Fixing A Hole

普通に聴いただけではほぼ気付かないが、このような相違が明確になるところが同期再生の面白さである。マーク・ルイソン氏の『レコーディング・セッションズ』を読めば複雑なレコーディング過程であったことは解るのだが、結局どのようになっているのかが解らない。しかもステレオ音像ではほとんどの音が左に収まっていて初期の録音にありそうなミキシングになっている。

詳細は全曲バイブルの通りだが、実際に聴くと文章では表現しにくい情報を得られる。2つあるリズムトラックはモノとステレオで音量に差があり以下のような相違が生じるためである。

(左がモノ、右がステレオ)
ハープシコード
イントロのハープシコードは、共通するコード演奏とは別にアルペジオ気味に弾くハープシコードがあるのがわかる。このアルペジオ部分が、ややフライング気味に聴こえてしまうためかモノではこちらのトラックが控えめである。

ベース
ぼぼ同じようなフレーズのベースを弾いているため、片方毎に聴いているだけでは気付きにくいかも知れない。それでも所々違うフレーズを弾いているためADTによるダブルトラックでは無いことが確認できる。

ドラムス
ドラムスもぼぼ同じようなパターンを叩いているがフィルインは結構違っている。ここではADTやエコーでは無いことを証明するためにステレオ側が派手な箇所を示している。

これらを総合すれば、ボーカル・ギター・ベース・ドラムス・ハープシコードが全てダブルトラックになっていることが解る。また2つあるリズムトラックはほぼ同じような内容だが、一方はベースを大きめに、もう一方はドラムスを大きめに録音していることが解る。これらを、モノではドラムスが大きめな方をメインで使い、ステレオではベースが大きめな方をメインで使っているのが解る(モノではベースを抑えたとも解釈できる)。

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