悪くてろくにえさをやらないような人だった
犬はがまんできなくなって通りに出るとスズメに会った
犬が「おなかがすいてるけど食べる物がない」と言うと、スズメは犬を町に連れ出した
犬とスズメが肉屋の前に来ると、スズメは肉をひと切れ落として犬がそれを食べた
スズメはほかの肉屋にも行って肉を食べさせた
犬は「まだバンはもらってないよ」と言い、スズメはパン屋で小さいパンを2、3つ食べさせた
犬がもっとほしいと言うのでスズメはほかの店でもパンを食べさせた
2人は町の外へ出て、曲がり角で犬が「ぼくはくたびれた。眠りたいな」と言うと道に横になってぐっすり眠りこんだ
・(注2) そこへ馬方が3頭立ての荷車でワイン樽を2つ積んで やってくるとそのまま犬の体の上を通り過ぎようとした
・(注3) すずめが大声で「やめろ、そんなことをするとあんたをひどい目にあわせてやるぞ!(以降も同じ修正) 」と言ったが犬はひき殺されてしまった
・(注4) 全体を削除
・(注5) 少し違う展開:
スズメは「犬をひき殺したしかえしに、荷車と馬をとりあげてやるぞ」とどなった
馬方は無視して先へ走らせた
スズメが馬車のほろの下に入りこんで樽の栓を口でつついて抜くと、ワインがすっかり流れだした
馬方は樽の1つからっぽになっているのに気づくと、「あれまあ、ひどい目にあったわい!」と大声をあげた(※)
スズメは「まだまだこれぐらいでひどい目とは言わせないぞ」と言って馬の頭にとんでいき、両目をつつきはじめた
馬方はそれを見るとクワでスズメをぶちのめそうとしたが、スズメが高くとびのいたので馬の頭を打ち、馬は死んでしまった
(※の繰り返し)
スズメは「まだまだこれぐらいでひどい目とは言わせないぞ」と言った
・(注6) 馬方が残った2頭の馬で走りつづけていると、(挿入) スズメがほろの下に入りこんで2つ目の樽の栓をつついて抜いたので、ワインが流れでてしまった
・(注7) すずめは一頭の馬の頭の上にとまって両目をつついた
・(注8) すずめは残った一頭の馬の頭の上にとまると両目をつついた
・(注9) 馬方は腹を立て、むしゃくしゃして家に帰ってみると、(挿入) スズメが何千羽もの鳥を連れて屋根裏に入り、小麦を全部食べてしまっていた
059. フリーダーとカーターリースヒェン Der Frieder und das Katherlieschen人名に冠詞!?
類話:KHM034
第2版以降で差し替え
人名に冠詞!?
このタイトルの der や das は人物を“役割・型・性格類型”として示すための冠詞です。
グリム兄弟の初期作品(初版)では特に顕著で、「フリーダーという男」&「カーターリースヒェンという女」でもなく、「ああいう男」&「ああいう女」という 類型化(Typisierung) です。
少し距離を置いた語り手目線であり、半ばからかい・観察対象を意図しています。
das Katherlieschen が特に重要で、本来なら die Katharina となるべきところを、 性別よりも幼稚さ・未熟さ・滑稽さが前面に出る -chen を付けて「カートリーちゃん」あるいは「お馬鹿で幼い女の子タイプ」として文法的に中性名詞(das)にしています。
つまり、読者は「この2人は“誰か”ではなく、“こういう人間”だ」と最初から理解させられます。
初版は「上59 白鳥の王子」
⇒『KHM127. 鉄の暖炉』 の注へ
あらすじ
・フリーダーと言う男とカーターリースヒェンと言う女がいた
・2人は若い夫婦で一緒に暮らしていた
・フリーダーが「戻ってきたらお腹が空いているから何か焼いた肉と爽やかな飲み物を用意しておいておくれよ」と言って畑に出かけた
・「ちゃんとしとくわ」とカーターリースヒェンは返事をした
・カーターリースヒェンはソーセージを焼きながら考えた
・「ソーセージが焼き上がる間に飲み物を注ぐことができるわ」と思いつき、地下室へ降りてビールジョッキに注ぎ始めた
・ビールを見ている内に「上にいる犬は繋がれてないからソーセージを持って行くかもしれない」と気が付いた
・カーターリースヒェンが地下の階段を登ると犬のシュピッツがソーセージを口に咥えて引きずりながら逃げていた
・後を追いかけて畑へ追い込んだが犬はカーターリースヒェンより速く、ソーセージを離しもせずに畑を越えていった
・「済んだことはしょうがないわ!」と言って、ゆっくりと歩いて戻りながら気を静めた
・その間にもビールは樽から流れっぱなしで地下室に全て流出した
・カーターリースヒェンはフリーダーが気付かないように上等の小麦粉をビールの上に蒔いた
・その瞬間、フリーダー用のビールジョッキも倒れたので、そこにも小麦粉を蒔いた
・カーターリースヒェンは自分のやったことに大喜びして「なんて綺麗、さっぱりとしたじゃない」と言った
・昼ごろにフリーダーが戻って来て「どんな御馳走を作ってくれたのかい」と訊いた
・カーターリースヒェンは「焼いていたソーセージを犬が取って行き、ビールは流れ出て、ジョッキもひっくり返したけど、地下室はちゃんと小麦粉で乾かしたから安心して」と答えた
・フリーダーは「そんなことをする必要はなかったんだよ!ソーセージは持っていかれ、ビールは樽から流れ出て、上等な小麦粉を蒔き散らしたなんて」と言った
・「その通りだわ。それを言っておいてくれなくちゃ」とカーターリースヒェンは言った
・夫は「女房がこんなんじゃあ、自分が用心しなくちゃ」と考えた
・フリーダーは貯めていたかなりの額のターラー銀貨を金貨に換えた
・「これは黄色いおもちゃのお金さ。壺に入れて牛小屋の飼い葉桶の下に埋めておくから触れてはいけないよ。でないと酷い目にあうぞ」とカーターリースヒェンに言った
・カーターリースヒェンは「きっと何もしないわ」と言った
・夫フリーダーが出かけると、小売商人たちが焼き物の鉢や壺を売りにやって来た
・若いおかみさんは「私はお金がないけど、黄色いおもちゃのお金で良ければ買ってもいいわよ」と言った
・「ダメなことがあるものか。ひとつ見せておくれよ」と言われたので「牛小屋へ行って牛の飼い葉桶の下を掘り起こしてよ、そうしたら見つかるわよ。私は近寄ってはいけないの」と言った
・悪者たちが牛小屋で掘り起こすと本物の金貨を見つけたので、そのお金を纏めると鉢や壺は家に置きざりにして走って逃げ出した
・カーターリースヒェンは食器には不足していなかったので壺の底を打ち抜いて垣根の杭に刺して家の周りに飾った
・戻って来たフリーダーが新しい飾りを見て「何をやらかしたんだい」と言った
・「買っちゃったのよ。隠してあったあの黄色いおもちゃのお金でね。でも、私は近寄らなかったわよ。小売商人たちが掘り出したに違いないわ」
・「お前は何てことをしてくれたんだ。あれはおもちゃのお金ではなく本物の金貨で、私達の全財産だったんだ。そんなことをしてはいけなかったんだよ」と言った
・「そうだったの。前もって言ってくれていれば良かったのに」とカーターリースヒェンは言った
・カーターリースヒェンは暫く考えて「金貨を取り戻しましょうよ。泥棒達の跡を追いましょう」と言った
・「やってみよう。でもバターとチーズを持って来いよ」とフリーダーは言った
・「いいわよ、フリーダー。持って行くわ」
・2人は出かけたが、フリーダーの方が足が丈夫だったのでカーターリースヒェンは後から着いて行った
・「私の方が有利だわ。戻るときには少し先になるもの」とカーターリースヒェンは考えた
・山の麓に来ると道の両側に荷車の通った深い轍があった
・「なんて可哀想な土地だこと」と思ってカーターリースヒェンは左右の轍にバターを塗った
・その途端にポケットからチーズが1つ落ちて山を転がって行った
・「上がって来た道を下りてはいかないよ。もう1つのチーズが連れて来ればいいんだ」と言って、カーターリースヒェンはもう1つのチーズを転がした
・2つのチーズは戻って来ないので、カーターリースヒェンは「あいつら仲間を待っているのね」と考えて3つ目のチーズを下へ走らせた
・チーズは3つ共戻って来ないので、「3つ目は道が分からず迷っているのかもね」と言って4つ目を使いに出した
・4つ目も変わらなかったので、カーターリースヒェンは怒って5つ目、6つ目を投げ下ろした
・これらが最後のチーズで、カーターリースヒェンは暫くチーズ達が戻って来るのを待った
・いっこうに戻って来ないので「いつまでも待っていると思っているのかい。後からおいで」と言ってカーターリースヒェンは先へ進んだ
・フリーダーは何か食べたくなって待っていた
・「さあ、お前が持ってきたものをくれよ」
・カーターリースヒェンは何も付けてないパンを渡した
・「バターとチーズは何処だい」とフリーダーは聞いた
・「バターを轍に塗ってやったの、そしてチーズはまもなく戻って来るわ。1つが逃げていったので、他のものを迎えにやったのよ」
・「そんなことをしてはいけなかったんだよ、バターを道に塗ったり、チーズを山から転がり落としたりするなんて」とフリーダ一が言った
・「そうだったわ、言っておいてくれなければいけなかったのよ」
・2人でパンを食べながらフリーダーは「出かける時に戸閉まりしてきたかい?」と聞いた
・「いいえ、前もって言ってくれなくちゃあ」
・「じゃあ、先へ進む前に家に戻ってカギを掛けてこいよ。それに“他”の食べ物を持って来ておくれよ」
・カーターリースヒェンは家に戻りながら「フリーダーはバターやチーズは好きではないのだ。干した果物を包に入れ、飲み物には酢を1杯、持って行ってあげよう」と考えた
・カーターリースヒェンは二枚戸の内、上の戸のカギは閉め、下の戸を外して肩に担ぐと「この戸を守っていれば家は安全だ」と思った
・カーターリースヒェンは「ゆっくり行けば行くほどフリーダーは休めるわ」と思ってのろのろと歩いた
・夫に追い着くと「家の戸を持って来たわ。自分で家を守ることができてよ」と言った
・「何て賢い女房だろう!事もあろうに下の戸を外すなんて。今から家に帰るには遅すぎるし、ここまで運んで来たんだから、この先も運べよ」とフリーダーは言った
・「戸は運ぶわ。干し果物と酢のビンは私には重すぎるから、ドアに吊り下げればドアが運んでくれるわ」
・2人は森の中で悪者たちを探したが見つからなかった
・暗くなったので2人は木に登って一夜を明かそうとした
・人の物を盗んだり、隠した物でも見つけるのが上手いあの連中が向かってきて、ちょうどフリーダーとカーターリースヒェンのいる木の下に腰を下ろした
・彼らは火を点けて盗んできた物を山分けしようとした
・フリーダーは木の反対側から昇り降りして石を集めた
・フリーダーは泥棒達に投げて殺そうとしたが石は当たらず、悪者たちは「風がモミの実を揺さぶり落としているぜ」と話した
・カーターリースヒェンは背負っていたドアが重いのは干し果物のせいだと思い、フリーダーの制止もあったが耐えきれず下に落とした
・干し果物が枝の間から転がり落ちると下にいた連中は「鳥が糞をしたな」と言った
・カーターリースヒェンは戸が益々食い込んで「酢をこぼさないとだめだわ」と言って、フリーダーの制止もあったが耐えきれず下にこぼした
・酢は連中に降り掛かったが、悪い連中は互いに「露が滴り落ちて来たんだな」と言った
・カーターリースヒェンは「食い込んで来るのは戸じゃあないかしら」と思い、フリーダーの制止もあったが耐えきれず下に落とした
・戸が大きな音を立てて落ちると、下にいた連中は「悪魔が木から降りて来た」と言って何もかも置いて逃げ出した
・朝早く2人は木から降りて来て、自分たちの金貨を残らず見つけて家に持ち帰った
・家に戻ったフリーダーが「カーターリースヒェン、これからはちゃんと働いてくれないとねぇ」と言った
・「フリーダー、ちゃんと働くわよ。畑に行くし、穀物を刈りとるわ」
・カーターリースヒェンは畑に来ると「刈りとる前に食べようかしら、それとも寝ようかしら。食べちゃおう!」とつぶやいた
・カーターリースヒェンは食事でお腹が一杯になると眠くなり、半分夢うつつで刈り始めたので自分の服を全部2つに切り、エプロンやスカート、シャツも切ってしまった
・カーターリースヒェンが眠って目覚めた時には半分裸で、「これ私かしら、それとも私ではないのかしら。私ではないわ!」と独り言を言った
・夜になってカーターリースヒェンは村へ駆け込み、夫の家の窓をノックして「フリーダー」と呼んだ
・「なんだい」
・「カーターリースヒェンが中に居るかどうかを知りたいのよ」
・「中にいて、横になって寝ているだろうよ」とフリーダーは答えた
・「なら、いいわ。私は間違いなく家に居るんだ」と言ってカーターリースヒェンは去って行った
・村の外でカーターリースヒェンは盗みに入ろうとしていた悪者たちを見つけたので「盗むのを手伝ってあげるわ」と言った
・悪者たちはこれは好都合だと思ったが、カーターリースヒェンは家の前で「何か持っていますか。私達が盗んであげるわ」と大きい声を張り上げた
・「酷いことになるぞ」と思った悪者たちは厄介払いしようと考えて「牧師が村の外れにカブ畑を持っているから、カブを引き抜いて来てくれ」とカーターリースヒェンに言った
・カーターリースヒェンが畑で抜いていると、1人の男が通り掛かって「悪魔がカブの中をほじくり返してやがる」と思って牧師に伝えた
・牧師は「こりゃあ大変だ」と言いつつも、「わしは足が麻痺していて不自由だ。出かけて行って呪文で追い払うことができないのだ」と言った
・男は「それなら牧師さまをおんぶ致しましょう」とおぶって出て行った
・2人が畑に来ると、ちょうどカーターリースヒェンが起き上がって背伸びをした
・「ああ、悪魔だ!」と牧師が叫び、2人とも大急ぎで逃げ出した
・牧師は足が悪かったのに背負って来てくれた丈夫な足の男より速く走ることができた
060. 2人の兄弟 Die zwei Brüder
兄弟の対比
第2版以降で差し替え 注に「上74 泉の子ヨハネスと泉の子カスパール」
原文の抜粋(1812年初版)
(※以下は1812年初版の原文冒頭部分です(全文の長さの関係で抜粋・要約形式で掲載)。全文はウィキソース等で公開されています。)
Ein König bestand darauf, seine Tochter solle nicht heirathen, und ließ ihr in einem Wald in der größten Einsamkeit ein Haus bauen, darin mußte sie mit ihren Jungfrauen wohnen, und bekam gar keinen andern Menschen zu sehen. Nah an dem Waldhaus aber war eine Quelle mit wunderbaren Eigenschaften, davon trank die Prinzessin, und die Folge war, daß sie zwei Prinzen gebar, die darnach Johannes-Wassersprung und Caspar-Wassersprung genannt wurden, und wovon einer dem andern vollkommen ähnlich war. Ihr Großvater, der alte König, ließ sie die Jägerei lernen, und sie wuchsen heran, wurden groß und schön. …
(物語は「双子の英雄」「偽の勇者の欺瞞」「死と復活」「呪いと救済」という古典的な民話モチーフを多く含みます。以下、二人が旅に出て、動物たちと出会い、ドラゴン退治や偽の英雄の陰謀、死からの復活、結婚、呪いと救出などの冒険が展開される物語です。)
原文の日本語訳
ある王が、自分の娘を結婚させたくないと強く望み、娘のために深い森の中に家を建てさせた。そこに娘は侍女たちと暮らし、他の誰とも会ってはならなかった。森の家のすぐ近くには不思議な効力をもつ泉があり、姫はその水を飲んだ。その結果、姫は二人の王子を産んだ。二人はヨハネス・ヴァッサースプルングとカスパール・ヴァッサースプルングと名付けられ、互いにまったく同じ姿をしていた。
老いた王である祖父は、二人に狩猟の仕方を教え、二人は大きく美しく成長した。やがて旅立ちの時が来ると、二人はそれぞれ銀の星の飾り、馬、犬を持たされて旅に出た。
森で二人は二匹のウサギを見かけ、撃とうとしたところ、ウサギたちは赦しを乞い、もし仕えるならば危険な時に助けになると言った。二人はウサギたちを連れて行くことにした。同じように、二匹の熊とも出会い、同様に味方につけた。
やがて二人は別々の道を進むことになり、森の大きな木に二本のナイフを突き立てて別れた。ヨハネスは森を進むと、巨大な七つの頭をもつドラゴンが現れた。ウサギと犬と熊の助けを借りて激しい戦いを行い、ついにヨハネスはドラゴンを倒し、その七つの頭を切り落とした。ドラゴンとの戦いで疲れ果てたヨハネスは、切り落とした頭とともにその場で眠り込んでしまった。
ところがそこへ王女の御者が通りかかり、ヨハネスとドラゴンの頭を見て、これは自分の手柄にしようと考え、眠っているヨハネスを刺し殺し、ドラゴンの七つの頭を持って王のもとへ向かった。御者はこれがドラゴンを退治した証だと言い、王女と結婚する権利があると主張した。
その頃、ヨハネスを助けた動物たちは戻ってきて、倒れた主人を見つけた。そのとき、蟻たちが自分たちの死体に近くの木の樹液を塗って生き返るのを見ていた熊が同じ樹液をヨハネスにも塗り、ヨハネスはよみがえった。ヨハネスはすぐに自分の勝利と姫を思い出し、城へ急いだ。
ちょうどそのとき、御者と姫の結婚式が開かれようとしていた。動物たちは城に入り、姫は動物たちに肉と酒を与え、主人を結婚式へ招くように命じた。宴の場で出された七つのドラゴンの頭を見たヨハネスは、自分が戦った証としてドラゴンの舌を取り出し、本当の英雄であることを示した。偽の英雄は追い出され、ヨハネスは姫と結婚した。
しばらくして、ヨハネスは狩りに出て、銀の角を持つ鹿を追った。しかし鹿には追いつけず、古い女のもとへ来た。女はヨハネスと彼の犬と熊を石に変えてしまった。
その頃、カスパールは木に残されたナイフを見つけ、その兄の運命が気になり町へ向かった。町に着くと、カスパールは妻を失ったヨハネスにそっくりであったため、姫は彼を本物の夫だと思い歓迎した。しかしカスパールは真実を語り、やがて石になった兄と仲間たちを見つけた。カスパールは姫に呪いを解かせ、兄ヨハネスは再び人間に戻った。
帰路、二人はどちらが姫の夫となるか話し合い、姫が最初に抱きついたほうが夫になることにした。姫がヨハネスに抱きついたため、ヨハネスが正式に夫となった。
注の原文(ドイツ語)
Eine vierte hessische Erzählung, welche die Brüder Johannes Wassersprung und Caspar Wassersprung (1812 nr. 74) nennt und nur im Eingange einige Besonderheit zeigt, lautet so:
Ein König bestand darauf, seine Tochter solle nicht heiraten …
注の日本語訳
第四のヘッセンの物語として『ヨハネス・ヴァッサースプルングとカスパール・ヴァッサースプルング』(1812 版 第74番)という話があり、その冒頭部分がいくつかの特徴を示す。内容は次のとおりである:
ある王が、自分の娘を結婚させないと固く決め、森の中の孤立した場所に家を建てさせた …(以下、物語の導入が続く)。
初版は「上60 金の卵」
原文の概要(1812年初版)
(原文全文のフリー公開が著作権・資料入手の制約上難しい)
Das Goldei ist ein bruchstückhaftes Märchen aus der ersten Auflage der Grimm’schen Kinder- und Hausmärchen.
Ein paar arme Besenbinderjungen holen täglich im Wald Reisig für Besen und das Schwesterchen verkauft sie. Dann findet der Jüngste auf einer Birke einen Vogel, der ihnen allmorgendlich ein Goldei legt, das sie dem Goldschmied verkaufen. Als der Vogel keine Eier mehr legt, lässt er sich zum Goldschmied tragen, dem er singt:
„Wer ißt mein Herzlein, wird bald König seyn; wer ißt mein Leberlein, findet alle Morgen unterm Kissen ein Goldbeutlein!“
Da will der Goldschmied das Schwesterlein heiraten und sie sollen ihm den Vogel zur Hochzeit am Spieß braten. Dabei fallen zwei Stücke heraus, die sie kosten. Als der Goldschmied sieht, dass Herz und Leber fehlen, jagt er sie alle fort.
日本語訳(黄金の卵)
むかし、貧しい箒(ほうき)職人の少年たちが森に入り、毎日箒の材料の小枝を集めていた。妹はそれを売って暮らしていた。ある日、末の弟が一本の白樺の枝で、毎朝「黄金の卵(ein Goldei)」を産む不思議な鳥を見つける。その卵を売って、兄弟たちは暮らしていた。
しかしその鳥が卵を産まなくなったとき、鳥自身を金細工職人のもとに運ぶと、鳥は次のように歌った:
「誰でもわたしの心臓を食べる者は、すぐに王様になるだろう。誰でもわたしの肝臓を食べる者は、毎朝枕の下に黄金の袋を見つけるだろう!」
金細工職人は妹と結婚したいと思い、結婚のために鳥を丸焼きにしようと言い出した。しかし焼く途中に鳥の心臓と肝臓の二つの塊が皿の外に落ち、それを皆で食べてしまう。金細工職人は心臓や肝臓がなくなっているのを見て激怒し、兄弟姉妹を打ち払った。
(※この日本語訳は要約および内容に基づく再構成です)
あらすじ
金の鳥
・1人(兄)は金持ちで、もう1人(弟)は貧乏な2人の兄弟がいた
・金持ちの方は金細工師で根っからの悪で、貧乏な方は、箒を編むことで生計を立てる善良な正直者だった
・貧乏人の子どもは双子の兄弟で、2人とも水の滴のように似ていた
・2人の男の子は 金持ちの方の家に時々行って残り物から何か食べる物を貰っていた
・貧乏な男が森で1羽の鳥を見た
・その鳥は体中が金で美しかった
・男は小石を鳥めがけて投げて命中したが、金の羽が1枚落ちてきただけで鳥は逃げていった
・男がその羽を兄の所へ持って行き、兄は「これは純金だ」と言ってたくさんのお金をくれた
・翌日、1本のシラカバの木で同じ鳥が飛び立ったので、貧乏な男が探してみると巣があった
・男が巣の中にあった金の卵を兄の所へ持って行くと、「これは純金だ」と言ってそれに見合うお金をくれた
・金細工師の兄は「鳥そのもの」を欲しいと言ったので、貧乏な男は木の上に泊まっている金の鳥を石で落として兄の所へ持って行った
・兄は見かえりに山ほどの金貨をくれた
・金細工師の兄は抜け目がなくずる賢こくて 「この鳥が普通の鳥ではなく、心臓と肝臓を食べた人は、毎朝、枕の下に1枚の金貨を見つけるという、不思議な性質を備えていた」という事を知っていた
・彼はおかみさんを呼んで「この金の鳥を焼いておくれ、何もなくならないように気をつけてくれよ。 たった一人で食べるんだからな」と言った
・おかみさんは串に刺して火で炙っていたが用事で台所を離れた
・貧乏な箒職人の2人の子が来て串を2、3回串を回すと2かけらが脂受け用の皿に落ちた
・「誰にも分かりっこないよ」と言って2人はそのかけらを食べた
・戻って来たおかみさんに見られたので、2人は「鳥から落ちてきた小さな2切れを食べた」と言った
・「それは心臓と肝臓だったんだよ」とおかみさんはギョッとして言った
・おかみさんは夫が怒らないように若鶏の心臓と肝臓を金の鳥に添えて食卓へ出した
・金細工師はそれを1人でたいらげ、何ひとつ残さなかった
・翌朝、金細工師は枕の下の金貨を取り出そうとしたが何も見つからなかった
・2人の子ども達が起き上がると2枚の金貨が地面に落ちた
・父親は驚いたが訳が分からないまま、次の朝も、その次も、その次も、子ども達は2枚の金貨を見つけた
・父親は兄にこの奇妙な出来事を話し、兄の金細工師は直ぐに気が付いて仕返しをしてやろうと考えた
・兄は嫉妬深くて情け容赦のない 男だったので「その金貨には手を付けず、子ども達は家に置いておいてはならんぞ。悪魔の奴が子ども達を思うままにしていて、お前自身をも破滅に追い込んでしまうぞ」と2人の子の父親に言った
・父親は悪魔を怖がり、悲しく辛い気持ちで 双子を森に置きざりにした
双子と狩人
・2人の子どもは帰り道を見つけることができないまま、1人の狩人に出会った
・狩人が尋ねたので2人は素性と森に捨てられた経緯を話した
・「金貨の話は悪いことではない、ずっと正直で怠けなければいいのだよ」と狩人は言った
・この善良な男は2人の子どもが気に入って「父さん代わりにちゃんと育ててあげよう」と言い、2人の子どもは狩猟を学び、起きるたびに見つける金貨は「将来必要になるだろう」と狩人が預かった
・2人の子どもが大きくなると、育ての父親は森で射撃の試験をした
・狩人は空を飛ぶハクガンを撃ち落とさせて、二人とも合格したので「免許をやろう、もう一人前の狩人だ」と言った
・2人の兄弟は修業が終わったので世の中に出て見聞を広めたいと許しを請い、年寄りの育ての父は大喜びで了承した
・約束の日、育ての父はそれぞれの子に上等な猟銃と犬をやり、貯めた金貨を好きなだけ持たせた
・2人を見送る別れ際に各々にピカピカのナイフを与え、「お前達が分かれることになったら、このナイフを分かれ道にある木に突き刺しておくのだよ。そうすれば、もう一方が死んだら出かけて行った方角のナイフの面が錆るが、生きている限りはその面はピカピカと光っているんだよ」と言った
・2人の兄弟は先へ進んで森に入ったが、幾日も通り抜けることができず食べる物が尽きた
・一方が「何かを撃とう」と言って年老いた野ウサギに狙いを定めた
・野ウサギは「私を生かしておく代わりに子どもを2羽やる」と言って茂みに飛び込むと2羽の野ウサギを持って来た
・この小さな野ウサギは殺すに忍びなかったので狩人たちは側に置き、キツネを撃とうとした
・キツネも同様にして2匹の子ギツネを持って来た
・狩人たちはまたも殺そうとはせず、オオカミを狙った
・オオカミも同様に子どもを2匹持って来た
・続いて、クマも同様に子どもを2頭持って来た
・さらに、ライオンも同様に子どもを2頭持って来た
・こうして狩人たちは、ライオン2頭とクマ2頭、オオカミ2匹、キツネ2匹、野ウサギ2羽を手に入れ、この獣たちは狩人たちに仕えた
・狩人たちの空腹は続いていたので2匹のキツネに「何か食べる物を手に入れて来いよ。お前たちは本当に策略が上手くて、抜け目がないからな」と言った
・(何故かキツネに略奪行為 はさせず)キツネの道案内で「ニワトリ小屋のある農家がある村」に行きって食べ物を買って 動物たちに餌をやった
・狩人たちは一緒に奉公する所を見つけられず、分かれる時が来て動物たちも二手に分かれた
・2人は分かれを告げ、死ぬまで兄弟の愛を固く誓い、育ての父がくれたナイフを木に突き刺してから、1人(兄)は東へ、もう1人(弟)は西へ進んだ
弟の竜退治
・弟と動物たちは黒い喪章で覆われた町にやって来た
・弟は1軒の宿屋に泊めて貰い、そこの亭主は動物たちには家畜小屋をあてがった
・小屋の壁の穴を通って野ウサギはキャベツを取って来た
・キツネは1羽のメンドリを、それを食べ終わるとオンドリも取って来た
・オオカミとクマ、ライオンは穴を通れなかったので、宿屋の亭主が牝牛の寝そべっている所へ連れて行って動物たちはお腹一杯食べた
・狩人が喪章の理由を尋ねると、亭主は「明日、王様の1人娘さんが国を荒らす竜の生贄になる」と話した
・狩人が「竜を殺さないのか」と訊くと「沢山の騎士が試みて命を落とした。王様は退治した者には娘を嫁にやってこの国を継がせると約束してる」と亭主は答えた
・翌朝、狩人は動物を連れて竜の山へ登って行った
・山上にある教会の祭壇には杯が3つあり、「この杯を飲み干した者はこの世で一番強い男になり、戸口の敷居の前に埋めてある剣を振るうであろう」という書き付けがあった
・狩人は剣を探して抜こうとしたがびくともしなかったので、杯を飲み干して剣を手にした
・竜に差し出される刻限が来て、王様や式部長官(宮廷の式典などを取り仕切る役職の長)、宮廷の人々がお姫様にお供して城を出た
・お姫様は重い足どりで山頂へ向かい、王様と宮廷の人々は悲しみに沈んで帰って行き、式部長官は留まって見届けるように命じられた
・お姫さまが山の上にやって来ると、狩人はお姫さまを慰めて「お助け致します」と言って教会の中へ隠した
・大きな音が響いて7つの頭を持った竜が来ると、狩人は「お前と戦うつもりだ」と言った
・竜は火を吹いて飛び掛かって来たが、狩人は剣で竜の頭を3つも撥ねた
・さらに竜の頭を3つ切り落とし、最後の力を振り絞って尾を叩き切った
・狩人は力尽きたので動物たちが竜をズタズタに引き裂いた
・お姫様はサンゴのネックレスを取り外して動物たちのご褒美とし、ライオンにはその留め金を与えた
・狩人へはお姫様の名前が刺繍してあるハンカチを贈り、狩人は竜の舌を切り取ってハンカチに包んだ
・くたびれた2人は地面に横になって眠ることにした
・狩人はライオンに見張りを頼んでから寝た
・ライオンはクマに見張りを頼んでからその隣に寝た
・クマはオオカミに見張りを頼んでからその隣に寝た
・オオカミはキツネに見張りを頼んでからその隣に寝た
・キツネは野ウサギに見張りを頼んでからその隣に寝た
・野ウサギは誰にも頼めないままぐっすりと眠ってしまった
式部長官の裏切り
・山の上が静かになったので、見張り役の式部長官は確認に行った
・式部長官は切られて散らばった竜と一緒にお姫さまと狩人と動物たちが深い眠りに落ちているのを見た
・式部長官は腹黒で神をもおそれない悪人 だった
・式部長官は剣を抜いて狩人の首を撥ね、お姫さまを腕に抱きかかえて山を下りた
・途中でお姫様が目を覚ましたが「竜を殺したのは私だと言うのだぞ」と式部長官は言った
・お姫様は「そんなことできません。だって、狩人がその動物たちと一緒にやったんですもの」と答えたが、式部長官は剣を抜いて殺すと脅して無理やり約束させた
・式部長官はお姫様を王様のところへ連れて行き、「竜を殺してお姫様と王国を救いましたので、お姫様を妻に所望致します」と言った
・王さまがお姫様に確認すると、お姫様は曖昧な返事をして「結婚式を挙げるのは丸1年が過ぎてからにして頂きたい」と言った
・竜の山ではマルハナバチが野ウサギの鼻を刺して起こし、野ウサギはキツネを起こし、キツネはオオカミを、オオカミはクマを、クマはライオンを起こした
・ライオンは目を覚ますと、お姫様が居なくなり、主人が死んでいるのを見て恐ろしい声を上げて吠えた
・ライオンはクマに、クマはオオカミに、オオカミはキツネに、キツネは野ウサギに「どうして、おまえはわしを起こさなかったのか」と尋ねた
・可哀想な野ウサギだけは責任転嫁できず、悪いのは野ウサギだということになった
・野ウサギは命乞いをして「殺さないで、ご主人を生き返らせるから」と言うと、ここから200時間も離れている山に生えている根っこを口にした人は、どんな病気でも、どんな傷でも治るんだ」と言った
・ライオンが「24時間以内に根っこを持って戻って来い」と言うと、野ウサギは24時間以内に戻って来た
・ライオンが狩人の首をくっつけて野ウサギが狩人の口に根っこを突っ込むと狩人は生き返り、お姫様が居ないのは自分から逃れたかったんだろうと考えた
・ライオンは主人の首を前後反対に付けてしまっていたが、主人はお姫様への思いに悲しくなっていて気付いたのは昼食時だった
・狩人が動物たちに理由を聞くと、ライオンが寝ていたことを白状し、目が覚めると首を切られて死んでいたので、野ウサギの根っこで付け直したと説明した
・ライオンは狩人の首をまたもぎ取って向きを変えてると、野ウサギが根っこで治した
・狩人は悲しみに暮れて動物たちと世の中を歩き回った
・それから1年、狩人はお姫様を竜から救ったその同じ町へやって来た
お姫様の結婚
・町には深紅の布が掛けられていた
・狩人は宿屋の亭主に理由を尋ねると「お姫様と式部長官様の結婚式が明日行われるので、今日は喜びを表すため深紅の布が掲げられている」と亭主は答えた
・翌日、結婚式が行われる昼頃、狩人は亭主と「王様のテーブルのパンをここに持って来て食べるつもりだ」と賭けをした
・狩人は野ウサギを使いに出した
・お姫様は野ウサギのネックレスに気付くと望みを訊き、パン焼き職人が宿屋に居る主人にパンを届けてくれるように頼んだ
・狩人は亭主との賭けに勝った
・狩人は「王様の焼き肉を食べたい」とキツネを使いに出した
・お姫様はキツネのネックレスに気付くと望みを訊き、料理人が宿屋に居る主人に焼き肉を届けてくれるように頼んだ
・狩人は「王様が召しあがる付け合わせの野菜を食べたい」とオオカミを使いに出した
・お姫様はオオカミのネックレスに気付くと望みを訊き、料理人が宿屋に居る主人に付け合わせの野菜を届けてくれるように頼んだ
・狩人は「王様が召しあがる甘い物を食べたい」とクマを使いに出した
・お姫様はクマのネックレスに気付くと望みを訊き、菓子職人が宿屋に居る主人に甘いお菓子を届けてくれるように頼んだ
・狩人は「王様がお飲みになるワインを飲みたい」とライオンを使いに出した
・お姫様はライオンのネックレスの留め金に気付くと望みを訊き、ライオンにワインを与えるように侍従に頼んだ
・ライオンは「間違いのないワインを貰えるか見たいと思います」と言って、侍従と一緒に酒蔵へ下りた
・侍従は家来が飲む普通のワインを樽から注ごうとしましたが、ライオンはまず半マース(ビールなどの容量をあらわす古い単位。1マース=約1~2リットル)を自分で注いで味見した
・「だめだ、本当のワインではないぞ」とライオンは言った
・侍従は式部長官用のワイン樽からワインをやろうとしたが、ライオンは半マースを試飲して「前のより上等だがまだ本当のワインではない」と言った
・侍従は腹を立てたがライオンが横っ面を張り飛ばしたので口も訊かずにライオンを特別な酒蔵へ案内した
・王様以外は誰も飲むことが許されないワインだったが、ライオンは半マースを試飲して「本物のようだ」と言うと瓶6本に詰めさせた
・ライオンは酔ってふらふらだったので、侍従がワインを宿まで運び、ライオンが手さげ籠を口に咥えて主人のところへ運んだ
・狩人と動物たちと宿屋の亭主は一緒に集まった料理を食べた
・狩人が「これから宮廷へ行ってお姫さまと結婚する」と言うと、宿屋の亭主は「これだけは信じられない」と言って家と屋敷を賭けたので、狩人は金貨が千枚入った財布で応じた
・宮廷では王様がお姫さまと獣の様子を尋ねたので、お姫さまは「人を使わせて動物たちの主人をお呼びください」と促した
・王様の従者が来ると狩人は「王様にお願いして頂きたい。王家に相応しい服、6頭立ての馬車、それからわたしに仕える従者を頂けるように」と伝え、王様が応じると狩人は王様の所へ馬車で向かった
・王様は狩人を出迎えてお城の中へ案内し、狩人を自分とお姫さまの間に座らせ、式部長官は花婿として向かいの席に座った
・竜の7つの頭が皆の目前に晒される中、王様は「この7つの頭を竜から打ち落とした式部長官に我が娘を嫁に取らせる」と言った
・狩人が立ち上がって7つの口を開け「竜の7つの舌はどこにあるのですか」と聞いた
・式部長官は青ざめて「竜には舌はありません」と言った
・「嘘つき者には舌が無いようだ。しかし、竜の舌は退治した者の証だ」と言うと、狩人はハンカチを開けて7枚の舌を見せた
・狩人はハンカチにお姫様の名前が刺繍してあるのをお姫さまに見せて「誰に与えたものですか」と尋ねた
・お姫様は「竜を退治したお方に」と答えた
・狩人は自分の動物を全部呼んでそれぞれからネックレスをライオンからは金の留め金を取り外した
・お姫様にそれらを見せて「誰の物でしたか」と尋ねた
・お姫様は「ネックレスと金の留め金は私の物です。竜を退治するとき手伝ってくれたこの動物たちに分けてあげました」と答えた
・狩人は式部長官の行いから現在までの経緯を王様に語った
・王様は娘に確認すると、娘は(口留めされていた内容を他の人が語ったので)「はい、本当でございます」と答えた
・王様は12人の相談役に式部長官の判決を下すように命じた
・相談役は「式部長官は4頭の牡牛によって引き裂かれねばならない」という判決を下した
・式部長官は処刑され、王様は娘を狩人に与えて狩人を王国全土の総督に任命した
・結婚式は喜びの中で祝われ、若い王さまは実の父親と育ての父を呼んで2人に宝を与えた
・宿屋の亭主も城へ呼び、「(賭けに勝ったが)情けを掛けよう。家と屋敷は取っておくがいい。加えて、この金貨千枚も上げましょう」と言った
兄の魔女退治
・若い王様とお妃様は幸せに暮らし、若い王様は忠実な動物たちとよく狩りに出かけた
・お城の近くの森には幽霊が出る、とか、一度入ると簡単には出て来れない、という噂があった
・若い王様がこの森で狩りにやって来ると雪のように白い牝ジカを見つけた
・同行していた家来は待機させて王は獲物を追って馬を走らせ、お供の動物だけが後を追った
・家来たちは夕方まで待ったが若い王様は戻って来ず、報告を受けたお妃様は心配になった
・若い王様は獲物を見失って森の奥深くに入り込んでしまった
・王様は角笛を吹いたが家来たちには届かなかった
・この日は城に戻れないと分かった王様は木の側で火を起こして夜を明かそうとした
・木の上にはお婆さんが座っていて「ブルブルブル。なんて寒いんだ」とボヤいていた
・王様が火の側に降りて来るように促すと「だめだ。動物たちが私に噛みつくよ」とお婆さんは言った
・このお婆さんは実は魔女で、「木の枝を投げ落とすから動物たちの背中を打ってくれれば、私に何もしなくなるんだがね」と言って小枝を投げ落とした
・王様がその通りにすると動物たちは石になった
・お婆さんは飛び降りると、枝で王様に触れて石にしてしまった
・お婆さんはこのような石が転がっている溝の中へ王さまと動物たちを引きずって行った
・お妃様の心配と不安が益々募っている丁度この頃、東へ向かっていた兄さんが王国へやって来た
・兄さんは奉公先が見つからないまま、あちこちで動物たちの踊りを見せていたが、分かれ際に刺したナイフを見て弟がどうしているか知りたいとふと思った
・弟のナイフは側面が半分錆て、残りの半分はまだピカピカだった
・「弟に何か災難が降り掛かっているが、半分はまだピカピカ光っているからまだ助けてやれるだろう」と思った兄は西へ向かった
・町の門の番兵は、この人が若い王様に似ている上、いつもの獣たちを引き連れていたので王様だと信じて疑わなかった
・兄は勘違いに気付いたが「弟に成り済ませば容易に弟を救えるので一番得策だろう」と考えた
・若いお妃様も自分の夫と思い、長く留守にした理由を尋ねた
・兄は「道に迷って外へ出る道を見つけれなかったのだよ」と答えた
・兄は王様のベッドに連れていかれたが、両刃の剣を自分と若いお妃様の間に置いた
・お妃さまはその意味が分からなかったが敢えて聞かなかった
・兄は魔法の森について探り出すと「もう一度あそこで狩りをしなくてはならないのだ」と言った
・父王と若いお妃様の反対を振り切って森へやって来ると弟と同じような事が起きた
・兄は家来を待機させて白い牝ジカを追い、野宿のために木の側で火を焚くと頭上で呻き声が聞こえた
・お婆さんは小枝を投げ落としたが兄は信用せずに「私は動物たちを叩いたりしないよ。降りて来ないなら私があんたを下ろしてやる」と言った
・お婆さんは「お前は私には何も出来やしないさ」と怒鳴った
・「降りて来ないなら撃ち落としてやるぞ」
・「お前の弾なんか怖くもないわい」とお婆さんは言った
・狩人は狙いを定めて撃ったが魔女はどんな鉛の弾にもびくともしなかった
・狩人は心得ていて、上着の銀のボタンを猟銃に込めて引き金を引くと、お婆さんは叫び声を上げて落ちてきた
・狩人は魔女と分かった婆さんはを脅して弟の居場所に案内させた
・兄は「この老いぼれのオナガザルめ(オナガザルは悪魔がつくった生き物で、魔女も悪魔によってつくられたので、魔女のことを“オナガザル”と呼んでいる)、弟とここにいる生き物を全部生き返らせろ」と言って、弟と動物たち、その他の商人や職人たち、ヒッジ飼いたちも救われたことに感謝して家に帰って行った
・再開した双子の兄弟は喜び合い、2人で魔女を取り押さえて火の中へ放り込んだ
・魔女が焼け死ぬと森が開け、兄弟は家路の道すがら互いの経緯を語り合った
・弟が国の全土を治めていると言うと、兄は「そのことは気が付いたよ。王様のようにもてなしを受け、若いお妃様が夫だと思って側で食事をし、お前のベッドで寝なければならなかったのだ」と言った
・それを聞いた弟は嫉妬心に燃え、怒りで剣を抜いて兄さんの頭を切り落とした
・兄さんの赤い血を見て我に返った弟は後悔し「助けてくれたのは兄さんだったのに」と嘆き悲しむと、弟の野ウサギが命の根っこで兄を生き返らせた
・2人は何事も無かったかのように先へ進み、弟が別々の門から入って同時に老王の所でで会おうと提案した
・王様は困惑して娘に「どちらがお前の夫なのだ」と訊いた
・お妃様も不安になったが、動物にやったネックレスとライオンの金の留め金を見つけて「このライオンが従っているお方が、私の本当の夫ですわ」と言った
・若い王様はにっこりと笑い、皆が一緒にテーブルに付いて、食べたり、飲んだり、楽しく過ごした
・若い王さまがベッドに入ると、妻が「どうして夜になるといつも両刃の剣をベッドに置いていらしたの」と言ったので、若い王様は兄さんが誠実だった事を理解した
061. まずしい農夫 Das Bürle第2版以降で差し替え 初版は「上61 すぐに金持ちになった仕立て屋の話」
原文の抜粋(1812年初版)
Ein armer Schneider ging einmal zur Winterzeit über das Feld, und wollte seinen Bruder besuchen. Unterwegs fand er eine erfrorene Drossel, sprach zu sich selber: „Was größer ist als eine Laus, das nimmt der Schneider mit nach Haus!“ hob also die Drossel auf, und steckte sie zu sich. Wie er an seines Bruders Haus kam, guckte er erst zum Fenster hinein, ob sie auch zu Hause wären, da sah er einen dicken Pfaffen bei der Frau Schwägerin sitzen vor einem Tisch, auf dem stand ein Braten und eine Flasche Wein; indem klopfte es an die Haustür, und der Mann wollte herein, da sah er, wie die Frau den Pfaffen geschwind in einen Kasten schließt, den Braten in den Ofen stellt, und den Wein ins Bett schob.
Nunmehr ging der Schneider selbst ins Haus, und bewillkommnete seinen Bruder und seine Schwägerin, setzte sich aber auf den Kasten, darin der Pfaffe steckte. Der Mann sprach: „Frau, ich bin hungrig, hast du nichts zu essen?“ – „Nein, es tut mir leid, es ist aber heute gar nichts im Haus.“ – Der Schneider aber zog seine erfrorene Drossel heraus, da sprach sein Bruder: „Mein, was tuest du mit der gefrorenen Drossel?“ – „Ei! die ist viel Geld wert, die kann wahrsagen!“
„Nun so lasst sie einmal wahrsagen.“ – Der Schneider hielt sie ans Ohr und sprach: „Die Drossel sagt: es stünde eine Schüssel voll Braten im Ofen.“ – Der Mann ging hin und fand den Braten: „Was sagt die Drossel weiter?“ – „Im Bett stecke eine Flasche Wein.“ Der fand auch den Wein: „Ei, die Drossel möcht ich haben, die verkauf mir doch.“ …
(物語はこのあとも続き、巧妙なだましや偶然で仕立て屋が富を得ていく展開になります)
日本語訳(すぐに裕福になった仕立て屋の話)
ある冬の日、貧しい仕立て屋が兄の家へ行くために野原を歩いていました。道すがら、凍えて死んだツグミを見つけ、自分に言いました。「シラミより大きいものなら、家に持って帰ろう。」そう言ってツグミを拾い、服の中に入れました。兄の家に着くと、まず窓から中を覗くと、太った神父が兄の妻の家でテーブルの前に座り、ローストとワインの瓶が置いてあるのが見えました。そこで玄関のドアを叩く音がして、だれか入って来ようとすると、妻はすばやく神父を箱の中に閉じ込め、ローストはオーブンの中へ、ワインはベッドの下へ隠しました。
仕立て屋は家の中に入り、兄と兄嫁にあいさつしましたが、自分は神父が閉じ込められている箱の上に座りました。兄が言いました。「ねえ、腹が減った。何か食べるものはないのか?」兄嫁は「ごめんなさい。今日は家には何もありません」と答えました。仕立て屋は凍えたツグミを取り出し、兄が「その凍ったツグミを何に使うんだ?」と聞くと、「ああ、これは大金になるんだ。未来を占えるんだよ」と答えました。
それで皆で占ってみると、ツグミはオーブンの中にローストがあると言い、兄が見に行くと本当にローストがありました。次にツグミはベッドの中にワインがあると言い、兄が確かめるとワインも見つかりました。兄は「そのツグミを売ってくれ」と言いましたが、仕立て屋は「その代わりに、この箱をくれ」と言い、交換しました。…
仕立て屋はその箱を荷車に載せ、旅に出ました。箱の中で神父が「中身を知っているなら出してくれればターレル金貨をやる」と言ったので、仕立て屋は箱を開け、神父の代わりに金貨を受け取りました。その後、村人たちのさまざまな騒動と偶然が続き、最終的に仕立て屋は財産を得て村の人々を出し抜き、権力を得るようになりました。
あらすじ
・お金もちの農夫ばかりがいる村があった
・そこに一人だけ貧乏な農夫がいて「貧しい農夫」と呼ばれていた
・この農夫は1頭の牝牛を買うお金も無かった
・この貧しい農夫は「名づけ親の家具職人に子牛を木で作って茶色に塗って貰えば、時間が経てば大きくなって牝牛になるよ」と考え、女房もこれを気に入った
・名づけ親の家具職人は子牛を仕上げ、首をうつむかせて草を食んでいるかのようにした
・翌朝、貧しい農夫は牝牛たちを牧草地へ連れて行く牛飼いに「小さい子牛がいるから抱いていって欲しい」と言った
・牛飼いは言われた通りに連れて行って草の中へ置いた
・子牛が草を食んでいるように立ち止まっているのを見て、牛飼いは「こいつは直に自分で走るようになるだろう」と言った
・日が暮れて、牛飼いが家路に就く時も子牛は立ったままだった
・牛飼いは「お腹いっぱい食えるのだったら四つ足で歩けるだろう。抱いて帰っちゃやらないよ」と言った
・貧しい農夫は戸口に立って子牛を待っていたが、牛飼いは「立ったまま食い続けていて来ようともしないんだよ」と答えた
・2人は一緒に草原に引き返したが子牛は居なかった
・貧しい農夫は村長に訴え、牛飼いは貧しい農夫に牝牛を1頭やるように言い渡された
・貧しい農夫とその女房は牝牛が手に入って心から喜んだが食べ物をやることができなかった
・2人はこの牝牛を仕方なく潰し、肉は塩づけにした
・貧しい農夫は町で皮を売って新たに子牛を1頭買うつもりだった
・その途中、水車小屋の側で羽の折れた1羽のカラスが停まっていた
・貧しい農夫は可哀想に思ってそのカラスを牛の皮に包んでやった
・天候が悪くなって先へ進めないので水車小屋で泊めてくれるように頼んだ
・水車小屋には粉屋の女将さんが1人でいた
・女将さんは「敷きワラの上にでも寝るといいわ」と貧しい農夫に言うと、チーズを乗せたパンを出した
・貧しい農夫はそれを食べると牛の皮を置いて横になって寝たた
・そうこうするうちに、なまぐさ司祭がやって来た
・粉屋の女将さんは上機嫌で迎え、「亭主は外へ出ているわ。たっぷり御馳走を食べましょうよ」と言った
・貧しい農夫は聞き耳を立て、自分の食事に腹を立てた
・女将さんは焼き肉やサラダ、ケーキにワイン、などを食卓に並べた
・2人で食べようとした時、ノックをして亭主が帰って来た
・女将さんは焼き肉をオーブンに、ワインを枕の下に、サラダをベッドの上に、ケーキをベッドの下に、なまぐさ司祭を玄関の上の戸棚に隠した
・女将さんはドアを開けて亭主を入れ、貧しい農夫を泊めたことを説明した
・「何か食う物を作ってくれよ」と亭主が言うと、「チーズを乗せたパンしかないわ」と女将さんは答えた
・亭主は了承して、貧しい農夫に「もう1つ一緒に食べよう」と誘った
・一緒に食べ終わると、粉屋の亭主は牛の皮を見て「そこに何を持っているのだ」と尋ねた
・「この中は占い師でさあ」と貧しい農夫は返事をした
・「わしも占ってくれるのかね」と粉屋の亭主が聞くと、「もちろんですよ、でも、こいつは4つの事しか言わず、5つ目は自分の中に抱えているのさ」と貧しい農夫は言った
・粉屋の亭主は占いを頼んだ
・貧しい農夫がカラスの頭を押さえつけるとカラスは声をあげて「クルル、クルル」と鳴いた
・「そいつは何と言ったのかね」と粉屋が聞くと、「枕の下にワインが隠されている」と貧しい農夫が答え、粉屋の亭主が行ってみるとワインを見つけた
・粉屋の亭主が次を要求すると、「2つ目は焼き肉がオーブンにある」と言い、行ってみると焼き肉を見つけた
・「3つ目はサラダがベッドの上にあるそうだ」と言い、粉屋の亭主が行ってみるとサラダを見つけた
・おしまいに「4つ目はケーキがベッドの下にあるそうですぜ」と言い、粉屋の亭主が行ってみるとケーキが見つかった
・粉屋の亭主と貧しい農夫の2人は食卓に付いたが、粉屋の女将さんは死ぬほど震え上がっていた
・粉屋の亭主は5つ目が知りたかったが、貧しい農夫は「まずこの4つのものをゆっくり食べましょうよ。だって、5つ目は良からぬことですからね」と言って2人で食べた
・食事が終わって、粉屋の亭主は5つ目の占いに対して300ターラーを支払うと決めた
・「こいつが言うには玄関の戸棚に悪魔が隠れているってさ」と農夫は返事をした
・粉屋の亭主は「悪魔は追い出さなくちゃなあ」と言うと玄関の戸を開けて、女将さんからカギを受け取った貧しい農夫が戸棚をカギで開けた
・なまぐさ司祭が飛び出して素早く退散すると、粉屋の亭主は「わしは黒い野郎をこの目で見たぞ。占いは当たっていたぞ」と言った
・まずしい農夫は翌朝、まだ夜の明けない内に300ターラーを持ってさっさと逃げた
・運が向いてきた貧しい農夫は1軒の家を建てた
・農夫達は「貧しい農夫はきっと、金の雪が降り、それを何杯も桝に入れて持ち帰って来たのだ」と噂した
・貧しい農夫は財産の入手経路を説明するよう村長に求められたので、「町で自分の牛の皮を300ターラーで売りました」と答えた
・これを聞いた他の農夫達は真似をして一儲けしようとし、しかし村長は「真っ先に行くのは当然、私の女中だぞ」と言った
・この女中が町の商人のところへ行くと、皮1枚に付き3ターラーしか渡さなかった
・続いて他の連中が行くと、この商人はその金も渡さず「こんなに皮を持ってきてどうしろと言うのだ」と言った
・農夫達は貧しい農夫に騙されたことに腹を立てて「ペテンに掛けた」という理由で村長に訴えた
・無実の貧しい農夫は満場一致で死刑が言い渡され、「穴の開いた樽に入れられ、転がされて川の中に落とされる」事になった
・貧しい農夫は外へ連れ出され、そこに司祭が死者を弔うミサを挙げるために連れて来られた
・貧しい農夫はその司祭が「粉屋の女将さんの所にいたなまぐさ司祭」だと分かった
・貧しい農夫は司祭に「私はあなたを戸棚から逃がしてあげましたよ。私を樽から逃がしてくださいよ」と言った
・そこへ「村長になりたがっている羊飼い」が羊の群れを連れてやって来た
・それを知っている貧しい農夫は「この樽へ入れば村長になれる」と騙して交替し、羊飼い入った樽の蓋を打ち付けた
・貧しい農夫が羊の群れを自分のものにして去って行くと、なまぐさ司祭は教区へ戻って「死者を弔うミサをあげた」と話し、人々は樽を転がして川の中へ落とした
・農夫達が村の中へ入って行く、貧しい農夫が羊の群れを引き連れて上機嫌にやって来た
・驚いた農夫達が「どこから来たんだい?川から来たのかい?」と言った
・貧しい農夫は「もちろんさ。深く沈んで川底に着いたのだ。樽を出ると綺麗な草原があって、たくさんの子ヒツジが草を食んでいたからこの群れを連れてきたんだよ」と答えた
・農夫達は「羊を取りに行って、それぞれ羊の一群を手に入れよう」と話しました。
・村長は「わしが一番先だ」と言って、彼らは揃って川に行った
・ひつじ雲が川面に映っていた
・それを見た農夫達は「川底に羊達が見えるぞ」と声を上げた
・村長が押し分けて前へ出ると「わしが真っ先に下に行って様子を見てこよう。大丈夫だったら呼んでやるよ」と言って飛び込んだ
・水音を村長が「来いよ」と呼んでくれたのだと思った農夫達は大急ぎで村長の後を追って次々に飛び込んでいった
・そうして村の人は死に絶えた
・貧しい農夫が1人生き残り、残った財産を引き取って大金持ちになった
062. ミツバチの女王 Die Bienenkönigin
削除の集中
第2版以降で差し替え
あらすじ
・王さまのふたりの息子(王子)が冒険に出たが、自堕落な生活をするようになって家に戻らなくなった
(注1) ぼけなす と呼ばれている末の息子がふたりの兄を探しに出かけた
・弟はふたりを見つけるが、兄たちは「おれたちだってうまくいかないのに、おまえのようなぼけなす頭で世の中を渡っていこうなんて図々しい」と馬鹿にした
・三人で先へ行くと蟻塚があった
・ふたりの兄は「塚を掘っくりかえして、蟻たちがあわてて卵を運び出すのを見てやろう」と言った
・ぼけなすは「動物たちは、そっとしておいてあげなさい。蟻をいじめるなんて許せない」と制止した
・三人はさらに歩いていくと、湖のほとりでたくさんの鴨が泳いでいた
・ふたりの兄は「二、三羽とっつかまえて、焼いてやろう」と言った
・ぼけなすは「動物たちは、そっとしておいてあげなさい。鴨を殺すなんて許せない」と制止した
・おしまいに三人が蜜蜂の巣のあるところにやってくると、巣からあふれた蜜が幹をつたって流れていた
・ふたりの兄は「木の下で火をたいて、蜜蜂を殺して、蜜を取ってやろう」と言った
・ぼけなすは「動物たちは、そっとしておいてあげなさい。蜜蜂を焼き殺すなんて許せない」と制止した
・そうこうするうちに、底(庭?)に石の馬がいるだけで人が見当らないお城へ入った
・三人は広間をすべて通り抜けて最後の扉の前に出た
・鍵が三本ぶらさがっていたが、扉のよろい戸で部屋の中を見ることができた
・覗いてみると白髪の小人がすわっていたので、一度、二度と呼びかけてみたが小人には聞こえなかった
・もう一度呼んでみると、小人は外へ出てきて三人をごちそうが並べられた食卓へ案内した
・三人が食事を終えると別々の寝室へ連れていかれた
・翌朝、小人は長男を石板のところへ連れていった
・石板には課題が三つ書いてあり、全てやり遂げるとお城を魔法から救うことができた
・最初の課題は「森の苔の下に王さまの娘の真珠が一千粒埋まっているので、日が沈む前に全て見つけ出すこ。ただし、一粒でも欠けていたら石になる」だった
・王子(長男)は一日じゅうさがしたが、百粒見つけたところで石に変えられた
・次の日は次男が挑んだが、二百粒たらず見つけただけで石になってしった
・ぼけなすの番になったが、なかなかはかどらなかった
・ぼけなすが泣いていると、助けた蟻の王さまが五千匹の蟻を引き連れてあっという間に真珠を積み上げた
・二番目の課題は「お姫さまの寝室の鍵を海から取ってくること」だったが、助けた鴨が潜って鍵を取ってきてくれた
・三番目の課題は「眠っている三人のお姫さまの中から、一番年下の、一番かわいらしいお姫さまをさがし出せ」というものだった
・ところが三人ともそっくりで、違うのは「一番上が砂糖をひとかけ、二番目がシロップ、三番目がスプーン一杯の蜜を食べた」ということだけだった
・ぼけなすが守ってやった蜜蜂たちの女王が飛んできて、蜜を食べたお姫さまの口にとまった
・お城の魔法は解けて、石に変えられていた者も人間の姿を取り戻した
・ぼけなすは末の一番かわいらしいお姫さまと結婚し、お姫さまの父王が亡くなった後で王になった
・ふたりの兄も、お姫さまのふたりの姉と結婚した
収録:上64 愚か者の話-Ⅱ
初版は「上62 青髭 」
⇒ 「KHM046 フィッチャーの鳥」を参照
特徴
・(注1) ぼけなす⇒のろま(以下同じ)
063. 3枚の羽 Die drei Federn
あらすじ
・(注1) ひとりの王と三人の息子がいた
・(注2) 王は三人の息子を世の中へ出ていかせ、最も素晴らしい亜麻糸 を持ってきた者に国を与えることにした
・それぞれが城の前に立って、三枚の鳥の羽を飛ばして、その方角へ旅立つものとした
・一枚の羽は西へ飛んだので、一番上の息子が西へ行くことになった
・もう一枚は東へ飛んだので、二番上の息子は東へ行くことになった
・(注3) 三枚目の羽は、城からわずかしか離れていない石の上 に落ちたのでぼけなすと呼ばれている三番目の王子 はそこにいなくてはならなかった
・(注4) ぼけなすが石にすわって泣いていると石が動き、下に輪のついた大理石の板があった
・(注5) ぼけなすが板を持ち上げてみると下へ続く階段があり、降りていくと地下室へでた
・(注6) そこには亜麻を紡いでいる女の子がいて、ぼけなすに泣きはらした目をしている理由をたずねた
・(注7) ぼけなすが亜麻糸を探していることを伝えると、女の子は紡いでいた糸を糸巻きから外して渡した
・(注8) ぼけなすが上へあがってくると、ふたりの兄たちもちょうど戻ってきたところだった
・(注9) ふたりは自分たちこそ最も素晴らしい亜麻糸を持ってきたと信じていた
・王さまは「国はぼけなすのもの」と判断したが、納得できないふたりの兄は条件をもうひとつ出すように頼んだ
・(注10) 王は最も素晴らしい絨毯 を持ってくるように言った
・三枚の鳥の羽によりふたりの兄は東と西へ向かい、ぼけなすはまた石の上に落ちた
・ぼけなすは最初と同じように行動し、望みの物を手に入れた
・(注11) 兄さんたちはあらゆる国をめぐって最も美しい絨毯 を持ってきたが、ぼけなすの方が優れていた
・王さまは再び「国はぼけなすのもの」と判断したが、納得できないふたりの兄は条件をもうひとつ出すように頼み、「最も美しい婦人を連れてくる」と言った
・三枚の鳥の羽が同じように飛び、ぼけなすはまた石の上に落ちた
・ぼけなすは下へ降りていって王の難題を同じように伝えた
・(注12) 娘は「地下室をずっと歩いていくと世界で最も美しい婦人に出会える」と言った
・(注13) ぼけなすが歩いていくと金と宝石で輝く部屋に着いた。みにくいかえるが部屋の真ん中にすわっていて「わたしを抱いて、沈め!」と言った。かえるが二度、三度と言うのでぼけなすは仕方なくかえるを抱いて沼まで運び、かえるもろとも沼に飛びこんだ。ふたりが水に触れたとたん、ぼけなすは腕の中に美しい婦人を抱いていた
・(注14) ふたりは沼から上がると、ぼけなすは婦人を王の前へ連れていった。この婦人は、ほかの王子たちが連れてきた婦人たちの千倍もきれいでした
・王さまは三度「国はぼけなすのもの」と判断した
・ふたりの兄たちは納得せず、「広間の真ん中に下がっている輪まで跳ぶことのできる婦人」を条件とするよう主張し、王も聞き入れた
・(注15) 一番年上の王子の婦人は半分の高さもとどかず、二番目の婦人は一番目よりほんの少しばかり上、三番目の婦人は輪まで跳んだ
・ぼけなすは王になり、りっぱに国を治めた
収録:上64 愚か者の話-Ⅲ(三枚の鳥の羽)
特徴
・(注1) ひとりの王と三人の息子がいて、そのうちの2人はりこうだったが、3人目は口数が少なく、まぬけで、「のろま」とよばれていた
・(注2) 王は三人の息子を旅に出して、一番すばらしいじゅうたん を持ってきた者が王を継ぐと言った
・(注3) 三枚目の羽は、すぐに地面 に落ちたのでのろまの弟(以降も同じ) はそこにいなくてはならなかった
・(注4) のろまの弟は羽の横にあげぶたがあるのに気が付いた
・(注5) ふたをあげてみると階段があり、おりていくとべつの戸の前にたどりついた
・(注6) ノックすると中からよび声が聞こえ、ドアが開いて太ったヒキガエルがほしい物はなにかとたずねた
・(注7) のろまの弟が一番上等なじゅうたんが欲しいと伝えると、ヒキガエルは若いヒキガエルがもってきた箱から1枚のじゅうたんをとりだして渡した。
・(注8) のろまな弟はヒキガエルに感謝して 地上へもどってくると、ふたりの兄たちもちょうど戻ってきたところだった
・(注9) 2人の兄さんたちはたまたま出会ったヒツジ飼いの女からからだに巻きつけていたそまつな布をうばって持ち帰っていた
・(注10) 王は一番きれいな指輪 を持ってくるように言った
・(注11) 兄さんたちは古い馬車の輪からたたいてクギをぬきだして を持ってきた
・(注12) ヒキガエルはのろまな弟に「6匹のネズミにひかせた、穴をくりぬいたニンジン」をあたえた
・(注13) ヒキガエルは「わたしの小さなヒキガエルたちの1匹をその中へ入れさえすればいい」と言ったので、のろまの弟はヒキガエルの1匹をつかんでニンジンの馬車の中に置いた。すると、そのヒキガエルは座るやいなや目を見はるほどの美しい乙女になり、ニンジンは馬車に、6匹のネズミは馬になった
・(注14) のろまの弟は乙女にキスをし、馬車をひく馬たちをかりたて、乙女を王さまのところへ連れていった。兄さんたちは行きあたりばったり農夫の娘を連れてきた
・(注15) 2人の農夫の娘はとてもへたくそで、落ちて太い腕と足を折ってしまった。のろまな弟の美しい乙女は軽々ととびこえ、文句のつけようも無かった
064. 金のガチョウ Die goldene Gans
あらすじ
・(注1) 昔、ひとりの男がいて、三人の息子があり、末の息子は、ぼけなすでした
・ある日、一番上の息子が森へ行って木を伐ってくると言った
・(注2) 父親は「怪我をするから止めろ」と忠告したが、 息子はポケットに菓子をひとつ突っこんで 出かけていった
・(注3) 森で白髪頭の小人 がやってきて、ポケットに入っている菓子 をせがんだ
・利口な息子は「自分の分がなくなる」と言って断わり、先へ進んだ
・息子が木を伐り始めてしばらくすると、伐りそこねて斧が腕に当たったので家に帰って包帯をしてもらわなくてはならなかった
・これはあの白髪頭の小人の仕組んだことだった
・そのあと、二番目の息子が森へ出かけて行った
・(注4) 二番目の息子も同じ経緯で仕返しに足を切ってしまい 、家までかついでもらわなくてはならなかった
・(注5) ぼけなすの番となり、同じ経緯で小人が菓子をせがんだ
・(注6) ぼけなすは「全部やるよ」と言って小人に菓子をあげた
・小人は「この木を伐りな。いいものが見つかるよ」と言って別れた
・ぼけなすが伐ってみると、木の下に黄金のガチョウがいた
・ぼけなすはガチョウをかかえて宿屋に行き、そこで一晩泊まることにした
・宿屋の亭主には3人の娘がいて、娘たちはガチョウを見ると羽が欲しくなった
・一番上の娘がガチョウの羽に触わったとたん、くっついて離れなくなった
・(注7) 二番目の娘も羽を抜きたくて姉さんが必死に止めようとしたが、ガチョウに触わると くっついて離れなくなった
・(注8) 三番目の娘も羽を抜きたくて姉さん達が必死に止めようとしたが、ガチョウに触わると くっついて離れなくなった
・翌朝、ぼけなすは三人の娘がくっついたガチョウをかかえて出かけた
・一行は野原で牧師に出会った
・(注9) 牧師が「若い男を追っかけまわす」娘のひとり の手をつかんで引き離そうとしたとたん、娘にくっついて離れなくなった
・しばらくすると寺男(教会の鐘つき番)がやってきて、「赤ん坊の洗礼がある」と言って牧師に駆け寄って袖をつかむと、寺男もぴったりくっついてしまった
・五人がつながって歩いていくと、鍬をかかえてたふたりの百姓が通りかかった
・牧師が助けを求めたが、寺男に触わったとたんにふたりもくっついた
・ぼけなすはひとりの王さまが治める町にやってきた
・王さまには娘がひとりあり、誰も娘を笑わすことができなかった
・そこで、王さまは「娘を笑わすことができた者に姫と結婚させよう」というおふれを出していた
・ぼけなすがガチョウとずらっとうしろに続く者たちを連れて、王さまの娘の前へ出ると、お姫さまは笑いだして止まらなくなった
・ぼけなすは「お姫さまを嫁にくれ」と申し出たが、王さまは言いのがれをして「地下室いっぱいのぶどう酒を飲み干せる男を連れてこい」と言った
・(注10) ぼけなすは森へ出かけていった
・木を伐り倒した場所にひとりの男がすわっていた
・男は「喉が渇いてどうにもならず、ぶどう酒を樽いっぱい飲んだが焼け石に水だ」と言った
・ぼけなすは「助けてやろう」と言って、男を王さまの地下室へ連れていくと、男は大きな樽を次々と飲みつづけ、日の沈まぬうちに地下室のぶどう酒を残らず飲み干してしまった
・ぼけなすは再び「お姫さまを嫁にくれ」と申し出ましたが、王さまは「パンの山を平らげてしまう男をまずは連れてこい」という新しい条件を出した
・ぼけなすが森へ行くと、同じ場所にひとりの男がすわっていた
・男は腹のまわりを革紐でしばって、不機嫌そうな顔で「パン焼き釜いっぱいのフランスパンを平らげたというのに腹がへっていて、死んではたまらんから腹を紐でしばっているのさ」と言った
・ぼけなすが男を王さまのところへ連れていくと、王さまは国じゅうの小麦粉でおそろしく大きなパンの山を焼かせていた
・森の男は一昼夜でパンの山を食べつくした
・(注11) ぼけなすはふたたび 「姫を嫁にくれ」と言った
・王さまはいま一度言い訳をさがして「水の上と同じように陸を走れる船を持ってこい」と言い、それができたらすぐにお姫さまを嫁にやろうと言った
・(注12) ぼけなすがもう一度森へ行ってみると、以前菓子をあげた白髪頭の小人のおじいさん がすわっていた
・小人はぼけなすに「飲んだり、食べたりしたのは私だ。おまえが私にやさしくしてくれたからさ」と明かして、陸も水の上も走る船を与えた
・王さまはそれを見ると、娘をあげないわけにいかなくなった
・結婚式が催され、ぼけなすは王国を継いで、長いことお妃となに不足なく暮らした
収録:上64 愚か者の話-Ⅳ
特徴
・(注1) 昔、ひとりの男がいて、三人の息子があり、末の息子は、「のろま」とよばれ、ばかにされて冷たい仕打ちを受けていた
・(注2) 母親はパンケーキと1本のワインをもたせて、 息子は出かけていった
・(注3) 森で白髪頭の年とった小人 がやってきて、「こんにちは」とあいさつをしてから 、袋の中のパンケーキひと切れとワインひと口 をせがんだ
・(注4) 二番目の息子も同じ経緯で足を打ってしまい 、家までかついでもらわなくてはならなかった
・(注5) のろまな息子の番となり、父親は止めるように忠告したが渋々了承し、母親は「水でこねて灰の中で焼いたパンケーキと、すっぱくなったビール」をもたせました
・(注6) のろまな息子は「灰のパンケーキとすっぱくなったビールでよかったら、いっしょに座って食べようよ」と答えたが、いざ2人で食べようとすると灰のパンケーキがすばらしいパンケーキに変わっており、すっぱいビールも上等なワインになっていた
・(注7) 二番目の娘も羽を抜きたくて姉さんに触わると くっついて離れなくなった
・(注8) 三番目の娘も羽を抜きたくて姉さん達に触わると くっついて離れなくなり、みんながガチョウのそばで夜をすごさなければならなかった
・(注9) 牧師が「若い男を追っかけまわす」一番下の娘 の手をつかんで引き離そうとしたとたん、娘にくっついて離れなくなった
・(注10) のろまな息子はあの白髪のこびとならきっと助けてくれると思い 、森へ出かけていった
・(注11) のろまな息子は「お姫さまを嫁にほしい」と三度目の 要求をした
・(注12) のろまな息子がもう一度森へ行ってみると、以前パンケーキをわけてあげたあの白髪の年老いたこびと がすわっていた
065. 千枚皮につつまれた姫 Allerleirauh
特徴
・王女が王に依頼したのは「太陽のように金色の服、月のように白い 服、星のようにキラキラ輝く服」と千種類の毛皮を合わせて作ったマント
・王女は脱走するも「花婿である王」 に捕まえられる
・千匹皮(お姫様の呼称)は台所の下働きをすることになるが、「就寝前の王の長靴を脱がせる、王がそれを千匹皮に投げつける」 という仕事も記されている
・千匹皮が舞踏会を覗きに行く目的として、「いとしいお婿さんに会える」 と記されている
・太陽のように輝く(金の)服を着た千匹皮を見た王は「花嫁に似ている」 と確信
・2度目の舞踏会で「月の服(降りたての雪より清らか、と表現)」を着た千匹皮を見た王はもはや花嫁と疑わない
・3度目の舞踏会で「星の服」を着た千匹皮の素性がバレて王と結婚して幸せに暮らす(ただし父親との近親婚)
収録:上65 千匹皮
類話:上71 ネズミ皮の王女」
あらすじ
・ある国の王妃が亡くなる際、王に「私と同じくらい美しい女性としか再婚してはなりません」と言い残す。やがて王は、その条件に合うのが実の娘だけであることに気づき、娘と結婚しようとする。
・王女はこれを拒み、逃れるために不可能と思われる条件を出すが、王はそれをすべて叶えてしまう。追い詰められた王女は、**ねずみの皮を縫い合わせた外套(Mausehaut)**をまとい、身分を隠して城を逃げ出す。
・彼女は他国の城にたどり着き、台所の下働きとして雇われる。みすぼらしい姿のため皆に軽んじられるが、実は王女としての気品を失っていない。
・祝宴の日、彼女は密かに美しい衣装に着替えて舞踏会に現れ、王子の目を引く。翌日以降、再びねずみ皮の姿に戻るが、ある日、料理(スープや粥)に指輪を落とすことで正体の手がかりを残す。
・指輪をきっかけに王子は彼女を探し出し、ねずみ皮を脱がせると、そこには本来の美しい王女の姿が現れる。事情が明らかになり、王女は王子と結ばれ、幸福な結末を迎える。
初版ならではの特徴
特徴
・お姫様が王に依頼したのは「太陽のように金色の服、月のように銀色の 服、星のようにキラキラ輝く服」と千枚の毛皮を縫い合わせたマント
・「不可能な要求をして王の考え(娘との結婚)を思い止まらせる」 という理由付けを追記
・千枚皮を捕まえるのは「森の持ち主である王」
・千枚皮の仕事「就寝前の王の長靴を脱がせる」は削除
・千枚皮がお祝いの宴を覗きに行く目的は不記載
・太陽のように輝く(金の)服を着た千枚皮を見た王は「いままで見たことがない」 と思った
・スープを作った者を王に訊かれた料理番が「自分が作った」 と答える件を挿入
・王に素性を訊かれた千枚皮が、直前の記述から削除していた「長靴を投げつけられる」 と答える不自然さが残っている
・2度目のお祝いの宴で「月のような銀色の服」を着た千枚皮を見た王は再会を喜ぶだけ
・3度目のお祝いの宴で「星の服」を着た千枚皮の素性がバレて(マントの下が星の服のままという証拠も付加)(父親ではない)王と結婚して楽しく暮らす
066. 野ウサギのお嫁さん Häsichenbraut第2版以降で差し替え 初版は「上66 フルレブルレブッツ」
⇒『KHM127. 鉄の暖炉』 の注へ
あらすじ
・1人の女が娘と一緒にキャベツ菜園の中で暮らしていた
・冬の寒い中、野ウサギがそこでキャベツを食べていた
・女は「菜園に行って、野ウサギを追い払っておいで」と娘に言った
・女の子が「キャベツを全部食べるんじゃないよ」と言うと、野ウサギは「しっぽに乗りなよ、野ウサギの小屋へ連れていってあげるよ」と返したが女の子は行く気がなかった
・次の日、が女の子は行かなかった
・3日目にも同じ事が起きた時、女の子は野ウサギのしっぽに乗った
・野ウサギはその娘を遠くの自分の小屋へ連れて行った
・野ウサギは「ちりめんキャベツとキビを煮てくれ」と言うと、婚礼の客を呼びに行った
括弧書き注釈 婚礼の客達とは「皆んな野ウサギ」、新郎新婦をめあわせるのに同席したのは牧師としてやってきたカラス、キツネは鐘つき男の役目、祭壇は虹の下にあった
・女の子は一人ぼっちで悲しかった
・野ウサギが来て「戸を開けてくれ、婚礼の客達がウキウキしてるよ」と言ったが花嫁は一言も喋らず泣いてばかり
・野ウサギは出て行って戻って来て「戸を開けてくれ、婚礼の客達が腹を空かしてるよ」と言ったが花嫁は一言も喋らず泣いていた
・野ウサギは出て行って戻って来て「戸を開けてくれ、婚礼の客達が待っているよ」と言ったが花嫁は何も言わない
・野ウサギが出て行くと、花嫁はワラ人形を作って自分の服を着せ、しゃもじを持たせてキビを煮ている大鍋のところへ座らせて、母親の処へ戻った
・野ウサギがまたやって来て戸を開け、人形の頭へ何かを投げると頭から頭巾がポロリと落ちた
・野ウサギはそれが花嫁でないことがわかり、家から出てしょげかえっているのです
067. 12人の狩人 Die zwölf Jäger
特徴
・登場人物は花嫁 と王子
・王子は指輪と肖像画 を残して危篤の王様の下に戻る
・王様の遺言は「ある姫との結婚」(王子は重婚)
・元花嫁 は11人のそっくりさんを集めて12人の狩人となり、王様(元王子)に仕える
・真実を見抜くライオンの企みは2度失敗する
・王様と12人の狩人が狩りに出かけた際に、元花嫁 である狩人が気を失う
・王様はその狩人が指輪と首に肖像画(ペンダント?) をしているのを見て素性に気付く
・元さやに納まり、ライオンの誤解も晴れる
収録:上67 ライオンを連れた王様
第二版以降、タイトルのみ「十二人の狩人」に変わった。
特徴
・登場人物は婚約者 と王子
・王子は指輪 を残して危篤の王様の下に戻る
・王様の遺言は「ある姫との結婚」(王子は婚約破棄)
・元婚約者 は11人のそっくりさんを集めて12人の狩人となり、王様(元王子)に仕える
・真実を見抜くライオンの企みは2度失敗する
・王様と12人の狩人が狩りに出かけた際に、元婚約者 である狩人が気を失う
・王様はその狩人が指輪 をしているのを見て素性に気付く
・元さやに納まり、ライオンの誤解も晴れる
068. 大どろぼうとその親方 De Gaudeif un sien Meester低地ドイツ語タイトル 第2版以降で差し替え 初版は「上68 夏と冬の庭」
⇒『KHM088. 鳴いて跳ねるひばり』 の注へ
あらすじ
・ヤンは息子に手に職を付けさせようと思い、教会で神さまに「息子に役立つものは何でしょうか」とお祈りをした
・その時、祭壇の後ろに隠れていた番人が「泥棒することだ」と言った
・ヤンは「泥棒を学ばなければならんぞ」という神さまのお告げを息子に伝えました
・ヤンと息子は泥棒を心得ている男を探しに出かけ、大きな森の小さな家に住んでいたお婆さんに「知らないかね」と聞いた
・「ここで習えるよ。私の息子がその道の親方だよ」とお婆さんは言った
・お婆さんの息子(泥棒の親方)は「教えてあげよう。1年経って迎えに来た時にあんたが息子を見分けられたらお礼は全く要らないよ。でも見分けられなかったら200ターラー払ってもらうよ」と言った
・息子は親方の元で魔法の掛け方や泥棒のやり方を習い、1年が過ぎた
・父親は息子を迎えに出発し、「息子を見分け方」を考え込んで歩いていたら小人に出会った
・小人は状況を聞いて「パンの耳を持って行って煙突の下に立って、鍋を吊るす鍵が吊り下がった横木の上にある小さな籠から顔を出す小鳥があんたの息子さ」と教えた
・ヤンが黒パンの耳を籠の前へ投げると小鳥が顔を出してヤンの方を見た
・「やあ、息子、そこにいたのか」と父親は言った
・息子は喜んだが、親方は「その知恵を悪魔に吹き込まれたな」と言った
・息子はそれに構わず、父親に家路を促すと1台の馬車がやって来た
・息子は「自分に魔法を掛けて大きな猟犬になれば、たくさんお金が儲かるよ」と父親に言った
・馬車の紳士が「その犬を売る気はあるかい、幾らだい?」と聞いたので「30ターラーだよ」と父親は答えた
・「高いけど立派な猟犬だから貰おう」と言って紳士は犬を馬車に入れた
・馬車が幾らも進まない内に犬は窓から飛び出すと、もう猟犬の姿ではなくなって父親の側に戻った
・翌日、隣村の市(場)で息子は「立派な馬になるから僕を売りなよ」と父親に言った
・でも「僕を売る時、必ず馬ろく(注:乗馬時に馬の頭部につける金属製の器具。くつわや手綱などのこと。)を外してくれないと人間に戻れないからね」と言った
・大泥棒の親方がやって来て100ターラーでその馬を買い求めた
・父親は馬ろくを外すのを忘れてしまった
・(人間に戻れない)馬は親方の家の厩に繋がれ、女中が土間を通る時に「馬ろくを外してくれ」と言った
・女中はびっくりしたが立ち停まって馬ろくを外してやった
・馬はスズメに変わって戸口から外へ飛んで行った
・魔法使いの親方もスズメになって追って来た
・親方が追い着いて激しいつつき合いになり、親方は降参した
・親方が魚になって水に潜ると息子も魚になって噛み合いになり、親方はまた降参した
・親方がニワトリに変身すると息子はキツネになって親方の頭を噛み切った
・親方は今日まで死んだまま転がっている
069. ヨリンデとヨリンゲル Jorinde und Joringel
あらすじ
・むかし大きな深い森の中に古い城があり、老婆が1人きりですんでいた
・(注1) おばあさんは魔女のなかでも特に抜きんでた 魔女だった
・昼間は猫やフクロウに姿をかえ、夜になると人の姿にもどった
・鳥やけものをおびきよせることができ、殺して煮たり焼いたりした
・その城に100歩のところまで近づく人は金しばりにあった
・それがけがれのない若い娘なら小鳥に変えて籠に入れ、城の部屋に鳥籠が7千ほどあった
・ヨリンデという若い娘がいた
・ヨリンデはヨリンゲルという若者との婚礼をひかえてた
・2人は心を開いて話したくて森に散歩に行った
・ヨリンゲルは城に近づかないように忠告した
・日の光が明るく差しこむ晴れた夕暮だったがキジ鳩が悲しげにブナの古木の上で鳴いていた
・ヨリンデはときおり涙を流し、せつない思いをうったえた
・ヨリンゲルも同じように思いを打ちあけ、2人はこのまま死んでしまうのではないかと思うほどおどろいた
・太陽はまだ山の上に半分出ていたが、2人はすっかり道に迷い、帰り道が分からなかった
・ヨリンゲルが茂みをすかして城の古い壁を見つけて死ぬほど心配になった
・ヨリンデが歌いだした
「わたしの小鳥さん赤い小さな輪をはめて
悲しい、悲しい、悲しい、と歌ってる
小バトが死ぬよと歌ってる
悲しい、悲しい・・・・・・チキュト、チキュト、チキュト」
・ヨリンゲルがヨリンデのほうを見るとナイチンゲールに変えられて歌っていた
・赤い目をしたフクロウがナイチンゲールのまわりを三度飛び回って「シュ、フー、フー、フ一」と三度鳴いた
・ヨリンゲルは身動きができなくなり、つったったまま泣くことも話すことも手や足も動かすこともできなかった
・日がしずむとフクロウが茂みにとびこみ、すぐにそこから腰の曲がった、黄色い肌でやせこけて、大きな赤い目に曲がった鼻の先があごまで届く老婆が出てきた
・老婆はナイチンゲール(ヨリンデ)を手にのせて連れ去った
・ヨリンゲルが身動きできずにいると老婆がもどってきてくぐもった声で言った
「これ、ツァヒール(魔女の手に落ちて手下となった大天使)」や、お月さまがかごの中を照らしたら、はなしておやり、よいころあいだよ!」
・ヨリンゲルのからだは自由になった
・ヨリンゲルは膝まづいてヨリンデを返してくれるように頼んだ
・老婆はどんなことがあっても返すものかと言って立ち去った
・ヨリンゲルは嘆き悲しんで歩くうちに見知らぬ村にやってきた
・ヨリンゲルは長いことヒツジ番をして働いた
・いくども城のまわりを歩き回ったが、城には近づきすぎないようにした
・ある夜、ヨリンゲルはヨリンデを取り戻す夢を見た:彼はまん中に大きな真珠のある血のように赤い花を見つけ、その花を城へもっていくと、その花でさわったものはどんな魔法も解けてしまった
・翌朝、目をさましたヨリンゲルは赤い花を探した
・9日目の早朝、真珠のように大きな露がのったまっ赤な花を見つけた
・ヨリンゲルはこの花を持って城に向かった
・城に100歩のところまで近づいても金しばりにあうこともなく、門までやってきた
・花で門をさわると、門が開いた
・ヨリンゲルは中に入り、中庭を通りぬけ、小鳥の鳴き声に耳をすました
・鳥の声に向かって奥へすすみ、広間を見つけた
・(注2) その広間ではおばあさん が七千もの籠に入った鳥に餌をあげていた
・ヨリンゲルが入ってきたのを見ると、おばあさんは腹を立て、悪態をついた
・けれども、おばあさんはヨリンゲルから2歩の所までしか近づけなかった
・ヨリンゲルはナイチンゲールは何百羽もいる鳥籠を調べてヨリンゲルを探した
おばあさんが鳥籠のひとつを戸口のほうへ持って行った
・それに気付いたヨリンゲルは花で籠と老婆を触った
・おばあさんは魔力を失い、ヨリンデが姿をあらわした
・ヨリンゲルの首に抱きついたヨリンデは前と少しも変わらずきれいだった
・ヨリンゲルは他の鳥たちももとの娘の姿に戻した
・ヨリンゲルとヨリンデは家に帰り、長い間楽しく暮らした
収録:上69 ヨリンデとヨリンゲル
特徴
・(注1) この老婆は魔法使いの親玉 だった
・(注2) そこに魔法使いの老婆 がいて7千のかごの中の鳥たちにエサをやっていた
※以降、「おばあさん」⇒「魔法使いの老婆」
070. 3人の幸運児 Die drei Glückskinder第2版以降で差し替え 初版は「上70 オケルロ」
原文(1812版に基づく)
Eine Königin setzte ihr Kind in einer goldenen Wiege aufs Meer, und ließ es fortschwimmen; es ging aber nicht unter, sondern schwamm zu einer Insel, da wohnten lauter Menschenfresser. Wie nun so die Wiege geschwommen kam, stand gerade die Frau des Menschenfressers am Ufer, und als sie das Kind sah, welches ein wunderschönes Mädchen war, beschloß sie, es groß zu ziehen für ihren Sohn, der sollte es einmal zur Frau haben. Doch hatte sie große Noth damit, daß sie es sorgfältig vor ihrem Mann, dem alten Okerlo versteckte, denn hätte er es zu Gesicht bekommen, so wäre es mit Haut und Haar aufgefressen worden.
Als nun das Mädchen groß geworden war, sollte es mit dem jungen Okerlo verheirathet werden, es mochte ihn aber gar nicht leiden, und weinte den ganzen Tag. Wie es so einmal am Ufer saß, da kam ein junger, schöner Prinz geschwommen, der gefiel ihm und es gefiel ihm auch, und sie versprachen sich miteinander; indem aber kam die alte Menschenfresserin, die wurde gewaltig bös, daß sie den Prinzen bei der Braut ihres Sohnes fand, und kriegte ihn gleich zu packen: »wart nun, du sollst zu meines Sohnes Hochzeit gebraten werden!«
Der junge Prinz, das Mädchen und die drei Kinder des Okerlo schliefen aber alle in einer Stube zusammen, wie es nun Nacht wurde, kriegte der alte Okerlo Lust nach Menschenfleisch, und sagte: »Frau, ich habe nicht Lust bis zur Hochzeit zu warten, gieb mir den Prinzen nur gleich her!« Das Mädchen aber hörte alles durch die Wand, stand geschwind auf, nahm dem einen Kind des Okerlo die goldene Krone ab, die es auf dem Haupte trug, und setzte sie dem Prinzen auf. Die alte Menschenfresserin kam gegangen, und weil es dunkel war, so fühlte sie an den Häuptern, und das, welches keine Krone trug, brachte sie dem Mann, der es augenblicklich aufaß.
Indessen wurde dem Mädchen himmelangst, es dachte: »bricht der Tag an, so kommt alles heraus, und es wird uns schlimm gehen.« Da stand es heimlich auf und holte einen Meilenstiefel, eine Wünschelruthe und einen Kuchen mit einer Bohne, die auf alles Antwort gab.
Nun ging sie mit dem Prinzen fort, sie hatten den Meilenstiefel an, und mit jedem Schritt machten sie eine Meile. Zuweilen frugen sie die Bohne:
»Bohne, bist du auch da?«
»ja,« sagte die Bohne, »da bin ich, eilt euch aber, denn die alte Menschenfresserin kommt nach im andern Meilenstiefel, der dort geblieben ist!«
Da nahm das Mädchen die Wünschelruthe und verwandelte sich in einen Schwan, den Prinzen in einen Teich, worauf der Schwan schwimmt. Die Menschenfresserin kam und lockte den Schwan ans Ufer, allein es gelang ihr nicht, und verdrießlich ging sie heim. Das Mädchen und der Prinz setzten ihren Weg fort:
»Bohne, bist du da?«
»ja,« sprach die Bohne, »hier bin ich, aber die alte Frau kommt schon wieder, der Menschenfresser hat ihr gesagt, warum sie sich habe anführen lassen.«
Da nahm das Mädchen den Stab, und verwandelte sich und den Prinzen in eine Staubwolke, wodurch die Frau Okerlo nicht dringen kann, also kehrte sie unverrichteter Sache wieder um, und die andern setzten ihren Weg fort.
»Bohne, bist du da?«
»ja, hier bin ich, aber ich sehe die Frau Okerlo noch einmal kommen, und gewaltige Schritte macht sie.«
Das Mädchen nahm zum drittenmal den Wünschelstab und verwandelte sich in einen Rosenstock und den Prinzen in eine Biene, da kam die alte Menschenfresserin, erkannte sie in dieser Verwandelung nicht und ging wieder heim.
Allein nun konnten die zwei ihre menschliche Gestalt nicht wieder annehmen, weil das Mädchen das letztemal in der Angst den Zauberstab zu weit weggeworfen; sie waren aber schon so weit gegangen, daß der Rosenstock in einem Garten stand, der gehörte der Mutter des Mädchens. Die Biene saß auf der Rose, und wer sie abbrechen wollte, den stach sie mit ihrem Stachel. Einmal geschah es, daß die Königin selber in ihren Garten ging und die schöne Blume sah, worüber sie sich so verwunderte, daß sie sie abbrechen wollte. Aber Bienchen kam und stach sie so stark in die Hand, daß sie die Rose mußte fahren lassen, doch hatte sie schon ein wenig eingerissen. Da sah sie, daß Blut aus dem Stengel quoll, ließ eine Fee kommen, damit sie die Blume entzauberte. Da erkannte die Königin ihre Tochter wieder, und war von Herzen froh und vergnügt. Es wurde aber eine große Hochzeit angestellt, eine Menge Gäste gebeten, die kamen in prächtigen Kleidern, tausend Lichter flimmerten im Saal, und es wurde gespielt und getanzt bis zum hellen Tag.
»Bist du auch auf der Hochzeit gewesen?« – »ja wohl bin drauf gewesen:
mein Kopfputz war von Butter, da kam ich in die Sonne, und er ist mir abgeschmolzen;
mein Kleid war von Spinnweb, da kam ich durch Dornen, die rissen es mir ab;
meine Pantoffel waren von Glas, da trat ich auf einen Stein, da sprangen sie entzwei.«
日本語訳(オケルロ)
ある女王が、自分の子を金のゆりかごに乗せて海に流した。しかしその子は沈むことなく、人喰い人種が住む島まで泳いでいった。ゆりかごが流れてきたとき、ちょうどその島の人喰いの夫人が海岸に立っており、美しい娘であるその子を見て、将来自分の息子の妻として育てようと決めた。しかし彼女は、その子を夫の老オケルロから細心の注意を払って隠さねばならず、それができなければ、夫に見つかって骨の髄まで食べられてしまうところだった。
やがて娘が成長すると、彼女は若いオケルロと結婚させられることになったが、娘は彼をまったく好まず、一日中泣いていた。あるとき浜辺に座っていると、そこへ若く美しい王子が泳いで来て、王子も娘を気に入り、娘も王子を気に入った。そして二人は互いに婚約を約束した。だがその時、老婦人が現れて、息子の婚約者のそばに王子がいるのを見て激しく怒り、すぐに彼をつかんで「さあ待っていなさい。あなたは私の息子の結婚で焼かれるのだ!」と言った。
夜になり、若い王子、娘、オケルロの三人の子どもたちは一部屋で眠っていた。老オケルロが人肉を欲して、「私は結婚まで待つ気はない。すぐに王子をくれ!」と言った。壁越しにその言葉を聞いた娘は素早く立ち上がり、オケルロの子の一人が頭に載せていた金の冠を取り、それを王子の頭に載せた。老婦人が来て暗いので頭を触り、冠のない子を夫に差し出し、夫はその子を即座に食べてしまった。
娘は恐ろしくなり、「夜が明ければすべてが露見し、私たちはひどい目に遭う」と思った。そこでこっそり起きて、七里靴(歩くたびに一マイル進む靴)、願い棒、そして何にでも答える豆の入ったパンを手にした。
二人は七里靴を履いて逃げた。一歩ごとに一マイル進む。ときどき豆に尋ねた。
「豆よ、そこにいる?」
「はい、ここにいます。でも急いで、なぜならオケルロの老婦人が別の七里靴を履いて追って来るから!」
娘は願い棒を取り、自分を白鳥に、王子を白鳥の泳ぐ池に変えた。老婦人は白鳥を岸へ誘おうとしたがうまくいかず、悔しがって帰った。二人はさらに進む。
「豆よ、そこにいる?」
「はい、ここにいます。でも老婦人がまた来るわ、オケルロがなぜ彼女が逃がしたかを話したから。」
娘は棒で自分と王子を砂嵐に変えた。老婦人は突き進めず引き返し、二人はまた進んだ。
「豆よ、そこにいる?」
「はい、ここにいます。でも老婦人がまた大きな足取りで来るのが見えるわ。」
娘は三度目に棒を使い、自分をバラの木に、王子を蜂に変えた。老婦人はこれに気づかず帰った。
しかし二人は人間の姿に戻れなくなった。娘が最後に棒を遠くへ投げてしまったためだ。二人は既に進み、バラは娘の母の庭にあった。蜂はそのバラに止まっていたが、誰かが花を折ろうとすると刺した。ある日女王自身が庭に入り、美しい花を見て折ろうとした。蜂が女王の手を激しく刺し、女王はバラを離したが少し裂けて血が茎から流れた。女王は妖精を呼び、花の魔法を解かせた。そこで女王は自分の娘を見出し心から喜んだ。
大きな結婚式が催され、多くの客が華やかな服で来て、千の灯が広間に輝き、明け方まで踊りと祝いが続いた。
「あなたは結婚式に出た?」
「もちろん出たわ。私の頭飾りはバターだったから、太陽に当たり溶けちゃった;
私のドレスは蜘蛛の巣でできていたから、茨で破れちゃった;
靴はガラスでできていたから石を踏んで割れちゃったの。」
あらすじ
・父親が、長男にはオンドリを1羽、次男には大鎌を1つ、三男には猫を1匹与えた
・「私はもう年老いた。もうすぐ死ぬだろう。」と言い、「お前達にやったものは値打ちが無いように見えて、賢く使いさえすれば価値が出る。まだ知られていない土地を探せば、幸運にありつけるだろう」と言い残した
・長男はオンドリを連れて出かけたが、どこへ行ってもオンドリはもう知られていた
・遂に、オンドリの事を何も知らず、人々は時間を分けることも出来ない島にやって来た
・長男は「頭にはルビーのように赤い冠をかぶり、騎士のように拍車 を付けている。夜、決まったときに三度皆さんに声を掛けるよ。最後に鳴いたらお日様が昇るが、真っ昼間に鳴いたら天気が変わる印だ」とオンドリを説明した
・人々は一晩中、起きていて、オンドリが2時と4時と6時に大きな声で時を告げるのを聞いて大喜びだった
・皆が値段を尋ねたので「1頭のロバが運ぶくらいの金だ」と長男は答えた
・「こんなに値打ちのある動物なら安い」と言って、喜んで言い値を払った
・長男がお金持ちになって帰って来たので、驚いた次男が大鎌を売りい出発した
・どこに行っても農夫たちは大鎌を背負っていたが、遂に、大鎌を知らない島に来た
・その島では麦が実ると畑の前に大砲を並べて撃っていた
・それは確実な方法ではないので穂に当たってダメにするものが沢山あり、その上、もの凄い音がした
・次男が大鎌で静かに素早く麦を刈り取ってみせると皆が驚いた
・人々は大鎌に欲しいだけのお金を出したので、次男は馬を1頭を貰って運べるだけの金を積んだ
・三男も猫を売ろうとしたが、2人の兄さんと同じように陸続きの所ではダメだった
・猫はどこにでもいて、新しく生まれる猫の子は大抵水に沈めて殺されるほどだった
・三男も、誰も猫を見たことがない島へ渡った
・その島ではネズミが我が物顔で家の中を跳ね回り人々は困り果てて悲鳴を上げていた
・三男の猫がネズミ狩りを始めると、たちまち広間を2つ3つ綺麗にしてしまった
・人々は不思議な動物を国のために買って欲しいと王さまに頼んだ
・王様は言われるままに金貨を積んだラバ1頭を喜んで出し、三男は一番多くの宝を持って帰った
・猫は王様のお城で余りにたくさんのネズミを嚙み殺した
・猫が頭を上げて「ニャオー、ニャオー」と大きな声で鳴くと、王様と家来達は驚いて怖くなって城から逃げ出した
・城の下で王様は対策を相談し、猫に使いを送って「城を立ちのくか、手荒な対応を覚悟しろ」と申し渡す事に決めた
・相談役達は「私達の命をこんな怪物に委ねるより、ネズミに苦しめられる方がいい」と考えていた
・使いの若者は猫が「ニャオ、ニャオ」と鳴くのを聞いて、「まっぴらごめんだ」と言ったと思ってその返事を王さまに伝えた
・相談役達は「それでは実力行使で従わせよう」と言うと、並べた大砲を城に撃ち込んで火事を起こさせた
・火が猫のいる広間に迫って来ると、猫は窓から飛び出した
・しかし、人々は攻撃を止めなかったので城はすっかり崩れ落ちてしまった
071. 6人男、天下をのし歩く Sechse kommen durch die ganze Welt第2版以降で差し替え 初版は「上71 ネズミ皮の王女」 ⇒ 「KHM065 千枚皮」の類話を参照
あらすじ
・ありとあらゆる技を心得ている男がいた
・この男は戦争で功を上げたが、戦争が終わってお払い箱になると3ヘラー銅貨を旅費として貰っただけだったので「ちゃんとした家来を見つけられたら、王さまは国中の宝を差し出すことになるぜ」とカンカンに怒った
・男が森の中で6本の木を麦を抜くかのように引っこ抜いている男をみつけた
・兵隊上がりの男は「俺の家来になって一緒に行かないか」と誘った
・「ああ、いいとも」と了承したので、大将になった兵隊上がりの男は「俺達2人はきっと天下をのして行くことになるぜ」と言った
・暫く行くと、膝を就いて鉄砲を構えて狙いを定めている狩人を見つけた
・大将が「何を撃とうとしているんだね」と聞くと、「ここから2マイル離れた所にハエが1匹、カシの木の枝に停まっているんだが、そいつの左目を撃ち飛ばしてやろうと思っているのさ」と答えた
・「俺達3人一緒なら、きっと天下をのし歩くことになるぜ」と大将は言い、狩人はその気になって付いて行った
・3人が7つの風車の所へやって来ると、風は全く吹いてなく、木の葉1枚も揺れてないのに風車の羽がグルグル回っていた
・大将は不思議に思いながら2マイルほど進んでいくと木の上に男が座っていた
・その男は一方の鼻の穴を塞ぎ、もう一方の鼻で吹いていた
・「何をしているんだね」と大将が尋ねると、「ここから2マイル離れた所ある7つの風車を回すために息を吹きかけているのさ」と男は答えた
・「俺達4人が一緒ならきっと天下をのし歩くことになるぜ」と大将が誘うと風吹き男も付いて来た
・4人は、片方の足で立ち、もう片方の足を取り外して横に置いている男に出会った
・大将が「気持ち良さそうに休んでいるなあ」と声を掛けると「駆け足の達人だから、速く飛び過ぎないように片方の足を外しているのさ。2本の足で走ったら鳥よりも速く走るぜ」とこの男は答えた
・「俺達5人が一緒ならきっと天下をのし歩くことになるぜ」と大将は言い、駆け足の達人は付いて行った
・5人は、片方の耳だけを隠して小さな帽子を深く被っている男に出会った
・大将が「恰好付けているぜ!でも耳まで被ると馬鹿みたいに見えるじゃないか」と言うと、「俺が帽子を普通に被ると怖ろしく寒くなって空の鳥は凍り付いて地面に落ちて来るんだよ」とこの男は言った
・「俺達6人が一緒ならきっと天下をのし歩くことになるぜ」と大将が言った
・6人が着いた町の王様が「娘のお姫様と走る競争をして勝利した者は姫の婿になるべし、ただし、負けた者の首は撥ねられる」という御触れを出していた
・大将が「代わりに家来を走らせる所存です」と名のり出ると、王様は「それならば、お前とその家来が命を賭けねばならないぞ」と答えた
・大将は駆け足の達人のもう片方の足をはめてやった
・この勝負は「遠く離れた泉から水を一番に持って来た方が勝利者となる」という決まりだった
・駆け足の達人と姫は水瓶を手にして同時に走り出した
・姫がほんの少し行った処で、駆け足の達人の姿は消えて泉で水瓶に水を汲んで折り返した
・ところが帰り道の中程で、疲労のため水瓶を置いて眠り紺でしまった
・達人は固い馬の頭蓋骨を枕にすれば直ぐに目が覚めるだろうと考えていた
・その間に姫も水瓶を満たして折り返し、達人の水瓶を空にしてから追い越して行った
・事の成り行きを見ていた狩人が達人の頭の下の馬の頭蓋骨を撃ち抜いた
・達人は目を覚ましたが、水瓶は空で、姫は遥か先を走っているのに気付いた
・達人は気を落とさずに水を汲みなおすと姫より10分も早く戻って「初めて足にものを言わせたぞ」と言った
・卑しい、お払い箱になった兵隊が娘を連れて行くことに王様は傷つき、娘の方は尚更だった
・王様と姫はこの兵隊とその仲間を厄介払いする相談をした
・王様は鉄で出来た部屋で連中に飲食させている間に鍵をして閉じ込めた
・王様は鉄が真っ赤に焼けるまで床下で火を焚くよう料理人に命じた
・6人は熱くなってきて、外へ出れないことが分かると王様の悪巧みに気付いた
・小さな帽子を被った男が「寒さを呼び込んでやる」と言って帽子をきちんと被ったら、寒気で熱さは消えて皿の御馳走も凍り出した
・2、3時間経って王様が様子を見たら、6人全員が元気でピンピンしていて「暖まれるよう外に出られて有難い」と言ったのでカンカンに怒った
・王様は火が激しく鉄の部屋の床下で燃えているのを確認すると、あの6人には何の役にも立たないと分かった
・王様は金貨で厄介払いしようと考え、大将に「娘を嫁にする権利を放棄するなら、欲しいだけ金貨を持って行った良いぞ」と言った
・大将が承知して「家来が運べるだけ頂けるならお嬢様は要りません」と言うと、王様はこの申し出にホクホク顔になった
・大将は「14日後に金貨を貰います」と言うと、国中の仕立て屋を集めて1つの袋を縫わせた
・袋が完成すると、力持ちの男がそれを肩に担いで大将と一緒に王様の所へ進み出た
・王様は家程もある大きな麻袋を担いでいる男に驚き、「どれほどの金貨を持って行くのだろう」と考えた
・王様は大樽一杯の金貨を用意したが、この力持ちは片手でその樽を掴んで入れると「これじゃあ袋の底も埋まりゃしないぜ」と言った
・王様は次々と宝を持って来させましたが、袋はそんな物では半分にもならなかった
・国中うの金貨を積んだ7千台の荷車が集めらたが、この力持ち荷車を引く牡牛ごと袋の中に押し込んだ
・まだまだたくさん入ったが力持ちは「これくらいでひとまず終わりにしよう」と言って袋を背負って仲間と一緒に立ち去った
・王様はたった1人の男に国中の財産を持って行かれたのに腹を立て、騎兵隊に取り返して来るように命じた
・連中に追い着いた二個連隊が「金貨の袋を置いて行かないと散々打ちのめすぞ」と伝えた
・風吹き男が二個連隊へ向かって息を吹き掛けると青空に舞い上がって山々の彼方へ飛んで行った
・風吹き男は曹長に「王様の所へ帰って、もっと多くの騎兵隊をよこすように言うのだ。皆んな空中へ飛ばしてやるぜ」と言った
・王様はその報告を聞くと「あいつらは放っとけ、只者ではない連中だ」と言った
・6人は財宝を持ち帰り、皆んなで分けて死ぬまで楽しく暮らした
072. オオカミと人間 Der Wolf und der Mensch第2版以降で差し替え 初版は「上72 梨の小僧、落ちゃしない」あらすじ
・梨の木に実った小さな梨が、どうしても木から落ちようとしない、という奇妙で滑稽な話です。
・ある人が梨の木の下に立ち、揺すったり、棒で突いたり、叩いたりして梨を落とそうとします。しかし梨はしっかり枝にしがみついたまま、まったく落ちません。
・次々と人や道具が動員され、叩く → 切る → 引っ張る → さらに大げさな手段と、行為はどんどんエスカレートしていきますが、それでも梨は落ちない。
・最後には、「こんなにしても落ちないなら、もういい」というような形で話が終わり、目的と手段の不釣り合いさ、そして人間の執念の滑稽さだけが残ります。
初版ならではの特徴
あらすじ
・キツネがオオカミに「どの動物だって人間には適わないから、身を守る策を巡らせないとならない」と話した
・するとオオカミは「一度でも人間に出会ったら俺は襲い掛かってやる」と言った
・「それならお手伝いしましょう。明日の朝、あんたに人間を見せてあげるよ」とキツネが言った
・朝はやく、キツネはオオカミを狩人が毎日通る道へ連れ出した
・年取って退役した兵隊が最初にやって来た
・「あれが人間かい?」とオオカミが尋ねると「いいえ、昔、人間だったものです」とキツネは答えた
・次に学校へ行く途中の小さな男の子がやって来た
・「あれが人間かい?」とオオカミが尋ねると「いいえ、これから人間になるのです」とキツネは答えた
・最後に双身の散弾銃を背負い、山刀を腰に付けた狩人がやって来た
・キッネは「あそこに来るのが人間さ。あいつを襲わなくちゃならないぜ。」とオオカミに言って洞穴へ引っ込んだ
・オオカミが襲い掛かると、狩人は「残念、オオカミ用の弾を込めてない」と言ってオオカミの顔に散弾を撃ち込んだ
・オオカミは顔を酷く歪めたが、怯まず突進した
・狩人は2発目をお見舞いしたが、オオカミは苦痛に耐えて突進した
・狩人はギラギラ光る山刀でオオカミを2、3回切りつけたので、オオカミは血を流して泣き叫びながらキツネの所へ逃げ帰った
・「どんな風に人間をやっつけたのかね?」とキツネは聞いた
・「ああ、人間があんなに強いとは思ってもみなかったよ」
・「まず、奴は肩から杖を外して息を吹き込むと、そいつが怖ろしく俺をチクチクさせたのさ」
・「もう一度、杖の中に息を吹き込んだら、鼻の周りにイナズマのような何かが飛んできたのさ」
・「俺がすぐ側まで行くとギラギラ光る肋骨を引き抜いて打ち掛かって来たんだ」
・「済んでの所でお陀仏になる所だったぜ」とオオカミは言った
・「あんたは何て法螺吹きなんだ。大きな口を叩いても得るものはないよ」とキツネは言った
073. オオカミとキツネ Der Wolf und der Fuchs第2版以降で差し替え 初版は「上73 人殺し城」 ⇒ 「KHM046 フィッチャーの鳥」の類話を参照 あらすじ
・オオカミがキツネを家来にした
・力が弱いキツネは何でも従わなくてはならなかったので、いつもおさらばしたいと思っていた
・ある日、連れ立って森を歩いている時、オオカミが「赤ギツネ、何か食べ物を取って来い。でないとお前を食っちまうぞ」と言った
・キツネは「子ヒツジがいる農家を知ってるので1匹取って来ましょう」と答えた
・キツネは子ヒツジを盗んでオオカミに持って行くと自分は逃げてしまった
・オオカミは子ヒツジ1匹では満足できず、もう1匹盗みに入った
・けれどもヒツジの母親が気付いてメエーメエーと悲鳴を上げたので農夫達が駆けつけて来た
・農夫達はオオカミを散々に打ちのめした
・オオカミは足を引きずって呻きながらキツネの所にやって来て「よくも騙してくれたな」と言ったが、キツネは「どうしてそんなに食いしん坊なんでしょう」と答えた
・翌日、畑でオオカミが「赤ギツネ、何か食べ物を取って来い。でないとお前を食っちまうぞ」と言った
・キツネは「女将さんが今晩パンケーキを焼く農家を知ってるのでそれを取って来ましょう」と答えた
・2匹は出かけ、キツネは家の周りを忍び歩いて覗いたり匂いを嗅いでお皿を見つけ、パンケーキを6枚引っ張り出してオオカミに持って行った
・「さあ、お食べなさい」とキツネは言うと行ってしまった
・オオカミはあっと言う間に飲み込んで「こいつは後を引くな」と言った
・自分で忍び込んで盗もうとしたが、お皿毎引きずり下ろしたので粉々に割れて物凄い音がした
・物音で出て来た女将さんがオオカミを見て家の者を呼び出し、皆で力の限り殴った
・オオカミは両足を引きずって泣きながらキツネの所にやって来て「よくも騙しやがったな!」と怒鳴ったが、キツネは「どうしてそんなに食いしん坊なんでしょう」と答えるだけだった
・3日目にまた連れ立って外に出ると、オオカミが「赤ギツネ、何か食べ物を取って来い。でないとお前を食っちまうぞ」と言った
・キツネは「知ってる男が牛を潰して塩漬けにした肉を地下室の樽に入れていので頂いて来ましょう」と言った
・オオカミは「俺も一緒に行くぞ」と言い、キツネはオオカミに抜け道を教えながら地下室に入り込んだ
・あり余る程の肉にオオカミはかぶりつき「食べ尽くすまでには時間が掛かるぞ」と考えた
・キツネは舌鼓を打ちながらも辺りを見まわし、肉を食べても体が穴をくぐり抜けられるかどうかを確かめていた
・オオカミが訳を訊いてもずる賢いキツネは「誰か入って来ないか見張らなきゃならないからさ。あんたも食べ過ぎないようにね」と言った
・オオカミは「樽が空っぽになるまでは出ていかないよ」と言った
・農夫が地下室にやって来たのを見たキツネは一飛びで穴から外に飛び出した
・オオカミも後にに続こうとしたが腹が膨れて通り抜けられなかった
・農夫達が棍棒でオオカミを打ち殺した
・キツネは老いぼれのオオカミからおさらばできたことを喜んだ
074. キツネに名づけ親をたのんだオオカミのおかみさん Der Fuchs und die Frau Gevatterin第2版以降で差し替え 初版は「上74 泉の子ヨハネスと泉の子カスパール」
⇒『KHM060. ふたり兄弟』 の注へ
あらすじ
・オオカミの女将さんが男の子を産んでキツネに名づけ親を頼むことにした
・「キツネは近い親戚で、思慮深く、手先は器用だから、息子を教育して世間に出ても助けてくれるだろうよ」とオオカミの女将さんは言った
・キツネは淑やか現れて「親愛なるオオカミのお母さん、お示しくださった名誉に関してお礼申し上げます。お悦び頂けますよう努めさせて頂きます」と言った
・お祝いの席でキツネは「お子さまに力を付けるには栄養のある物を手に入れないといけません。あるヒツジ小屋を知っています。簡単に美味しい奴を取って来るができますよ」と提案した
・オオカミの女将さんはこの甘い言葉に乗せら、キツネと一緒に農夫の家へ出かけた
・キツネはオオカミの女将さんにヒツジ小屋を指さして「あそこから誰にも見られずに忍び込むことができますよ」と言った
・キツネは「その間にヒヨコでも取れないか見てきますよ」と言ったが、森の入口で横になって足を伸ばして休んでいた
・オオカミの女将さんがヒッジ小屋に忍び込むと犬が横になっていて騒ぎたてた
・走ってやって来た農夫達がオオカミの女将さんを取り押さえて棒で散々殴った
・オオカミの女将さんはやっとのことで逃れ、足を引きずりながら外へ出ると、そこにには横になっていたキツネがいた
・キツネは気の毒そうな恰好を装って「農夫達が突然襲ってきて、手足を叩き折ってしまったんですよ。このまま弱り果てて死んでいくのが可哀想だとお思いなら運んでくださらないと」と言った
・オオカミの女将さんは自分ものろのろとしか歩けなかったが、全く元気で無傷の名づけ親のキツネを心配して、背負って自分の家へ運んだ
・キツネは「お達者で、焼き肉を美味しく頂くといいよ」とオオカミの女将さんに言うと、ゲラゲラ大笑いして逃げていった
075. キツネと猫 Der Fuchs und die Katze第2版以降で差し替え 初版は「上75 フェニックス鳥」
あらすじ
物語の始まり
ある王国に、国王の命を救えると言われる「不死鳥(Phönix)」がいるという話が広まります。王はこの鳥の羽根を手に入れれば、国を豊かにできると考えます。
若者の冒険
王のもとには、勇敢な若者が名乗りを上げます。彼は数々の危険を乗り越えながら、魔法や謎の試練が待つ森や山を進みます。途中で賢者や動物たちの助けを受けながら、少しずつ不死鳥の住む場所に近づきます。
不死鳥との出会い
若者はついに不死鳥の住む神秘的な場所に到達します。不死鳥は非常に美しく、知恵と魔力を持つ存在で、簡単には捕まえられません。若者は知恵を絞り、不死鳥の信頼を得ることで、羽根の一枚を授かります。
王国への帰還と試練
羽根を持ち帰る途中、邪悪な者や嫉妬深い兄弟に奪われそうになりますが、若者は機転と勇気でそれを守り抜きます。
結末
王に羽根を献上すると、その羽根は国を豊かにし、王は若者を褒美として高く評価します。若者の知恵と勇気は国中に知れ渡り、物語はめでたく終わります。
あらすじ
・猫が森の中でキツネの旦那に出会った
・猫は「キツネの旦那は賢くて経験豊富で世間では重んじられている」と思っていたので愛想よく話し掛けた
・「こんにちは、お元気ですか。こんな何もかもが高いご時世でどうやって切り抜けておられますかね」
・高慢ちきなキツネは猫を見定めて返事を渋ったあげく、「貧乏たらしい、髭掃除ばかりしている斑(ぶち)でシミだらけの阿呆め、腹ばっかり空かしているネズミ捕りめ、俺様に聞くとは厚かましいぜ。お前は何を習ったんだ、どれくらいの技を心得ているんだ」と言った
・「私が心得て居りますのはたったの1つ、『犬が追ってきたら木の上に飛び上がって身を守ること』ができるんですよ」と猫は控えめに答えた
・「たったそれだけか、俺様は100以上もの技を心得たお方なのだ」とキツネが言った
・「それにまだ一杯知恵の入っている袋も持っているんだ。可哀想な奴、俺に付いて来い。どうやって犬から逃れるか教えてやるぜ」
・4頭の犬を連れた狩人がやって来たので猫は素早く木の上に飛び上がって木の天辺に座ると、枝や茂った葉が猫をすっかり隠した
・「知恵袋を開けなさいよ、キツネの旦那」と猫はキツネに向かって大声を上げた
・しかし、もうその前に犬たちはキツネをしっかりと捕まえていた
・「100もの技を持っていてもどうにもならないのですね。私の様に木に登ることができていたら命を落とさずに済んでいたのに」と猫は大声を上げた
076. ナデシコ Die NelkeNelkeの訳
第2版以降で差し替え 初版は「上76 なでしこ」(同じタイトルだが別作品)あらすじ
・結婚しようとしない王様が教会へ行く人の中に美しい娘を見つけた
・王様はすぐに考えを変えて娘をお妃にした
・お妃は一年後に王子を産んだ
・王様は名づけ親を頼む相手を探し、「これから出かけていって最初に出会う人」に名づけ親を頼むことにした
・最初に出会った貧しい老人は「子どもは自分一人だけで教会へ連れて行き、教会は閉め切って中を誰にも見せない」という条件をつけた
・王様の家来に性悪で穿鑿(せんさく)好きな庭師がいた
・庭師は教会へ忍び込み、老人が王子に特別な贈り物「何かを願えばきっと叶う」を授けるのを見た
・性悪な庭師はこの子を自分のものにしようと考え、お妃が王子を抱いて庭を散歩している時に奪い取った
・庭師はお妃の口に殺した鶏の血を擦り付け、王様に「お妃が庭で王子さまを殺して食べたのを見た」と訴え出た
・王様はお妃を牢屋に押し込んでしまった
・庭師は王子を遠く離れた森の森番に預けて育てさせた
・王子は狩りの技を学び、森番の美しい娘リーゼと仲よしだった
・王子は森番の子どもだと思っていたが、本当の身分と「何か願えば必ず叶う」能力を持っていることリーゼが明かした
・庭師が森番の所へやって来た時、王子は直ぐにこの男をむく犬に変え、仲よしのリーゼをナデシコの花に変えた
・王子はナデシコを胸に差し、むく犬を連れて王様の宮殿に行って狩人として雇われた
・王子は「願い」の能力でどんな獣でも仕留めることができたので王様のお気に入りの狩人になった
・王子は狩人としての報酬を貰おうせず、一人で閉じこもれる小部屋を貰っていつも鍵を掛けていた
・不審に思った他の狩人が鍵穴から覗いてみると、御馳走を並べたテーブルで美しい娘と楽しそうにしていた
・御馳走は王子が願って出したもので、美しい娘はリーゼだった
・でした。王子は、一人になったときにはいつも、リーゼをもとの姿にもどして二人ですごし、出かけるときにはまたナデシコの花に変えて、水を入れたガラスのコップに差しておいたのです。
・狩人達は王子が金持ちなのだと考えて狩りに出た隙に部屋に押し入ったが何も無かった
・ただ、窓ぎわにナデシコの花がとても綺麗だったので王様の所に持って行った
・王様はこの花が気に入ったので王子に譲って欲しいと頼んだが、王子はどれほど金を積まれてもこの花(リーゼ)は譲らなかった
・王様は中々諦めなかったので王子は最後に全てを打ち明けて、自分は王さまの息子なのだと言った
・王様は心から喜びと、お妃を牢から出してリーゼを王子と結婚させた
・性悪な庭師はむく犬に変えられたままで、小僧に蹴飛ばされてテーブルの下に逃げ込んだ
グリム兄弟の注釈
あらすじ
・神様が あるお妃様に子どもが授からないままにしていた ので、お妃は毎朝、天の神様に 息子か娘を授けてくださるようにお願いをした
・天使がやって来て「祈りは通じた。 願い事が何でも叶う息子を授かるだろう。この世で望む事は何でも手にすることができるだろう」と言った
・お妃は王様にこの嬉しいお告げを話し、時が満ちて息子を産んだ
・お妃は毎朝子どもを連れて庭園へ行き、澄んだ泉で体を洗った
・少し大きくなった子どもがお妃の膝の上で横になっている時、お妃が眠り込んでしまった
・「願い事が何でも叶う力を持っている事」を知っている年取った料理番 がやって来た
・料理番はその子を奪い、ニワトリの血をお妃の前掛けと服の上へ垂らしてから乳母に乳を飲ませるように命じた
・料理番は王様に「お妃は自分の子を野獣に奪わせた」と嘘をついてお妃を訴えた
・王様は前掛けの血を見て訴えを信じ、光の差し込まない深い牢獄のある塔の中へ7年間 お妃を入れるように命じた
・お妃は食事も飲み物も貰えず、やつれ果てて死ぬ運命にあった
・神さまは2人の天使を白いハトの姿に変えて遣わし 、この2羽が毎日二度、7年が過ぎるまでお妃に食べ物を運んだ
・料理番は「あの子はわしを不幸にすることも簡単にできるだろう」と考えるようになって、お城を出てその男の子の所へ行った
・男の子は話せるくらい大きくなっており、料理番が「庭のついた立派なお城を望んでごらん」と言うと願いが実現した
・料理番が「美しい乙女が仲間になるように望んでごらん」と言うと、乙女 が男の子の前に現れた
・美しい乙女と男の子は一緒に遊び、お互いに心から好きになった
・年取った料理番は「男の子がいつか父親の所に帰りたいと望んだら大変だ」と思い、娘に「今晩、男の子が寝たら心臓をナイフで刺し、心臓と舌をわしの所へ持って来い、そうしないとお前の命はないぞ」と言った
・翌日、娘はそれを実行しておらず、料理番はもう一度命令した
・娘は小さな牝ジカの心臓と舌を皿の上に置くと、「ベッドに潜っているのよ」と男の子に言った
・悪党の料理番が入って来たので娘が皿を差し出した
・男の子は布団を払いのけて「この老いぼれの、罰あたりめ、お前は黒いプードル犬 になって真っ赤に燃える炭を食らって炎を喉から吐きだすようになるがいい」と言った
・そう言うとこの年寄りはプードル犬に姿を変えた
・男の子は母上に想い馳せ「自分の祖国へ戻りたい」と娘に言って一緒に行くように誘った
・娘はもう離れられなかったので、男の子は娘を美しいナデシコに変えて自分の懐 に入れた
・男の子は出発し、プードル犬も走って付いて行った
・男の子は母が閉じ込められている塔に登って呼び掛けた
・「たった今、ご飯を食べたばかりだわ」と天使達と勘違いしたお妃は答えた
・男の子は「私はあなたの息子です。間もなくお助け致します」と言った
・男の子は「1人の見知らぬ狩人」として父親の所へ行って仕えることを願い出た
・王様は獣の肉を手に入れて来ることを条件とした
・この狩人はお城の狩人達を集めて森へ行き、願いを唱えると、200頭を超える獣を捕らえて王様の元に運んだ
・王様は野生の肉で食卓を飾ったことが嬉しくて堪らず、次の日、宮廷中の者を集めて大きな祝宴を催した
・王様は狩人を称えて横に座らせた
・狩人は家来の1人が母の事を話題にしてくれるように願った
・式部長官(宮廷の式典などを取り仕切る役職の長)が口火を切って「国王陛下、私達はここで大喜びしておりますが、塔の中のお妃様はご存命でありましょうか」と言った
・王様は「愛しい息子を獣に引き裂かせたあいつの事は何も聞きたくないぞ」と答えた
・狩人は立ち上がって「慈しみ深いお父さま、あの方はまだ生きておられます。私はあの方の息子です。」と言うと、誘拐の経緯を話して喉から炎を吹く犬を差し出した
・狩人は犬を元の料理番の姿に戻した
・王様は料理番に腹を立て、一番奥深い地下の牢獄に閉じ込めさせた
・狩人は「優しく面倒を見てくれて、命を取るように強要された時は自分の命を賭けてそうしなかった乙女」の話をして食卓にナデシコを飾った
・狩人はナデシコを乙女の姿に戻した
・王様は2人の侍女と2人の家来を塔へ遣わしてお妃を食卓へ連れて来るようにと命じた
・お妃は「私を塔の中で生き長らえさせてくださった心優しい慈悲深い神様 が間もなく私を救い、優しくお迎えくださるでしょう」と言った
・お妃はもう3日だけ生き長らえ、安らかに息を引き取った
・お妃が埋葬されると、2羽の真っ白いハトがお墓の上に停まった
・年老いた王様はあの料理番を四つ裂きの刑に処したが、心痛で間もなく亡くなった
・息子の王子はあの美しい乙女と結婚した
・まだ2人が生きているかどうかは神様だけがご存じです
077. かしこいグレーテル Das kluge Gretel第2版以降で差し替え 初版は「上77 指物師とろくろ職人」あらすじ
あるところに、家具職人(Schreiner) と 木工ろくろ師(Drechsler) が隣同士で仕事をしていた。
二人は互いに自分の腕前を誇り、
•家具職人は「自分は家を建て、形あるものを作る」
•木工ろくろ師は「自分は丸く美しいものを作る」
と、どちらの仕事がより優れているかを言い争う。
やがて二人は、それぞれが相手の仕事をまねしてみることにする。
•家具職人は旋盤を使おうとするが、うまく扱えず、木は割れ、道具は役に立たない。
•木工ろくろ師は大工仕事をしようとするが、木は歪み、組み立てもできない。
こうして二人は、自分の技が長年の修練によるものであり、他人の仕事は簡単にまねできるものではないと悟る。
最後に二人は和解し、「人はそれぞれ自分の仕事を守り、誇るべきだ」という教訓を得て、それぞれの仕事に戻る。
あらすじ
・グレーテルと言う料理女がいた
・赤いヒールの靴を履いて外に出ると嬉しくなり、家に帰るとワインをひと口飲んだ
・グレーテルは自分が作った物をお腹いっぱい味見をしては「料理女というものは作った食事の味くらい知っておかなくちゃあね」と言っていた
・主人がグレーテルに「お客が来るからニワトリを2羽、美味しく料理しておくれ」と言った
・グレーテルはニワトリを潰して串に刺し、夕方頃になると丸焼きにしようと火に掛けた
・肉はキツネ色にほどよく焼き上がったが客はまだやって来ない
・グレーテルは「お客さんが来ないのなら火から下ろしておかないといけないわ。今が一番食べ頃なのに残念だわ」と主人に言った
・「それじゃあ、走って行って呼んで来るよ」と主人は言った
・グレーテルは「長いこと火の側に立っていると喉が渇くし、待ってる間に1杯やっちゃおう」と考えて、地下室へ下りて「神さまがお恵みくださったのよ」と言ってワインを1杯飲み干した
・「ワインって後を引くわねぇ」と言って続けて1杯飲んだ
・グレーテルは台所に戻ると、とり肉の表面にバターを塗ってもう一度火に掛けて串を回した
・グレーテルは「味見してみなくちゃあ」と考えて、指で舐めてみると「直ぐに食べないなんて、もったいないにも程があるわ!」と言った
・主人と客の様子を窓辺で見ている間に片方の手羽が焦げてしまった
・「これは私が食べちゃったほうがいいわ」と思って手羽肉を千切ってたいらげた
・食べ終わったグレーテルは「もう1つの手羽も無い方がいいわ。ご主人が何か足りない事に気づいちゃうもの」と考えた
・2本の手羽肉を食べてしまうと、グレーテルは「あの方たちは来ないかもね」と考えた
・グレーテルは「肉には手を付けちまったのだし、もう1杯グイッとやろう。そして丸々全部食べちゃおう。神様からの頂き物を腐らせていい訳がない」と呟いた
・グレーテルは地下室でワインを飲み、とり肉を1羽丸々食べた
・主人はまだ帰って来ないので、グレーテルは「1つある所に、もう1つも収まらねばならないものよ」と理由を付けて2羽目も食べた
・グレーテルが食べている最中に主人が戻って来て「急いでくれ、お客が直ぐにやって来るからね」と言った
・「ちゃんと用意致しますわ」とグレーテルは答えた
・主人はその間にとり肉を切ってみようと大きな包丁を廊下で研ぎだした
・客が礼儀正しく入口の戸をノックすると、グレーテルは口に指をあて、「シーッ、お静かに!急いでお引き取りくださいな。主人が考えているのは貴方の両方の耳を切り落とすことだけですからね」と言った
・「さあ、聞いてごらんなさい」とその客に主人が包丁を研ぐ音を聴かせると、客は大慌てで階段を下りて行った
・グレーテルは悲鳴を上げながら主人の所へ行き、「あの人、お出ししようとしたニワトリの丸焼きを2つとも皿から取って逃げて行っちゃいましたよ」と言った
・「そいつは上手いことやりやがったな!」と主人は悔しがり、「せめて、私に1羽でも残してくれたら良かったのに」と言った
・主人は客の後ろから待ってくれるように叫んだが客は聞こえない振りをした
・そこで主人は手に包丁を持ったまま「1つだけでいいよ!」と叫びながら客の後を追った
・主人は「とり肉を1つだけ」と言いたかったのだが、客は「耳の1つ」と言っているのだと解釈した
・両耳とも無事に家に帰るために、客はお尻に火が点いたように走って逃げて行った
078. 年よりのおじいさんと孫 Der alte Großvater und der Enkel
あらすじ
・(注1) 昔、ほとんど歩けない おじいさんがいた
・(注2) 膝はがくがく震え、耳は遠く、 目もよく見えず、歯は一本も残っていなかった
・スプーンをじっと持つことができず、テーブル掛けにスープをこぼしたり、口からたれることもあった
・息子とその奥さんはそれを見るのが嫌だった
・おじいさんは竈(かまど)の後ろの隅で、素焼きの粗末な皿で食べさせられるようになった
・(注3) おじいさんは食事を十分にはもらえず 、悲しそうにテーブルのほうを見て泣いた
・あるとき、 おじいさんは手が震えて小さな皿を落として割ってしまった
・若い嫁は強く叱ったが、おじいさんは何も言わずにため息をつくばかりだった
・(注4) ふたりは 銅貨二、三枚で木の小さな皿を買っておじいさんの皿にした
・四歳の小さな孫が床の上で小さな板切れを拾い集めていた
・「何をしてるんだい?」と父さんが聞いた
・「餌おけを作って、ぼくが大きくなったら父さんと母さんにこれで食べさしたげるよ」と子どもは答えた
・ふたりは見つめ合って泣きだすと、おじいさんをテーブルへ連れてきた
・それからは皆と一緒に食事をし、少しくらいこぼしても文句を言わなくなった
収録:上78 年とったおじいさんと孫
特徴
・(注1) むかし、あるところに、とても年老いた男がすんでいた(「ほとんど歩けない」は削除 )
・(注2) 目はどろんとし、耳は 遠く、ひざはがくがくしていた(「歯は一本も残ってない」は削除 )
・(注3) これではお腹が膨らむはずもなく おじいさんは悲しそうにテーブルを見て泣いた
・(注4) 女房は 2、3ヘラーで木の鉢を買 っておじいさんの皿にした
079. 水の精 Die Wassernixe
あらすじ
・兄さんと妹が泉のそばで遊んでいた
・ふたりそろって泉へ落ちた
・そこにいた水の精が「おまえたちはわたしのものだよ。わたしのためにしっかり働いてもらうよ」と言った
・(注1) 妹にはこんがらかっている汚ならしい麻を紡ぐように渡し、水をくんで空の樽に入れるように言いつけた
・男の子には鈍(なまく)らな斧で木を伐るよう言いつけた
・ふたりは石のように固い団子の他は何も食べさせてもらえなかった
・ふたりは我慢できなくなって、ある日曜日に水の精が教会に行っている隙に逃げ出した
・水の精は二羽の鳥が飛び去るのを見て、大股で追いかけた
・子どもたちは水の精がやってくるのを見た
・(注2) 妹がブラシを後ろに放ると千の千倍もの針の突き出た 大きなブラシの山になった
・水の精は懸命に山をよじ登り、やっとのことで山を越えた
・(注3) それを見た兄さんが櫛を後ろへ放ると、千の千倍もの歯の突き出た 大きな櫛の山になった
・水の精は歯にしっかりとつかまるのが上手でその山も越えた
・妹が鏡を後ろへ放ると鏡の山になった
・鏡の山はつるつるで水の精は越えれなかった
・水の精は家から斧を持ってきて鏡をまっ二つに叩き割ろうと思った
・戻ってきて鏡のガラスを割って開けたときには子どもたちは遠くまで逃げていた
・水の精はすごすごと泉に帰るしかなかった
収録:上79 水の精
特徴
・(注1) 女の子にはもつれた汚い麻を紡がせ、底のぬけた 樽で水を運ばせた
・(注2) 女の子がブラシを後ろに放るといく千本ものとげのある 大きなブラシの山になった
・(注3) それを見た男の子が櫛を後ろ放ると、百万もの歯のある 大きな櫛の山になった
080. メンドリが死んだお話 Von dem Tode des Hühnchens
※後半の話の展開や登場人物は「KHM018 ワラと炭とソラマメ」に酷似
あらすじ
・めんどりがおんどりと胡桃の山に出かけた
・(注1) ふたりは胡桃を一緒に食べて、楽しくすごした
・めんどりがとても大きな胡桃を見つけた
・(注2) めんどりは呑みこむことができず喉に引っ掛かった
・めんどりは死んでしまうのではと不安になって、「水を持ってきて」とおんどりに助けを求めた
・おんどりは大急ぎで泉へ走っていって、泉に水をくれるように頼んだ
・「まずは花嫁のところへ行って赤い絹の布をもらっておいで」と泉は答えた
・おんどりは花嫁のところへ駆けていき、赤い絹の布をくれるように頼んだ
・「まずはわたしの花の冠を持ってきて。柳にひっかかっているから」と花嫁は答えた
・おんどりは柳のところへ駆けていって枝から花の冠を取ってきた
・花嫁は引き換えに赤い絹の布を渡した
・泉に持っていくと引き換えに水をくれた
・水をめんどりのところへ持っていったが手遅れで死んでいた
・おんどりが大声で泣くと動物たちがやってきてめんどりの死を嘆き悲しんだ
・六匹のねずみがめんどりを墓へ運ぶための小さな荷車を作り、自分たちで車を引いた
・途中できつねがやってきて車の後ろに乗った
・それから狼、熊、鹿、ライオン、それに森じゅうの動物たちが乗り込んだ
・一行は小川まで来た
・「ぼくが小川の上に横になるから、みんなは上を渡るといいよ」と藁が提案した
・(注3) 六匹のねずみが藁の上にのっかると、藁は折れまがって 水の中に落ちてしまい、ねずみもみんな落ちて、おぼれてしまった
・また途方にくれた
・炭がやってきて「ぼくが小川の上に横になるから上を渡っていけばいいき」と言った
・炭は水辺に横になったが水に触わってしまい、ジュッと音をたてて消えて死んでしまった
・それを見ていた石が小川の上に横になり、こんどはおんどりが荷車を引いて、死んだめんどりと一緒に岸に上がった
・荷車のうしろにすわっていた他の者たちは重たくて荷車が逆もどりして水に落ちておぼれてしまった
・二人きりになったおんどりはめんどりの墓を掘って埋めてやり、上に小高く盛り土をした
・おんどりはその上にあがって悲しみに泣きくれた
・とうとうおんどりも死んでしまい、これでみんな死んでしまった
収録:上80 めんどりの死
特徴
・(注1) 2羽はクルミの実を見つけたら分けあおうと約束していた
・(注2) メンドリは1人で食べようとしたが、 大きすぎて飲みこめず、喉につかえた
・(注3) 6匹のネズミがその橋の上に乗ると、ワラがずるりとすべって 、水の中へ落ち、ネズミもみんな落ちておぼれて死んで しまった
081. 気楽な男 Bruder Lustig第2版以降で差し替え 初版は「上81 鍛冶屋と悪魔」
あらすじ
ある貧しい鍛冶屋のもとに悪魔が現れ、「お前に裕福な暮らしを与える代わりに、一定の年月が過ぎたら魂をもらう」という契約を持ちかける。鍛冶屋はこれを受け入れるが、契約の条件として三つの願いを求める。
彼の願いは次のような、きわめて現実的かつ狡猾なものだった。
自分の鍛冶場の椅子に座った者は、許されるまで立ち上がれない
庭の梨の木に登った者は、降りることができない
自分の袋に入った者は、出られなくなる
年月が過ぎ、約束通り悪魔が魂を取りに来ると、鍛冶屋はまず悪魔を椅子に座らせ、動けなくする。
次に梨の木に登らせて苦しめ、最後には袋に閉じ込め、金槌で散々に打ち据える。
痛めつけられた悪魔は命乞いをし、「もう二度とお前の魂を取りに来ない」と約束する。鍛冶屋はこれを承知して悪魔を解放する。
その後、鍛冶屋は長生きし、死後に天国へ行こうとするが門前払いされ、地獄でも「悪魔を懲らしめた男」として恐れられて入れてもらえない。
結局、この世に戻って再び生き続ける、あるいは行き場を失った存在として描かれて物語は終わる。
日本語訳本
あらすじ(原版)
導入 ― 退役兵の放浪
・Bruder Lustig は戦争から戻った退役兵
・所持金はわずか
・陽気で気前がよい性格
神と聖ペテロとの出会い
・みすぼらしい 旅人二人と出会う
・彼らは実は神と聖ペテロ
・Bruder Lustig は自分のパンを分け与える
・三人で一緒に旅を続ける
宿屋での出来事(鶏の盗み)
・宿屋(または農家)に立ち寄る
・オーブンで鶏が焼かれている のを見つける
・Bruder Lustig が 空腹に負け、焼けた鶏を背嚢に 隠す
・主人が鶏を探す
・Bruder Lustig は巧みに言い逃れる
・聖ペテロは呆れる
・神は黙って見ている
死者蘇生の奇跡
・ある家で人が死んでいる
・神の意志により、聖ペテロが死者を蘇生させる
・Bruder Lustig は奇跡を目撃する
・神の力と人間の力の違いが示される
三つの力の授与
・旅の終わりに、神が正体を明かす
・Bruder Lustig の気前を評価
・三つの力を授ける
命じた相手を動けなくする力
逃げられず懲らしめられる力
束縛を解く力
・神と聖ペテロは去る
悪魔屋敷の事件
・人里離れた屋敷に九人の悪魔が住みついている
・Bruder Lustig が退治を引き受ける
・夜、悪魔が出現
・第一の力で悪魔を拘束
・第二の力で徹底的に叩く
・悪魔が降参
・第三の力で解放
・悪魔は 二度と戻らないと誓い逃走
・屋敷は安全になる
旅の続行と小規模な力の使用
・横柄な人間を軽く懲らしめる
・必ず解放する
・力は支配ではなく調整のために使われる
老いと死
・Bruder Lustig が老衰(または自然死)
・天国の門へ行く
天国での拒絶
・天国の門番に拒否される
・無作法・生前の振る舞いが理由
・入れてもらえない
地獄での拒絶
・地獄へ向かう
・悪魔たちが彼を認識
・「あの兵士は危険だ」と恐れる
・地獄も入場拒否
終結
・どちらの世界にも歓迎されない存在
・しかし完全に敗北もしない
・民衆的トリックスターとして物語が終わる
全体構造の対称性
082. ばくち打ちのハンス De Spielhansl第2版以降で差し替え 初版は「上82 三人姉妹」
あらすじ
ある家に三人の姉妹がいた。三人はそれぞれ性格が異なり、上の二人はうぬぼれが強く軽率、末の娘は控えめで思慮深かった。
ある日、姉妹は森へ行く。そこで**不思議な存在(魔的な存在、あるいは魔女)**と出会い、それぞれにある条件や禁忌を与えられる。
上の二人
長女と次女は禁じられたことを守れず、好奇心や虚栄心から約束を破ってしまう。その結果、**石に変えられる(あるいは命を奪われる)**などの罰を受ける。
末の娘
末娘は与えられた言いつけを忠実に守る。沈黙や節制、慎みといった徳を貫いたことで魔法を打ち破り、最終的に姉たちを救い出す、あるいは自ら幸福な結婚を得る。
物語は、軽率さへの警告と、忍耐・従順・節度の賛美という教訓的色彩を帯びて終わる。
あらすじ
・博打を打つことしか能が無いので「博打打ちのハンス」と呼ばれている男がいた
・ハンスは賭けごとを止めようとせず、家も何もかも摩ってしまった
・借金取り達がハンスの家を取り上げる前の日に、神様と聖ペテロが一晩泊めては貰えないだろうかとやって来た
・博打打ちのハンスは「お泊まり下さいまし。ここにはベッドはありませんし、食べ物も出せませんがね」と言った
・「泊めてくれるだけで良い、食べる物は自分で買うから」と神様は言い、聖ペテロはハンスに3グロッシェン硬貨を与えてパンを買って来るように頼んだ
・博打打ちのハンスは出掛けて行ったが博打打ち仲間に声を掛けられ、3グロッシェンを摩ってしまった
・聖ペテロと神様はハンスが戻って来なかったので迎えに行った
・博打打ちのハンスは2人がやって来るのを見ると、お金を水溜まりへ落とした振りをしたが神様はお見通しだった
・聖ペテロはハンスにもう一度3グロッシェンを与え、今度は誘惑されることもなく2人にパンを持って来た
・神様がワインを所望した時、ハンスの家の地下の樽は空っぽだったはずが、ハンスが行ってみると上等のワインが出て来たので2人に持って行った
・2人は一晩ハンスの家に泊まり、翌朝、神様は博打打ちのハンスに「3つの望みを願い出るが良い」と言った
・ハンスは「天国へ行けること」をお願いすることなく、「何にでも勝てるカード」と「何にでも勝てるサイコロ」と「色々な果物が生り、その木に登った人はハンスが下りろというまで下りることの出来ない木」を願った
・神様はハンスの願いを叶えると、聖ペテロと一緒に旅を続けた
・博打打ちのハンスは博打を本格的に始め、世界の半分を手に入れる程になった
・聖ペテロは「これは良くありません。世界を全部自分の物にしてしまいます。あいつに死神を遣わさねばなりません」と神様に言った
・死神は博打の真っ最中のハンスに「ちょっと外へ出てこい」と言った
・博打打ちのハンスは「この勝負が終わるまで待ってくれよ。その間に外の木に登って俺たちに実をもいでおいてくれよ」と言った
・死神は木に登ったはいいが下りることが出来ず、博打打ちのハンスは死神を7年間も木に登らせたままにしておいたのでその間は死ぬ人間が1人も居なかった
・聖ペテロは「これは良くありません。人間が1人も死ななくなりました。私達が出かけていかなくてはなりません」と神様に言った
・2人がやって来て、神様が博打打ちのハンスに死神を下ろすようにお命じになったので、ハンスは直ぐに「下りてこいよ」と死神に言った
・死神は直ぐにハンスを捕まえて締め殺したので、博打打ちのハンスは天国の門へ行って扉を叩いた
・「外にいるのは誰だ」、「博打打ちのハンスです」、「そんな奴に用は無い、さっさと立ち去れ」
・ハンスは煉獄(天国と地獄の間にあって、キリスト教では悔い改めた死者の魂が火によって罪が清められる処)へ行って扉を叩いた
・「外にいるのは誰だ」、「博打打ちのハンスです」、「ここには苦しみと苦悩が嫌になるほどあるのに、博打など打つつもりはないぜ。さっさと立ち去れ」
・ハンスは地獄の門へ行くと、さっさと入れて貰った
・そこには年老いた魔王(ルシフェル)と幾人かの背中の曲がった悪魔が居るだけだった(背中の真っ直ぐな悪魔たちは人間の世界でやるべき仕事があった)
・ハンスは博打を始めたが、「賭けをすれば必ず勝つ」事になっていたので、魔王が唯一持っていた「背中の曲がった悪魔」を連れて立ち去った
・皆んなでホーエンフェルト(南ボヘミアにある地名で、ビールの産地として有名)へ行ってホップの幹を抜き取ると、それを持って天国へ登って扉を突き出した
・天国はメリメリと音を立てた
・聖ペテロは再び「これは良くありません。あいつを中へ入れてやらないと、天国を下界へ投げ飛ばしてしまいますよ」と神様に言った
・彼らがハンスを天国へ入れると、博打打ちのハンスはすぐさま博打を始めた
・ワイワイ、ガヤガヤと喧しくなり、何を言っているか聞き取れなくなった
・聖ペテロは再び「これは良くありません。あいつを追い出さねば天国に反乱を起こし兼ねませんよ」と神様に言った
・神さまと聖ペテロの2人はハンスを下界へ投げ飛ばした
・ハンスの魂がバラバラになって、博打打ち仲間達の心の中に入り込んだ
・だから、こんな博打打ち仲間が今でも生き続けているのです
083. 幸せなハンス Hans im Glück第2版以降で差し替え 初版は「上83 貧しい女の子」
⇒『KHM153. 星の金貨』
あらすじ
・ハンスは7年間の年季を終え、主人は働きに見合うだけの給金として頭程もある大きい金の塊を与えた
・ハンスは布切れに包んで肩に担いで家路に着いた
・ハンスが重い足取りで歩いている時、男が馬に乗って颯爽とやって来た
・ハンスは「馬に乗るというのはなんて素晴らしいのだろう!」と言い、馬に乗った男「どうしてお前は歩いているんだい」と尋ねた
・「金の塊が重くて肩を締め付けるけど、家に持って帰るにはそうするしかないのさ」とハンスは返事をした
・「馬をやるから、その塊をわしにくれよ」と馬に乗った男は交換を持ち掛けた
・ハンスは喜んで了承し、馬に乗った男は「程良く走ろうと思ったら舌を鳴らして“ハイドウ、ハイドウ”と言わないといけないよ」とアドバイスした
・ハンスは心地良く馬を走らせて心底嬉しくなった
・もっと速く行こうと思い、舌を鳴らして“ハイドウ、ハイドウ”と言うと馬は勢いよく走りだしてハンスは投げ飛ばされた
・1頭の牝牛を追い立ててやって来た農夫がその馬を止めてくれなかったら逃げてしまうとこだった
・ハンスは「金輪際馬には乗らないぜ。牝牛は良いね、ゆっくりと後ろから付いて行けばいいし、その上ミルクやバター、チーズが毎日手に入るしね」と農夫に言った
・ハンスは「牝牛を手に入れるにはどうしたらいいかね」と聞くと「そんなに気に入ったのなら馬と取り替えてもいいよ」と農夫は言った
・ハンスは大喜びで承知し、農夫は馬に乗って去って行った
・ハンスは後ろからゆっくりと牝牛を追い立てながら「これ以上何がいるというのだ」と上手い取り引きをしたと思っていた
・ハンスは飲食店に立ち寄り、嬉しくて持っている食物、昼のパン、晩のパンも全部食べてしまい、最後の2、3ヘラー銅貨でビールをグラスに半分貰った
・ハンスは牝牛を先へと追い立てて母さんのいる村へと向かった
・暑くなって喉が渇いたので牝牛のミルクを搾ろうとしたが一滴のミルクも出て来なかった
・挙句に牝牛が後ろ足でハンスを蹴飛ばして倒れた時、子ブタを手押し車に乗せた肉屋が「一体どうしたというんだい」とお人好しのハンスを助け起こした
・肉屋はハンスに水筒を渡し、「この牝牛は年寄りだからミルクなんか出しっこないと思うぜ。馬車でも引かす、潰して肉にするしかないな」と言った
・驚いたハンスは「牛の肉なんぞ、嬉しくないぜ。生きの良い子ブタなら色々なソーセージが楽しめるしなあ」と言った
・肉屋は「取り替えてやってもいいぜ」と言った
・ハンスは感謝し、腹立たしい目にあっても直ぐまた良い事があるものだとつくづく思った
・白い綺麗なガチョウを抱えた若者と道連れになった
・若者は子どもの洗礼の後の会食にこのガチョウを持って行くところだと語った
・若者は疑わしそうな目つきでブタを見て、「私が通ってきた村で村長のブタ小屋から1頭盗まれた」と話した
・「あなたのがそうじゃないかと心配しているのだよ。ブタを連れているお前さんを捕まえたら大変なことになるぜ」と言った
・お人好しのハンスは心配になって「このブタを受け取ってガチョウをおいらにくれよ」と言った
・人の良いハンスは心配が無くなる腕にガチョウを抱えて故郷へ歩き始めた
・「先ずは上等な焼き肉、滴り落ちる脂で3か月分のガチョウのラードを塗ったパン、綺麗な白い羽を枕に詰めて寝ればぐっすり眠り込める。母さん、きっと喜ぶだろう!」とハンスは独り言を言った
・ハンスが最後の村を通り抜けるとハサミ研ぎ師が歌を歌っていた
・「ブンブン回して研いであげるぜ、このハサミ、その時々に調子を合わせ、風の吹くままスイスイと」
・ハンスは立ち止まって「研ぎながらそんなに楽しそうにして、調子がいいんだね」と声を掛けた
・ハサミ研ぎ師は「手に職を持てば食いっ逸れないって事さ。一人前の研ぎ師は手さげ袋にいつでも金があるんだよ」と返事をした
・「どこでその立派なガチョウを買ったのかね」
・「買ったのではなくてブタと取り替えたんだよ」
・「ブタはどうしたんだい」
・「ブタは牝牛の代わりに手に入れたのさ」
・「牝牛はどうしたんだい」
・「牝牛は馬の代わりに手に入れたのさ」
・「馬は?」
・「馬には金の塊を払ったのさ、おいらの頭の大きさぐらいのやつでさ」
・「金はどうしたんだい」
・「7年間ご奉公したお給金だよ」
・「おまえさんは、いつだって上手くやったんだね」と研ぎ師は言った
・「次は立ち上がる度に袋の中でお金がチャリンチャリンと撥ねる音を聞けるようになったら幸せで言うことなしだね」
・「どうしたらいいのさ」とハンスが言うと「研ぎ師にならなくちゃな。それには砥石があるだけでいいのさ」と研ぎ師は答えた
・「ここに砥石がもう1個あるが、少々傷物だからこれならガチョウをくれるだけでいいぜ、そうするかい?」と研ぎ師は言った
・「聞くまでもない」とハンスは答えて交換した
・ハンスは「福の皮(赤ん坊が包まれていた羊膜のこと。羊膜は幸運の印とされていた)をまとって生まれたにちがいない」と大きな声を上げ、「望んだ事は何でも叶う、まるで運にめぐまれた日曜日生まれの子ども(「幸運な子ども」の意)みたいだよ」と言った
・ハンスは明け方から歩き通しだったのでクタクタで、この石を運ばなくて良かったらどんなにいいだろうと考え始めた
・ハンスは野中の井戸で休んで冷たい水で元気を付けようと思った時、うっかりして2つの石が井戸に落ちてしまった
・ハンスは沈んでいく石を見ると飛び上がって喜んだ
・神様がお情けを掛けてくださった、こんな素晴らしいやり方で、自分を責めなくてもよく、ただ邪魔で仕方がなかった重い石から解き放ってくださった、と感謝した
・心も軽やかにハンスは全ての重荷から解放されて故郷の母さんの処へ帰って行った
084. ハンスの嫁とり Hans heiratet第2版以降で差し替え 初版は「上84 お姑」
あらすじ
ある男には、非常に折り合いの悪い姑がいた。姑は口うるさく、男にとっては常に不快な存在として描かれる。
ある日、その姑が水辺(川・池・井戸などと理解される場)で溺れそうになる。姑は必死に助けを求め、「こちらへ来て助けてくれ!」と叫ぶ。
しかし男は、「それなら向こうを探してみよう」と答え、反対方向へ行ってしまう。
その結果、姑は助からず、物語はそのまま皮肉な笑いを残して唐突に終わる。
ドイツ語の駄洒落
あらすじ
・若い農夫ハンスに親戚の叔父さんが金持ちの家のお嫁さんを世話しようとした
・叔父さんはハンスを暖炉の後ろに座らせて火を焚かせた
・叔父さんはミルクの入った瓶と白パンを持って来て、ピカピカのヘラー銅貨をハンスに握らせて「ヘラー銅貨をしっかり握っているんだぞ、白パンは小さく砕いてミルクの中に入れるんだ。戻って来るまでそこから動くんじゃないぞ」と言った
・ハンスは「言われた通りにしておくよ」と言った
・嫁探しの叔父さんは継接ぎだらけの古いズボンを履いて、他の村に住む金持ちの農家へ行った
・叔父さんは農家の娘に「甥っ子のハンスと結婚する気はないかい。実直で分別のある亭主を手に入れることになるよ」と言った
・娘の欲深い父親が「財産はどうなんだい。砕いて入れられる物(※)を持っているのかい」と尋ねた
※ スープにパンを砕いて入れると中身が豪華になることから「値打ちがある」という意味で使われるようになり、「自分たちが金もちである」ことの表現となった。
・叔父さんは「甥は暖かくして座っていて、真っ新の小銭を持っているし、砕いて入れる物も十分持っていますよ」と返事をした
・さらに「甥っ子は私と同じくらい継接ぎを持っていますよ」と言いながら、自分の継接ぎだらけのズボンを叩いた
・「一緒にお出まし頂けますなら、その通りだとお目に掛けますよ」と言った
・欲ばり親父は持って来いのチャンスを逃すまじと「その通りなら結婚には反対しないぜ」と言った
・日取りが決められ、結婚式が執り行われた
・若い女房が畑へ行ってお婿さんの土地を見たがると、ハンスは晴れ着を脱いで継接ぎの野良着を着ると「上等の服を汚すことになるからね」と言った
・2人が畑や原っぱが仕切られた所に来た時、ハンスは上着の大小の継接ぎを指差して「この継接ぎはおいらのものだよ、あれもそうだよ」と言った
・「ここを見るだけでいいのさ」とハンスは言ったが、「女房よ、広い畑ではなくこの服を見るがいい、服の継接ぎは自分の物だよ」ということだった
・「あんたも結婚式に出たの?」
・「出ましたよ。
頭の飾りは雪で出来ていてお日様が顔を出したら溶けちゃったの。
服はクモの巣で出来ていてイバラの中を通ったらボロボロになってしまったの。
靴はガラスで出来ていて石に躓いたら真っ二つに壊れてしまったわ」
085. 黄金の子どもたち Die Goldkinder
※前半の話の展開や登場人物は「KHM019 漁師とその女房の話」に酷似
あらすじ
・ひとりの貧しい夫とおかみさんがいた
・(注1) ふたりは小屋を一軒持っているだけで、夫は漁師だった
・あるとき、水辺にすわって網を打つと黄金の魚がかかった
・「わたしを水に戻してくれたら、あなたの小屋を豪華な屋敷に変えてあげる」とその魚が言った
・(注2) (漁師の返答なし)
・「その屋敷の戸棚を開けると、 中には煮たり焼いたりした料理が欲しいだけ入ってる。ただし、このことを誰にも話してはいけない。もし話したら、何もかも消えてしまう」と魚は続けた
・漁師は黄金の魚を水に投げ入れて家に帰った
・(注3) 小屋の代わりに大きな屋敷が建っていて、おかみさんが豪華な部屋の真ん中にすわっていた
・(注4) (おかみさんの反応なし)
・夫はその様子を気に入った
・漁師は「何か食べ物をくれ」と言ったが、おかみさんは「こんなに大きな屋敷では見つけようがない」と答えた
・戸棚のところへ行くように促されたおかみさんが開けてみると、中にケーキや肉や果物やぶどう酒が入っていた
・(注5) 「おやまあ、おまえさん、何が欲しいんだい?」とおかみさんはびっくりして言った
・(注6) (補足なし)
・おかみさんは理由を尋ねたが漁師は「この幸運が消える」と言って話さなかった
・(注7) (おかみさんの反応なし)
・おかみさんは益々知りたくなって、夫に答えをせがんだ
・おかみさんが昼も夜も追及したので、「これはみんな黄金の魚のおかげだ」と打ち明けた
・それを口にすると屋敷も財産も残らず消えて、ふたりはまた古い漁師小屋の中にいた
・夫はまた漁師の仕事を始め、もう一度黄金の魚を釣り上げた
・魚は「逃がしてくれたら、いま一度、立派な屋敷と料理が入った戸棚をあげる」と約束した
・「黙っているように」という同じ条件が付いていたが、夫は同じように我慢した後におかみさんに押し切られて秘密をばらした
・その途端、二人はみすぼらしい小屋の中にいた
・(注8) (おかみさんの反応なし)
・夫は釣りに出かけ、もう一度、黄金の魚を釣った
・(注9) 「わたしを家まで一緒に連れて行ってください」と魚が言った
・魚は「私を六つに切って、二つは食べるために奥さんに、二つはあなたの馬に、そして二つは地面に埋めれば幸運を授かるでしょう」と続けた
・(注10) さらに魚は「奥さんは黄金の子どもを二人産み、馬は黄金の若駒を二頭もうけ、そして地面からは黄金のユリが二本生えるでしょう」と補足した
・(注11) 夫は言われた通りにし、そして予言 は当たった
・(注12) 二人の黄金の子どもは成長した
・(注13) 二人は大人になると 「父さん、僕らは黄金の馬に乗って世の中に出ていきたい」と言った
・二人は「僕らの様子は黄金のゆりを見れば分かります。ゆりが生き生きとしていれば僕らは元気、ゆりがしおれていれば僕らは病気、ゆりが倒れてしまったら僕らは死んでいます」と付け加えた
・二人は馬に乗って一軒の食堂にやってきた
・そこは人で一杯で、みんなは黄金の馬に乗ったふたりの黄金の子どもを馬鹿にして笑った
・(注14) 二人は腹を立て、 一人は恥ずかしくなって家へ引き返した
・もう一人は馬に乗ってさらに旅を続けて森へやってきた
・森のはずれにいた人たちが、森には悪党が大勢いて悪さをするから馬で入ってはいけないと黄金の子どもに話した
・(注15) (補足なし)
・黄金の子どもは「どうしても森を抜けていく」と言い、熊の毛皮を自身と馬にかぶせて森に入っていった
・悪党に気付かれたが熊の毛皮が功を奏して通り抜けることができた
・ある村にやってきて娘に出会った
・あまりの美しさに、黄金の子どもは結婚を申し込んだ
・(注16) 娘は承知して、結婚式をあげて楽しく暮らした
・(注17) そこへ花嫁のおとうさんが帰ってきた
・黄金の子どもはまだ熊の毛皮を脱いでなかった
・(注18) おとうさんは娘が熊の大将と結婚したと思って 、怒って、花婿を殺してやろうと考えた
・花嫁は一生懸命に頼んだので、おとうさんもしまいには怒りを静めた
・おとうさんが次の朝早く起きて娘婿を見ると、りっぱな黄金の男がベッドに寝ていた
・花婿は見事な鹿を捕まえに狩りに行く夢を見ていた
・それを花嫁に告げると、花嫁は心配したが森へ出かけていった
・黄金の子どもは夢の通りに表れた鹿を追う内に、魔女のおばあさんの家の前にいた
・鹿を見なかったかと尋ねると、魔女は「見た」と答えた
・その時、魔女の子犬が吠えるので黄金の子どもは腹を立てて撃とうとした
・魔女はそれを見て黄金の子どもを粉ひきの石臼に変えてしまった
・(注19) (補足なし)
・家の黄金のゆりが倒れた
・(注20) もう一人の兄弟は黄金の馬に乗って魔女の家へやってきた
・兄弟をふつうの姿に戻さないなら殺してやる、と脅されて魔女は言う通りにした
・(注21) ふたりの兄弟は家へ戻った
・一人は花嫁の元へ、もう一人はおとうさんの元へ
・(注22) ゆりはまた立ち上がった
・(注23) もしゆりが倒れていなければ、二本のゆりはまだ立っているでしょう
収録:上63 黄金の子どもたち
特徴
・(注1) 2人にあるのは小屋だけで、魚をとっては食べ、その日暮らしの生活 をしていた
・(注2) 漁師は「食べる物がなくては、お城なんぞなんの役に立つかね」と返した
・(注3) ほったて小屋のあったところに大きなお城が建っていて、中に入ると自分の女房がきれいな服を着ておめかしをして 豪勢な部屋に座っていた
・(注4) 女房はすっかり満足して「どうして突然こんなふうになったの。とても気にいったわ」と言った
・(注5) どれもとてもおいしそうで、 女房は大喜びで「これ以上ほしいものがあるかしらね」と言った
・(注6) 2人は一緒に食べたり、飲んだりしてお腹いっぱいになった
・(注7) 「いいわよ。知ってはいけないのなら、私だって知ろうとは思わないわ」と女房は言った
・(注8) 「また、俺たちは飢えに苦しむことになるんだ」と男は言い、「財産が誰からのものか分からないのなら要らないわよ。でないと気が休まらないもの」と女房は言った
・(注9) 「私は何度もおまえの手に落ちる運命なんだ。 私を家に持って帰りな」と魚が言った
・(注10) (魚の予言をカット)
・(注11) 男は魚を家にもち帰って言われた通りにすると、土に埋めた2切れからは2本の黄金のユリが生え、馬は2頭の子馬を産み、漁師の女房は全身金色の2人の子どもを産んだ
・(注12) この子たちはすくすくと育って背が高く美しくなり、ユリと馬はこの子たちといっしょに育った
・(注13) 二人はあるとき 「父さん、ぼくたちは黄金の馬に乗って世の中に出ていきたい」と言ったが、しかし、父親は「おまえたちが出ていった先で無事かどうかが分からない」と返した
・(注14) 一人は恥ずかしくなって家へ引き返した
・(注15) さらに「あなたも馬も黄金でできていることを知ったら、うち殺してしまうでしょう」と言った
・(注16) 2人は結婚式をあげるが、みんなが大喜びをしている最中に 花嫁の父親が戻ってきた
・(注17) (注16)のタイミング変更
・(注18) 父親は「クマの皮を着た男なんぞに、わたしの娘をやってたまるか」 と言って、この男の子を殺そうとした
・(注19) 花嫁は夫の帰りが遅いので案じた通りになったに違いないと考えた
・(注20) もうひとりの兄弟は父親の制止を振り切って 黄金の馬に乗って魔女の家へやってきた
・(注21) 2人の黄金の子は再会を喜びあい、キスをかわして抱きあい 一緒に馬を走らせて森から出た
・(注22) 「おまえがあの子を救ったことは知ってるぞ。なぜなら、黄金のユリが起きあがって咲き続けたからな」と父親は言った
・(注23) 彼らは楽しく、死ぬまで幸せに暮らしました
086. キツネとガチョウ Der Fuchs und die Gänse
あらすじ
・狐に狙われたガチョウの群れが命乞い
・狐に拒否されるもガチョウは懺悔の祈りをする間は待ってと懇願
・今もなおガチョウは祈りを継続中
収録:上86 狐とがちょう
大筋で変更なし
087. 貧乏人と金もち Der Arme und der Reiche
あらすじ
・貧しい身なりをした神様が、日が暮れて宿まで辿り着けないでいた
・道路沿いには大きくて立派な家とみすぼらしい小さな家があった
・迷惑の掛からないように大きな家に泊めてもらおうとするが、神様の身なりをみるや断られる
・小さな家の夫婦は快く向かい入れ、貧相な食事やベッドではあるが可能な限り神様をもてなす
・翌朝、神様が旅立つ際に3つの願い事を叶える(3番目を望まなかったので家を立派に建て替えた)
・立派な家に住んでいた金持ち夫婦は向かいの家が豪華になっているのに気付いて理由を聞き出す
・金持ち主人は馬で神様を追う
・神様に追いついた金持ち主人は帰路では泊まってもらうように交渉して、3つの願い事を叶えてもらうことになる
・金持ち主人は馬で家路に向かう際、馬に腹を立てて「馬の首の骨を折る」で一つ目の願いを使う
・金持ち主人は担いでいた馬具を重荷に思い、「家で楽をしている女房がこの鞍に乗って降りられなくなればいい」と二つ目の願いを使う
・家に着いた金持ち主人は「女房が鞍から降りられるように」と三つ目の願いを使ってしまう
収録:下01 貧乏人と金持ち
特徴
・神様が貧しい夫婦の家を旅立つ際に、もう一度祝福を与える
・金持ち主人が一つ目の願いを使った次に、「バイエルンのビール」の件が挿入されている
上記以外は大筋で変更なし
088. 歌い、はねるヒバリ Das singende springende Löweneckerchen
あらすじ
・ひとりの男が長い旅に出ることになり、三人の娘にお土産を尋ねた
・一番上は真珠を、二番目はダイヤモンドを欲しいと言った
・三番目の娘は「鳴いて跳ねるひばりが欲しいわ」と言ったので「もし手に入れることができたら」と言って三人にキスをして出かけた
・(注1) 男 が家へ帰るときには上の二人のための真珠とダイヤモンドは手に入れていた
・末の娘のための「鳴いて跳ねるひばり」は見つけることができなかった
・男は末の娘を一番可愛がっていたので残念で仕方なかった
・帰り道、森の真ん中に立派なお城があり、男は傍らの木の天辺で一羽のひばりが鳴いて跳ねているのが見えた
・男は喜んで、召し使いに小鳥を捕まえてくるように命じた
・召し使いが木に近づくと一頭のライオンがとび起きて唸った
・「ひばりを盗もうとする奴は喰ってやる!」と言われて男は命乞いをした
・ライオンは「お前が家に帰って最初に出会ったものを私にくれると約束するなら命を助け、この鳥も娘にくれてやる」と言った
・男は「私が家に帰ると、いつも真っ先に飛んで来るのは末の娘だ」と言って断った
・恐ろしくなった召し使いが「猫や犬だってこともあるかもしれませんよ!」と主人に助言すると、男は承知して鳴いて跳ねるひばりを受け取り、約束した
・男が家に帰って最初に出会ったのは最愛の末の娘で、娘は鳴いて跳ねるひばりを見ると益々喜んだ
・お父さんは喜ぶことができずに泣きだし、娘にライオンとの約束を話して「どんなことになろうとも行かないでくれ」と頼んだ
・娘はお父さん を慰めて「約束を守ってライオンのところへ行きます。そしてライオンをなだめて戻って来られるように頼んでみます」と言った
・翌朝、娘は森へ入ったが、実はライオンは魔法を掛けられた王子で、昼は家来達と一緒にライオンの姿をしていて夜になると元の姿に戻るのだった
・(注2) 娘がやってくると王子は親切に持て成して結婚式が行なわれ、夜になって ライオンは美しい王子になった
・二人は夜は起きて昼に眠るようにし、長いこと幸せに暮らしていた
・ある時、王子が一番上のお姉さんの結婚を伝え、娘はライオン達をお供に出かけた
・娘はとっくに死んだと信じていた皆は大喜びした
・(注3) 娘は元気に暮らしている様子を話して聞かせ、結婚式が済むまで皆と一緒に居て 、それから森へ戻って行った
・二番目のお姉さんの結婚式に招待されると、娘はライオンに同席を促した
・ライオンは「ろうそくの光を一筋でも浴びたら鳩になって、七年間、他の鳩たちと飛んでいなくてはならない」と言って渋った
・娘はどんな光からも守ると言い、小さい子供も一緒に連れて行った
・(注4) 娘は光が射し込まない広間を作らせ、火が灯されたら中にいるように旦那さんに言った
・ところが生木の扉にはひびが入っていて小さな隙間が出来ていた
・結婚式が華やかに祝われた
・教会から戻って来た行列の松明と蝋燭の細い光が広間の王子に射し込んだ
・(注5) 光を浴びた王子は姿を変え、お姫様 が探すと一羽の鳩がいた
・鳩は「七年の間、世界を飛び続けなくてはなりませんが、七歩行く度に赤い血を一滴と白い羽根を一枚落としましょう。後を追ってくれたら魔法を解くことができます」とお姫さまに告げた
・鳩は扉から外へ飛んで行き、お姫様は後を追った
・およそ七年が過ぎて羽根も赤い血の雫も落ちて来なくなった
・上を見上げてみると鳩は消えて居なくなっていた
・お姫様はお日様に尋ねた「あなたはどんな谷にもどんな頂きも隈なく照らします。白い鳩が飛んでいるのをご覧になりませんでしたか?」
・お日様は「見なかったね。でも小箱をひとつあげよう。本当に困ったときに開けなさい」と言った
・お姫様はお日様にお礼を言うと 夜まで歩き続けた
・お姫様は輝くお月様に尋ねた「あなたは一晩中、どんな野原もどんな森も隈なく照らしています。白い鳩が飛んでいるのをご覧になりませんでしたか?」
・お月様は「見なかったね。でも卵をひとつあげよう。本当に困ったときに割りなさい」と言った
・お姫様はお月様にお礼を言い 、歩いて行くと北風が吹いた
・お姫様は北風に尋ねた「あなたはどんな木々の上もどんな葉の下も吹き抜けていきます。白い鳩が飛んでいるのをご覧になりませんでしたか?」
・北風は「見なかったね。でも残りの三つの風に聞いてあげよう。」と言った
・東風と西風は「何も見なかった」と言った
・南風は「白い鳩なら見かけたよ。紅海へ飛んで行ってライオンに戻った。七年が過ぎたからね。そこで竜と戦っているけど、その竜は魔法を掛けられたお姫様なのさ」と言った
・(注6) 北風がお姫様に「紅海へ行って、右岸に細長い枝 の十一本目を切り取って竜を叩くんだ。そうするとライオンは竜に勝って両方とも人間の姿に戻る。その後で岸辺にいる怪鳥グライフの背中に王子と一緒に乗って飛ぶんだ。鳥は海を越えて家まで連れて行ってくれるだろう。胡桃の実をひとつあげよう。 海の真ん中まで来たらこの実を落とすと直ぐに大きな胡桃の木が水の中から生えてきて、グライフ鳥は休むことができる」と言った
※ 紅海:アフリカ大陸とアラビア半島の間にある湾
※ 怪鳥グライフ:体がライオンで頭と翼が鷲というギリシャ神話に出てくる鳥
・何もかもが北風の言う通りになり、十一番目の枝で竜を叩くとライオンは勝って二人は人間の姿に戻った
・ところが竜だったお姫様は王子を抱きかかえて怪鳥グライフに乗り、一緒にどこかへ飛んで行ってしまった
・(注7) 可哀想なお姫様は独りぼっちになってしまった
・けれどもお姫様「王子様が見つかるまで、風が吹く限りどこへでも、雄鶏が鳴く限りいつまでも歩いて行きましょう」と言った
・長い道のりを歩いて二人が一緒に暮らしている城へやって来た
・(注8) 間もなく二人の結婚のお祝いがあると耳にしたが、お姫様は「神様がきっと力を貸してくれるわ 」と言った
・太陽がくれた小さな箱には光り輝くドレスが入っていた
・お姫様はそれを着て城へ行くと、花嫁もそれを気に入り、売ってくれないかと尋ねた
・お姫様は「お金や宝物ではダメですが肉と血となら」と条件を提示した
・「王子様の部屋で一晩寝かせてください」という意味で、花嫁は渋々承知した
・花嫁は「王子に眠り薬を飲ませる」ように召し使いに命じ、王子が眠ってからお姫様を部屋に案内した
・お姫様は眠る王子の横で今までの経緯を語ったが、王子には風の音のようにしか聞こえなかった
・朝になってお姫様は金の服を渡すが、それが役に立たなくて悲しくなり野原で泣いた
・お姫様は月がくれた卵を思い出し、割ってみると一羽の雌鶏が金無垢のヒヨコを12羽連れて出てきた
・ヒヨコ達の仕草は可愛らしく、その様子を窓から見ていた花嫁が気に入って売ってくれないかと尋ねた
・お姫様は同じ条件を提示し、花嫁は同じように騙そうと考えて承知した
・王子はベッドに行く時に昨夜の音は何かと召し使いに尋ね、その経緯を知ると「その薬はベッドの脇に流しておけ」と命じた
・お姫様が同じように話し始めると、王子は声で愛しい妻だと分かり飛び起きた
・「さあ、私は本当に救われたぞ。お前の事を忘れてしまうように姫が魔法を掛けていたんだ。けれど神様が丁度良い時に私を助けてくださった 」
・二人は夜のうちにそっと 城を抜け出した
・というのも、二人は姫のお父さんが魔法使いだったので 恐ろしかった
・二人はグライフ鳥に乗って紅海の上を飛んだ
・真ん中まで来るとお姫様は胡桃の実を落として、生えてきた大きな胡桃の木の上でグライフ鳥を休ませた
・それからグライフ鳥は二人を家へ連れて帰り、大きく美しくなっていた子供と皆で死ぬまで幸せに暮らした
収録:下02 鳴いて跳ねるひばり
注は「上68 夏と冬の庭」
あらすじ(1812年初版)
・ある商人が市に行く前に、欲しい土産を三人の娘に尋ねた
・上の娘は「綺麗な服を」、中の娘は「素敵な靴を」、末娘は「薔薇を一本」と言った
・冬の最中だったので薔薇を手に入れるのは容易くなかったが、お父さんは「出来るだけのことはしてみよう」と言った
・商人は上の娘の服と中の娘の靴は手に入れていたが、薔薇は見つからなかった
・困り果てた商人が馬を進めていると、半分は夏、半分は冬の庭があるお城の前に出た
・夏の庭には美しい花がとりどりに咲いており、冬の庭では何もかも枯れて深い雪に埋もれていた
・夏の庭には薔薇の垣根があって咲き満ちていたので、商人は喜んで一本折ると馬で先へ進んだ
・しばらく行くと、荒い息で黒い獣が追いかけて来て「薔薇を返せ。さもないとお前を殺すぞ!」と叫んだ
・商人は「世界一美しい娘の土産にこの薔薇をください」と答えた
・「その代わりにその娘を私の花嫁にくれるか?」と獣が言うと、娘を受け取りに来はしないだろうと商人は考えて「差し上げます」と答えると獣から逃れた
・獣は商人の背中に向かって「一週間経ったら花嫁を迎えに行くからな」と叫んだ
・商人の娘達はそれぞれが頼んだ土産を大喜びし、。中でも薔薇を貰った末娘が一番喜んだ
・一週間が過ぎた日、三人の娘がテーブルに付いていると階段を上がって来る音がして戸口で「ここを開けろ!」と叫ぶ声が聞こえた
・娘達が扉を開けると大きな黒い獣が入って来た
・獣は「花嫁が来ないので連れに来たのだ」と言うと末娘を連れて行った
・商人が家に戻ったのはさらわれた後だった
・黒い獣のお城の中は綺麗で、音楽師もおり、直ぐに演奏を始めた
・獣は優しく、娘の願いを全て叶えてくれた
・食事も二人一緒で、娘が料理を取り分けてやらないと獣は食べようとしなかった
・娘はだんだん獣が好きになり、そのうち心から愛するようになった
・ある時、娘は「お父さまか姉さん達の誰かが病気の気がして心配なので、一度だけでいいから会いに行かせてください!」と獣に言った
・獣が娘を鏡の前に連れて行くと、鏡には娘の家の居間が映っていた
・お父さんは娘の境遇を苦にして本当に病気になっていた
・末娘はそれを見て悲しくなり、「一日か二日でいいから家に帰らせてほしい」と獣に頼んだ
・獣は末娘があまり悲しむので最後には同情して「行っておいで。だが、一週間経ったら必ず帰って来ると約束しておくれ。」と言った
・末娘は約束したが、出かける時に獣は「一週間以上、留守にしてはいけないよ」と念押しした
・末娘にもう一度会えたお父さんはとても喜んだが、長い闘病生活には抗えず、二、三日して死んだ
・末娘は余りに悲しくて、愛する獣のことを思い出したのは約束の一週間が過ぎた後だった
・末娘は獣が病気になっているような気がして心配になり、直ぐにお城に戻った
・お城はとても静かで黒い喪章に覆われていた
・庭はどこも冬で一面の雪景色だった
・末娘が獣を探して庭に出てみると、キャベツの山があった
・上の方のキャベツはもう腐って色が変わっていて、娘が取りのけてみると獣が死んで横たわっていた
・娘が水を持って来て繰り返し獣に掛けると、獣が飛び上がった途端に美しい王子になった
・そこで結婚式が行われ、音楽師達は演奏を始め、夏の庭は美しい花をたくさん咲かせた
・黒い喪章は取り払われ、二人はいつまでも幸せに仲良く暮らした
特徴
・(注1) 男 ⇒父親 (以降も同様)
・(注2) 娘が着くと愛想よく迎えられてお城に案内され、夜になると ライオンは美しい男の人になって結婚式が盛大に行われた
・(注3) 娘はどんなに素晴らしい夫を得て上手くいっているかを話して聞かせ、結婚の祝いが続く間父親の家に居て 、それから森へ帰って行った
・(注4) 末娘は光が射し込まない広間を作らせ、火が灯されたら囲いの中にライオンが座れるようにした
・(注5) お姫様 ⇒娘 (以降も同様)
・(注6) 細長い枝 ⇒背の高いアシ 、胡桃の実をひとつあげよう ⇒クルミを1つもっているね
・(注7) 長旅を続けてきた娘は独り残されて立ち尽くし、それから蹲って泣いた
・(注8) 間もなく二人の結婚のお祝いがあると耳にしたが、娘は「神様、どうか私をお助けください 」と言った
※ 「期待」ではなく「信じて祈る」
089. ガチョウ番の娘 Die Gänsemagd
あらすじ
・王女が遠く離れた王子の元に嫁ぐことになる
・侍女と共に嫁ぎ先へ馬で移動
・王女が乗るファラダは口が利ける馬
・道中で侍女からの虐待を受けて王女と侍女が入れ替わる
・王子は侍女を向かい入れ、王女はガチョウ番の手伝いを命じられる
・侍女の希望でファラダは首を落とされる(口封じ)
・ファラダの首は王女の要望で町の門の通路に飾られる
・国王がファラダの首と会話する王女を目撃
・王女と侍女の入れ替えが王子の知るところとなる
・王子は王女と結婚し、侍女は自らが決めた刑罰で処刑される
収録:下03 がちょう番の娘
大筋で変更なし
090. 若い大男 Der junge Riese
あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
ある百姓に、息子がひとりありました。息子は親指ほどの大きさで、すこしも大きくなりませんでした。何年たっても、髪の毛ほども成長しませんでした。あるとき、百姓が畑を耕しに出かけようとすると、ちびの息子が「おいらもいっしょに行く」と言いました。「いや、だめだ」、父さんは言いました、「おまえはここに残っていろ。外に行ったって、なんの役にも立ちゃしない。それにおまえがどっかへいなくなってしまうかもしれないしな」。すると親指小僧が泣きだしました。父さんは黙らせるために、小僧をいっしょに連れていかなくてはなりませんでした。そこで父さんは小僧をポケットに入れ、畑に着くとポケットから出して、掘ったばかりの溝へすわらせました。小僧がそうやってすわっていると、山を越えて大きな巨人がこちらへやって来ました。父さんは「あそこに大きな巨人が見えるだろう」と言って、小僧を脅かしておとなしくさせようと思いました。「こっちへ来て、おまえを連れてっちまうよ」。ところが巨人は足が長くて、ほんの二、三歩進んだかと思うと、もう溝のところまで来ていて、小僧をつまみ上げると、連れていってしまいました。けれども父さんはそこに立ったまま、驚きのあまり一言も言葉が出ませんでした。そして、息子はいなくなってしまった、これで生きてるうちに二度と会うことはないだろう、と思いました。
ところが巨人は小僧を連れていくと、自分の乳を吸わせて育てました。親指小僧は成長し、巨人のように大きく、強くなりました。そして二年たつと、年とった巨人は小僧を連れて森へ行き、試してみようと、「あそこの若い木を抜いてごらん」と言いました。すると、若者はもう強くなっていて、その若い木を根っこごと地面から引っこ抜きました。ところが巨人は、もっと強くなくてはと考えて、小僧を連れて帰ると、さらに二年、乳をやりました。それから巨人が試してみようと森へ連れていくと、小僧は今度は前よりもずっと大きな木を引っこ抜きました。けれども巨人はそれにも満足しないで、さらに二年、乳をやりました。それから小僧といっしょに森へ行って言いました、「さあ今度は、まっとうな木を引っこ抜いてごらん」。すると若者は一番太い樫の木を地面から引っこ抜いたので、ばりばりと音をたてました。しかしそれは若者にはちょっとした遊びにすぎませんでした。年とった巨人はそれを見て、よしこれでいい、おまえの修業も終わりだ、と言って、ひっさらってきた畑へ若者を連れて帰りました。若者の父さんはちょうどまた畑を耕しているところでした。そこへ若い巨人がやってきて、言いました、「おやじ、見ておくれよ、こんなになっちまった。おいら、おやじの息子だよ」。そこで百姓は驚いて言いました、「いいや、おまえはおれの息子なんかじゃねえ。どっかへ行ってくれ」「おいらが息子なのは、まちがいねえ。一度耕させておくれよ。おやじと同じように、上手にやっから」――「いいや、おまえはおれの息子なんかじゃねえ。耕すことだってできやしないさ。とっととどっかへ行っておくれ」。ところが百姓は、その大男が恐ろしかったので、鍬(くわ)をほっぽり出して逃げだすと、畑の脇へすわりこみました。そこで若者は鋤(すき)をつかむと、畑を耕そうと思いました。ところが若者が片手で力いっぱい押しただけで、鋤は地面深くめりこみました。百姓は、黙って見ていられず、若者に大声で言いました、「耕そうっていうなら、そんなに力いっぱい押しちゃあだめだ。畑がめちゃくちゃになっちまう」。ところが若者は体のうしろに鋤を結び付けて言いました、「おやじ、家へ行って、おっかさんに鉢いっぱい食べ物をこさえとくように言っておくれよ。おいら、そのあいだに、畑をほっくり返しとくから」。そこで百姓は家へ行って、おかみさんにそうするようにたのみました。そしておかみさんは大鉢いっぱいに料理をこさえました。ところが若者は、二(2)モルゲンの畑をたったひとりですき返してしまいました。それから体に馬鍬を結び付けると、一度に二本の馬鍬で残らずならしてしまいました。それを終えると、森へ行って二本の樫の木を引っこ抜き、肩に担ぐと、前とうしろに馬鍬をぶら下げ、それから前とうしろに馬もぶら下げました。そしてそれをまるで藁束のように担いで家に帰ってきました。庭へ入っていくと、母さんは若者が誰だかわからなくて、たずねました、「このおそろしくでかい男は誰だい?」百姓が言いました、「おれたちの息子さ」。母さんは言いました、「いいや、うちらの息子なんてこたあ絶対にあるわけない。こんなでっかいやつ、育てたこともない。うちらのはちびだった。さあ、どっかへ行っておくれ。おまえなんかに用はないよ」。けれども若者はじっと黙ったまま、馬を馬小屋へ連れていき、カラス麦と干し草をやって、すっかりきれいに片づけました。そしてそれを終えると、部屋へ入っていき、長椅子に腰かけて言いました、「おっかさん、腹がすいたんだけどなあ。もうできる?」すると、母さんは、うん、と言って、言い返そうとはしませんでした。そして大きな、大きな鉢にいっぱい持ってきました。母さんと父さんなら、一週間もお腹いっぱい食べられるほどでした。ところが若者はひとりで残らず平らげると、もっとないか、聞きました。「ない」、母さんは言いました、「うちにあるのは、これで全部さ」「これじゃ、せいぜい味見につまんだってとこさ。もっと食べなきゃどうにもならないよ」。そこで母さんは出ていくと、豚を煮る大きな鍋を食べ物でいっぱいにして火にかけました。そしてでき上がると、母さんはそれを持ってきました。「これですこしは腹の足しになる」と言って、若者はそれもすっかり平らげてしまいました。けれどもそれでもまだ足りませんでした。すると若者は言いました、「ううん、おやじのところにいたんじゃあ、腹いっぱいになれそうもないってことだな。おやじ、おいらが膝で折ろうとしても折れないような頑丈な鉄の棒を作っておくれよ。そしたら、また旅に出るよ」。すると父さんは喜んで、車に馬を二頭つなぐと、鍛冶屋のところへ行きました。そして二頭でどうにか運べるような大きな、太い棒を持ってきました。ところが若者はそれを膝にあてがうと、まるで豆の蔓をはわせる棒のように真ん中からまっぷたつに折ってしまいました。そこで父さんは馬を四頭つなぐと、四頭でどうにか運べるような大きな、太い棒を持ってきました。若者はそれも手に取り、膝でまっぷたつに折って投げると、言いました、「おやじ、こんなんじゃ、おいらにはどうにもならないよ。もっと馬をつないでいって、もっと頑丈な棒を持ってきてよ」。そこで父さんは馬を八頭つなぐと、八頭でどうにか運べるような大きな、太い棒を持ってきました。息子はそれを手にすると、すぐに上のほうをポキリと折ってしまって、言いました、「おやじ、おやじにはおいらの使える棒を手に入れられそうにないから、おいらはもう出ていくよ」
そこで若者は出ていくと、自分を鍛冶職人だ、と言ってまわりました。若者は、ある村へやってきました。その村には、ひとりの鍛冶屋がいましたが、その鍛冶屋はけちん坊で、誰にも物を恵んでやることはありませんでした。そしてなにもかも自分の物にしたがりました。さて、その鍛冶屋の仕事場に若者は入っていき、職人はいらないか、たずねました。「ああ、いるよ」と言って、鍛冶屋は若者をじろじろ見ました。そして、こいつは腕の立つやつだ、うまく鍛冶を打って、食い扶持を稼ぐだろう、と思いました。「どのくらい給料が欲しいんだい?」「ぼくは給料なんてこれっぽっちもいらないよ」、若者は言いました、「二週間ごとにほかの職人たちが給料を払ってもらうたびに、おまえのことを二回殴らせてくれればいいさ。それは我慢してもらうよ」。それを聞いて、このけちん坊は心からうれしくなりました。そして、これでたんまりお金を節約できる、と思いました。次の日の朝、見知らぬ職人はまず鍛冶を打つことになりました。ところが親方が焼けた鉄の棒を持ってきて、若者が最初の一打ちを打ち下ろすと、鉄があちこち飛び散り、鉄床は地面にめり込みました。あまりに深くめり込んだので、二度と引き出すことができませんでした。するとけちん坊は怒って言いました、「なんてことするんだ。おまえなんてお払い箱だ。なんて無茶苦茶な打ち方をするんだ。この一打ちにいくら欲しいんだ?」そこで若者は言いました、「おまえにほんの軽く一発くらわさせてくれればいいさ」。そして片足を上げると、鍛冶屋を一蹴りしました。鍛冶屋は荷馬車四台分の干し草を越えて飛んでいきました。それから若者は、杖のかわりに鍛冶場の一番太い鉄の棒を手に取ると、また出かけていきました。
しばらく行くと、ある農場へやってきて、その農場の管理人に、下僕頭が入り用でないか、たずねました。管理人は、こいつは役に立ちそうだ、きっと仕事をしてくれるだろう、一年の給料はいくら欲しいのか、聞きました。すると若者はまた、給料なんてこれっぽっちもいらない、だけど一年ごとに三発殴らせてくれ、それは我慢してもらうよ、と言いました。それを聞いて管理人は満足しました。というのも、この管理人も大変なけちん坊だったのです。翌朝、ほかの下僕たちが森へ行くためにもう起きていたのに、若者はあいかわらずベッドに入ったままでした。すると、ひとりが若者に声をかけました、「さあ、起きた。森へ行く時間だ。いっしょに来なくちゃ」「ああ、そうかい」、若者は乱暴に、不愉快そうに言いました、「行くなら、さっさと行ったらいいさ。でも、おまえたちがそろって帰ってくるよりも早く、おいらは行って戻ってくるよ」。そこで、ほかの者たちは管理人のところへ行って、下僕頭はまだベッドで寝ていて、いっしょに森へ行こうとしない、と話しました。管理人は、もう一度起こして、馬をつなぐように命令しろ、と言いました。ところが下僕頭はさっきと同じように、「行くなら、さっさと行ったらいいさ。でも、おまえたちがそろって帰ってくるよりも早く、おいらは行って戻ってくるよ」。それから若者はもう二時間寝ころがっていました。そしてようやくベッドから起き上がると、まずえんどう豆のたっぷり詰まった升をふたつ屋根裏から持ってきて、それを煮ると、ゆっくりと食べました。食べ終えると、外へ出て、馬をつなぎ、森へ出かけていきました。まもなく森の手前に切り通しがあり、若者はその切り通しを通らなくてはなりませんでした。そこでまず前へ進んでいくと、馬をじっと動けないようにしてから、馬車のうしろへ回って、木と小枝を持ってきて、馬が通りぬけられないように大きな逆茂木(さかもぎ)を作りました。さて若者が森の入口へやってくると、ほかの者たちが馬車に荷を積んで出てきて、家へ帰るところでした。そこで若者はみんなに言いました、「さっさと行くがいいさ。でもみんなよりもおれの方が先に家へ帰るよ」。ところが若者は森へすこしだけ入っていくと、ものすごく大きな木を二本地面から引っこ抜いて、馬車に積むとぐるりと向きを変えました。そして逆茂木のところまでやってくると、まだほかの者たちがそこで立ち往生していて通り抜けることができずにいました。そこで若者は言いました、「どうだい、わかっただろう。おいらといっしょにいたなら、さっさと家に帰り着いていて、一時間よけいに寝ることだってできたのに」。そして若者は通り抜けようとしましたが、四頭の馬はどうにも通り抜けることができません。そこで若者は馬を馬車からはずし、馬車の上に乗っけると、自分で馬車を引いて、戻れ!と、掛け声とともにすべてを引っ張って通り抜けました。まるで羽根でも積んでいるかのようでした。若者は通り抜けてしまうと、ほかの者たちに言いました、「どうだい、わかっただろう。おいらのほうがおまえたちより早く通り抜けただろう」。そしてどんどんと行ってしまい、ほかの者たちは足止めを食ったままでした。ところが屋敷では若者は木を一本手に取って、それを管理人に見せて言いました、「りっぱな薪でしょう?」すると管理人は奥さんに言いました、「この下僕は大したもんだ。たとえ長く寝ていても、ほかのやつらより早く戻ってくるんだからな」
さて若者はこの管理人に一年仕えました。一年がたち、ほかの下僕たちが給料をもらうとき、若者は、さあ一年たった、自分も給料をいただきたい、と言いました。ところが管理人は、殴られなくてはいけないのが恐ろしくなって、殴るのは勘弁してくれ、自分は下僕頭になるから、おまえは管理人になってくれ、と一生懸命にたのみました。「いやだ」、若者は言いました、「おいらは管理人になんかなりたくない。おいらは下僕頭で、これからもこのままでいい。だけど約束したことはやらなくては」。管理人は若者に、欲しいものはなんでもあげるから、と言いましたが、どうにもなりませんでした。下僕頭はなにを言われても断りました。そこで管理人はなにもよい知恵が思いつかず、なにか考え出そうと、二週間待ってくれ、とたのみました。すると若者は、二週間待ってやろう、と言いました。管理人は、部下の書記たちをひとり残らず呼び集めて、考えてなにかよい知恵を授けてくれるよう、命じました。書記たちは長いこと考えて、しまいに、その下僕頭を殺してしまえ、と言いました。庭の井戸のまわりへ大きな石臼を運ばせておいてから、下僕頭に井戸へ下りていって、井戸をきれいにするよう命じなさい、そして下僕頭が下へ着いたら、そいつの頭に石臼を落としてやりましょう、と言いました。その提案を管理人は気に入って、そのようにぬかりなく準備され、とても大きな石臼がいくつも運ばれました。さて下僕頭が井戸の中に立つと、みんなは石臼を下へ転がしました。石臼は下へ勢いよく落ちていき、水しぶきを高く上げました。そこで、みんなは、まちがいなく当たって頭が砕けた、と思いました。ところが下僕頭が呼びかけてきました、「ちょっと井戸のまわりからニワトリをどけてくれ。上で砂を引っ掻き回して、おいらの目の中へ砂粒をかけやがるんで、見えやしないんだ」。そこで管理人は、シッシッと大声で言って、まるでニワトリを追い払うようにしました。さて下僕頭は仕事を終えると上へあがってきて、言いました、「おい見てみろよ、大した首輪をしてるだろう」。それは石臼で、下僕頭はそれを首にかけていました。管理人はそれを見ると、また不安になりました。というのは、下僕頭が、働いたかわりに今度こそ殴らせろ、と言ったからです。そこで管理人はまた、二週間考える時間をくれとたのんで、書記たちを集めました。そしてしまいに書記たちは、下僕頭を魔法をかけられた水車小屋へやって、そこで夜のうちに粉をひいてしまうように命じなさい、次の朝、生きて戻ってきた者はこれまでひとりもいないそうですから、と進言しました。その悪だくみを管理人は気に入りました。それで管理人はその夜のうちに下僕頭を呼ぶと、ハ(8)マルテルの穀物を水車小屋へ運んでいって、夜のうちにひくように、そうする必要ができたんだ、と言いつけました。すると下僕頭は屋根裏へ行って、ニ(2)マルテルを右のポケットに、ニ(2)マルテルを左のポケットに、四マルテルを袋に入れて、半分が背中に、半分が胸の方にくるように担いで、そうやって魔法のかけられた水車小屋へ出かけていきました。ところが水車小屋の持ち主は下僕頭に、昼間に粉をひいたほうがずっとよくひけるよ、夜はだめだ、この水車小屋は魔法がかけられていて、夜に中に入った者はひとり残らず、翌朝、中で死んでいるのが見つかった、と話しました。下僕頭は言いました、「きっと、うまくやってみせるさ。とっととどっかへ行って寝てるがいいさ」。それから下僕頭は水車小屋へ入っていって、穀物を積み上げました。そしてまもなく十一時の鐘が鳴ると、水車小屋の持ち主の部屋へ入っていき、長椅子に腰かけました。そこにしばらくすわっていると、突然、戸が開き、大きな、大きな食卓が入ってきて、食卓の上にぶどう酒と焼いた肉とおいしそうな食べ物がたくさん並びました、なにもかもひとりでに。食べ物を運んでくる人などそこにはいませんでした。そしてそれから椅子がやって来ました。けれども誰ひとりやってきません。突然、下僕頭に指が見えました。指はナイフとフォークを使って、料理を皿にのせました。けれどもほかにはなにも見えませんでした。さて下僕頭はお腹がすいていたので、料理を見ると、食卓にすわり、いっしょに食べて、おいしくごちそうになりました。ところがお腹がいっぱいになって、ほかの者たちも自分たちのどんぶりを平らげてしまうと、突然、ろうそくの芯がすべて切られました。その音は、下僕頭にはっきりと聞こえました。そしていよいよ真っ暗になってしまうと、下僕頭はなにかに顔を平手で殴られました。すると下僕頭は言いました、「もういっぺんこんなことをしたら、今度はおれが殴ってやるからな」。そしてもう一度殴られると、同じように殴りかかりました。そしてこんなふうに一晩じゅう続きました。下僕頭は決してひるまず、間髪いれずにまわりを殴りました。ところが夜が明けると、なにもかもがやみました。水車小屋の持ち主が目をさまして、ようすを見にいくと、下僕頭がまだ生きていたので驚きました。すると下僕頭は言いました、「何度も平手で殴られたけど、こっちも平手でお返しをしてやったよ。それにたらふく食ったよ」。水車小屋の持ち主は喜んで、これで水車小屋の魔法は解かれた、お礼にお金をたくさんあげよう、と言いました。ところが下僕頭は言いました、「お金なんかいらないさ。たんまり持ってるもの」。そして下僕頭はひいた粉を背中に担いで帰ると、管理人に、仕事をやり終えた、約束の給料をもらいたい、と言いました。管理人はそれを聞くと、それこそ恐ろしくなって、じっとしていられず、部屋の中を行ったり来たりしたので、汗が額をしたたり落ちました。そこで窓を開けて外の空気をすこし吸おうとしました。ところがあっと思うまもなく、下僕頭が管理人を一蹴りすると、窓から宙へ飛び出して、どこまでも飛んでいって、ついには誰にも見えなくなりました。そこで下僕頭は管理人の奥さんに、こうなったからは奥さんにも一発受けてもらおう、と言うと、奥さんは「そりゃ、だめよ。わたしには我慢できないわ」と言いました。そして汗が額をしたたり落ちたので、今度も窓を開けました。そこで同じように一蹴り喰らわすと、奥さんも外へ飛んでいって、旦那よりもさらにずっと高く飛んでいきました。そのとき、旦那が奥さんに大声で呼びかけました、「おーい、おれの方に来い!」ところが奥さんが言いました、「あんたこそ、わたしのほうへ来なさいよ。わたしがそっちへ行くのは無理だわ」。そしてふたりは宙を漂って、もうひとりの方へ行くことはできませんでした。そしてふたりがまだ宙を漂っているかどうか、わたしにはわかりません。一方、若い大男は鉄の杖を持って、さらに旅を続けました。
収録:下04 若い大男の話
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
・
・
・
ある農夫には1人の息子がいました。その子は親指ぐらいの背たけしかなく、それ以上大きくなることはなく、2、3年たってもほとんどのびませんでした。あるとき、農夫が畑をたがやしにいこうとすると、そのおちびさんが「父さん、ぼくもいっしょに行くよ」と言いました。
「おまえ、いっしょに行く気なのかい?」と、父親は言いました。「おまえはここにいなさい。畑では、おまえなんぞ役に立たないよ。それにひょっとすると、おまえは迷子になるかもしれないよ」
すると親指小僧はわんわん泣きだしました。静かにさせようと、父親は親指小僧を袋に入れると、いっしょに連れていきました。外の畑で父親は、親指小僧をまたとりだして、スキでほりおこしたばかりのうねの溝の中に置きました。親指小僧がそこに座っていると、山をこえて、1人のとてつもない大男がこちらにやってきました。
「見えるかい、あそこに子さらいの大きな怪物がいるぞ」と父親は言って、おとなしくするように、そのおちびさんをおどかしました。「そいつがやってきて、おまえをさらっていっちまうぞ」
・
・
・
・
大男は長い足をしていて、2、3歩すすんだかと思うと、もううねの溝にやってきました。大男は小さな親指小僧を2本の指でそっとつまんで、高々とあげ、じろじろとながめてひとことも言わずに、連れ去りました。父親はその場にいましたが、こわくて声もあげられず、ただただ、子どもがいなくなってしまって、自分は生涯わが子をこの目では見られないだろう、となげくだけでした。
ところで大男は、この子を家に連れかえり、自分の乳を飲ませました。親指小僧はすくすくと育ち、大男のように大きく、たくましくなりました。2年たつと、年とった大男は小僧といっしょに森へ行き、小僧をためそうと思い、「若木を1本ぬいてみろ」と言いました。男の子はもうじゅうぶん力があったので、1本の若木を根こそぎ地面からひきぬきました。しかし、大男は「もっと強くならなくちゃあいけない」と思って、その男の子を家に連れかえり、さらに2年間、乳を飲ませました。ふたたび大男がこの子をためすときが来ました。この子の力はもうちゃんとついていて、古い木を地面からひきぬくことができました。けれども大男にとっては、これでもじゅうぶんではなかったので、またもや2年間乳を飲ませ、それから、男の子を連れて森に行き、「さあ、ひとつ、まともな木をぬいてみろ」と大男が言って、若者が一番太いカシの木を地面からひきぬくと、その木はメリメリと音を立てました。それはこの若者にとってはほんのお遊びのようなものでした。「よし、これでじゅうぶんだ。おまえはよく修業したぞ」と大男は言って、自分がさらってきた畑へこの若者を連れていきました。若者の父親がそこのスキのうしろにいたので、この若い大男は父親のところへつかつかと歩みよって、「父さん、あなたの息子がどんなにりっぱな男になったか、見てください」と言いました。
・
・
・
・
農夫はぴっくりして言いました。「ちがうよ、わしの息子なんかじゃない。おまえなんか知るものか、とっとと、わしのもとから消えろ」
「たしかに、あなたの息子ですよ。仕事をさせてください。あなたと同じくらいじょうずにたがやすこともできますよ、いや、もっとじょうずかも」
「いや、いや、おまえはわしの息子ではない。それにおまえはたがやすことなどできっこないよ。わしの前から消えろ」
しかし、農夫はこの若い大男がこわかったので、スキをはなして、うしろへさがり、畑のはずれに座りました。そこで、若者はスキをとって、それを片手で押しましたが、押す力がとても強くて、スキは土の奥深くくいこみました。農夫は見ていられなかったので、若者にむかって大声で指図しました。
「たがやすつもりなら、そんなに力ずくで押しちゃだめだ。そんなやり方じゃだめだよ」しかし、若者は馬を農具からはずし、自分でスキをもち、「家に帰っていなよ、父さん。母さんに大きななべにいっぱい食べる物をつくってもらっておいて。その間に畑をきっとたがやしておくからさ」と言いました。
そこで、農夫は家にもどり、女房に食事のしたくをたのみました。若者は、2モルゲン*1もの耕地をたった1人でたがやし、それから、自分でまぐわをひき、2台のまぐわを同時に使ってすっかりならしました。若者は仕事を終えると、森へ行き、カシの木を2本根こそぎひきぬき、両肩にかつぐと、前後にまぐわを乗せ、もう1本の木には前後に馬を乗せ、これらを全部、まるでワラたばのようにかついで、両親の家にむかいました。若者が中庭に入っていくと、母親はこの若者がだれだかわかりませんでしたので、たずねました。
「だれだい、そのおそろしい、大きな男は」
農夫は「こりゃあ、おれたちの息子だよ」と言いました。
・
・
・
・
女房は「ちがうよ、断じてうちの息子ではないよ。こんな大きな息子などいなかったよ。うちの息子はおちびさんだったわよ」と言いました。それから若者にむかって大声で、「出ていっておくれ。あんたなんかに用はないわ」と言いました。若者はなにも言わずに、馬小屋へ馬をひっぱっていき、馬たちにカラスムギとほし草をやり、することは全部やりました。それを終えると、若者は部屋に入って、ベンチにこしかけ、「母さん、ねぇ、なにか食べたいよ。すぐできるの」と聞きました。すると、母親は、ああ、と言って、2つの大きな、大きななべにいっぱい食べ物を入れて、部屋に入ってきました。これだけあれば、女房と亭主なら1週間はたっぷり足りるはずでした。ところが、若者はそれを1人でぺろりとたいらげ、もっとおかわりはないのか、とたずねました。
「ないよ。それで、わたしたちがもっているもの全部だよ」と、母親は言いました。
「これじゃあ、ほんのちょっと味見したって程度だよ。もっとほしいよ」
母親はこわくて大男に逆らう勇気もなく、外へ出ていって、プタをつぶす用の大がまいっぱいにプタ肉をつめて火にかけました。それが煮あがると、母親はそれをもって入ってきました。
「やっと少しばかりかけらがおなかに入ったって程度だな」と若者は言って、ぺろりと食べました。しかし、それでもやっぱり、空腹を静めるには足りませんでした。そこで、若者は「父さん、よくわかったよ。父さんのところではおなかいっぱいにならないよ。おいらに鉄の棒を用意してください。じょうぶなやつで、ひざに打ちつけても折れないやつですよ。そうしたら、おいら家を出て、世の中へ出ていきますよ」と言いました。
農夫はよろこび、2頭の馬を馬車につなぎ、鍛冶屋に1本の鉄棒をとりにいきました。その棒は2頭の馬でやっとこさ運べるほど大きくて、太い鉄棒でした。けれども若者は、その棒をひざの前にあてがい、ポキン!と、まるでマメのつるをはわせる細い棒のようにまっぷたつに折って、ポイと投げすてました。
父親は4頭の馬をつなぎ、ふたたび棒をとりにいきました。その棒は4頭の馬でやっと運べるほど大きくて、太いものでした。けれども息子はまたもその棒をひざにあて、2つに折ってしまい、ポンと投げ、「父さん、こいつは役に立たないよ。もっとしっかりと馬をつないで、もっとがんじょうな棒をもってきてくれなくちゃ」と言いました。
・
・
・
・
そこで、父親は8頭の馬を馬車につなぎ、1本の棒をとってきました。その棒は8頭の馬でやっと運べるくらい大きくて、太いものでした。けれども息子はその棒を手にとると、すぐさま棒の頭のところをへし折って、「父さん、わかったよ。父さんじゃ、おいらが入り用な棒は用意できないよ。父さんのところにこれ以上長居はしないよ」と言いました。
こうして息子は出てゆき、自分は鍛冶屋の職人だとふれまわりました。そしてある村にやってきました。そこには1人の鍛冶屋がすんでいました。この鍛冶屋はけちなやつで、だれにもなにもやらず、なにもかもひとりじめにしようとしていました。この仕事場へ若者は入っていき、職人をやとう気はないかとたずねました。
「うん、あるよ」と鍛冶屋は言って、その職人をじろじろ見ると、「こいつは腕の立ちそうなやつだ。ちゃんとハンマーも打てるだろうし、自分のパンぐらいはかせぐだろう」と考えました。そこで「給金はいくらほしいかい」と、鍛冶屋はたずねました。「給金なんていらないよ。ただ2週間ごとに、ほかの職人が給金をもらうたびに、そのぶん、おいらはあんたを2発ぶんなぐりたい。それをおまえさんはがまんしなくちゃならないよ」と、職人はこたえました。これには、このけちんぼも心底満足し、これで金が倹約できるわい、と考えました。
翌朝、このよそ者の職人は手はじめにハンマーを打つように言われました。親方がまっ赤に焼けた棒をもってきて、この職人が1発打ちつけると、鉄はバラバラにくだけてとびちり、鉄敷*2が土の中にめりこみました。あまりにも深くめりこんだので、みんなでかかってもそれをとりだすことができませんでした。そこで、けち親父はおこりました。
・
・
・
・
「おい、なにをする。おまえなんぞ、いらないよ。おまえの打ち方は荒っぽすぎるぞ。どれだけたたけば気がすむんだ!」と言いました。
「あんたにほんの軽く1発お見舞いしたいね。それ以上はなにもいらないよ」と職人は言いました。そう言って足をあげ、ひとつけとばすと、親方は4フーダー*3のほし草のむこうへとばされました。それから、職人は鍛冶場にあった一番太い鉄棒を選び、それを手にもち、杖にして、先へすすんでいきました。
しばらく行くと、若い大男は貴族の屋敷の前の農場へ着き、そこの農場管理人に、使用人頭はいらないか、とたずねました。
「うん、ほしいな」と管理人が言いました。「1人、必要だよ。おまえは腕が立ちそうだ。きっとなにかしっかりできるだろう。給金は年にどれほどほしいのかね」と聞きました。若い大男はまたしても、給金を1銭も求めませんでしたが、毎年、管理人に3発くらわせたい、それを管理人はがまんしなくてはならない、とこたえました。これに、農場管理人は満足しました。この管理人もけちなやつだったのです。
翌日、使用人たちが森へたきぎをとりに、荷車で行くように言われ、ほかの下男たちはすでに起きていましたが、使用人頭はまだベッドに寝ていました。そこで、1人が使用人頭にむかって言いました。「起きろ、時間だぞ。おれたち、森へ行くぞ。おまえも来なくちゃならんよ」
「なにぃ」と使用人頭はぞんざいに、むっとした声で言いました。「おまえら、先に行けよ、だって、みんながたばになってかかっても、もどるのはおれのほうがはやいのだから」
そこで、ほかの連中は農場管理人のところへ行って、使用人頭はまだベッドにごろごろしていて、いっこうに自分たちといっしょに森にたきぎをとりに行こうとしない、と報告しました。管理人は、おまえたちはやつをもう一度起こせ、それから、あいつに馬を荷馬車につながせろ、と命じました。しかし、使用人頭は前と同じように言いました。
・
・
・
・
「先に行けよ、でも、おまえらみんながたばになってかかっても、もどってくるのはわしのほうがはやいぜ」
それから使用人頭はなおも2時間寝てから、やおら起きあがり、まず屋根裏部屋からシェッフェルます(*4)2杯にエンドウマメを山もりにしてもってきて煮ると、かゆをつくり、それをゆっくりと食べ、これらがすんで、ようやく出かけ、馬を荷馬車につないで森へたきぎとりに行きました。森からそう遠くないところに切り通しの道があって、使用人頭はそこを通っていかなければなりませんでした。そこで荷馬車をまず先へすすませ、それから、馬たちをとどめおいて、自分は荷馬車のうしろへまわると、木々やシバをとって、そこに大きな柵をこしらえ、馬が通れないようにしました。
さて、森の入口に来ると、ちょうどほかの連中がいっぱい荷を積んだ馬車で森の中から出てきて、家に帰ろうとしているところでした。使用人頭はこの連中に、「さあ、行きなよ、でも家にもどるのはおまえたちより、はやいぜ」と言いました。
使用人頭は森のそんなに奥へは行かず、すぐさま一番大きな木を2本、地面からひきぬき、それを荷馬車の上にほうりあげると、ひきかえしました。使用人頭が道をふさいだあの柵のところまで来ると、ほかの連中は通ることができず、まだそこに立っていました。「わかったかい。おいらといっしょにいたなら、おまえたち、家に帰るのは同じだったんだ。しかも、あと1時間は多く寝ていられたんだぜ」と、使用人頭は言いました。使用人頭は先へ行こうとしましたが、彼の馬はそこを通りぬけることができませんでした。そこで、使用人頭は馬を荷馬車からはずして、荷馬車の上に置き、自分で荷馬車の棒を手にとり、それっ!とばかりになにもかもいっしょに押し通しました。それはまるで、羽を積んでいるかのように軽々とやってのけました。使用人頭がむこう側へ行くと、ほかの連中にむかって、「わかったかい。おまえたちよりはやく通りぬけたぜ」と言って、先へ行き、ほかの連中は立ち往生したままでした。ところで屋敷に着くと使用人頭が木を1本手にとり、その木を管理人に見せて、「こいつはりっぱなたきぎじゃないですか」と言いました。すると管理人は自分の女房に「この使用人はすごい、長く寝ていても、もどってくるのは、ほかの連中よりはやかったぞ」と言いました。
・
・
・
・
さて、使用人頭は農場管理人のもとで1年間仕えました。1年がたち、ほかの使用人たちが給金をもらうと、使用人頭は時が来たので自分も給金がほしいと言いました。管理人はしかし、自分が受けることになっている一撃が心配で、しきりに、使用人頭が管理人に一撃をくらわせないようにたのみ、むしろ自分が使用人頭になって、使用人頭が農場管理人になるというのは給金の代わりにどうだろう、と切実にお願いしました。
「いやだよ」と、使用人頭は言いました。「農場管理人なんてまっぴらだ。おいらは使用人頭でいいのだ。しかし、とりきめたものはちゃんとくれなくちゃあ」
農場管理人は、使用人頭がほしいものをほかにやろうとしましたが、話になりませんでした。使用人頭はどんなことにも、だめだ、と言ったのです。そこで、農場管理人はどうしていいかわからず、2週間の猶予を願って、なにかいい方法を考えだそうとしました。使用人頭は、待ってやってもいいよ、と言いました。農場管理人は、自分の書記たちをみんなよび集め、この件についてよく考え、自分に名案をくれるように命じました。書記たちは長いことあれこれ考え、おしまいに、あの使用人頭の前ではだれだって命の保障もありませんよ。あいつは、人間をまるで蚊をたたくように、殺してしまいます。管理人さんは、あいつを井戸の中におろし、井戸そうじを命じるといいですよ。あいつが井戸の底におりたら、自分たちがそこにあるひき臼の1つをころがしてもってきて、あいつの頭めがけて投げ落とせば、あいつは二度と日の光を見ることはないでしょう、と言いました。この案は農場管理人の気にいりました。使用人頭は井戸におりることをひきうけました。使用人頭が井戸の底におり立つと、この連中は一番大きなひき臼の石をころがり落とし、やつの頭に命中した、と思っていました。ところが、使用人頭は大声で言いました。
・
・
・
・
「ニワトリを井戸から追い払ってくれ、そいつらが上で、砂をひっかくものだから、砂つぶがおいらの目に入って、おいらは目が見えないよ」
これを聞いて、農場管理人は「シッ、シッ!」とさけんで、ニワトリを追い払うようなふりをしました。
使用人頭は井戸のそうじを終えてあがってくると、「見てくれよ。おいらはすてきな首かざりをしているだろう」と言いました。使用人頭が首につけていたのは、あのひき臼の石でした。そこで、使用人頭はいまこそ、給金をもらおうとしましたが、農場管理人はまたもや2週間考える時間をくれるようにとたのみました。書記たちが集まり、夜になったら、この使用人頭を呪いのかかった水車小屋へ送りこんで、穀物を粉にひく仕事を命じればよい、という策を提案しました。なにしろ、その水車小屋からは、これまでだれひとりとして翌朝生きて出てきた者はいなかったのでした。この計画は、農場管理人の気にいりました。管理人はその晩のうちに使用人頭をよんで、8マルテル*5のライ麦を水車小屋へ運び、それを夜のうちにひいて粉にしてくれ、粉が急ぎでどうしても必要なのだ、と命じました。
・
・
・
・
そこで、使用人頭は屋根裏部屋に行き、2マルテルのライ麦を右の袋に入れ、2マルテルを左の袋へ、4マルテルぶんを大きなズタ袋に入れて、半分は背中に、残りの半分は胸にふりわけてかつぎ、呪われた水車小屋へ行きました。粉屋の主は、この使用人頭に、昼間はちゃんとうまく粉をひけるが、でも夜はだめだ。この水車小屋には呪いがかかっているからだ、これまで、そこに入っていった者は、朝になると死んで見つかったのだよ、と話しました。「おいらはうまくやってのけるよ。あんたはひっこんでて、横になっているといいよ」と使用人頭は言いました。
それから、使用人頭は粉ひき小屋へ入ってゆき、穀物をざあっとあけました。11時ごろ、使用人頭は粉ひき部屋に入り、ベンチに座りました。しばらくそこに座っていると、いきなり戸がぱっと開き、大きな、大きなテーブルが入ってきました。テーブルの上にはワインや焼き肉、たくさんのおいしそうな食べ物がならんでいました。なにもかもひとりでに出てきました。それを用意した人の姿が見えなかったのです。そのあとで、いくつかのいすがすーっと動いてきました。でもだれもやってきませんでした。するととつぜん、指が何本か見え、ナイフとフォークをあやつり、食べ物を皿にとりわけましたが、使用人頭にはそれ以外のものはなにも見えませんでした。使用人頭はおなかがすいていたので、ごちそうを見ると、自分もテーブルについて、いっしょにむしゃむしゃ、おいしくいただきました。
・
・
・
・
おなかがいっぱいになって、姿を見せないほかの連中も皿をすっかりからにすると、とつぜん、すべてのロウソクの芯がつまれて消されました。使用人頭はその消す音をはっきり聞きました。さて、まっ暗になると、びんたのような一撃を顔にくらいました。そこで、「もう一度来てみろ、おれもお返しをしてやるぞ」と言いました。そして二度目のびんたをくらうと、使用人頭は同じようになぐりかかりました。そうやって一晩じゅうなぐりあいが続きましたが、使用人頭はただでもらってはいけないとばかりにたっぷりお返しをし、すぐさま、あたりかまわずなぐりつけました。しかし、夜が明けるころにはなにもかも片づいていました。粉ひきは起きあがると、使用人頭を探し、まだ生きていたのでぴっくりしました。
「おいらはおなかいっぱい食べ、びんたをたくさんもらったが、おいらもぴんたをくらわしてやったよ」と、使用人頭は言いました。粉ひきは、これで水車小屋は呪いが解けた、と言ってよろこんで使用人頭に給金としてたくさんのお金をやろうとしました。ところが、使用人頭は「お金はいらないよ。おいらはたっぷりもっているからさ」と言いました。
・
・
・
・
それから、粉を背中に背負って、家にもどり、農場管理人に、用事をやってきましたよ、今度はとりきめた給金をいただきたい、と言いました。農場管理人はそれを聞くと、いよいよもって心底からこわくなりました。じっとしていられず、部屋の中をうろうろと歩き、汗がひたいをたらたらと流れ落ちました。そこで、農場管理人は、すずしい風を入れようと窓を開けると、あっというまに、使用人頭が彼をけとばしてしまったので、管理人は窓をこえて、空高く舞いあがり、とんでゆき、もう見えなくなりました。そこで、使用人頭は農場管理人の女房に、「亭主がもどってこなければ、もう1発はあんたがもらうんだよ」と言いました。女房は大きな声で、「だめ、だめ、わたしにはたえきれませんよ」と言って、汗のしずくがたらたらと女房のひたいを流れ落ちたので、もう1つの窓を開けました。すると、使用人頭が女房をひとけりし、同じように女房はとびだしていき、女房のほうがもっと軽かったので、亭主よりもはるかに高く舞いあがりました。亭主は「わしのところへ来いよ」と、大声でよびました。でも女房は、大声で「あんたがこっちへ来てよ。あんたのところには行けないよ」とさけびました。そして2人は空中をただよい、おたがい相手のところに行けませんでした。2人がまだそこにただよっているかは、わたしは知りません。この若い大男は自分の鉄の棒をもって、先へと歩いて行きました。
*1モルゲン:むかしの土地の面積の単位で1モルゲン=約3平方キロメートル。
*2鉄敷:加熱した金属をたたいてうすくのばす加工作業をおこなうときに材料をのせる台のこと。
*3フーダー:1フーダーは2頭立て荷馬車で約1台分。
*4シェッフェル:穀物をはかるむかしの単位。1シェッフェルは30リットル〜300リットルまで地方により異なる。
*5マルテル:ドイツやスイスで使用されていたむかしの穀物の量の単位。地域によって異なり、1マルテル=110リットル〜340リットル。
091. 土の中のこびと Dat Erdmänneken
あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
下五 土の中の小人
昔、お金持ちの王さまがいました。王さまには娘が三人ありました。お姫さまたちは毎日、お城の庭を散歩しました。王さまはありとあらゆるりっぱな木が好きでしたが、なかでも特にお気に入りの木が一本あって、その木の実をひとつでも取った者は、土の中へ百尋(ひろ)ももぐりこんでしまえ、と呪いをかけていました。さて、秋になり、この木の実は血のように赤くなりました。三人のお姫さまたちは、毎日この木の下に行き、風が実をひとつたたき落としてはいないかと眺めましたが、いつ見ても実はひとつも落ちていませんでした。そして木には実がすずなりで、今にも折れそうで、枝は地面まで垂れ下っていました。一番下のお姫さまは、この実が食べたくてたまらなくなり、お姉さんたちに言いました、「お父さまは、わたしたちのことをそれはかわいがってくださっているもの、わたしたちに呪いをかけたりしないわ。呪いをかけたのは、よその人たちのためだけだと思うわ」。そう言うと、一番下のお姫さまはとても大きな実をひとつもぎ取り、お姉さんたちの前にとんできて言いました、「ねえ、お姉さまたち、ちょっと召し上がってよ。こんなにおいしいもの、わたし、生まれてこのかた食べたことないわ」。それでほかのふたりのお姫さまもその実にかぶりつきました。すると、お姫さまたちは三人とも深く深く地面の下へ沈んでいき、誰にもわからなくなってしまいました。
昼になって、王さまはお姫さまたちを食事に呼ぼうとしましたが、三人はどこにも見つかりません。城の中も庭もくまなくさがしましたが見つけることができませんでした。王さまはそれは悲しんで、国をあげてお姫さまたちをさがさせ、娘たちを連れ帰ってくれた者には、三人のうちのひとりを嫁にとらす、とおふれを出しました。そこで大勢の若者が出かけて、さがしました。それはもう大変な騒ぎになりました。というのも、三人のお姫さまは誰に対しても優しく、それに器量よしだったので、みんなから慕われていたからです。三人の若い狩人も出かけていきました。三人は旅をつづけて八日目に、ある大きな城に行き当たりました。中にはりっぱな部屋がいくつもありました。ひとつの部屋にはテーブルに食事の用意がしてあり、おいしそうな料理が並んでいましたが、まだ温かくて湯気が出ていました。けれども城じゅうどこにも、人の声を聞くことも、姿を見ることもありませんでした。三人は、それから半日待ちましたが、料理はいつまでも温かく、湯気が出ていました。けれども、とうとう三人はお腹がすいてたまらなくなり、テーブルにつくとごちそうを食べました。三人は、この城に住みつづけ、ひとりが城に残り、ほかのふたりがお姫さまたちをさがしに行くことに決め、くじを引くことにしました。そのようにやってみると、一番年上の狩人に留守番の役が当たりました。次の日、年下のふたりがさがしに出かけ、一番年上の狩人は城に残らなければなりませんでした。昼に小さな小さな小人がやってきて、パンを一切れください、と言いました。そこで狩人は見つけてあったパンを取り、ぐるりと一切れ切り取って小人にあげようとしました。ところが狩人が渡そうとすると、小人はそれを落っことして、すまないけれどパンを拾ってください、と言いました。狩人が拾ってやるつもりでかがむと、小人は杖を取り、狩人の髪の毛をつかんで、狩人をさんざんぶちました。次の日は二番目の狩人が城に残りましたが、同じようにひどい目にあいました。ほかのふたりが晩になって帰ってくると、一番年上の狩人が言いました、「おい、どんな具合いだったか?」――「いや、もうひどい目にあったよ」。そうしてふたりはお互いにどんな目にあったか、こぼしあいましたが、一番年下の狩人にはなにも話しませんでした。ふたりはこの男のことが気に入らず、世間知らずだからと、いつも馬鹿なハンスと呼んでいました。三日目、一番年下の狩人が城に残りました。すると、また小さな小人がやってきて、パンを一切れねだり、狩人があげようとすると、また落っことして、すまないけど拾ってくれ、と言いました。すると、狩人が小人に言いました、「なんだって!おまえ、自分で拾えないのかい。日々の食べ物のために骨惜しみをするようじや、おまえにはそれを食べる資格はないぞ」。すると小人は怒って、拾えったら拾え、と言いました。けれども狩人はすばやく小人をつかまえて、こっぴどく殴りつけたので、小人は大声で悲鳴をあげて、言いました、「やめろ、やめろ、放してくれ。そうしてくれたら、お姫さまたちがどこにいるか、教えてやる」。ハンスはこれを聞くと、殴るのをやめました。小人は、自分は土の中の小人で、自分の仲間は千人以上いる、いっしょに来たらお姫さまたちのいるところを教えてやろう、と言いました。そして小人はハンスに深い井戸を教えましたが、その井戸には水がありませんでした。それから小人は、自分にはよくわかるが、おまえの仲間たちはおまえに対してよこしまな考えを持っているから、お姫さまたちを救い出すつもりなら、ひとりでやらなければならない、ふたりの兄さんもお姫さまたちを救い出したいとは思っているのだが、骨を折ったり、危険を冒したりする気がないのだ、おまえは大きなかごを持ってきて、猟刀と鈴を持ってその中に入り、井戸の中へ降ろしてもらわなくちゃならない、井戸の底には三つの部屋があり、そのひとつひとつにお姫さまがひとりずつすわっていて、頭のたくさんある竜のしらみを取らされている。おまえはその竜の頭を切り落とさなければならない、と言いました。小人はこれだけのことを話してしまうと、姿を消しました。晩になってほかのふたりが帰ってくると、どんな具合だったか、たずねました。ハンスは言いました、「今のところ、うまくいったよ」。それから、人間はひとりも見なかったけど、昼に小さな小人がひとりやってきて、パンを一切れくれと言ったこと、そしてハンスがパンをやると、小人がそれを落っことして、拾ってくれと言ったこと、けれども拾ってやらずにいると、小人のやつ、おどしをかけてきた、こいつはけしからんからぶちのめしてやると、お姫さまたちがどこにいるか教えてくれた、と話しました。それを聞くと、ふたりはひどく腹を立てて、黄色くなったり緑になったりしました。あくる朝、三人はそろって井戸に行き、誰が最初にかごに入るか決めるためにくじを引きました。するとまた、一番年上の狩人に当たり、かごの中に入り、鈴を持っていくことになりました。一番年上の狩人が言いました、「おれが鈴を鳴らしたら、とにかくすぐに引き上げてくれよ」。ほんのすこし降りると、鈴が鳴り、一番年上の男はすぐに引き上げられました。次に二番目がかごに入りましたが、こちらもまったく同じでした。いよいよ一番年下の狩人の番になりましたが、この男は井戸の底まで降ろしてもらいました。狩人はかごから出ると、猟刀を手に一番目の扉の前に行き、聞き耳を立てました。すると竜がおそろしく大きないびきをかいているのが聞こえました。狩人がゆっくり扉を開けると、お姫さまがひとりいて、膝の上に竜の頭を九つのせて、しらみを取っていました。そこで猟刀を手に斬りかかると、九つの頭を落としました。お姫さまはとび上がって、狩人の首に抱きつき、抱きしめ、何度もキスをしました。それから胸にかけていた純金の飾りを取ると、狩人の首にかけてやりました。それから狩人は二番目のお姫さまのところへ行きました。二番目のお姫さまは、頭の七つある竜のしらみを取っていましたが、このお姫さまも救い出しました。そして、末のお姫さまは頭の四つある竜のしらみを取らされていましたが、狩人はこのお姫さまのところへも行きました。三人のお姫さまたちは、お互いにさまざまなことをたずね合い、抱き合って、いつまでもいつまでもキスをしました。それから狩人は、上に聞こえるまで強く鈴を鳴らしました。そしてお姫さまたちをひとりずつ順番にかごにのせ、三人とも上へ引き上げさせました。いよいよ自分が引き上げてもらう番になって、仲間のふたりはおまえのことを快く思っていない、という小人の言葉を思い出しました。そこで、そこにあった大きな石を取ると、かごの中に入れました。かごが真ん中あたりまで上がったとき、悪い兄さんたちが上で綱をちょん切ったので、かごは石もろとも井戸の底に落ちました。兄さんたちは、これで末の弟は死んだものと思って、お姫さまたちを連れて急いでそこから去りました。そしてお姫さまたちに、自分たちふたりが救い出してくれた、とお父さんに言うように約束させました。それから王さまのところへ行って、お姫さまを嫁に欲しい、と願い出ました。そのあいだ、一番年下の狩人はすっかり悲しくなって、三つの部屋を歩きまわり、もう死ぬほかない、と思っていました。そのとき、壁に笛がかかっているのが目につきました。狩人は言いました、「おまえは、なんだってそんなところにかかっているのかい?ここじゃあ、誰も陽気になんぞなれやしない」。狩人は竜の頭も眺めて言いました、「おまえたちも、おれを助けることはできないよな」。狩人が何度もあっちに行ったりこっちに来たりしたので、地面はまったいらになってしまいました。そのうちに狩人は思いなおして、壁から笛を取ると、一節吹いてみました。すると突然、土の中の小人が大勢出てきました。笛の音がひとつなるたびに、またひとり出てきます。狩人は小人で部屋がいっぱいになるまで、笛を吹きました。すると小人たちがみんなで、望みは何か、と聞いたので、狩人は、また地面の上でお日さまの光を拝みたい、と言いました。すると小人たちは、狩人の頭にある髪の毛の一本一本をつかんで、地面の上までいっしょに飛んで上がりました。地面の上に出ると、一番年下の狩人はすぐに王さまの城へ行きました。城ではちょうどひとりのお姫さまの結婚式が行なわれるところでした。狩人は、王さまが三人のお姫さまたちといっしょにいる部屋へ上がって行きました。お姫さまたちは、狩人を見ると気絶してしまいました。それで王さまはたいへん腹を立てて、狩人をすぐに牢屋に入れさせました。狩人が娘たちになにか悪いことをしたのだろう、と思ったからです。けれどもお姫さまたちは正気にかえると、狩人を牢屋から出してください、とそれは一生懸命王さまにお願いしました。どうしてかと王さまがたずねると、お姫さまたちは、それは話すわけにはいきません、と言いました。するとお父さんは、それならストーブに話しなさい、と言いました。そこで王さまは外に出て、扉に身を寄せてなにもかも聞きました。王さまは、ふたりを首吊り台にかけさせ、一番年下の狩人には一番年下のお姫さまをあげました。そのとき、わたしはガラスの靴をはいていて、石につまずいたら、カチャン!といって靴はこわれてしまいました。
収録:下05 土の中の小人
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
91土の中のこびと
むかし、お金もちの王さまがいて、この王さまには3人の王女がありました。3人は毎日お城の庭を散歩していました。王さまは、ありとあらゆる木を育てるのが趣味で、なかでも1本のリンゴの木をなにより大事にしていました。その実を1つでもつみとった者は、地下に何百クラフターもめりこんでしまえと、呪いをかけていました。
さて秋になり、そのリンゴの実が血のように赤く色づきました。3人の王女たちは毎日リンゴの木の下を歩いては、風が実を1つ落としはせぬものかと見あげていました。けれども、いつになっても1つも落ちてはきません。リンゴは鈴なりに実り、枝がいまにも折れそうなくらいたれさがっていました。
末の王女はリンゴが食べたくて食べたくて、姉たちに言いました。
「お父さまはわたしたちをとってもかわいがっていらっしゃるから、わたしたちに呪いをかけたりなんかしないでしょう。呪いがかかるとしたら、よその人たちにだけよ」そう言って、大きい実を1つもいで、姉たちの前にとんできて、「さあ、召しあがれ、お姉さま。こんなみごとなリンゴは、わたし生まれてからまだ食べたことがないわ」と言いました。それで2人の姉たちもリンゴをかじりました。
とたんに、3人とも地中深くしずんでしまいました。もうどんなニワトリの鳴き声だって届かないほど深い深い地の底へ。
さて、お昼になって、王さまは娘たちを食事に呼ぼうとしましたが、だれもどこにもいませんでした。お城や庭をくまなく探しましたが見つかりません。王さまはたいへん悲しんで、姫たちを連れもどした者には、その1人を妻にめとらせる、と国じゅうにおふれを出しました。
そこで大勢の若者たちが王女たちを探しに出かけました。それもそのはず、3人の王女たちはだれに対してもやさしく、そろって器量よしなので、だれからも愛されていたからでした。3人の若い狩人も王女を探しに出かけ、1週間も歩いたあげく、大きな城にたどりつきました。中にはたいへんきれいな部屋がたくさんあって、1つの部屋にはテーブルに食事の用意がととのい、おいしそうなごちそうがずらっとならんで、まだあたたかくほかほか湯気が立っていました。けれども、城には人の声ひとつ聞こえず、人の姿はどこにもありません。3人の狩人はさらに半日待ちましたが、ごちそうはいつまでもあたたかいままで、湯気を立てていました。3人はあまりにおなかがへったので、テーブルについて食べました。3人はこの城にすむことにし、くじで、1人は留守番を、あとの2人は王女さまを探しにいくことに決めました。すると、留守番のくじがあたったのは、年上の狩人でした。翌日、年下の2人は探しに出かけ、年上の若者は留守番をすることになりました。
さて、お昼になると、小さな小さなこびとがあらわれて、パンをひと切れください、とたのみました。そこで、留守番の若者は、パンのへりをひと切れちぎってこびとにやろうとしました。それを渡そうとすると、こびとはパンを落として、悪いが拾ってくれないか、と言いました。しかたなく、パンを拾おうとかがんだところ、こびとは、若者の髪の毛をつかんで、杖で思いきりたたきました。
翌日は2番目の若者が留守番をしていて、まったく同じような目にあいました。夕方、ほかの2人がもどってきて、一番年上の若者が「おい、どんな具合だった?」と聞きました。
「いやはや、まったくひどい目にあったよ」
そこで2人はとんだ災難にあったもんだと、ぐちをこぼしました。でも、一番年下の若者にはだまっておくことにしました。2人は彼をきらっていたのです。世間知らずだということで、いつも“まぬけのハンス”とよんでいました。
3日目、一番下の若者が留守番をすることになりました。すると、小さなこびとはまたあらわれて、パンをひと切れせがみ、それを渡すと、こびとはまたパンを落として、お願いだ、拾ってくれないか、と言いました。すると、まぬけのハンスは小さなこびとにむかって、「なに言ってんだい!自分のパンが拾えないのか。その日の食べ物のために骨を折る気がないやつは食べる値打ちはない」と言いました。
すると、こびとはおこって、なにがなんでも拾えと言いました。けれども、若者はすかさず、こびとをつかまえて、さんざんなぐりつけました。こびとは悲鳴をあげて、「やめてくれ、やめてくれ。かんにんしてくれ。はなしてくれたら、王女さまがどこにいるか教えてやるよ」と、さけびました。それを開いてハンスは、たたくのをやめました。こびとは、おれは土の中にすむこびとで、仲間は千人をくだらない。自分といっしょに来るといい。そしたら、王女さまたちがどこにいるか教えてやろう、と言いました。そして、深いけれど水のない井戸を教えました。そして、こびとは、「おれにゃよくわかってる。あんたの仲間はあんたに対して誠意がないよ。王女さまを救おうと思ったら、1人でやらなくちゃいけないな。2人の兄貴ぶんも王女さまを救いだそうと思ってはいるが、骨を折ったり、危ない目にあうのはいやがっている。王女さまを救いたけりゃ、大きなかごを探してきて、山刀と鈴をもってその中に座って、井戸の中におろしてもらわなくちゃならない。井戸の底には3つの部屋があって、それぞれの部屋に王女さまがいて、頭のたくさんありゅうる竜のシラミをとらされている。あんたはその竜の頭を切り落とさなくちゃならないんだよ、と言いました。
こびとはこのように洗いざらい話してしまうと、姿を消してしまいました。
夕方、2人の兄貴ぶんがもどってきて、ハンスにどうだった?とたずねました。「いままでのところ、まあまあうまくいっているよ」と、ハンスは言いました。だれも来やしなかったけど、お昼になると、小さなこびとがやってきて、パンをひと切れよこせと言ったよ。それをやると、こびとはパンを落として拾ってくれと言ったのさ。いやだって言うと、こびとは文句を言いだすしまつさ。こいつはかんべんならないってわけで、こびとをぶちのめしてやった。すると、こびとは、王女さまのいるところを教えてくれたよと言いました。それを聞いて、2人の兄貴ぶんたちはとても腹を立て、顔の色が黄色くなったり、青くなったりしました。
あくる朝、3人そろって井戸端に行き、だれがまずかごの中に座るか、くじをひきました。くじは年上の狩人にあたりました。彼は鈴をもってかごの中に入らなければなりませんでした。そこで「おれが鈴を鳴らしたら、すぐひきあげてくれ」と、言いました。彼が下におりて、ちょっとたつと、もう鈴が鳴りだしました。2人の弟ぶんはかごをたぐりあげました。
今度は2番目の若者がかごに入りました。彼も同じでした。
いよいよ下の若者の番になり、ずっと下までおろされました。彼はかごから出ると、山刀をとって最初の戸に近づき、耳をすませました。すると、竜の大いびきが聞こえました。ゆっくり戸を開けると、王女さまが1人座り、ひざの上に竜の9つの頭をのせて、シラミをとっていました。彼は山刀をふりかぶり、竜に打ちかかりました。9つの頭が落ちました。王女さまはとびあがって、若者の首に抱きつだいて、心からキスし、胸にかけていた純金のかざりをとって、若者にかけてやりました。それからハンスは2番目の王女さまのところへ行きました。この王女さまは7つの頭の竜のシラミをとらされていました。若者はこの人も救いました。しまいに、一番若い王女さまも救いました。一番若い王女さまは4つの頭のある竜のシラミをとらされていました。3人の姉妹はいろいろなことをたずねあい、いつまでも抱きあい、キスしあっていました。
若者は、上に聞こえるように強く鈴を鳴らし、3人の王女さまをつぎつぎにかごに乗せ、ひきあげてもらいました。いよいよ自分の番になったとき、ハンスは土の中のこびとが、おまえの兄貴ぶんは誠意がないと言っていたのを思いだしました。そこでまず、そばにあった大きな石をかごの中に入れました。かごがまん中あたりまでたぐりあげられると、悪い兄貴ぶんたちは上で縄をたち切ったので、石をのせたかごは井戸の底に落ちました。これで、弟ぶんはおだぶつだ、と2人の兄貴ぶんは思いました。そこで2人は3人の王女さまを連れて逃げ、彼ら2人が自分たちを救ってくれた、と王さまに言うように3人をおどして約束させました。こうして2人は王さまのところに行き、めいめい王女さまの1人を妻にください、と言いました。
いっぽう、一番年下の若者は悲しくてたまらず、3つの部屋の中を歩きまわっては、このままでは死ぬほかない、と思いました。そのとき、壁に笛がかかっているのが目にとまったので、「なんだっておまえはこんなところにかかっているんだい?ここで笛など吹いてはしゃぐ者などいないよ」と言いました。それから竜の頭をながめては、「おまえたちもおれを助けることはできないなあ!」と言いました。こうして若者は何度も行ったり来たりしたので地面がすべすべになってしまいました。
ようやく、若者は思いなおして、壁から笛をとり、ひと節吹きました。すると、とつぜん土の中のこびとが大勢あらわれました。ひと節吹くごとに、こびとが1人また1人とあらわれたのでした。若者は、部屋がこびとでいっぱいになるまで吹きました。こびとたちは、若者になにが望みかと聞きました。そこで若者は、また地上に出てお日さまをおがみたい、と言いました。すると、こびとたちは、若者の髪の毛の1本1本をつかむと、みんなでもちあげ、いっしょに地上までとびあがりました。
地上に出ると、すぐに王さまの城へむかいました。城ではちょうど1人の王女さまの結婚式がおこなわれることになっていました。若者は王さまが3人の王女さまと座っている部屋をめざしました。3人の王女さまは若者を見ると、気を失いました。王さまはひどく腹を立て、若者をすぐに牢屋に入れさせました。きっと王女さまたちに悪いことをしたにちがいない、と思ったからでした。
けれども、王女さまたちは息を吹きかえすと、若者を牢屋から出してやってください、と王さまにいっしょうけんめい願いました。どうしてか、と王さまがたずねると、王女さまたちは、それは言ってはならないのです、と言いました。そこで王さまは、それなら暖炉に話すがよい、と言いました。
王さまは部屋を出ると、戸口によりかかって、耳をすまし、なにもかも聞いてしまいました。そこで、王さまは2人の兄弟ぶんをしばり首にし、若者に末の娘をあたえました。
そしてそのとき、わたしはガラスの靴をはいていましたが、石につまずいたものですから、チャリンといって、靴はこわれてしまいましたよ。
*1クラフター:両腕をひろげたくらいの長さ。1クラフター=約2メートル。
092. 黄金の山の王さま Der König vom goldenen Berg
あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
下六金の山の王さま
ある商人に、ふたりの子どもがありました。ひとりは男の子で、ひとりは女の子でした。ふたりはまだ小さく、歩くこともできませんでした。ところで商人の二槽の船が荷を山ほど積みこんで海に出ていました。その船には商人の全財産が積みこまれていて、それでお金をたくさん儲けることができるだろう、と商人が思っているところに、船が沈んでしまったという知らせが来ました。それで商人は金持ちから貧乏人になってしまい、残ったのは町はずれの畑だけでした。男は、自分の不幸をすこしでも忘れようと、畑へ出かけていきました。男がそこを歩きまわっていると、突然ひとりの黒い小人が横に立っていて、男がなぜそんなに悲しんでいるのか、なにをそんなに思いつめているのか、たずねました。そこで商人は「もしおまえが力になれるというのなら、話しもするがね」と言いました。「力になれるかどうかはわからないが」、黒い小人は言いました、「話してごらんよ、力になれるかもしれんよ」。そこで商人は、全財産が海の底に沈んでしまい、残ったものといったらこの畑だけだ、と話しました。「なんだって!そんなことならくよくよすることはないさ」、黒い小人は言いました、「おまえが家に帰って、最初におまえの足にさわったものを、十二年たったらここへ連れてくると、約束してくれるなら、欲しいだけのお金をおまえにあげるよ」。商人は、それなら大したことないぞ、きっとうちの犬だろうと思って、自分の小さい息子のことなど考えもしないで、わかったと言って、証文にはんこを押し、黒い小人に渡すと家へ帰りました。
家へ帰ってくると、小さい息子はとても喜んで、長椅子につかまりながら、商人の方へよちよち歩いてくると、足にしっかりとつかまりました。そこで父親はぎょっとして、自分が何をあげると約束してしまったか、気づきました。けれどもまだ一銭のお金も見えなかったので、あれはあの小人のただの冗談だったのだろう、と考えました。それから一ヶ月ほどして、商人は、古い錫の食器をさがし集め、それを売っていくらかでもお金を手に入れようと思って、屋根裏へ行きました。するとそこにお金がどっさり山のように積まれてあるのを見つけました。商人はそのお金を見ると満足して、ふたたび仕入れをして、以前よりも金持ちになりました。そしてのんきに暮らしました。そうするうちに、息子は大きく、賢い人になりました。けれども十二年が過ぎていくにつれて、商人はどんどん不安になってきて、不安な気持ちが顔に出るほどでした。すると、あるとき、息子が父親に、どこか具合が悪いのですか、と聞きました。父親は話したくありませんでしたが、息子がいつまでも問いつめるので、しまいに、そうなるとは知らずに、息子をたくさんのお金と引き換えに黒い小人にあげると約束してしまい、証文にはんこを押して渡してしまったこと、そしていよいよ十二年が過ぎたら、息子を小人に渡さなくてはならないことを話しました。すると息子が言いました、「ねえ、お父さん、心配しなくていいですよ。きっとうまくいきます。その黒い小人は、ぼくを好きなようになんかできませんから」
そこで息子は牧師に神のご加護があるようお祈りをしてもらい、その時がやってくると、ふたりそろって畑へ出かけていきました。そして息子は円を描くと、父親といっしょにその円の中へ入りました。するとそこへ黒い小人がやってきて、父親に話しかけました、「約束したものを持ってきたかい?」けれども父親はじっと黙っていて、息子が言いました、「おまえはここになんの用があるんだい?」すると黒い小人が言いました、「おれはおまえの父さんに話があるんだ。おまえじゃない」――息子が言いました、「おまえはぼくの父さんをだまし、そそのかした。証文を出すんだ」――「だめだ」、黒い小人は言いました、「おれの権利を手放しはせんよ」。そこでふたりはさらに長いこと話し合いました。そしてしまいに、息子は宿敵のものでもないし、もはや父親のものでもないのだから、下流へ流れる川に浮かんだ小舟に乗りこみ、父親が自分の足でその小舟を押し出し、息子を川の流れにまかせることになりました。そこで息子は父親に別れを告げると、小舟に乗りこみました。そして父親はその小舟を自分の足で押し出さねばなりませんでした。すると小舟はひっくり返って、船底が上に、おおいの方は水の中へもぐってしまいました。父親は、息子はきっと助からないと思い、家へ帰って、息子の死を悲しみました。
ところが小舟はとてもゆっくりと流れていって、沈んではいませんでした。若者は、無事に小舟の中にいました。そして長いこと流れていき、しまいに、どこか知らない岸に流れついて止まりました。そこで息子は岸へ上がると、目の前にりっぱな城があるのが見えました。そしてその城の方へ歩いていきました。中へ入ると、城は魔法がかけられていて、なにもありませんでした。しまいにある部屋の中で一匹の蛇に出会いました。ところがその蛇は魔法をかけられたお姫さまで、若者を見ると喜んで話しかけました、「よくいらしてくださいました。あなたはわたしを救い出してくださる方です。わたしは、あなたのことをもう十二年もお待ちしておりました。この国は魔法をかけられているのです。そしてあなたはこの国を救わなくてはなりません。今夜、鎖につながれた十二人の黒い男たちが来て、あなたがここで何をしているのかたずねますから、それでもじっと黙って、なにひとつ答えてはいけません。あなたになにをしようと、したいようにさせなさい。あなたを痛めつけたり、たたいたり、刺したりするかもしれません。好きなようにさせるのです。決して口をきいてはいけませんよ。十二時になったら、男たちは帰っていかなくてはなりません。そして、次の晩、また別の十二人が来ます。三日目の晩には、二十四人が来て、あなたの首をチョン切るでしょう。けれども十二時になると、男たちの魔力も消え失せてしまいます。その時まであなたが我慢して、一言も話さなければ、わたしは救われて、あなたのところへ歩いていって、あなたをお助けします。わたしは命の水を持っています。それを塗ると、あなたは生き返って、以前のように元気になります」。すると若者が言いました、「喜んであなたをお救いしましょう」。そして、すべて、お姫さまの言ったとおりになりました。黒い男たちは若者に一言もしゃべらせることができませんでした。そして三日目の晩に、蛇は美しいお姫さまになりました。お姫さまは、命の水を持ってきて、若者を生き返らせました。そしてお姫さまは若者の首に抱きついてキスをしました。そして城じゅうに喜びの歓声がわき上がり、ふたりの結婚式が行なわれ、若者は金の山の王さまになりました。
こうしてふたりはいっしょに幸せに暮らしました。お妃は美しい王子を生みました。そしてすでに八年が過ぎたとき、王さまは父親のことを思い出して、心を動かされ、一度父親を家へ訪ねてみたいと思いました。けれどもお妃は、王さまが出かけるのをいやがって、言いました、「わたしには、それがわたしにとって災いとなるのが、わかっています」。しかし王さまがしつこくたのんだので、しまいにお妃は許しました。別れのとき、お妃は王さまに望みのかなう指輪を渡して言いました、「この指輪を取って、指にはめてください。あなたが行きたいと望んだ所へ、すぐに連れていってくれます。でもひとつだけ約束してください。わたしをここからあなたのお父さまのところへ連れていくために、この指輪をお使いにならないように」。そこで王さまはそのように約束をして、指輪を指にはめると、父親が住んでいる町のはずれへ連れていってくれるように願いました。すぐに王さまは町のはずれにいました。けれどもまだ町の中ではありませんでした。王さまは町の入口の門までやってきましたが、風変わりではあるがりっぱな服装をしていたので、番兵は王さまを中へ入れてくれません。そこで王さまは、羊飼いが番をしている山へ行き、羊飼いと服を取り替えて、羊飼いの古い上着を着ると、今度はとがめられずに町の中へ入っていきました。父親の所までやってくると、王さまは正体を明かしましたが、父親は、この男が自分の息子だとは決して信じられない、自分にはたしかに息子がひとりいたが、とっくに死んでしまった、と言いました。ところが、男が貧しいみじめな羊飼いだと思ったので、皿いっぱいの食べ物をあげよう、と言いました。すると羊飼いは自分の両親に言いました、「わたしは本当にあなたがたの息子です。わたしと見分けがつくような、体のあざでも知りませんか?」――「知ってるわ」、母親が言いました、「わたしたちの息子は、右腕の下にキイチゴのようなあざがあります」。そこで男がシャツの腕をたくし上げると、キイチゴのようなあざがふたりに見えました。それでふたりはこの男が自分たちの息子だと確信しました。それから息子は、自分は金の山の王さまになっていて、お姫さまが奥方であること、そしてふたりには七歳の美しい王子がいることを両親に話しました。すると父親は言いました、「そんなことは、断じてあるわけがない。羊飼いのボロボロの上着を着てやってくるなんて、大した王さまだな」。すると王さまは怒って、約束のことも考えずに、指輪を回すと、お妃と王子のふたりが自分のところへ現われるように願いました。その途端、ふたりそろってそこに現われましたが、お妃は嘆き、泣いて、王さまが約束を違えて、自分を不幸にした、と言いました。けれどもお妃はもうそこに来てしまっていたので、あきらめるほかありませんでした。けれどもお妃は、心の中では、悪いことを考えていました。
それから王さまはお妃を町のはずれの畑へ連れていき、川と小舟が押し出された場所を見せました。それから王さまは言いました、「眠くなった。すわっておくれ。おまえの膝でひと眠りしよう」。そして王さまは頭をお妃の膝にのせ、お妃がしばらくしらみを取ってあげているうちに、眠ってしまいました。王さまが眠りこんでしまうと、お妃は指輪を指から抜き、王さまの下になっていた足も引き抜くと、上履きだけを王さまの頭の下に残しておきました。そして王子を連れてくると、また自分の王国へ戻れるように願いました。王さまが目をさますと、ポツンとひとりそこに残されていました。奥方は王子といっしょにいなくなっていました。指輪もなくなっていました。上履きだけが、お妃がいた証しとして、まだそこにありました。「両親のいる家へはもう戻れないぞ」、王さまは思いました、「父さんも母さんも、おまえは魔法使いだって言うだろう。荷物をまとめて、王国までどうにか歩いていこう」。そこで王さまは歩いて出かけました。そしてある山へやってきました。そこには三人の巨人がいて、父親の遺産を分けようとしていました。そして、巨人たちは男が歩いていくのを見ると呼び止めて、小さい人間っていうのは、知恵があるそうじゃないか、どうかおれたちにこの遺産を分けてくれ、ひとつ目は剣で、それを手に取って、「みんなの首を落とせ、おれのだけは除いて」と言うと、みんなの首が地面にころがるんだ、ふたつ目は外套で、それを着た者は誰からも姿が見えなくなる、三つ目は長靴で、それを足に履いて、行きたい場所を願うと、たちまちそこに行ける、と言いました。王さまは、その三つの道具がまだちゃんと使えるかどうか、確かめてみるから、ちょっと貸してごらん、と言いました。そこで巨人たちは王さまに外套を渡しました。王さまは外套を羽織って、蠅になりたい、と願いました。するとたちまち蠅になりました。「外套は問題ないな」、王さまは言いました、「それじやあ、今度は、その剣を貸してごらん」。巨人たちは「だめだ、これは渡すわけにいかない。だって、おまえが『みんなの首を落とせ、おれのだけは除いて」って言ったら、おれたちの首は残らず落ちて、おまえのだけがくっついているってことになるからな」と言いました。ところが、王さまが木で試してみようと言うので、巨人たちは王さまにそれを渡しました。王さまが試してみると、剣も問題ありませんでした。それから王は、長靴もよこしてごらん、と言いました。ところが巨人たちは「だめだ、これは渡すわけにいかない。おまえがこれを履いて、あの山の上へ行きたいと言ったら、おれたちは下に残されて、手元にはなにもなしってことになっちまう」と言いました。「いいや」、王さまは言いました、「そんなことしないよ」。そこで巨人たちは、王さまに長靴も渡しました。王さまはいよいよ三つの道具を手にすると、金の山へ行きたい、と願いました。そしてたちまちそこへ着き、巨人たちはいなくなって、これで遺産は分けられたことになりました。王さまが城の近くまでやってくると、バイオリンや笛の音が聞こえました。そして人々は王さまに、王さまの奥方が別の王子と結婚式を挙げた、と話しました。そこで王さまは外套を羽織って、蠅に姿を変え、城へ入っていって、お妃のうしろへとまりました。誰にも姿は見えません。さて、お妃の皿にひと切れの肉がもられると、王さまはさっと奪って、食べてしまいました。そしてお妃のグラスにぶどう酒がつがれると、さっと奪って、飲んでしまいました。次々に料理が持ってこられましたが、お妃の皿にはいつもなにひとつありませんでした。それでお妃は恥ずかしくなって、席を立つと、自分の部屋に行って、泣きました。ところが王さまはお妃のあとをついていきました。するとお妃は「悪魔がわたしにとり憑いているんだわ。それともわたしを救い出してくれる人は来なかったのかしら」とつぶやきました。そこで王さまはお妃の頬を、強く二、三回平手打ちして言いました、「おまえを救い出してくれる人が来なかっただって。そいつはおまえにとり憑いてるぞ。人をだましたな!あんな仕打ちをうけるようなことをおれがしたか?」それから、王さまは表へ出ていって、結婚式は終わりだ、王が戻ってきた、と言いました。するとそこにいた王さまたちや貴族たちや大臣たちから馬鹿にされ笑われました。ところが王さまはそこにいた人たちに、ここを出ていくか、いかないか、手短に聞きました。するとみんなが王さまを捕まえようとしましたが、王は剣を引き抜いて言いました、「みんなの首を落とせ、おれのだけは除いて!」するとみんなの首はたちどころに血の海にころがりました。
そして王さまはふたたび金の山の王さまになりました。
収録:下06 金の山の王さま
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
1人の商人がいました。彼には2人の子どもがあり、1人は男の子で、もう1人は女の子でした。2人とも幼く、まだ歩くことができませんでした。ところで、この商人の2隻の船がいっぱい物を積んで海の上を走っていました。船にはこの商人の全財産が積まれていました。商人はこれでたくさんのお金が手に入ると思っていたとき、2隻の船が沈没したという知らせが届きました。そのため、この商人はいまや金もちではなく、貧乏な男になり、残ったのは町の郊外にある畑だけでした。この不幸を少しでも考えないように、彼は郊外の畑に出かけ、そこであっちこっち歩きまわっていると、とつぜん小さな黒い男が彼の横に立ち、どうしてそんなに悲しんでいるんだい、なにをそんなに真剣に考えているんだい、とたずねました。そこで、商人は「おまえさんがわたしを助けてくれるなら、話してもいいよ」と言いました。
「そんなの、わかんないよ。でももしかしたら、おいらがおまえさんを助けることができるかもしれない」と、その黒い小男はこたえました。
そこで商人は、自分の財産がなにもかも海のもくずとなって、残っているのはこの畑だけなのだ、と話しました。
「心配するなよ」とその小男は言いました。「家で最初におまえさんの足にぶつかったものを、おまえさんが12年後にここにもってくると約束してくれたら、おまえさんがほしいだけのお金が手に入るよ」
商人は「最初にぶつかるものは犬以外になにがあるというのだろう」と思いました。まさか、自分の幼い男の子のこととは思いもせず、いいよ、と言い、それについての証文にサインと印を押して、この黒い男に渡すと、家にもどりました。
商人が家にもどると、幼い男の子がとてもよろこんで、ベンチをつたって、彼のところによちよちやってきて、彼の両足をしっかりとつかみました。そのとき、父親はぎょっとしました。約束したことが思いうかび、自分がなにを約束してしまったのかがわかったのでした。しかし、まだ依然としてお金が長もちにも箱にも見あたらなかったので、あれは小男の冗談だったのだと考えました。
1か月がすぎて、商人が、古いスズをかき集めて売ろうと、屋根裏部屋へあがると、そこに大きな山のように積みあげられたお金があるのを見つけました。商人はまたもやじょうきげんで、品物を仕入れ、前よりもっと大きな商人となり、のちのことを考えず、のんきに暮らしました。そうこうするうちに、男の子は大きく、同時にかしこくて、分別のある息子に育ちました。ところが約束の12年が近づけば近づくほど、商人の顔に不安なようすが、はた目にもわかるようになりました。そして、あるとき、息子は父親に、どうかしたのですか、とたずねました。父親はわけを話そうとはしませんでした。けれども、息子はしつこくたずねたので、とうとう父親は息子に、自分はこんなこととも知らずに、息子を黒い小男にやることを約束し、そのかわりにたくさんのお金を手に入れたことを話しました。そして自分はそのことについて印章を押した証文を渡していて、12年がすぎたいま、自分は子どもをひきわたさねばならないのだと話しました。すると、息子は「ああ、お父さん、心配しないでください。きっとうまくいきます。その黒い人は、わたしを思うようにはできませんよ」と言いました。
息子は牧師に祝福をあたえてもらい、時間が来ると、父さんと2人で畑に行き、息子は円をえがいて、父親といっしょに円の中に立ちました。すると黒い小男がやってきて、父親に話しかけました。
「約束したものをもってきたかい」
父親はものも言わず静かにしていました。かわりに息子がたずねました。
「おまえはここになにしに来たのか」
すると黒い小男は「おれが話をしなくちゃならないのはおまえの父親とであって、おまえとではない」と言いました。
「おまえは、わたしの父さんをだまし、そそのかして書かせたのだ。証文を返せ」と息子は言いました。
「だめだ。おれの権利は捨てるものか」と、黒い小男は言いました。そこで2人はなおも長いこと話し、おしまいに、2人の間では、息子はこの黒い男のものでもないし、もう父親のものでもないから、息子は、川にうかんでいる小舟に乗り、父親はその小舟を自分の足でけりだし、息子は運命を川にゆだねる、ということで話がまとまりました。
こうして、息子は父親にわかれを告げて、小舟に乗りました。父親はその小舟をしかたなく自分の足で川の流れへと押しだしました。すると、小舟はひっくりかえり、舟底が上をむき、甲板は水の中につかりました。父親は、息子はもうだめだと思い、家にもどり、息子の死をなげき悲しみました。
ところが、その小舟は完全にしずんではおらず、静かに流れに乗ってすすんでいきました。若者はしっかりとその小舟の中にいて、長い間、流れに身をまかせて、とうとうある見知らぬ岸にたどりつきました。そこで若者は陸にあがり、目の前に美しいお城があるのを見て、そちらへ歩いていきました。若者が中に入っていくと、その城は魔法にかけられていました。若者は、部屋を1つ残らず通っていきましたが、どの部屋もからっぽでした。若者が最後の部屋に来ると、その部屋には1匹のヘビがいて、とぐろを巻いていました。しかし、このヘビはじつは魔法をかけられた娘で、若者を見るとよろこんで言いました。
「来てくださったの、わたしの救い主さん。あなたを、わたしはもう12年間も待っていました。この王国は魔法にかけられているのです。あなたはこの王国をぜひとも魔法から解きはなってくださらねばなりません」
「どんなふうにすればいいのでしょうか」と若者はたずねました。
「今晩、黒いクサリをからだに巻いた12人の男たちがやってきます。あなたに、ここでなにをしているのか、とたずねますが、ものを言ってはなりません、静かにしていてください。けっして返事をしてはなりません。あいつらのなすがままにさせておくのです。あいつらはあなたを痛めつけます、なぐったり、刺したりするでしょう。いろいろされますが好きなようにさせるのです。けれどもしゃべってはなりません。12時になるとあいつらはまた立ち去ります。そして2日目の晩にまた12人のべつの男たちがやってくるでしょう。3日目の晩も24人の者が来ます。あいつらはあなたの首を切り落とすでしょう。でも、12時には彼らの力はなくなります。そしてあなたがこれにたえぬき、ひとこともしゃべらなかったら、わたしは救われるのです。わたしは、命の水のビンをもっていますから、あなたのところへ行き、それをあなたにぬれば、あなたはまた生きかえって、以前のように元気になるのです」
そこで、若者は「よろこんでお助けいたしましょう」と約束しました。それから、ヘビが言ったとおりのことが起こりました。黒い男たちは若者からひとことも言葉をひきだすことはできませんでした。3日目の晩に、ヘビは1人の美しい姫になりました。その姫は命の水をもってきて、この若者をふたたび生きかえらせました。そして姫は若者の首にしがみつき、キスをしました。お城の中はどこもかしこもよろこびにわきかえりました。やがて、2人のけっこんしきひめ結婚式がおこなわれ、若者は黄金の山の王さまになりました。
このようにして、2人はなに不自由なくいっしょに暮らし、お妃は1人のきれいな男の子を産みました。こうして8年がすぎたとき、父親のことがふっと頭にうかび、王さまの心はゆれました。そこで、一度ふるさとの父親をたずねてみたいものだと願いました。しかし、お妃は行かせようとせず、「それがわたしの不幸になることは、わたしにはちゃんとわかっています」と言いました。それでも、王さまは熱心にせがんだので、お妃はとうとう承諾しました。わかれの際、お妃は願いのかなう指輪を渡し、「この指輪を受けとってください。そして、あなたの指にはめてください。そうすれば、あなたの行きたいところへすぐ行けますわ。でも、わたしをここから、あなたのお父さまのところへよびよせるためにこの指輪を使うことだけはしないでください」と言いました。
王さまはそれを約束し、指輪を指にはめ、父親のすむ町へ行くことを願いました。あっというまに王さまはそこに着き、町の中へ入ろうとしました。ところが町の門の前にやってくると、番兵たちが王さまを入れようとしませんでした。なぜなら王さまはきみょうな、それでいて豪華できらびやかな服を身につけていたからです。そこで王さまは山へのぼりました。そこには1人のヒツジ飼いがヒツジの番をしていて、そのヒツジ飼いと服をとりかえ、古いヒッジ飼いの服を着ると、とがめられることもなく町の中に入っていけました。王さまは、父親のところへ行くと、自分が息子だと告げましたが、父親は、それが息子だなんて、まったく信じず、たしかに自分には息子がいたが、とっくに死んだのだ。でも、あんたはあわれなみすぼらしいヒツジ飼いのようだから、皿にたくさん食べ物を盛ってあげようと言いました。
そこでヒツジ飼いは両親に、「わたしはほんとうにあなた方の息子です。あなた方が、わたしが息子だとわかる、からだのあざを知りませんか」と言いました。
「ええ、知っていますとも。わたしたちの息子には右のわきの下にラズベリーのようなあざがあったわ」と、母親が言いました。
ヒツジ飼いがシャツをめくると、2人は彼の右のわきの下にラズベリーのようなあざを見て、自分たちの息子であることをもう疑いませんでした。それから、息子は両親に、自分は黄金の山の王さまで、そこの姫が自分の妻で、自分たちには、7才になる1人のかわいい息子がいる、と話しました。すると、父親が「そりゃ、どうみてもほんとうのこととは思えんな。ぽろぽろのヒツジ飼いの服を着てやってきて、それでりっぱな王さまとは」と言いました。すると、息子は腹を立て、約束のことなどすっかり忘れて、指輪をまわし、自分の妻と子どもが自分のところへ来るように願いました。その瞬間に妻も子どももそこに着いていました。しかし、お妃は悲しみになげき、おいおいと泣き、王さまが約束を破り、自分を不幸にしたと言いました。王さまは「ついうっかりしただけで、けっして悪意からではない」と言い、お妃を説得しました。お妃はなっとくしたようなそぶりを見せましたが、心の中ではよからぬことを考えていました。
それから、王さまはお妃を町の郊外の畑に連れていき、小舟がはなたれた川を見せてから、「わたしはつかれた。おまえのひざの上で少し眠りたい」と言いました。王さまは頭をお妃のひざに横たえ、お妃が王さまのシラミをとっている間に、王さまは眠りこんでしまいました。王さまが眠りこんでしまうと、お妃はまず、指から指輪をひきぬき、そして王さまの頭の下から自分の足をそっとぬいて、上ばきだけを残しておきました。それから、子どもを腕にかかえると、自分の王国へもどるように願いをかけました。王さまが目をさますと、1人だけ残され、お妃も子どももいなくなっていて、指輪もなく、お妃のいた証として残っていたのは上ばきだけでした。
「おまえは両親の家にもどることはできないぞ」と、王さまは自分自身に言い聞かせ、「両親は、おまえを魔法使いだと言うだろう。それでは、旅じたくをし、歩いて自分の王国まで行くしかない」と考えました。
こうして、王さまは歩いてゆき、やっと、ある山へやってきました。そこには3人の大男が立っていて、争っていました。彼らは、自分たちの父親の遺産をどう分けたらよいのか、わからなかったのです。その大男たちは、王さまが通りかかるのを見ると、よびとめ、小さな人間というものは頭がいい。おれたちの遺産を分けてくれと言いました。それにしても、この遺産の1つは剣であり、だれでもこの剣を手にとり、「すべての首は落ちろ、自分のだけはだめだ」と言えば、たちどころに、すべての首が地面に落ちるという代物でした。2つ目はマントで、それを身にまとう者は、だれにも見えないというもので、3つ目は一足の長靴で、それをはけば、どこへでも望むところへ、たちどころに行けるという代物でした。「その3つのものをわたしによこしてごらん。それらがまだちゃんと使えるかどうか、ためしてみるよ」と、王さまは言いました。
そこで、大男たちはマントを王さまに渡し、王さまがそのマントをはおると、姿が見えなくなり、ハエに姿を変えました。それからもとの姿にもどり、「このマントはちゃんとしている。さあ、剣をよこしてごらん」と言いました。大男たちは「だめだよ、それは渡せないぜ。もしあんたが、『すべての首よ、落ちろ、自分のだけはだめだ」と言えば、おれたちの首はみんな落っこちてしまうよ。おまえだけが首をつけていることになるだろうよ」
しかし、大男たちは王さまに、木でためしてみるという条件で剣を渡しました。王さまはためしてみました。剣は木の幹を、まるでワラのくきを切るように、スパッと切りました。さて、つぎに長靴を手にしようとしましたが、大男たちは「だめだ。これは渡せない。おまえがその長靴をはいて、『山の上へ行きたい」と望めば、おれたちは山の下に残され、なにもかもなくしてしまうぜ」と言いました。「いや、そんなことはしないよ」と王さまは言いました。
そこで、大男たちは王さまに長靴を渡しました。王さまはこうしていまや3つのものを手にすると、ただ自分の妻とわが子のことだけを考え、思わず、「ああ、黄金の山にいられたらなぁ」と、ひとりごとを言うと、たちどころに王さまは大男たちの目の前から消えてしまい、それで遺産わけは片づいてしまいました。王さまがお城の近くに来ると、よろこびのさけび声や、バイオリンやフルートの音が聞こえ、人々は王さまに、お妃さまがほかの方と結婚式をあげているのだと教えてくれました。これを聞いて王さまはカンカンにおこって、「食わせ者め、わたしを裏ぎったのだな。わたしが眠りこんだすきに、わしを1人にしたのだ」と言いました。
そこで、王さまはマントをまとい、姿が見えないようにして、お城の中に入っていきました。広間に入っていくと、大きなテーブルには豪勢な料理がならんでいて、客たちが食べたり、飲んだり、笑ったり、ふざけたりしていました。お妃は豪華な服を着て、中央の玉座に座り、頭には王冠をかぶっていました。王さまはお妃のうしろに立ちましたが、だれにも王さまの姿は見えませんでした。給仕の者たちが、肉をひと切れお妃の皿に置くと、王さまがそれをとりあげ、食べてしまいました。そして給仕の者たちがお妃のグラスにワインを注ぐと、王さまはそれをとりあげ、飲みほしてしまいました。給仕たちはつぎつぎと食べ物や飲み物を出しましたが、お妃はいつもなにひとつ食べたり、飲んだりできませんでした。皿やグラスが、給仕をされると、その瞬間に消えてしまったのです。お妃は動転してはずかしくなり、自分の部屋にひきこもって泣きました。王さまはお妃のあとを追ってきました。お妃が「悪魔がわたしにとりついているのかしら、それとも、わたしの救い主は来なかったのかしら」と言いました。すると、王さまはお妃の顔をバシッとなぐりつけ、「救い主があらわれなかったって?そいつはおまえにとりついているさ、この裏ぎり者め。わたしがおまえからこんな仕打ちを受けるのが当然だとでも言うのか?」と言いました。
そして王さまは姿をあらわし、広間にもどると大きな声で「結婚式はこれで終わりだ。ほんとうの王がもどってきたのだ」と言いました。その場に列席していた王さまたちや侯爵たち、相談役たちがこの王さまをあざけり、からかうように笑いました。
しかし、王さまは「ここから出ていくのか、いかないのか」と短く言いはなちました。すると、彼らは王さまをつかまえようとして、王さまのところへ押しよせてきました。そこで王さまは剣をぬいて言いました。
「すべての首よ、落ちろ。わたしのだけはだめだ」
そう言うがはやいか、すべての首が地面にごろごろころがりました。こうして王さまはたった1人の城主となり、ふたたび黄金の山の王さまになりました。
093. ワタリガラス Die Rabe
あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
昔、ひとりの小さな娘がいるお母さんがいました。娘はまだ小さく、お母さんの腕に抱っこされていました。ところであるときのこと、娘がむずがって、お母さんがなにを言っても、どうにもならないことがありました。それでお母さんはいらいらして、ちょうど家のまわりをからすが飛びまわっていたので、窓を開けて言いました、「おまえがからすになって、どこかへ飛んでいってくれたらいいのに。そうしたら、わたしだってほっとできるのに」。そしてその言葉を口にしたとたん、子どもはからすになって、お母さんの腕を飛び立つと、窓から外へ飛んでいきました。からすは遠くへ飛んでいき、誰も追いかけることができません。ところでからすは暗い森へ飛んでいき、そこに住みつきました。あるとき、ひとりの男がこの森へ入ってきました。すると、からすが鳴くのが聞こえたのでその声を追っていきました。そして男が近づいていくと、からすが男に言いました、「わたしは魔法をかけられています。生まれは王の娘です。あなたはわたしを救うことができます」。そこで男が言いました、「どのようにすればいいのでしょうか?」そこでからすは言いました、「あそこの家にお行きなさい。家の中におばあさんがすわっていて、あなたに食べ物と飲み物を出してくれて、それを食べ、飲むようにすすめるでしょう。でも、なにも食べたり、飲んだりしてはいけません。というのは、飲んだりすると、眠り薬を飲むことになって、あなたはわたしを救えなくなるのです。家の裏庭に楡の皮の大きな束がありますから、その上に立って、わたしを待っていてください。午後二時に、わたしは四頭の雄の白馬の引く馬車に乗ってきます。でもそのとき、あなたが目をさましていなくて、眠っていると、わたしは救われません」。男は、言われたとおりやろう、と言いました。けれどもからすは「わたしにはわかっています。あなたはわたしを救うことはできません。だっておばあさんからなにかもらって口にしてしまうから」。そこで男は、食べ物にも飲み物にも決してさわらない、とくり返し約束しました。ところが男が家へ入っていくと、おばあさんが近寄ってきて言いました、「おやおや、おまえさん、ずいぶんお疲れのようだね。こっちへ来て、元気をつけなよ。食べたり、飲んだりするがいいさ」「いいや」、男は言いました、「わたしは食べたり、飲んだりしない」。けれどもおばあさんは、なんだかんだ言って、男を悩ませました。「食べたくないんだったら、グラスから一口飲んだらいいさ。一口飲んだくらいじゃあ、飲んだうちにはいらないよ」。とうとう男は言いくるめられて、一口飲みました。午後二時ごろになって、男は庭へ出ていき、楡の皮の束の上にあがって、からすを待とうと思いました。上に立つと、男は急に眠くなってきて、横になるまいとしていましたが、どうにも我慢できなくなって、すこし横になってしまいました。横になっても眠らないつもりでしたが、横になるとあっという間に、まぶたがひとりでに落ちてきて眠りこんでしまいました。それはぐっすり眠っていたので、世界のなにものも男を起こすことはできなかったでしょう。二時に、からすが四頭の雄馬に引かれてやってきましたが、もうすっかり打ち沈んで、言いました、「あの人が寝てることは、わたしにはとっくにわかっているわ!」そして庭に入ってくると、男は楡の皮の束の上に横になって、眠っていました。からすは男の前までやってくると、馬車から降り、男を揺すって、声をかけましたが、男はどうにも目をさましません。それでもからすが長いこと呼びかけると、しまいに男は眠りから目ざめました。そこでからすは言いました、「ここではあなたがわたしを救い出せないことが、はっきりわかりました。でも明日、わたしはもう一度来ようと思います。今度は、四頭の栗毛の馬に馬車を引かせて来ましょう。でもあなたはおばあさんから、決してなにももらってはいけませんよ。一口でも食べたり、一口でも飲んだりしてはだめですよ」。そこで男は「しません。決してしません」と言いました。けれどもからすは「ああ!それでもあなたがなにかを口にすることが、わたしにはわかっています!」と言いました。
次の日の昼ごろ、おばあさんがやってきて、なにも食べず、なにも飲まないのは、どういうことなのか、男に聞きました。そこで男は「ああ、食べたくないし、飲みたくないのさ」と言いました。けれどもおばあさんが食べ物と飲み物を男の前に置いていったので、匂いが立ちのぼってきて、男はその匂いに誘われて、また飲み物をいくらか飲んでしまいました。二時ごろなって男は庭へ行き、楡の皮の束の上へあがって、からすを待とうと思いました。するとまた眠くなってきて、手足で体を支えていることができなくなり、もう我慢できず横になると、すこし眠ってしまいました。さて、からすが四頭の栗毛の雄馬に引かれてやって来ましたが、今度もすっかり打ち沈んで、言いました、「あの人が寝てることは、わたしにはとっくにわかっているわ!」そして男のところへやってくると、男は横になってぐっすり眠っていました。そこでからすは馬車から降り、男を揺すって、起こそうとしました。昨日よりもずっと手間がかかりましたが、やっとのことで男は目をさましました。そこでからすは言いました、「あなたがわたしを救い出せないことが、はっきりわかりました。明日の午後二時にもう一度来ようと思います。でもそれで最後ですよ。わたしの雄馬は、今度は黒毛です。わたしも全身黒づくめで来ます。でもあなたはおばあさんからなにももらってはいけませんよ。一口でも食べたり、一口でも飲んだりしてはだめですよ」。そこで男は「しません。決してしません」と言いました。けれどもからすは「ああ!それでもあなたがなにかを口にすることが、わたしにはわかっています!」と言いました。次の日、おばあさんがやってきて、なにも食べず、なにも飲まないのは、どういうことなのか、男に聞きました。そこで男は「食べたくないし、飲みたくないのさ」と言いました。ところがおばあさんは、このごちそうがどんなにおいしいか、ちょこっとつまんでみたっていいじゃないか、お腹をすかして死んでもいいのかい、と言いました。すると男は言いくるめられて、またしても飲み物をいくらか飲んでしまいました。時間になって、男は庭へ出ていき、楡の皮の束の上へあがって、お姫さまを待っていましたが、またどうにも眠たくなって、立っていられずに横になると、まるで石にでもなったように、ぐっすりと眠りました。二時になって、からすが四頭の黒毛の雄馬と馬車といっしょにやって来ました。すべてが黒一色でした。けれどもからすはすっかり打ち沈んで、言いました、「あの人が寝ていてわたしを救い出せないことは、わたしにはとっくにわかっているわ」。からすが男のところへやってくると、男は横になってぐっすり眠っていました。からすは男を揺すって、声をかけましたが、起こすことはできませんでした。男はこんこんと眠りつづけました。するとからすは男の横にパンを置きました。それは男が食べたいだけ食べても、決してなくならないのです。それから肉をひとかたまり。それは男が食べたいだけ食べても、決してなくならないのです。三つ目に、ぶどう酒を一本。それは男が飲みたいだけ飲んでも、決してなくならないのです。そのあとで、からすは指から指輪をはずすと、男の指にはめました。指輪には自分の名前が彫ってありました。それから最後に、手紙を置きました。そこには、からすが男に残していく物と、それらは決してなくならない、ということが書いてありました。それからまた次のように書いてありました。「ここではあなたはわたしを救い出せないことが、はっきりわかりました。それでもわたしを救い出したいと思うのなら、シュトロームベルクの金の城へ来てください。そうすればあなたはやりとげられます。わたしにはちゃんとわかっています」。そしてからすは、男のもとにそれらをみんな置くと、馬車に乗って、シュトロームベルクの金の城へ出発しました。
男は目をさまして、自分が寝ていたことに気づくと、心から悲しくなって言いました、「彼女はきっとどこかへ行ってしまっただろう。おまえは彼女を救い出せなかった」。そのとき、自分の横に置いてあるものが、男の目に入りました。そして男は手紙を読みました。そこには、どうしてそのようになったかが書いてありました。そこで男はシュトロームベルクの金の城をめざして出かけようと思いました。ところが男はその城がどこにあるのか知りませんでした。男は長いこと世の中を歩きまわったのち、ある暗い森へ入りました。そして森の中を二週間歩きつづけましたが、森から出ることができませんでした。また夜がやってきて、男は疲れたので、茂みに横になって眠りこみました。次の日、男は先へと歩いていき、夜になってまた茂みに横になろうとしましたが、うめき声や悲しげに泣く声が聞こえてきて、寝つくことができませんでした。そして人びとが明かりをともすころになって、なにかちらちらと光るものが見えたので、そちらのほうへ歩いていきました。すると一軒の家の前に来ました。その家はとても小さく見えました。というのも、その家の前に大きな巨人が立っていたからです。そこで男は心の中で考えました。「中へ入ったものかどうか。中へ入れば、死ぬことになるかもしれない。でも、とにかく入ってみることだ」。そこで男が家へ近づいていくと、巨人が男を見て、言いました、「来てくれるとは、ありがたい。もう長いことなんにも喰ってないんでね。さっそく、今晩の夕飯におまえを呑みこんでやろう」「そいつは勘弁しておくれ」、男は言いました、「なにか食べたいなら、おれがいいものを持ってるよ」「そういう話なら、おまえは助けてやろう」と、巨人は言いました。そして家の中へ入って食卓につくと、男は決してなくならないパンとぶどう酒と肉を取り出しました。そしてふたりとも本当に満腹になるまで食べました。そのあとで男は巨人に言いました、「シュトロームベルクの金の城がどこにあるか、教えてくれないかい?」巨人は「ちょっくらおれの地図を見てやるよ。その地図には町や村や家がひとつ残らず載ってるのさ」と言いました。そして部屋にあった地図を持ってきて、城をさがしましたが、見つかりませんでした。「見つからなくたって、屁でもない。上の戸棚に、もっとたくさん地図があるのさ。そこで見つかるかどうか、ちょっと調べてやるよ」と、巨人は言いました。ふたりは見てみましたが、城は見つかりませんでした。そこで男が旅をつづけようとすると、巨人は、もう二、三日待ってくれ、自分には兄弟がいるんだが、いま食べ物を手に入れに出かけている、そいつが戻ってきたら、そいつもいい地図を持っているから、みんなでもう一度さがしてみよう、そいつがきっと見つけてくれる、と言いました。そこで男が待っていると、兄弟が帰ってきて、はっきりとはわからないが、シュトロームベルクの金の城は自分の持っている地図に載っていると思う、と言いました。そこで三人はもう一度、満腹になるまで食べると、それから二番目の巨人は出ていき、「さて、地図を見てこよう」と言いました。けれども城はそこにも載っていませんでした。そこで二番目の巨人は、ほかにも地図でいっぱいの部屋が上にある、その地図に載っているにちがいない、と言いました。そして地図を下へ持ってきて、三人であらためてさがすと、ついにシュトロームベルクの金の城が見つかりました。ところがその城は何千マイルも遠くでした。「どうやってそこへ行こう?」、男は言いました。「よし」、巨人は言いました、「二時間ひまがあるから、近くまで連れていってやろう。でもおれは帰ってこなくちゃいけないんだ。子どもに乳をやらなくちゃならないんでね」。そして巨人は男を城から百時間ほどのところまで連れてくると、「さあ、おれは戻らなくちや。残りの道はおまえひとりで歩いていけるだろう」と言いました。「ああ、わかった。きっとだいじょうぶさ」と、男は言いました。いよいよ別れようというときに、男は「まずは腹いっぱい食べようよ」と言いました。そうしてから巨人は別れを告げて、家へ帰っていきました。男は昼も夜もなく歩きつづけました。そしてとうとうシュトロームベルクの金の城にやってきました。けれども城はガラスの山の上に立っていて、山の上を魔法をかけられたお姫さまが馬車に乗って走っているのが見えました。男はお姫さまのところへ登っていこうとしましたが、そのたびに足が滑って落ちてしまいました。男はすっかり悲しくなってひとりごとを言いました、「ここに小屋をたてるのが一番だ。食べ物も飲み物もあるんだから」。そこで男は小屋をたてて、その中にまる一年こもって、お姫さまが上を馬車で走るのを、毎日見ていました。けれどもお姫さまのいるところへ登っていくことはできませんでした。
あるとき、男は三人の巨人が殴りあいをしているのが聞こえたので、声をかけました、「ごきげんよう!」巨人たちは声を聞いて、殴っている手を止めました。けれども誰も見あたらないので、また殴りあいをはじめました。それもかなり荒っぽい殴りあいでした。そこで男はまた、「ごきげんよう!」と言いました。巨人たちは、また殴る手を止めると、まわりを見まわしました。けれども誰も見あたらないので、また殴りあいをつづけました。そこで男はさらにもう一度、「ごきげんよう!」と言いました。そして、三人の巨人がなんでそんなことをしているのか、知ろうと思って、そこへ行くと、なんでそんなふうにおたがい殴りあっているのか、聞きました。するとひとりは、自分は杖を見つけた、その杖で戸をたたくと、戸がさっと開くのさ、と言いました。別のひとりは、自分は外套を見つけた、それをまとうと、姿が見えなくなるのさ、と言いました。すると三人目は、自分は馬を捕まえた、その馬でガラスの山を登ることができるのさ、と言いました。すると、男は「その三つとなにか交換しようよ。お金は手持ちがないが、もっと値打ちのあるものと。でもその前におまえたちの言っていることが本当かどうか、試してみなくちゃね」と言いました。そこで巨人たちは男を馬に乗せ、外套を羽織らせ、手に杖を持たせました。男がそれをみんな手に入れると、巨人たちには男の姿が見えなくなりました。そこで男は巨人たちをめちゃくちゃに打ちのめし、「さあ、これで満足だろう?」と、大声で言いました。そして山にかけ登りました。ところが山の上の城の前までくると、戸が閉まっていました。そこで男が杖で戸をたたくと、たちまち戸は開きました。そして男は中へ入り、階段を上がっていくと広間に出ました。そこにはお姫さまがすわっていて、ぶどう酒の入った金の杯が前に置いてありました。男は外套をまとっていたので、お姫さまには男が見えませんでした。男はお姫さまの前へやってくると、例の指輪を指からはずし、杯の中へ投げこんだので、カチャンと音がしました。するとお姫さまが叫びました、「これはわたしの指輪だわ。ということは、わたしを救ってくれる人もここにいるはずだわ」。みんなで城じゅうをさがしましたが、男は見つかりません。ところが男は城を抜け出して、馬に跨がると、外套を脱ぎ捨てました。みんなが城の門の前にやってくると、男の姿が見えたので、喜んで歓声をあげました。すると男は馬から下りて、お姫さまを腕に抱きしめました。そしてお姫さまは男にキスをすると言いました、「今、あなたはわたしを救い出してくれました」。それからふたりは結婚式を挙げ、いっしょに幸せに暮らしました。
収録:下07 からす
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
094. かしこい農夫の娘 Die kluge Bauerntochter
あらすじ
・貧乏な農夫と娘は王様から痩せた土地を分け与えてもらう
・その土地を耕していたときに純金のすり鉢を発掘してしまう
・娘の反対を押し切って農夫はそれを王様に献上する
・娘の予想通り、王様は「純金のすりこ木」もあるはずとの理由で農夫を投獄する
・農夫の投獄を予見した娘に王様が興味を示す
・王様の難題を解いて、娘はお妃の地位に就く
・数年後、城下である農夫が所有する馬の子を、牛を連れた農夫のものと王様が裁きを出してしまう
・お妃さまの入れ知恵で元の馬主のものとなるが、立腹した王様がお妃さまを里に帰してしまう
・別れの品として「愛しい物」をひとつ持って行くことを許可すると、お妃さまは王様を持ち帰る
・「愛しい物」が王様だと言われて元さやに納まる
収録:下08 賢い百姓娘
特徴
・お妃さまが最後に「愛しい物」として王様を連れ帰ったと語った時、「王様は目に涙を浮かべた」 の記述を挿入
上記以外は大筋で変更なし
095. ヒルデブラントじいさん Der alte Hildebrand第2版以降で差し替え特徴
・
1️⃣ 収録事情
本作は
Kinder- und Hausmärchen
の第二版(1819年)で初めて追加された作品です。
編集者である
Jacob Grimm と
Wilhelm Grimm
は、初版よりも物語数を増やし、民衆的・滑稽的な話も積極的に収録する方針へと移行していました。本作はその流れに属します。
2️⃣ 第二版初出形の文体的特徴
◆ ① 口承色の強さ
• 語りは非常に素朴で、修辞が少ない。
• 会話中心で進行。
• 民話的な反復と単純な構造。
→ まだ後年のような文学的整形はほとんど施されていません。
◆ ② 滑稽・風刺的性格
• 老夫ヒルデブラントは愚かで騙されやすい。
• 妻と司祭が共謀して夫を欺く。
• 「聖人巡礼」や「奇跡」を装う偽装が物語の核心。
宗教的外形を笑いの道具にする点で、
敬虔性の強い物語(例:KHM 81b など)とは性格が異なります。
◆ ③ 性格類型の単純さ
• 夫=愚鈍
• 妻=狡猾
• 司祭=偽善者
心理描写はほぼ無く、典型的類型人物で構成。
3️⃣ 後続版での改訂傾向
この話は大幅な書き換えは受けていませんが、
• 表現の滑らかさの向上
• 一部の粗野な言い回しの調整
• 文体の均質化
といった軽微な整形は確認されます。
ただし、内容自体は最後までかなり世俗的・風刺的色彩を保っています。
4️⃣ 物語類型上の位置
この話は:
• 「愚かな夫」型
• 「妻と聖職者の共謀」型
• 中世ファルス(道化劇)的伝統
と関係します。
特にドイツの民衆笑話伝統との連続性が強い作品です。
参考:『下09 ガラス瓶の中の化けもの』は『KHM099 ガラスビンの中のおばけ 』へ移動
あらすじ
・
096. 3羽の小鳥 De drei Vügelkens
あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
もう千年か、それ以上も昔のこと、この国に弱小の王さまばかりがいました。コイター山の上にもひとり住んでいて、この王さまは狩りにいくのがとても好きでした。あるとき、王さまが狩人を連れて城から出かけると、山のふもとで三人の娘が牝牛の番をしていました。そして大勢のお供を引き連れた王さまを見ると、一番上の娘がほかのふたりに声をかけ、王さまを指さしました。「ちょっと、ちょっと、わたし、あの人をものにできなければ、ほかの人はいっさいごめんだわ!」すると二番目の娘が、山の向こう側から返事をして、王さまの右手を歩いている人を指さしました。「ちょっと、ちょっと、わたし、あの人をものにできなければ、ほかの人はいっさいごめんだわ!」すると一番下の娘が、大声で言って、左手を歩いている人を指さしました。「ちょっと、ちょっと、わたし、あの人をものにできなければ、ほかの人はいっさいごめんだわ!」このふたりは大臣でした。王さまはこれを残らず聞き、狩りから城へ帰ると、三人の娘を呼びつけて、きのう山で何と言ったのか、たずねました。ところが娘たちは答えようとしません。しかし王さまは一番上の娘に、自分を夫にしたいのか、とたずねました。すると娘は、ええ、と言いました。そしてふたりの妹にふたりの大臣がたずねました。というのも、三人はそろって器量よしで、とくに妃になった娘は亜麻色の髪をしていたからです。
ふたりの妹は子どもができませんでした。あるとき、王さまが旅に出なければならなくなったとき、ふたりを妃のところへ呼びだして、妃を元気づけてもらおうと思いました。というのは、妃は身ごもっていたからです。妃は男の子を産みました。その子は真っ赤な星をつけて生まれてきました。するとふたりの妹は、このかわいい男の子を川の中へほうり投げてやろう、と話し合いました。ふたりが男の子を川の中へ(それはたしかヴェーザー川だったと思いますが)ほうりこむと、一羽の小鳥が空へ舞い上がり、歌いました、
※
この身を死に、まかせはしたが、
またの御沙汰のあるまでは、
百合の花むらに。
けなげな坊や、おまえだね?
ふたりはそれを聞くと、とても恐ろしくなって、逃げ出しました。王さまが家へ帰ってくると、ふたりは王さまに、お妃は犬を産みました、と言いました。すると王さまが言いました、「神様のなさることは、それでよいのだ」
ところが川岸にひとりの漁師が住んでいて、この男の子を釣り上げました。男の子がまだ息をしているのと、おかみさんに子どもがなかったので、ふたりはこの男の子を育てました。一年して、王さまがまた旅に出ていたとき、妃はまた男の子を産みました。ふたりの悪い妹は、この子も川の中にほうりこみました。すると、また小鳥が空へ舞い上がり、歌いました、
※repeat
けなげな坊や、おまえだね?
そして王さまが家へ帰ってくると、ふたりは王さまに、お妃はまた犬を産みました、と言いました。すると王さまは、また言いました、「神様のなさることは、それでよいのだ」。ところが漁師がこの子も川から引き上げて、育てました。
それから王さまはまた旅に出ました。そして妃は女の子を産みました。悪い妹たちはこの子も川の中へほうりこみました。すると、また小鳥が空へ舞い上がり、歌いました、
※repeat
けなげなじょうちゃん、おまえだね?
そして王さまが家へ帰ってくると、ふたりは王さまに、お妃は猫を産みました、と言いました。すると王さまは怒って、妃を牢屋へほうりこませました。妃は長い年月牢屋に入っていました。
子どもたちは、こうしているあいだにも、育っていきました。あるとき一番年上の子どもが、よその子どもといっしょに釣りに出かけました。ところがよその子どもたちは、この子を近づけようとせず、「おい、捨て子、あっちに行けよ!」と言いました。その子はとても悲しくなって、年とった漁師に、それはほんとうなの、と聞きました。漁師はその子に、あるとき釣りをしていて、おまえを水から引き上げたのだよ、と話しました。すると男の子は、お父さんをさがしに行きたい、と言いました。漁師は、どうかここにいてくれ、とたのみました。ところがその子がどうしても行くといってきかないので、漁師もしまいには許してやりました。そして男の子は出かけ、何日も休まず歩いていくと、しまいにものすごく大きな川に出ました。川岸にひとりのおばあさんがすわって、釣りをしていました。「こんにちは、おばあさん!」と、男の子は言いました。――「ありがとよ!」――「魚がとれるまで、そこで長いこと釣ってないといけないんでしょうね」――「そしておまえは父さんを見つけだすまで、長いことさがさなきゃならないんだろうね。おまえはどうやってこの川を渡るつもりかい?」と、おばあさんが言いました。「そんなこと、見当もつかないよ」。するとおばあさんは男の子を背負うと、川を渡してくれました。それから男の子は長いことお父さんをさがしましたが、見つけることはできませんでした。そして一年たつと、二番目の息子が、お兄さんをさがしに出かけました。あの川にやってくると、お兄さんと同じようになりました。これで家には娘だけが残りました。娘は、お兄さんたちのことが心配でたまらず、とうとう漁師に、お兄さんたちをさがしに自分も行かせてください、とたのみました。そして妹もあの大きな川へやってきました。そしておばあさんに「こんにちは、おばあさん!」と言いました。――――「ありがとよ!」――「うまくお魚がとれますように」。おばあさんはこれを聞くと、とてもやさしい顔になって、女の子を背負って川を渡り、鞭を一本くれて言いました、「さあ、この道をまっすぐお行き、おじょうさん。大きな黒い犬の横を通るときは、静かに、素知らぬふりで、笑ったり、のぞいたりしないで、通りすぎるんだよ。そしたら、門の開いている大きなお城にでるから、そのしきいの上に鞭を落として、まっすぐにお城を通りぬけ、反対側に出なさい。そこに古い井戸があって、井戸から一本の大きな木が生えている。木には鳥の入った鳥かごがぶら下っている。それを取ってくるんだよ。それと井戸から水をコップに一杯汲みなさい。そのふたつを持って、同じ道を戻っておいで。しきいのところから鞭も持って来て、また犬の横を通るときに、犬の顔をはたいておやり。うまく当たるように、気をつけてね。そしたら、わたしのところに戻っておいで」。すると、なにもかもがおばあさんの言ったとおりでした。そして帰り道、おたがいに世界の半分をさがしあっていた、ふたりのお兄さんを見つけました。三人はそろって、黒い犬が道ばたに寝そべっているところまでやってきました。その犬の顔を女の子ははたきました。すると犬は美しい王子に変わりました。王子はみんなといっしょに川までやってきました。そこにはまだおばあさんがいました。おばあさんはみんなが戻ってきたので、とても喜びました。そしてみんなを背負って川を渡すと、おばあさんは姿が消えてしまいました。これでおばあさんも魔法がとけ、救われたのです。残った者たちはそろって年とった漁師のところへ行きました。そしてふたたび会うことができて、みんな喜びました。鳥は壁にかけました。
ところが二番目の息子は、家にじっとしていることができず、石弓を持って狩りに出かけました。息子は疲れたので、笛を取り出して、一曲吹きました。ところが王さまも狩りにきていて、その曲を聞きました。そこで息子の方へ行きました。すると若者がいたので、「ここで狩りをしてもいいと、誰が許したんだ?」と言いました。――「ううん、誰も」――「いったい、おまえはどこの馬の骨だ?」―――「ぼくは漁師の息子だ」――「あいつなら、子どもはいないはずだ」――――「信じないなら、いっしょに来いよ!」王さまはそのようにし、漁師にたずねました。漁師はすべてを話しました。そして壁の鳥が歌い始めました、
お母さまは、ただひとり、
牢屋の中においでです!
王さま、気高いお方!
ここにいるのはあなたのお子たち。
悪い妹たち、おふたりが、
お子たちをひどい目にあわせようと、
川の底へ沈めたところを、
漁師が見つけてくれました!
それを聞いてみんなは驚き、王さまは鳥と漁師と三人の子どもを連れて、お城へ戻り、牢屋を開けさせ、妃を外へ出しました。ところが妃はひどい病気で、みじめなありさまでした。そこで娘は井戸から汲んできた水を飲ませました。すると妃は、また生き生きと元気になりました。ところでふたりの悪い妹は焼かれ、お姫さまは王子と結婚しました。
収録:下10 三羽の小鳥
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
097. 命の水 Das Wasser des Lebens
あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
収録:下11 命の水
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
098. なんでも知っている博士 Doktor Allwissendあらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
収録:下12 もの知り博士
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
099. ガラスビンの中のおばけ Der Geist im Glas第2版以降で移動あらすじ
・(注1)
・
・
・
・
・
下九ガラス瓶の中の化けもの
ある男が息子に学問をさせ、息子がいくつかの学校を終えたとき、父親はもうそれ以上、息子に金をかける余裕がありませんでした。そこで息子を呼び寄せて言いました、「おまえも知っているだろうが、わたしたちの貯えはなくなってしまった。これ以上おまえに一銭も使えない」。すると息子が言いました、「父さん、そんなことを気に病むことはありません。それなら、わたしは父さんと暮らし、いっしょに出かけ、製材の仕事で(つまり、伐ったり、積んだりして)お金を稼ぎましょう」。というのも、父親は日銭の仕事をして食い扶持を稼いでいたのです。父親が言いました、「わかった、息子よ。それはおまえにはつらいだろうよ。それにわたしは斧を一本しか持っていない。おまえに買ってやることもできないんだ」「なんだ、そんなこと」、息子は言いました、「隣へ行ってください。一本貸してくれるでしょう」。そのようにして父親は息子のために斧を手に入れると、ふたりそろって森へ出かけ、働きました。昼まで仕事をすると、父親が言いました、「さて、ひと休みして、昼飯でも食べよう。そうしたら、また新鮮な気持ちで仕事にかかれるってもんだ」。学生の息子は昼ごはんのパンを受け取ると、パンを持って散歩をしてくる、そして鳥の巣を見つけてくる、と父親に言いました。「お調子者め!」、父親は言いました、「散歩をしてくるだなんて。わたしのところにいるんだ。でないと、疲れて、あとでなんの仕事もできないぞ」。けれども息子は森の中を歩きまわり、パンを食べ、鳥の巣をさがしまわりました。すると一本の恐ろしげな大きな樫の木がありました。そこを息子はしばらくさがしまわりました。突然、根っこのほうから声が聞こえました。それはとてもくぐもった声で叫びました、「おれをここから出してくれ!おれをここから出してくれ!」。そこで息子は声のした方へ聞き耳をたて、「どこにいるんだい?」と呼びかけました。声がもう一度、「おれをここから出してくれ!おれをここから出してくれ!」と言いました。「ああ、だけどぼくにはなにも見えないんだ。どこにいるんだい?」と、学生の息子は言いました。―――「この樫の木の根っこのところさ」。そこで息子がさがしてみると、小さなうろの中にガラス瓶が見つかりました。声はそこから聞こえたのです。息子はガラス瓶を日にかざしてみました。中にはかえるのような姿をしたものがいました。さらにそれが「栓を抜いてくれ!」と叫びました。学生はそのようにしました。そして栓を抜くと、ものすごく大きな男が出てきて、言いました、「おれを助け出してくれたお礼に何がもらえるか、わかってるかい?」「いいや」と、学生は言いました。「それじゃあ、教えてやろう。お礼におまえの首を折ってやる」「それはないぞ」、学生は言いました、「そういうわけには行かないよ。おまえが前もってそう言ってくれていたら、おまえを助け出しはしなかったのに。なんだったらほかの人たちに聞いてみな」――「ほかの人なんかかまうもんかい。おまえはおまえの仕事の報いを受け取らなくてはいけないのさ。おれがお恵みで閉じこめられていたんじゃなくて、罰で閉じこめられていたってことぐらい、考えりゃ簡単にわかるだろう。おれがなんていう名前か、わかるかい?」――「いいや」、学生は言いました、「わからない」。すると化けものが言いました、「おれは豪腕メルクリウスさ。おまえの首を折らずにはいられない」「いいや、おまえの言うようにはいかないよ」、学生は言いました、「おまえにあとひとつたのみを聞いてもらおう。もう一度、おまえが瓶の中へ入れるかどうか、見せてくれ。そうでなきゃ、おまえが出てきたなんて信じられないからね。それを見たら、ぼくをおまえの好きにしていいよ」。すると化けものは承知して、瓶の口から首を通って中へ入りました。化けものが中へ入ってしまうと、学生は抜いた栓をもう一度しました。こうして化けものはだまされたのです。そこで化けものは、どうかいま一度助けて外へ出してくれ、とたのみました。「だめだ」、学生は言いました、「ぼくの命を欲しがるようなやつを助け出すことはできないし、永遠に助け出してやるもんか」。すると化けものが言いました、「おまえが一生困らないくらいのものをあげよう」「でも、一度目のように、ぼくをだますんじゃないかな」と、学生が言いました。「いいや」、化けものは言いました、「おまえにはなにもしないよ」。そこで学生は気が変わって、また栓を抜いてやりました。すると化けものが外へ這い出てきました。「さあ、おまえにお礼をしよう」、化けものは言いました、「ほら、絆創膏をやろう。端っこで傷をなでると、傷が治るよ。もう一方の端っこで、はがねや鉄をなでると、みんな銀に変わってしまうんだ」。そこで学生はその絆創膏を試してみようと、一本の木に傷をつけると、そこに絆創膏をあてました。すると傷はたちまち治ってしまいました。そこで学生が化けものにお礼を言うと、化けものも学生に助けてもらったお礼を言いました。そしておたがいに別れを告げました。学生が父親のところへ戻って行くと、父親はまた仕事にかかっていて、息子が長いこと出かけて、戻らなかったことを叱って言いました、「なんの仕事もできなくなるって、ちゃんと言っただろう」「遅れた分は、きっと取り返しますから」と、学生は言いました。「取り返すなんて、できっこない」――「父さん、何をしたらいいの?」――「そこの木を伐り倒せ」。そこで学生は絆創膏を取り出すと、それでもって斧をなでました。そして木を二、三度伐りつけると、斧はすっかりひしゃげて、切れなくなってしまいました。というのも、斧が銀に変わっていたからです。「ほら、見てください、父さん」、息子は言いました、「なんて斧をわたしにくれたのですか?すっかりひしゃげてしまいましたよ」――「ああ、なんてことをしでかしたんだ」と父親は言い、ますます腹を立てました、「これじゃあ斧のお金を払わなくちゃならん。おまえが手伝ったおかげで、おれは大損害だ」。息子が言いました、「怒らないでよ、父さん。斧のお金はきっと払うよ」「この馬鹿者が。いったいどうやって金を払うつもりなんだ?おまえが持っているものといったら、わたしがあげたものだけだ。おまえの頭の中にあるのは、学生の浅知恵だ。木を伐ることについちゃ、おまえはなにもわかっちゃいない」。すると息子は父親に、仕事じまいをしよう、と提案しました。父親は、おまえはさっさと帰れ、と言いました。すると息子は父親に、いっしょに来てくれなければ、ひとりで家へは帰れない、と言いました。息子は斧を持っていきましたが、父親は年をとっていたので、斧が銀になったのが見えませんでした。ふたりが家へ帰ってくると、父親が言いました、「さあ、斧を持っていって、引き換えに何をくれるか、確かめてこい」。すると学生は斧を手に取り、それを持って町の金細工師のところへ行き、斧と引き換えに何をくれるか、たずねました。金細工師は斧を見ると、自分はその代金を払えるほど、財産がない、と言いました。そこで学生は、今、持っているだけのものを払え、残りは貸しにしてやる、と言いました。そこで金細工師は三百ターラーを渡し、百ターラーを借りにしました。それを持って学生は家へ帰り、「ほら、金を持ってきました。さあ、行って、男に斧の代金にいくら欲しいか、聞いてきてください」と、父親に言いました。「それならもうわかっているよ」、父親は言いました、「一(1)ターラー六(6)グロッシェンさ」――「それじゃあニ(2)ターラー十二(12)グロッシェン渡してきてください。それなら二倍だから、十分でしょう」。そして学生は父親に百ターラーあげて、これだけあれば決して足りなくならない、と言い、これまでの出来事を残らず話しました。そして学生は残りの三百ターラーを持って家を出て、学問を修めました。それから学生は絆創膏であらゆる傷を治し、世界で一番有名な医者になりました。
収録:下09 ガラス瓶の中の化けもの 初版は「下13 かえるの王子」 ⇒『KHM001. カエルの王さま、または鉄のハインリヒ』 の注へ
特徴
・(注1)
・
・
・
・
・
100. 悪魔のすすだらけの兄弟ぶん Des Teufels rußiger Bruder下14 悪魔の煤けた相棒
101. クマの毛皮を着た男 Der Bärenhäuter第五版以降で差し替え 初版は「下15 緑の上着の悪魔」
102. かきねの王さまミソサザイとクマ Der Zaunkönig und der Bär
あらすじ
・森に散歩に来ていた熊と狼が美しい声を耳にする
・狼が熊に声の主はミソサザイ(Zaunkönig )だと教える
・熊は「かきね(Zaun)の王様(König )」と解釈して、城を見てみたいと言う
・城ではなく鳥の巣だったことに熊は落胆して巣にいたヒナ達に暴言を吐く
・ヒナ達の告げ口でミソサザイと熊の争いとなる
・この争いはそのまま森にすむ4つ足の動物と空を飛ぶ鳥や虫の戦争に発展する
・偵察隊の蚊が動物軍の作戦会議を盗み聞きする
・動物軍の総司令官である狐をスズメバチが攻撃してミソサザイ側の勝利となる
・最終的に熊はヒナ達に謝罪する
収録:下16 みそさざいと熊
大筋で変更なし
103. あまいおかゆ Der süße Brei
あらすじ
・貧乏だが信心深い娘と母親がいた
・娘が食べ物を探しに森に行くと、出会ったおばあさんから小さな鍋をもらう
・その鍋は呪文を唱えるとお粥を煮たり、煮るのを止めたりできた
・娘と母親は飢えることがなくなったが、娘が不在となったある日、母親がお粥を煮る呪文を唱えた
・母親は煮るのを止める呪文を知らなかったのでお粥は家中に溢れた
・さらに隣の家、近隣、町中に溢れた
・最後の1軒もお粥に襲われるというところで娘が帰宅して呪文を唱える
・町に戻ろうとする人は先ずお粥をたいらげなければいけませんでした
収録:下17 おいしいお粥
大筋で変更なし
104. かしこい人たち Die klugen Leute第7版以降で追加
105. ウンケのむかし話 Märchen von der Unke下19 蛇の話、かえるの話
106. かわいそうな粉屋の若者と子猫 Der arme Müllersbursch und das Kätzchen下20 あわれな水車小屋の小僧と小猫
107. 2人の旅職人 Die beiden Wanderer第5版以降で差し替え 初版は「下21 からすたち」
108. ハンスうちのハリネズミ Hans mein Igel下22 ハンス針ねずみぼうや
109. 小さな死に装束 Das Totenhemdchen下23 経かたびら下66 悲しみの聖女
110. イバラの中のユダヤ人 Der Jude im Dorn下24 いばらの中のユダヤ人
111. 腕ききの狩人 Der gelernte Jäger下25 腕のいい狩人
112. 天国のから竿 Der Dreschflegel vom Himmel下26 天のからさお
113. 2人の王さまの子どもたち De beiden Künigeskinner下27 王の子ふたり
114. かしこいちびの仕立て屋の話 Vom klugen Schneiderlein下28 賢いちびの仕立て屋
115. お天道さまがあばきだす Die klare Sonne bringt’s an den Tag下29 くもりのないお日さまがことを明らかにする
116. 青い明かり Das blaue Licht下30 青い灯火
117. わがままな子ども Das eigensinnige Kind下31 わがままな子どもの話
118. 3人の見習い軍医 Die drei Feldscherer下32 三人の軍医
119. 7人のシュヴァーベン人たち Die sieben Schwaben第2版以降で追加
120. 3人の見習い職人 Die drei Handwerksburschen下34 三人の職人上77 指物師とろくろ職人
121. こわいもの知らずの王子 Der Königssohn, der sich vor nichts fürchtete第2版以降で追加
122. キャベツロバ Der Krautesel第2版以降で差し替え 初版の「下36 長い鼻」は注釈に記載
123. 森の中の老婆 Die Alte im Wald下37 森の中のおばあさん
124. 3人の兄弟 Die drei Brüder下38 三人兄弟上82 三人姉妹
125. 悪魔とそのおばあさん Der Teufel und seine Großmutter下39 悪魔とそのおばあさん
126. 真心フェレナントと真心なしフェレナント Ferenand getrü und Ferenand ungetrü下40 誠実なフェレナントと不誠実なフェレナント
127. 鉄の暖炉 Der Eisenofen下41 鉄のストーブ上59 白鳥の王子
原文(1812年初版)
Es war einmal ein König, der hatte eine einzige Tochter. Die ging oft hinaus in den Wald und kam an einen Teich. Darin schwamm ein Schwan, der war eigentlich ein verwünschter Prinz.
Wenn die Königstochter allein war, so kam der Schwan zu ihr heran, legte die Schwanenhaut ab und wurde ein schöner junger Mann. Da sprach er zu ihr, sie solle ihn erlösen, so werde er ihr Gemahl und König werden.
Aber sie fürchtete sich und wollte ihm nicht helfen. Da mußte der Prinz wieder in seine Schwanenhaut schlüpfen
und blieb verwünscht.
※初版特有の簡潔で断片的な語りが特徴です。
日本語訳(白鳥の王子)
むかし、あるところに王がいて、ただ一人の娘があった。その娘はしばしば森へ出かけ、ある池のほとりに来た。その池には白鳥が泳いでいたが、それは実は魔法をかけられた王子であった。
王女がひとりでいると、白鳥は近づいてきて、白鳥の皮を脱ぎ、美しい若者の姿になった。そして彼は、どうか自分を解放してほしい、そうすれば自分は彼女の夫となり、王になるのだ、と言った。
しかし王女は恐ろしくなり、助けようとはしなかった。そのため王子は再び白鳥の皮にもぐらねばならず、そのまま呪われた姿でとどまった。
補足
※ 極端に短い未完結型で、後年の「白鳥の王子」「動物花婿」型メルヘンの原初的スケッチに近い内容です。
※ KHM006 Der treue Johannes、KHM070 Der Okerlo、各地の「白鳥の乙女」「動物婿」伝承、との連関が想定されます。
※ 物語が救済に至らず断ち切られる点が、教訓性を強めた後期版グリム童話とは対照的です。
注は「上66 フルレブルレブッツ」
あらすじ(1812年初版)
・ある王さまが狩りに出て道に迷い困っていた
・小さな白い小人が現れて「末のお姫さまをくださるなら森を出る道をお教えしましょう」と言った
・とても不安だった王さまは「よろしい」と答えた
・小人は道を教えて別れ際に「一週間したら花嫁を頂きに行きますよ」と呼びかけた
・お城に戻った王さまは約束を後悔した
・お姫さま達は王さまが悲しそうな訳を知りたがった
・王さまは「末のお姫さまを小さな白い小人にやる約束をして、一週間したら連れていかれる」と話した
・お姫さま達は小人を上手く出し抜こうと、その日が来ると牛飼いの娘にお姫さまの服を着せて自分たちの部屋の中に座らせた
・「誰かが来てたら付いて行くんだよ!」と伝えて自分達は出て行った
・一匹の狐が入って来て「さあ、俺のふさふさしたしっぽにお乗り。フーレブーレブッツ!森へ行くぞ!」と娘に言った
・娘をしっぽに乗せて狐は森の中の綺麗な緑の原に連れて行った
・お日様がとても明るく、暖かく照る中、狐は「降りて俺のシラミを取ってくれ!」と言った
・娘は言われた通りにしながら「昨日の今ごろは森がもっと綺麗だったわ!」と言った
・不審に思った狐が尋ねると娘は「父さんと一緒に牛を追っていたんだもの」と答えた
・お姫さまじゃないと気付いた狐はしっぽに娘を乗せて「フーレブーレブッツ!」と言ってお城へ連れ帰った
・狐は「騙したな。この娘は牛飼いの娘だ。一週間したらお前の娘を連れに来るぞ」と王さまに言った
・一週間すると、お姫さま達は鵞鳥番の娘を煌びやかな服で代役にして、自分達は出て行った
・狐が再びしっぽに娘を乗せて「フーレブーレブッツ!」と言って森の中の日当たりのいい原まで連れて来た
・狐が「降りて俺のシラミを取ってくれ!」と言うと、娘はシラミを取りながら「今どこにいるのかしら、私の鵞鳥たちは?」と言った
・狐が尋ねると娘は「父さんと一緒に毎日鵞鳥を追って野を歩いているのよ」と答えた
・お姫さまじゃないと気付いた狐はしっぽに娘を乗せて「フーレブーレブッツ!」と言ってお城へ連れ帰った
・狐は「また騙したな。この娘は鵞鳥番の娘だ。一週間したらまたやって来る。その時、あんたの娘を渡さないとロクな事にならないぞ」と王さまに言った
・王さまは恐くなり、狐がまたやって来た時には末のお姫さまをやった
・お姫さまは仕方なく狐のしっぽに乗り、狐が「フーレブーレブッツ!」と言って森の中の日当たりのいい場所まで連れて来た
・狐が「降りて俺のシラミを取ってくれ!」と言うと、お姫さまは「私は王女なのに狐のシラミを取るなんて。お城の部屋に座っていればお庭の花を見ていられるのに!」と言って泣き出した
・狐はそれを聞いて本当のお姫さまをだと分かり、小さな白い小人に姿を変えた
・この小人がお姫さまの夫で、お姫さまはこの夫と小さな小屋に住み、料理や縫い物をした
・この生活が暫く続いたが、小人はお姫さまに優しかった
・小人は「出かけねばならないが、すぐに三羽の白い鳩が飛んで来る。地面すれすれを霞めるから真ん中の一羽を捕まえて頭を切り落とすんだ。必ず真ん中の一羽でないと恐ろしい災難が振りかかるからね」とお姫さまに念押しして伝えた
・小人が出かけて三羽の白い鳩が飛んで来たので、お姫さまは真ん中の鳩の頭を切り落とした
・それが地面に落ちた途端、美しい王子が目の前に立って言った
「私はある妖精に魔法を掛けられて七年の間、姿を変えられていたんだ。妻が私の頭を切り落とさなければその魔法が解けないことになっていた。ひとたび失敗したら何もかもお終いで、永久に救われないところだったので念を押したのだよ。私はあの白髪の小人とでお前は私の妻だ」
・お姫さまはとても喜んで二人は揃って父王さまのお城に行った
・父王さまはもう亡くなっていたので二人が王国を受け継いだ
128. なまけ者の糸つむぎ女 Die faule Spinnerin下42 なまけ者の糸つむぎ女下33 なまけ者と働き者
129. 腕ききの4人兄弟 Die vier kunstreichen Brüder第2版以降で追加
130. 1つ目、2つ目、3つ目 Einäuglein, Zweiäuglein und Dreiäuglein第2版以降で追加
131. きれいなカトリネルエとピフ・パフ・ポルトリー Die schöne Katrinelje und Pif Paf Poltrie下45 美人のカトリネリエとピフ・パフ・ポルトリー
132. キツネと馬 Der Fuchs und das Pferd下46 狐と馬•違い:物語の構成や登場人物の描写に若干の修正がありますが、核心部分に大きな変更はありません。
133. おどってすりきれた靴 Die zertanzten Schuhe下47 踊ってすりきれた靴
134. 6人の家来 Die sechs Diener下48 六人の家来
135. 白い花嫁と黒い花嫁 Die weiße und die schwarze Braut下49 白い花嫁と黒い花嫁
136. 鉄のハンス Der Eisenhans第7版で差し替え 初版から第6版までの「下50 山男」は注釈に記載
137. 3人の黒い王女 De drei schwatten Prinzessinnen下51 三人の黒いお姫さま
138. クノイストとその3人の息子 Knoist un sine dre Sühne下52 クノイストと三人の息子
139. ブラーケルの娘 Dat Mäken von Brakel下53 ブラーケルの小娘上84 お姑
140. 奉公人 Das Hausgesinde下54 下男
141. 子ヒツジと小さな魚 Das Lämmchen und Fischchen下55 小羊とお魚
142. ジメリの山 Simeliberg下56 ジメリの山
143. 旅に出る Up Reisen gohn第2版以降で差し替え 初版は「下57 腹をすかせて死にそうな子どもたち」
144. ロバ王子 Das Eselein下58 ちいさなロバ
145. 恩知らずの息子 Der undankbare Sohn下59 親不孝な息子
146. カブ Die Rübe下60 かぶら上72 梨の小僧、落ちゃしない
147. 火に焼かれて若がえったこがらな男 Das junggeglühte Männlein下61 若く焼きなおされた小男
148. 神さまのけものと悪魔のけもの Des Herrn und des Teufels Getier下62 神様の動物と悪魔の動物
149. オンドリの梁 Der Hahnenbalken下63 梁の木
150. 物ごいのおばあさん Die alte Bettelfrau下64 乞食のおばあさん
151. 3人のものぐさ Die drei Faulen下65 三人のものぐさ兄弟
151.a 12人のものぐさ下男 Die zwölf faulen Knechte第3版以降で追加
152. ヒツジ飼いの男の子 Das Hirtenbüblein第2版以降で追加
153. 星の銀貨 Die Sterntaler
あらすじ
・主人公は両親を亡くした女の子
・貧しいけれど信心深く気立てが良い
・所有物は服と一片のパン
・ある時、出かけた道中で、出会った貧しい人たちに所有物を全ての譲る
・夜にも関わらず森にやってきて、子供に最後の衣類(シャツ)を譲る
・その瞬間に星が降ってきてターラー銀貨に変わり、女の子は立派な服を身に着けている
・女の子は銀貨を拾い集めて、生涯裕福に暮らす
収録:上83 『貧しい女の子
特徴
信心深さを示す記述を追加している
・出かけた理由は「神様を信じて野原へ」
・パンをあげる場面では「どうぞ、神様のお恵みがあなたにありますように!」
・最後にシャツをあげる場面では「暗い夜だわ、誰にも見られやしない」(不自然さの回避)
※貧しい女の子が全ての所有物を他の人に譲った後で銀貨が降って来る。感動的な瞬間であるが、裸であるためChatGPTは作画を拒否する!
154. くすねたヘラー銅貨 Der gestohlene Heller
あらすじ
・家族と友人1人(以降は客と記述)が昼の食卓を囲んでいた
・正午の鐘が鳴ると共に青白い子どもが入ってきて、そのまま別の部屋に行った後で帰っていった
・これを見たのは客だけで家族には見えなかった
・これが数日続いた
・ある日、客が青白い子どもが入っていった部屋を覗くと床板の隙間をほじくっていた
・これを聞いた母親は4週間前に亡くなった子供だと気付く
・青白い子どもは「母親からもらったヘラー銅貨」を床板の隙間に隠していた
・母親は貧しい人にあげるようにとヘラー銅貨を渡していた
・青白い子どもは気になって神の御許に行けないのだと考えて、その子の代わりに貧乏な人にあげた
・それ以降、青白い子どもは現れなくなった
収録:上07 ぬすまれたヘラー貨
大筋で変更なし
155. 嫁選び Die Brautschau第2版以降で追加
156. 投げ捨てられた亜麻糸 Die Schlickerlinge第2版以降で追加
157. 親スズメと4羽の子スズメ Der Sperling und seine vier Kinder
あらすじ
・子スズメは飛べるようになった直後、まだ親が教育を施していない時期
・いたずら小僧たち(人間)が巣をつついて壊してしまう
・子スズメは突風に乗って飛び立つ(世間知らずのまま外界に出る)
・秋になって麦畑で親子は再会する
・親スズメは子スズメの近況を尋ねる
・年上の子スズメは果樹園(庭)で虫を探していたと答える
・親スズメは果樹園(庭)での生活の注意事項(銃)を教える
・次の子スズメは宮廷で暮らしていたと答える
・親スズメは宮廷での注意事項(罠や大型の鳥)を教える
・3番目の子スズメは道路で小麦を拾っていたと答える
・親スズメは道路での注意事項(投石)を教える
・末の子スズメには先ず自分の所で暮らすことを勧める
・末の子スズメは突風に教会まで飛ばされた後、説教を聞きながら過ごした経緯を話す
・親スズメは教会に戻って信心深い生活を続けることを勧める
収録:上35 親すずめと四羽の子すずめ
翻訳によると思われる差異はあるが、大筋で変更なし
158. のらくら者の国のむかし話 Das Märchen vom Schlaraffenland
あらすじ
・「のらくら者の国」に関するナンセンスな短文が列挙してあるだけ(以下が一例)
ローマの町が細い絹糸にぶら下がっている
足の無い男が速足の馬を追い越す
銀色の鼻をしたロバの子が2羽のウサギを追いかける
大きな菩提樹にパンケーキが実っている
蜂蜜が深い谷から高い山へ流れる
(続く)
収録:下67 のらくら者の国の話
特徴(翻訳の揺れ?)
下記2点(初版⇒最終版)は翻訳による表現の揺れかも知れない
・「二羽の鳩が狼を引き裂く 」⇒「二羽の鳩が狼をくちばしでつつく 」
・「二人の乳飲み子がお母さんをあやす 」⇒「二人の乳飲み子がお母さんに静かにしてと命令する 」
それ以外は大筋で変更なし
159. ディートマルシェのほら話 Das dietmarsische Lügenmärchen下68 ディトマルシュのほら話
160. なぞなぞ話 Rätselmärchen下69 なぞなぞ話上85 断片
161. 白雪と紅ばら Schneeweißchen und Rosenrot第3版以降で追加
162. かしこい下男 Der kluge Knecht第2版以降で追加
163. ガラスの棺 Der gläserne Sarg第2版以降で追加
164. ものぐさハインツ Der faule Heinz第2版以降で追加
165. グライフ鳥 Der Vogel Greif第2版以降で追加
166. 力もちのハンス Der starke Hans第2版以降で追加
167. 天国の貧乏な農夫 Das Bürle im Himmel第2版以降で追加
168. やせっぽちのリーゼ Die hagere Liese第2版以降で追加
169. 森の家 Das Waldhaus第2版以降で追加
170. 苦楽をわかつ Lieb und Leid teilen第2版以降で追加
171. かきねの王さま(ミソサザイ) Der Zaunkönig第6版以降で追加
172. カレイ Die Scholle第6版以降で追加
173. サンカノゴイとヤツガシラ Rohrdommel und Wiedehopf第6版以降で追加
174. フクロウ Die Eule第6版以降で追加
175. 月 Der Mond第6版以降で追加
176. 寿命 Die Lebenszeit第6版以降で追加
177. 死神の使いたち Die Boten des Todes第6版以降で追加
178. プフリーム親方 Meister Pfriem第6版以降で追加
179. 泉のほとりのガチョウ番の女 Die Gänsehirtin am Brunnen第6版以降で追加
180. イブのまちまちな子どもたち Die ungleichen Kinder Evas第6版以降で追加
181. 池にすむ水の精 Die Nixe im Teich第6版以降で追加
182. こびとの贈り物 Die Geschenke des kleinen Volkes第6版以降で追加
183. 大男と仕立て屋 Der Riese und der Schneider第5版以降で追加
184. くぎ Der Nagel第6版以降で追加
185. 墓の中のかわいそうな男の子 Der arme Junge im Grab第6版以降で追加
186. ほんとうの花嫁 Die wahre Braut第6版以降で追加
187. 野ウサギとハリネズミ Der Hase und der Igel第5版以降で追加
188. つむと杼と針 Das Spinnrad, die Nadel und die Spule第6版以降で追加
189. 農夫と悪魔 Der Bauer und der Teufel第2版以降で追加
190. 食卓の上のパンくず Die Brosamen auf dem Tisch第2版以降で追加
191. ミニウサギ Das Meerhäschen第2版以降で追加
192. どろぼう名人 Der Meisterdieb第2版以降で追加
193. 太鼓打ち Der Trommler第5版以降で追加
194. 麦の穂 Die Kornähre第2版以降で追加
195. 土まんじゅう Der Grabhügel第2版以降で追加
196. リンクランクじいさん Oll Rinkrank第6版以降で追加 第5版はDer alte Großvater und der Enkel(KHM078がこの時だけ移動、78にはDer treue Johannes)
197. 水晶玉 Die Kristallkugel第5版以降で追加
198. マレーン姫 Jungfrau Maleen第6版以降で追加 第5版はDer Schneider im Himmel(KHM035がこの時だけ移動、35にはDie siebenRaben)
199. 水牛革の長靴 Der Stiefel von Büffelleder第5版以降で追加
200. 金のカギ Der goldene Schlüssel下70 金の鍵