"I Saw Her Standing There" (Take 2)
『The Beatles Bootleg Recordings 1963』は1963年作品の50年の著作権保護期間が終わるタイミングでアップル(Inc.)がiTunes限定でリリースしたが、1964年以降のリリースはなく単発作品となった。代わりにアップル(ビートルズ側)がデラックス盤のリリースを始めたのは記憶に新しい。
EP『Free as a Bird』に収録された第9テイクに続き、第2テイクも公式音源の仲間入りを果たしたことになる。とは言え、実際には全12テイクがブートレグとして公知となっていたので(本アプリの「TIPS」タブを参照)、当時としても目新しさはなかった。
このテイクにスポットを当てた解説は以下のようになる。
"Money (That's What I Want)" (RM7 undubbed)
『レコーディング・セッションズ』の記載内容が複雑怪奇なので、先ずはこのRM7に関する事実のみを提示しておくと「リリースされたステレオ版の左チャンネルと全く同じ内容」という点が挙げられる。
モノ版とステレオ版にはイントロのミックス違いと別演奏のピアノという相違があるが、ピアノを除けばモノとRM7の基本部分は同じである。
これを元に検証と推測を加えていく。
練習している"to me"(A-F#)は未使用 ジョンは"wh---y you cry(A-A-A-A) and why you(G-G-G) lie to me(A-A-F#)"とリクエストしているが、ジョージの"to me"は最初だけ"to me"(G-F#)、以降は"to me"(A-A)と歌っているようだ。
第5テイクの最終コーラスでポールが脱線 ポールはアドリブでシャウトを入れているため、ジョージが"wh---y you cry(A-B-B-B)"と歌っているのが分かる。
ボーカル担当には変遷があり、クオリーメンによる1960年春のボーカルはジョージ、ピート・ベスト加入時(ビートルズ)にはピートがレパートリーとしていたが、脱退に伴ってジョンに移管された。62年末のハンブルク・ライブでジョンのボーカルを聴くことができる。
デビュー後はリンゴにも歌いやすい曲としてジョンがレパートリーを譲っており、63/07/30に放送された『Pop Go The Beatles』でボーカルが交代しているのを確認できる。ただし、この時点では未だジョンがリード・ギターを弾いている。
リリース版のリード・ギターはジョージであることから交代時期が未確定となっていたが、この第1テイクではジョンが弾いていることからレコーディング中の交代だったことが確定した。この時点でジョージが弾いているのは12弦ギターによるリフである。
この曲は午後の3時間で録音完了となるが、全5テイク以外に、"I’ll cry instead"を8テイクで完了、"Slow down"を6テイクで完了、と作業が詰め込まれている。"Matchbox"の第5テイクまでに時間を掛けているとは考えられないので、一瞬の判断による交代劇だったと思われる。つまり、ここでのジョージの演奏は完全なアドリブ(クオリーメンで弾いていた内容とも違う)である。
"Every Little Thing" (Takes 6 & 7)
ジョンはこの曲について「何かを手伝ったかも知れない。("maybe I threw something in.")」と'80 PLAYBOYインタビューで答えている通り、曖昧な記憶しか残っていないがポールの発言は2種類ある。
公認書籍『Many Years From Now』 自宅(ジェーン・アッシャー宅)でギターを弾きながら次のシングルを狙って単独で創ったとしている。更に、どこかの公演中、バックステージで行われた会議でブライアン・エプスタインに聴かせたのを覚えていると続けている。レコーディング用の曲として数曲披露した内のひとつで、キャッチーな曲ではあったがシングルとするには何かが足りなかったと述べている。
非公認書籍『The Beatles Off The Record』(2000年) 「1964年8月の全米ツアー中、アトランティック・シティでジョンと書いた。」と全く異なる証言になっている。「ジョンがギター・リフを弾き、ジョージはアコースティック・ギター」とおよそポールが発言しそうもない内容もあり真実味に欠けるが、前出の「どこかの公演中」がこれに該当している可能性はある。
9/29、レコーディング・セッションの初日、ジョージは遅刻して来る。最初に着手した本曲は第1~4テイクが録音されているが、当然ジョージは不在でリハーサルかアレンジ検討レベルだっとと思われる。この時にリード・ギターをジョンが担当する事に決まったのだろう(なんとなく"Get Back"からの連想ではあるが)。第4テイクがBESTとされているが、翌日に第5~9テイクが録音されて第9テイクがリリース版となる。
ここに収録された第6~7テイクはその途中のNGバージョンということになるが、興味深い事にここでもジョージが参加していない。アコースティック・ギターにジョンの特徴(コード・チェンジの際に開放弦を鳴らす)が表れているのでほぼ間違いない。ベーシック・トラックはリンゴのドラムス、ポールのベース、ジョンのアコースティック・ギターで、ジョンがリードギターのフレーズを前日に考えていて、ジョージには譲らなかったのかも知れない。
初期テイクの良いところはオーバーダブをしていないところであり、最初に演奏した全容が掴める。つまりボーカルがWトラックに聴こえても、それは「ジョンとポールのユニゾン」と断定できる訳だ。ここではAメロが二人のユニゾンであるのが明確になっている。
"I Need You (Take 1)"
『HELP!』のレコーディング・セッション初日(65/2/15)、ジョン、ポール、ジョージの3人が新曲を持ち寄っており、ジョンの"Ticket To Ride"、ポールの"Another Girl"に続いて着手している。録音順こそ前後するが、"Ticket To Ride"のギター・リフ(AーAsus2)はこの曲のイントロ(AーAsus2ーAsus4ーA)からジョージが発想したものだろう。"You've Got To Hide Your Love Away"のオブリガート(Dsus4ーDーDsus2ーD)も同様と推察する。
ジョージの曲とあってジョンとポールは初見(前の2曲とは立場が逆)、第1テイクでのジョンはマラカスを振っている。最終的にジョンはドラムスを担当するが、コード進行を覚えるのが面倒だったのかも知れない。後半にはリンゴと笑い合っているような声も入っており、釣られてジョージも笑っているようだ。
ポールはいつも通りベースを弾いているが、ここに収録された第1テイクではサビの後半(DーEーBmーE)の2小節目(E)をBmとして弾き間違えている(つまりベースだけBmが2小節続く)のを確認できる。
本来のBm部分は3連符で"just can go on any"と歌う箇所で、リリース版でのジョージは"just"の音(D)を半音上げて(D#)とし、コードをB7に変更している(DーEーB7ーE)。
リリース版となる第5テイクはマーティンの残したメモから以下の作業過程となっている。
ベーシック・トラックとなるのは、ジョージのガット・ギター("George vocal, and plays acoustic Spanish")、ポールのベース("Paul on bass")、ジョンのドラムス("John on off beat drums")、リンゴのパーカッション("Ringo on back of Jumbo guitar") 全ての演奏はトラック1で、トラック2にジョージのボーカルが入っている。
オーバーダブとしてトラック3にジョージのボーカルと所々でポールのコーラス("Voice George, with Paul occasionally")が録音される。
トラック4にWトラック用のボーカルとリンゴのカウベル("George and Paul again with Ringo on cowbell")が録音される。
トラック4を3人のボーカルで上書きする("Wipe Track 4 George and John and Paul")。 カウベルが消える!
トラック2にジョンとポールのコーラス、先ほど消してしまったリンゴのカウベル、そしてジョージのギターを上書きする("Wipe Track 2 John and Paul and Cowbell and Guitar.")。
トラック2にジョージのボリューム奏法を使ったギターを追加する("On track 2 George played 12 string Rickenbacker with foot pedal")。 このギターはコーラスやカウベルと重なる箇所もあるので、ジョージが単独で空きスペースに挿れたものではなく、最終的にギターを替えて全員で録音しなおしたと推察される。
"I've Just Seen A Face (Take 3)"
イントロのギター・アンサンブルは誰が何を弾いているかが、最初に明かされている。
この曲はWings Over Americaでポールがセルフカバーしており、この時には何故かイントロをカットしているがカポ無しのKey Gで演奏している。また、90年代のポールバンド時代にはMTVのアンプラグドで演奏しており、やはりKey Gになっている。ビートルズ時代はキーを上げるために、カポ2でKey Gの演奏をしているはずである。作曲者がKey Gでの演奏である以上、曲を教わったジョンとジョージも当然「カポ2でKey G」の演奏になっている。 なお、ジョージとジョンは結構強めのピッキングをしているようだ。特にジョンはポールの近くにいたらしく、その音がボーカルマイクに拾われている。 この仕組みを説明しておりと、ボーカル録音をする時はコンプレッサーを使っていたと思われる。この装置はテープに録音する音量を自動調節するためのもので、「大きな音は抑えて、小さな音は持ち上げる」ように動作する。これによって大き過ぎて歪んだり、小さ過ぎてノイズに埋もれたりすることを回避している。この時のポールは最初にカウントを取るが、イントロは演奏に集中して無音になり、Aメロで歌い始める、という流れになる。この無音になる瞬間にコンプレッサーはマイクに入って来た小さな音(ジョンのギター)を大きくしている。普通ならポール自身のギターの音を拾いそうなものだが、フィンガーピッキングの音より、ジョンのフラットピッキングの音量が勝ったのだろう。
※ちなみに、ジョンのギター音は大き過ぎてミキシング操作の対象になったらしく、リリース版では別トラックに入っているのをステレオ音像で確認できる。また、この第3テイクでも最後に「弦が切れた」と言っているので相当に強いピッキングだったのだろう。
"In My Life (Take 1)"
ジョンとポールの作曲範囲が永遠の謎となっているが、少なくともマーティンの証言ではスタジオで初披露したのはジョンであり、マーティンはジョンの曲と考えていた。それを全員で演奏したのが第1テイクであり、ここからかなりの情報を得られる。
第1テイクのイントロにも入っているリフはポールが作ったと発言しているが、ここではジョージが弾いている。ジョージはこのリフ以外は弾いていないようで、リリース版(第3テイク)と同じアルペジオ風の演奏はジョンのようだ(演奏前の発言ではストラトキャスターを弾いている)。
このテイクがジョンとポールが形にした初期状態らしく、ジョージはコーラスに加わっていない。最初のAメロで"remember"の譜割に驚かされるが、当初(少なくともジョンの作曲時)は言葉の持つリズムを優先したと推察されるが、最終的にはメロディー優先の譜割になったのが分かる。Aメロはジョンとポールだけ歌っていて、最終的にはポールとジョージで歌う"woo"がポールだけになっている。サビも同様に、ジョージが加わった3声ではなく、ジョンとポールの2声である。そのためか、前半4小節のコードがF#mーDーGーA、後半4小節がF#mーDーDmーA、となっている。
注目ポイントはサビの最後の"in my life ~"の2小節で、Aメロ最後の同じメロデューが[DーDm]ー[A]となっているのに対して、[Dm]ー[A]となっている。これは曲の最後でジョンがファルセットで歌う部分と同じであり、エンディングはサビの終わり部分を繰り返した構成のまま変更しなかったのが分かる。
注目ポイント2はジョージのコーラス参加で、これにはサビのコード変更も絡んだと推察される。サビの後半4小節がF#mーB7ー[DーDm]ーAとなるのがリリース版で、2小節目がB7に変わったのがポイントとなる。ジョンとポールのメロディーに変更はなく、その中間を埋めるハーモニー・パートが重要になった。前半の"moments"はE音ーD音、後半の"living"はE音ーD#音と歌い分ける必要がある。これを担当したのがジョージであるが、奇しくも"I Need You (Take 1)"でのメロディー変更(D音⇒D#音)であり、ジョージの恩返しだった可能性も考えられる(ポールによる修正ならライティングセッションで指摘しただろう)。これに伴い、サビの後半2小節目だったDコードが3小節目にずれ込んで、Aメロと同じ終わり方になった。
※今までサビの前半と後半のコードの違いはポール作曲説の根拠のひとつだったが、少なくともスタジオ入りまでは前後半が同じコード進行だったというのは貴重な情報である。
"Nowhere Man (First version - Take 2)"
解説では4人の演奏はトラック1に全て入っていると記されているが、ステレオ音像ではリズム(ドラムスとベース)とギター2本が左右に分かれている。デミックスを使用したのだろうが、出来れば貴重な音源は無加工で提供して欲しい。
第2テイクは、基本的にはカラオケ録音なのに、イントロのアカペラ部分だけガイド的に歌っているのが興味深い。普通ならハイハットを4小節刻んでおく程度にするのだが。そして、その"He's a real"の歌い回しが"Doesn't have a"と同じなのに先ず驚かされる。音節数を考えるとリリース版の方が不自然なので、作曲当初は2番の歌詞があって、追加の作詞段階で"He's a real ~"が出来たのかも知れない。
ジョンのアコースティック・ギターはコードチェンジの直前に鳴らす開放弦が0フレットの音になっているので、カポ無しのKey Eでの演奏と判断できるが、それより上の高音部も響いていることから12弦アコースティック・ギターなのだろう。
ジョージも12弦ギターで、こちらはエレクトリック(つまりラウンドシェイプの2代目リッケンバッカー360/12)である。オクターブを活かした厚い音にするため3~4弦のアルペジオになっているが、Aメロ最後のEコードにはsus4もオカズとして入っており、リリース版のリフが出来上がりそうな雰囲気が漂っている。
なお、この曲に使われたコードの不可解さはこの時点でも確認できる。AメロのF#m - Amの部分でポールはいずれもA音を弾いている(つまりA6 - Am)。サビの最後の3小節は、ジョンはA - A - B7と弾いているようだがポールはF#m7 - F#m7 - B7となっている。ジョンとポールはAとF#mが常に逆に聞こえる。一方のジョージはジョン寄りだが、サビの最後はB音(9フレット/4弦) - F#音(11/3) - A音(10/2)を弾いているようで、ここは両対応といった感じである。総じてコードネームを何と解釈すれば良いのか不思議な響きだ。
《ポリコード》
この時期のポールには「ベースの面白さが分かった」という旨の発言がある。ベース音を変えることでサウンドに変化を持たせることができるという意図だ。一般的にテンションコード(構成音の追加、X7、X9、X11、X13・・・)を単純化して分数コード(X/Y、Yがベース音)で表現する場合があるが、ポールの場合はベースも動いているのでポリコード(X on Y、Yもコード)で解釈する方が分かりやすい。
『RUBBER SOUL』の収録曲には以下のポリコードが確認できる。
Drive My Car AメロはD7sus4(あるいはD11)-Gを繰り返すが、D11はC on Dと表現できる。 Aメロの最後はA7#9b13-Aとなっているが、A7#9b13はA7alt(5度と9度が半音ずれる)のひとつで典型的なジャズ系コードとも解釈できる。
You Won't See Me サビの最後はE7sus4(あるいはE11)-E7で終わるが、E11はD on Eと表現できる。
Michelle サビの3~4小節目はAb7sus4(あるいはAb11)-Dbになっているが、Ab11はGb on Abと表現できる。 ※Drive My CarのAメロと同じ使い方。
いずれもベースによってより複雑になったテンションコードを安定した和音に落ち着かせている。
Nowhere Manのサビの最後も同様で、ここではA9onF#m-B7と解釈できる。なお、リリース版ではF#m7onA-B7とベース音を変更しており、試行錯誤の対象だったのは確実である。 "Got to Get You into My Life (Second version - Unnumbered mono mix)"
失われたSecond Versionとも言えるリメイクの途中段階で、後のブラス追加によりほとんどの演奏が4トラックテープ上から消えている。リリース版との比較から共通点はドラムスとベースのみで、解説で"another base part"と呼んでいるのはイントロ後半に入っている低音のギター・リフと思われる。
先ず現存する第8テイク(ブラスを入れた直後の状態)との比較音源が以下となる。 ♪Unnumbered Mix vs. Take 8♪
ブラスを入れるためにカットされたのはボーカルとジョンのリズムギターだが、リズムギターはベーシックトラック録音時の演奏のためドラムスやベースの背後にも混じっている。つまり、リリース版でも聞こえているカッティングは残響音であり、本来の音は当初からガイド演奏としてボーカルと同じトラックに入れられた可能性も考えられる。
この第8テイク(右の音)をリリース版モノと比較したのが以下である。 ♪Mono vs. Take 8♪
第8テイクを第9テイク(リリース版用テイク)にリダクションしてボーカル用のスペースを確保しているが、2トラック使ったブラスをまとめる時にADTを使用して音を厚くしているのが確認できる。と言ってもADTの音を認識するのは経験則が必要で、右(第8テイク)側に寄っているのが原音、左(第9テイク)側で聞こえるのがADTによって遅延した音である。Wトラック効果を出すためにADT出力より原音を小さめにするため、比較音源ではこのようなステレオ音像で聞こえてしまう。
なお、余談だが最後のタイトルコールの次(1'58"付近)にブラスが入ってないのも確認できる。 "Love You To (Take 7)"
第7テイクとしてリミックスされたのは、リリース版ではカットしていたポールのハーモニーを含んでいるのが分かりやすい注目ポイントとなっている。
そしてリリース版モノとの比較音源が以下となる。 ♪Mono vs. Take7♪
これで浮かび上がるポイントは、
※ブックレットの最後の記述"A week later, these four tracks were bounced down to two tracks on a second tape to create space for the recording of four trumpets and three cellos."が(おそらく)誤記で、オーケストラを追加したのは第25テイク、ジョンのボーカル追加のためにリダクションしている。この第26テイクの時点でエンディングのギターとチェロがモーフィング効果を意識したミックスになっているが、実際のチェロはギターと重なるフレーズを弾いている。
"She's Leaving Home" (Take 1 - Instrumental)
リリース版に使用されたオーケストラ(ほぼストリングス)は4トラックを全て使って録音し、ポールとジョンがボーカルを入れるために2トラック(ステレオ状態)にリダクションされている。この時にイントロのハープには16分音符の裏の音(おそらくADT)が加えられてトレモロ効果を作っている。この第1テイクはハープ奏者が演奏したそのままの音を聴くことができる。
なお、リリース版(モノおよびステレオ)ではトレモロ効果の付いたイントロのハープにさらにADTで厚みを出している。
以下の比較音源は左が第1テイク、右がリリース版モノになっているので分かりやすいが、カットされたチェロがサビの最後の1小節であるのが確認できる。 ♪Take1 vs. Mono♪"Baby, You're a Rich Man (Takes 11 & 12)"
丁度2'00"からリリース版(第12テイク)となる。つまり、イントロで度々中断するのが第11テイクということになる。この間、ジョージはギターのチューニングを促され、自身もコードの確認をしているが(この時点でイントロ追加?)、これらに答えているのはピアノを弾いているポールである。『レコーディング・セッションズ』にはジョンもピアノを弾いた旨が書いてあるが、第11テイクの時点ではポールの担当になっており、ジョンはマラカスを振りながら(ガイド)ボーカルに専念していると思われる。
ブックレットに書かれた解説「リンゴのドラムとポールのピアノはトラック2・3に録音されていた。トラック4にはジョンのリード・ヴォーカルが録音され、コーラス部分ではポールも加わっている。ポールのベースはトラック1にオーバーダビングされた。」を考慮すると、第12テイクの時点でジョージはギターを後回しにして、タンブリンを担当したようだ。以下の比較音源では第12テイク側にはギターが無く、リリース版にだけギターが入っているのを確認できる。 ♪Take12 vs. Mono♪
長年の懸案事項だった「モノ(右側)にだけ入っているリピートエコーの音」は何を加工したのか不明だが、この比較音源を聴く限りでは第12テイクに含まれる音ではなさそうだ。
ボーカルをトラック4に録音してからリダクションしているが、意外にも(と言うかこのようなケースは多い)リリース版にはほとんど残っていない。例えば最初のAメロだと"What do you wany to be"(2'30")のような地声で歌う箇所は最後まで残っているが、ファルセット部分は全て歌い直している。この歌い直しは第12テイクをリダクションする際に加えられたと思われ(手拍子はこのタイミングのようだ)、リダクションに2テイク(新たな第1&第2テイク)を要している。
この新たな第2テイクに加えられたのがClavioline(クラヴィオライン)で、謎の「リピートエコーの音(前出)」はミキシング時の演奏と思われる。なお、比較音源からピアノがかなりカットされているのを確認できる。 "All You Need Is Love (Rehearsal for BBC broadcast)"
このリハーサル音源はリリース版(本番)と「ベーシックトラックとコーラス」の同期が取れる。
リハーサルは本番同様に、録音済のテープを別テープにコピーしながら、ジョンのボーカル、ポールのベース、ジョージのギター、オーケストラを追加録音している。従って「ベーシックトラックとコーラス」はリリース版と同じものが入っている。
以下の比較音源で確認できる項目を列挙しておく。 ♪BBC vs. Mono♪
本番でのポールはエンディングの掛け合いから歌っており、それ以前は演奏に集中しているようだ。と言うよりも、ポールがマイクを要求したのはエンディングの掛け合いを思い付いたからではないだろうか。ジョンの"Love is all you need."はリハーサルとはタイミングが違っており、コーラスを掛け合いのように使っている。そのコーラス部分にはポールらしき声が追加されているのを確認できる。
なお、放送終了後、第58テイクを2点修正したとエンジニアのジェフ・エメリックが証言しているが、この音源からは知る由もない。
修正点1:イントロのフランス国歌部分でジョンがタンバリンを振っているが、リンゴがスネア・ロールを追加する。
修正点2:ジョンが2番のバースの2行を度忘れしていたため歌い直している。 "The Fool On The Hill (Take 5 - Instrumental)"
この第5テイクがリリース版と同期がとれたことで、『アンソロジー2』収録の第4テイクとは直接の繋がりがないリメイクであることが確定した(ブックレットの解説にも明記されている)。
ただ、解説にある「a fingerpicked acoustic guitar」と「another acoustic guitar」は同じ演奏をしており、ジョージが演奏中にピックの持ち替えをしているのではないかと推察される。
第5テイクに不足しているの音(比較音源の右)、つまりこの後で追加されるのはフルート、ポールのボーカル(Wトラック)、リコーダー(2'20")、ジョンとジョージのバス・ハーモニカ、エンディングのSE(2'45")で、その他は第5テイクで録音済ということになる。
なお、リリース版はこの第5テイクの3'00"でフェードアウトしている。 The Fool On The Hill:Anthology4 Take5(L)-Mono(R)
"I Am The Walrus (Take 19 - Strings, brass, clarinet overdub)"
ブックレットの解説の通りであればストリングスは1トラックに収められているはずなので、バイオリンとチェロはデミックスされたということだろう。なお、「a contra bass clarinet」は馴染みの無い楽器だが、1'55"辺りからセンターで聴こえている超低音のクラリネットで、不気味な雰囲気を必要とするこの曲ならではの選択と言える。
またビートルズによる演奏はトラック1に入っているはずであるが、ここで漏れ聞こえているのはオーケストラのトラックに入っているモニター音と思われる。リリース版と同期を取ろうとしたが少々難しい。
On 27 September 1967, in Studio One at Abbey Road, George Martin's score for eight violins, four cellos, three horns and a contra bass clarinet was taped. Playing along to the backing track from 5 September, the horns were recorded on track two of the four-track tape, strings were on three and the clarinet on four. In the evening session that day, the Mike Sammes Singers enjoyed taking a break from their usual schmaltzy repertoire to sing cheeky phrases such us 'oompah, oompah, stick it up your jumper!' During a subsequent reduction mix, the orchestral instruments and vocal group were combined on one track. This take, numbered 19, is a mix of the unused second attempt by the ensemble of 16 musicians to play the instrumental score.
1967年9月27日、アビイ・ロードのスタジオ1で、ジョージ・マーティンによるスコア(8挺のヴァイオリン、4挺のチェロ、3本のホルン、そしてコントラバス・クラリネット)が録音された。9月5日のバッキング・トラックに合わせて演奏され、ホルンは4トラック・テープのトラック2に、弦楽器はトラック3に、クラリネットはトラック4に録音された。
同日の夜のセッションでは、マイク・サムズ・シンガーズが普段の甘ったるいレパートリーから離れ、 “oompah, oompah, stick it up your jumper!”(ウンパ、ウンパ、ジャンパーに突っ込んじまえ!)といった茶目っ気あるフレーズを歌って楽しんだ。
その後のリダクション・ミックスで、オーケストラ楽器とヴォーカル・グループは1つのトラックにまとめられた。このテイクは19番と番号づけられ、16人のミュージシャンによるインストゥルメンタル・スコア演奏のうち、使用されなかった2回目の試みをミックスしたものとなっている。 "Hey Bulldog (Take 4 - Instrumental)""Good Night (Take 10 with a guitar part from Take 5)""While My Guitar Gently Weeps (Third version - Take 27)""(You're So Square) Baby I Don't Care (Studio jam)""Helter Skelter (Second version - Take 17)""I Will (Take 29)""Can You Take Me Back (Take 1)""Julia (Two rehearsals)""Get Back (Take 8)""Octopus's Garden (Rehearsal)""Don't Let Me Down (First rooftop performance)""You Never Give Me Your Money (Take 36)""Here Comes the Sun (Take 9)""Something (Take 39 - instrumental - strings only)""Free as a Bird (2025 Mix)"Free As A Bird:Single(L)-2025Mix(R)
"Real Love (2025 Mix)"Real Love:Single(L)-2025Mix(R)
"Now and Then"
2トラック録音の検証
※音源は左がモノ、右がステレオ
最初から最後まで「音が中央で聴こえる」、
ということは「演奏とボーカルの音量操作をしていない」、
ということは「ステレオは2トラックテープをコピーしただけ」。 PLEASE PLEASE ME I Saw Her Standing There