7. ポールのギターの先生は?

ポールは誰かに教えを乞うタイプではなく我流派である事を承知の上で、誰の影響が大きそうかと言えばJohn Mayall(ジョン・メイオール)になるのでしょう。
その辺りも含めた考察ですが、誰かの踏み台となるべくの情報ですので生半可な知識が含まれる点は割り引いて下さい。

先ず、ビートルズに見え隠れするクラプトンの影を感じたのはA Hard Day’s NightYou’re Going To Lose That Girlの間奏で、いずれもジョージらしくないRUN奏法が使われている点でした。チャック・ベリーが使ったものとどう区別するかの知見はありませんが、これらはクラプトンとの関連を窺わせるものでした。後年になってA Hard Day’s Nightの間奏とクラプトンの接点を見つける事ができたのは既報の通りです。

アルバム『HELP!』で突然ギター演奏を披露し始めたポールですが、そのスケール(ギターの音階)はジョージがよく使っていたペンタトニック・スケール(メジャーあるいはマイナー)とは違っています。よりブルース・スケールのニュアンスが強いメジャー・ペンタトニックとマイナー・ペンタトニックを組み合わせたスケールになっています。

ここまでをKey Aで図示してみると以下となります。

ポールは、両スケールをミックスした内の一部を使っていると解釈できます(本人は理論的には捉えてないと思いますが)。

Another GirlTicket To Ride以降の演奏はほぼこのスケールで、特徴的な赤丸の音によって聴き慣れたペンタトニック・スケールとは一味違ったニュアンスがあります。

これらのスケールはクラプトンが弾くブルース・ギターの基礎知識として紹介されているものですが、クラプトンとポールとの間接的な接点としてジョン・メイオールがいます。

ポールはEpiphone Casino ES-230TD(62年製)を購入するきっかけについて、ジョン・メイオールからブルース教育を受けた記憶を語っています。双方の発言から64年12月上旬の出来事と思われますが、その時にB.B.キングやクラプトンのレコードを聴きながらブルースを教わったとしています。

奇しくも(あるいはポールが主導?)クラプトンが在籍していたヤードバーズ は直後の「ANOTHER BEATLES’ CHRISTMAS SHOW」で共演します。この時のクラプトンはジョージに近かったと思われますが。
さらに興味深い事に、クラプトンは1月にはヤードバーズ 脱退を決意して、4月にはジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズに加入します。このバンドは後のクリームの母体となります。

この経緯を鑑みるに、ポールは『HELP!』セッション前にジョン・メイオールからクラプトンを含むブルース・ギターの指導を受け、直後にはクラプトン本人とも話す機会が有ったことになります。
ここで自信を得て「『HELP!』セッションでポールが突然ギターを弾き始めた」に繋がるのでしょう。

ちなみに「ANOTHER BEATLES’ CHRISTMAS SHOW」の期間中、ポールはTexan を持ってヤードバーズの楽屋を訪れ、‘Scrambled Eggs’(歌詞の無い‘Yesterday’)の感想を尋ねています。
こちらはジャズ風のコード進行が使われていたり、別の曲ではsus4系のコードが使われていたりと、異ジャンルの音楽から影響を受けた時期のようです。