14. REVOLVER にテープループを持ち込んだキッカケは?

普通でない聴き方が最も面白いのが第7作目となる『REVOLVER』です。
(以降の説明中の速度変更や逆再生はFoomon/LinerNotesがあると便利ですが一般的な音声ソフトでも加工できる処理ですので聴いてみる事をお勧めします)

ここでは様々なスタジオ技術を集結して独自のものに昇華させており、他者の追随を許さない領域へと入って行きます。
逆に言えば、コピーバンドを最も苦しめるアルバム、普通には演奏できないアルバムです。

前作まではテープレコーダーの速度変更が不安定だったのですが、今回はスタジオスタッフが専用の調整装置を製作しました。これにより速度変更を多用したレコーディング時代が始まります。細部には触れませんが、基本的には演奏は速度を下げてヘビーに、ボーカルは速度を上げて艶っぽくする傾向があります。

この点だけでもライブ演奏できない事が理解できると思いますが、決定的に不可能なテクニックも導入されました。

ここからが本題となります。

スタッフの対応だけでなく、ビートルズ自身もサウンドに対して貪欲になっていきます。

その先陣を切ったのはポールです。
1966年2月24日、ポールはマイルズ夫妻(やはりインディカ・ギャラリー絡みです)と一緒にイタリア人の電子音楽作曲家 Luciano Berio の講演を聞きに行っています。Berioの音楽をポールに教えたのはマイルズで、その音楽は楽器を使わずにテープ編集や速度調整しながら再生するループで構成されていました。
ポールはその内容というより手法に興味を持ち、それがTomorrow Never Knowsのサウンド作りに直結しています。
注:速度調整装置はテープループを実現するためにポールが発注した可能性も考えられます。

3月にはジョンをインディカ・ギャラリーに連れて行き、ジョンが著書『Tibetan Book of the Dead』と出会ったのは既報の通りです。出来上がった曲はワンコードだった事からジョージはタンブーラを使ったインド音楽のアレンジを提案しています。ジョンがイメージしていた「僧侶が経を唱えるようなサウンド」にうまく合致したようです。

これにポールのテープ・ループが加わりますが、この手法はさらにビートルズ独自の発展を遂げます。

キッカケはジョンがRainの完成度を自宅でチェックしていた時でした。録音テープの巻き戻しをしないで、巻き取っていたリールをそのまま再生側にセットしたらしく逆再生のRainを聴いてしまいます。

ここで誕生した逆再生テクニックは早速Tomorrow Never Knowsの間奏に応用されています。
間奏前半を逆再生した上で半速にしてみるとインド音楽風の演奏まで入っています。

いくつかの音は逆再生とテープループの組み合わせになっているのも確認できます。

ちなみに、逆再生はトリッキーなギミックに留まらず、音楽的な発展までも試みられています。
I’m Only Sleepingの間奏がそれで、ジョージは先ず曲にフィットする普通の間奏を作っています。
それを採譜して逆向きに演奏して録音する事で、逆再生した音色で期待するメロディとなるようにしています。
注目ポイントはバックの演奏です。この演奏を聴きながら逆向きのメロディを弾くという難易度の高い技を実現しているのです。

なお、この作業は余程面倒だったらしくエンディングではポールも参加して簡単に済ませています。