23. 聴きたくないけどみんな大好きRevolution 9

「ベーシックトラックを使わなかった曲は?」と訊いたら突然難問になってしまいます。これもまた2年前に明らかになったばかりの事実です。

最初に知った情報こそ自分にとっての真実であり、高が音楽に真相はどうでも良くて楽しめたら充分、と考えるのは自然です。現代人は他にも考えなければならない事がたくさんあるのですから。
それでも面白さを使えたい、となるのがこの曲です。特にアーティスト志望の人には参考になるでしょう。

Revolution 9Revolution 1(正確には途中段階の第18テイク)のリズムにテープループを乗せて作ったと語られていますが、これには大きな誤解があります。

「Revolution 1のリズムを録音した」とは語って無いにも関わらず、録音するのが当たり前と読み取ってしまっているのです。

そうです!
ジョンは「基盤となる演奏を使わない」という画期的な方法で革命を起こしたのです。Revolution 1のリズムはメトロノーム代わりに使われただけで録音には含まれていません。

説明の前に『THE BEATLES 2018 Disc 4』のRevolution 1(Take 18)『THE BEATLES 2018 Disc 2』のRevolution 9比較音源で確認して頂いた方が理解しやすいと思います。

今まで(あるいは現在でも)Revolution 9はジョンの感性でランダムに(悪く言えば適当に)音を重ねたものと思われてきました。ネタにするか敬遠するかの2択しかなく、何かを得ようと聴き込んで分析したのは後述するチャールズ・マンソンだけかも知れません(間違った方向に行ってしまったが)。

しかし、第18テイクが公開されたことで制作過程が垣間見えてきました。
共通部分としてエンディングの”you become naked”が同じなのは一聴して気付く事ができますが、その他にも途中のボーカルが数カ所使われているのも分かります。
それらを頼りに全体を重ねてみたのが前述の比較音源です。Revolution 1のボーカルを縫うように”number 9″や効果音が挿入されているのが確認できます。終盤に向かって混沌とした状況になっていきますが、前半はRevolution 1のSEとしてピッタリとハマっているのが分かります。
Revolution 1の演奏は使わないでボーカルの一部だけが残されていることから、ジョンは「SE付きの音楽からベーシックトラックを抜いてしまう」という発想で曲に仕上げたと推察できます。

ちなみにこの曲には最悪の後日談があります。

Helter Skelterとシャロン・テート殺人事件

1969年8月9日(『ABBEY ROAD』が完成に近づいた頃)、妊娠中の女優シャロン・テートが惨殺される事件がおきています。実行犯は狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者達のスーザン・アトキンスら5人組で、シャロンではなくテリー・メルチャーを狙った誤認殺人でした。
詳細は容易に検索できるので省略しますが、マンソンは『聖書』を独自解釈したカルト集団の指導者でもありました。アメリカ人であるマンソンはHelter Skelterがイギリスの遊園地にある螺旋状の滑り台とは知らなかったらしく、同曲は差し迫った終末的な人種間戦争の黙示であると曲解して自身の啓示のタイトルとして使っています。

Revolution 9もまた黙示のひとつに挙げられていました。その中でマンソンが得た啓示が”Turn me on dead man.”です。

手でレコードプレーヤーのターンテーブルを操作するスクラッチと言えば現代のデジタル世代にも理解しやすいと思います。この方法を使えば、60年代でも一般人が逆再生を聴くことはできました。レコードの終端に針を下ろして自分で逆方向に回転させるだけです。

実際に聞いてみるとこんな感じです。
Turn me on, dead man
これは”number nine”のセリフ部分で、発音記号で考えれば分かる通り、逆再生しても”Turn me on, dead man”とするには無理があります。
これが主要ループとして終始繰り返されているので、マントラのように受け取ってしまったのはどうしようもありませんが。