Please Please Me

マーク・ルイソン氏の『レコーディング・セッションズ』では、

  • ハーモニカの編集用パートを含め、テイク数は全部で18。
  • ステレオ・ヴァージョン用には第16・17・18テイクからニュー・ミックスが作られる。

と記されている。

この記述から実際のリリース・ヴァージョンを説明することはできない。ステレオ・ヴァージョンに使われているハーモニカの音はモノ・ヴァージョンそのものであるからだ。

モノとステレオで一致するボーカルを探してみたが、一致するのはハーモニカ部分だけであった。
まずはイントロ部分を示してみる。

(左がモノ、右がステレオの右チャンネルのみ)
イントロでハーモニカが一致する様子

ハーモニカの鳴り始めから鳴り終わりまでが一致するが、この時、ベースやドラムスも一致しているので、ステレオ・ヴァージョン側のベースやドラムスはダブルトラック状態になっている。つまりハーモニカはステレオ・ヴァージョンのテイクとは別のテイクに録音されていたものを重ねたことを示している。
更に2回目のヴァース直前のハーモニカ・パートはオフにするタイミングが遅れて”you”の歌詞まで含まれている。リズムとボーカルは別トラックに録音しているはずなので、ハーモニカはモノ・ミキシングされた状態(すなわちモノ・ヴァージョンのマスターテープ)に録音されているとしか考えられない。
2回目のヴァース前

決定的なのは最終ヴァースである。深いエコーに聴こえる箇所ではモノ・ヴァージョン全体(左側)が一致している。ステレオ・ヴァージョン用のハーモニカとしてモノ・ヴァージョンが使われたことを示す決定的な証拠である。
最終ヴァース

これらから推測できることは、まず候補となるテイクのモノミキシングが行われ、その際にハーモニカも追加されたと思われる。テープコピーによる音質劣化を防ぐにはこれが最小の手順となるからだ。それらを1曲に編集したものがモノ・マスターである。従ってハーモニカが入った2トラックテープは存在せず、モノ・マスターのみがハーモニカ音源となるはずだ。ハーモニカは全部で5カ所挿入されているので、第16・17・18テイクから作成するというのも状況がつかめない。

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