Kansas City / Hey Hey Hey Hey

この曲はビートルズの全楽曲の中でも積極的に好きという人は少ないかも知れない。それでもレコーディング作業を知る上では最上位にランクされる曲である。また現存する録音テープではモノバージョンもステレオバージョンも作れないという意味ではPlease Please MeやShe Loves Youと同等とも言える。

ここではピアノの音の変遷を紹介すること。

(左がモノ、右がステレオ)
イントロ
エコーの可能性も否定できなかったので全曲バイブルでは触れていないが、モノバージョンではイントロの最後の4拍目部分のピアノが大きめになっているのでコード音が強調されている。一方、ステレオバージョンではリズムセクションのみの感じに聴こえる。

間奏直前
ここまではピアノが同じ演奏である。最後の”ho”がモノバージョンではカットされるが、この時に同時にリズムセクションのエコー音が聴こえる。多分、この瞬間にスタジオ内でジョージ・マーティンが演奏するピアノのミキシングが開始されたと思われる。つまりエコー音はエコーチェンバーのものではなくスタジオ内のモニタースピーカーから漏れている音であろう。

間奏のピアノ
同じような演奏だがピアノは別テイクのため左右に分かれて聴こえている。

テンションMAXのピアノ
モノバージョンを終えた後のステレオバージョンでは遊びが入ったのかテンションが上がったのかグリッサンドが多い。

これらから言えることは、4トラックテープと言えども彼らには途中経過であり、モノマスターあるいはステレオマスターを作ることだけが目標だったということである。モノバージョンとステレオバージョンが同じ日にミキシングされた理由は単純明快である。ピアノを入れることは決定していても空きスペースはコーラスの無い”Kansas City”部分だけだったため、そこだけ録音しておいて残りはミキシング時に演奏すれば良いということだ。ビートルズのメンバーの担当であれば面倒だが、ジョージ・マーティンの担当だったのでこのような判断になったのだろう。それくらいテープリダクションによるノイズを避けたかったということも解る。
この曲より以前に制作されたShe Loves Youのレコーディングテープが処分されていたというのも何ら不思議なことではないのである。ただ、現在を基準に考えると「もったいない」となってしまうのだが。

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