Got To Get You Into My Life

マーク・ルイソン氏の『レコーディング・セッションズ』では、リミックス・モノ7を作成し、ブラスを重ねて厚くしたリミックス・モノ8を作成してマスターとしたと記されている。更にステレオ・ミキシングはリミックス1のみが作成されている。

この記述からはモノミキシングのみに手動でブラスの音を重ねたという解釈しか出来ないのだが、何故、新兵器ADTを使わないのか疑問だった。

モノ・バージョンとステレオ・バージョンを比較することで作業箇所は容易に特定できた。ただ、自費出版本として出した1999年当時はレコードを音源としていたため、ワウフラッター等の問題があって分析の精度に限界があった。依然として疑問は残っていたが全曲バイブル執筆時にモノ・バージョンもCDで入手できるようになったことで状況が一変した。「ブラス音にブラス音を重ねた」のであればモノ・バージョンとステレオ・バージョンで共通(同じタイミング)のブラス音もあるはずなのだがそれが無い。タイミングのずれたブラス音があるのみであった。ここでようやく気付いたのが「オリジナルにはブラスが演奏されてなく、他の箇所からコピーされた」という可能性である。この仮説であればADTが使えない理由も説明がつく。後はコピー元を特定すれば証明できる、ということで以下の調査結果となる。

1’44″(左)と1’58″(右)でブラスが重なる様子

ブラス音の同期を取ってみると見事に一致しており、1’44″のブラスを1’58″にも重ねたことが立証できた。ステレオ・ミキシングの際は、リミックス1に直接上書きしたので作業記録が残ってないのだろう。また、「ギターをオーバーダブ」という作業が数多く記されていながらギターが目立たない曲であるのは、1’58″の試行錯誤だっだ可能性を窺わせる。

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