アルバム:
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Too Many People | モノバージョンではイントロを含め、ポールのリードボーカルに掛かっているエコーが大きめになっており、ステレオバージョンではそれを左、エコーを右に配置することで小さめでも充分な効果が得られている。一方、0分17秒のギターフレーズのディレイ音(右チャンネル)はステレオバージョンのみで、モノバージョンには無い。
ステレオバージョンでは0分34秒にリンダの声がメインで左右から"piece of cake"というコーラスが入るが、モノバージョンではリンダの声が控えめになり、ポールの声がメインになっている。 2分55秒では"done"のバックでギターのG音が鳴るが、ステレオバージョンでは"done"がかき消される位の音量になっている(その直後には音量が抑えられている)。 その後、3分05秒からギターソロが始まるが、モノバージョンではシンバルが控えめになっている。更にステレオバージョンでは3分55秒から入っているクリーンギターによるアドリブソロも、モノバージョンでは4分01秒でフェードインしており、音が重なり過ぎるのを回避している。
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3 Legs | モノバージョンでは全体的にポールのリードボーカルに掛かっているエコーの残響が長めになっている。
その他の主な違いはギタートラックのオン/オフによるものである。0分29秒では、コーラスの直前のベースの最後の2音にギターが重なっているが(右チャンネル)、モノバージョンではギターが入っていない。逆に0分48秒では右チャンネルのギターが2拍目で途切れて3拍目から左チャンネルで鳴るが、モノバージョンでは2拍目にも3連のギターが隙間を埋めるように入っている。再び、1分12秒のコーラス直前には1拍目までギターが左チャンネルに入っているが、モノバージョンでは1拍目の音だけカットされている。 1分58秒~1分59秒の区間が編集ポイントになっている。2種類の比較のためどちらが編集されているのかは特定できないが、モノバージョンの方が間隔が短く、コーラス前にブレス音が残った状態になっている。また、2分20秒からの3声のボーカルのバランスが異なっており、ステレオバージョンの中央から聴こえるボーカルがモノバージョンでは小さめになっている。
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Ram On | 0分20秒から入ってくるウクレレが、モノバージョンはシングルトラック、ステレオバージョンはダブルトラックになっている。モノバージョンでカットされているのはリズムキープするためのウクレレと思われ、ステレオバージョンでは鳴りっ放しでシャッフルビートを刻んでいるが、モノバージョンでは要所々々でブレイクしている(たとえば0分41秒)。
コーラスはそのバランスに微妙な相違があるが、1分12秒でステレオバージョンの右チャンネルに入ってくる"Ah"はモノバージョンの方が大きめになっているのが顕著である。 2分12秒のブレイク部分は長さが異なっており、明らかに編集ポイントとなっている。 これ以降は別テイク(つまり11曲目のテイク)が繋がれていると考えられる。
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Dear Boy | モノバージョンではボーカルのエコーが深い。
これはこの曲に限らずビートルズ時代から行われてきたミキシングのセオリーである。
珍しいのは0分20秒から入ってくるコーラスが、ステレオバージョンではボーカルより大きく、コーラス中心のミキシングとも取れることだ。モノバージョンではごく普通にリードボーカル中心の音量で、コーラスのエコーを長めにしてバランスを取っている。
0分56秒は残念ながらどちらかを特定できないが、この付近はモノバージョンの方が少し長めになっている(単純にアナログテープが経年劣化で伸びていたという程度の可能性もある)。 モノバージョンはフェードアウトが遅いため、2分12秒にピアノを叩く音まで収録されている。
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Uncle Albert / Admiral Halsey | 0分01秒は歌い出しの"We're so"の直後で、本来はどちらのバージョンの編集か分からないのだが、モノバージョンにはエコーが途切れずに掛かっていることから、ステレオバージョンの編集と推測できる。歌い出しに不満があって再ミキシングによる差し替えを行ったのであろうが、失敗テイクが不明のため何が問題だったのかは分からない。ただ、ビートルズ時代の「The Long And Winding Road」がそうであったように、歌い出しへのこだわりはポールならではなのだろう。
1分26秒はギターフレーズの1拍目の直前(4拍目の裏)であるが、
モノバージョンには4拍目の裏にキックの音が入っているが、ステレオバージョンではカットされている(つまり編集されたのはステレオバージョンのようだ)。
本メドレーは一連の曲としてレコーディングしたのではなく、2分16秒~2分19秒でクロスフェードの編集をしている。この区間は「Admiral Halsey」のイントロのピアノの1拍目から4拍目表までの7音である。 ステレオバージョンの3分29秒(4拍目裏)には左チャンネルのボーカルのブレス音が入っているが、モノバージョンでは削除されている。以降はモノバージョンでは3分59秒~4分03秒でエコーの無いクリーンなギター、4分04秒以降のコーラスがかなり小さめ、4分22秒以降でステレオバージョンの右チャンネルに入っているシンセブラスが入っていない、といった違いがある。なお、4分22秒の編集跡はシンセブラスに関するものと推測されるが詳細は不明である。 4分48秒から入ってくるラフなギターはステレオバージョンとモノバージョンでタイミングが違っている。つまり「Admiral Halsey」のエンディングとして録音されたものではなく、次曲「Smile Away」のイントロ前に録音されている音で、クロスフェード編集されたと考えられる。
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Smile Away | 0分02秒はカウント直後を指している。
つまりこのカウントは「I Saw Her Stabding There」のように別テイクのものを繋いだ可能性がある。
ミキシングに関するバランスの差異はあるが際立ったものではなく、
(やや分かり辛いが)1分05秒(1拍目)のギターコードが、
ステレオバージョンでは余韻があるのに対してモノバージョンではフェードアウトさせて聴こえないのが唯一の相違点である。
モノバージョンのエンディングは4秒弱長く、急激にフェードアウトする。
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Heart Of The Country | 音の過不足は無く、モノバージョンにはボーカルに深めのエコーが掛かっている。
また、ラジオ放送用ということを意識しているためか全体的にベースの音量が小さく(70年代のポールはベースの音量が一般より大きめである)、0分11秒から0分23秒でもギターの音量を下げてボーカル中心にミキシングしたようである。
1分42秒ではモノバージョンのボーカルで"sheep"の"p"が消えているが、これはリマスター作業によるものと思われる。
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Monkberry Moon Delight | モノバージョンでは0分02秒(最初の小節の4拍目裏)でアコースティックギターを強調している。その後も音量を大きめにしてイントロのアクセントに使っているが、ステレオバージョンでは左チャンネルに平坦にミキシングされているのみである。更に0分59秒でタンバリンが加わると、ステレオバージョンではアコースティックギターをほとんどカットしている。
モノバージョンの3分38秒では"Monkberry Moon Delight"のボーカルが1回抜けている。この回だけはスキャット風のアドリブが付いているので、それを消したかったと思われる。同様に4分26秒と5分15秒では、ファルセットのボーカルを生かし、他方をカットしている。 3分09秒(4拍目裏の"(De)light"の位置)とエンディングの4分21秒(1拍目裏の"Monkberry"の位置)には編集箇所があるが、3分38秒の修正と考えるにも、前後半の修正と考えるにも対象区間が長過ぎるため目的は不明である。
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Eat At Home | 複数あるボーカルトラックだが、ステレオバージョンでは片方だけのシングルトラックにして音量を上げ、更にエコーを深くしている。一方のモノバージョンでは異なるボーカルも使ったダブルトラックとなっている。その追加されたトラックには0分10秒に話し声が入っており、「Michelle」や「Norwegian Wood」を彷彿させる。
0分52秒から1分02秒、2分34秒から2分44秒に入っているリンダのコーラスは、ステレオバージョンとモノバージョンで使われているトラックが異なっている。 更にステレオバージョンの2分02秒で歌う"eat at home"にはリンダのコーラスが付いているが、モノバージョンには入っていない。直後に3回ブレス音が入っているが、モノバージョンは2回目以降を消している。 2分06秒は間奏の開始小節位置で、いずれかのバージョンは間奏を何度かリミックスして差し替えたと思われる。間奏中の2分13秒から2分23秒では「Back In The U.S.S.R.」のようなポールのアドリブSEが入っているが、モノバージョンではほとんど聴こえないくらい小さめになっている。
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Long Haired Lady | モノバージョンでは0分05秒にあるクレッシェンドするブラスのエコー音が大きめになっていてより迫力がある。
0分06秒から始まるリンダのボーカルは、ステレオバージョンでは中央がメイン、右はエコーのように小さめな音量になっているが、モノバージョンでは同等の音量になっている。 1分09秒から1分30秒にかけて(以降の同内容も同様)、リピートエコーを掛けたアコースティックギター(「Let It Be」でフィル・スペクターがシンバルに掛けたような感じ)がステレオバージョンの右チャンネルに入っているが、モノバージョンでは2回目以降の音量が下げられているためほとんど聴こえない。 またステレオバージョンには"my long haired lady"に長めのディレイが掛けられている。 エンディングにある5分58秒の編集跡はちょうど小節の区切り位置となっており、以降のフェードアウトを差し替えて修正したことは確実である。どちらを修正したかの確証は無いが、この位置を境にエコーの係り具合が同じになっていることから、ステレオバージョンを2トラックテープと見立てて、モノにミックスダウンしたもの(つまりモノバージョン側を修正)と思われる。
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Ram On |
イントロのフェードイン部分が3曲目のフェードアウト部分と一致している。
つまり、3曲目に使ったテイク1と、この11曲目のテイクを繋いだ上で、
前半をフェードアウトさせ、後半をフェードインさせて分割したと推測できる。
反復曲の手法は『サージェント・ペパー』以降ポールのお気に入りのようだが、
タイトル曲を3曲目に配置してみたり反復方法を変えてみたりと、
新たな手法を試みているようだ。
モノバージョンのウクレレがシングルトラックなのは3曲目と同様である。 その他、イントロが6秒弱短く、エンディングの「Big Barn Bed」のエレピが大きめに入っている。また、フェードアウトが遅いため、"bed"を歌い終わるまで収録されている。
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The Back Seat Of My Car | アルバムでは「A Day In The Life」の役割を担う曲という解釈で良いのだろう。同じような構成で、それなりのスケールを感じさせる。他の曲とは違いボーカルのエコーも控えで、両バージョンでエコーの差が目立たないのは極めて珍しい。エコーに差があるのは、モノバージョンのイントロでのギター、ステレオバージョンのホルンの一部パートくらいである。
2分25秒と2分52秒(いずれも小節の区切り位置)に編集箇所があることから、いずれかのバージョンはテンポが変わるこの区間のミキシングを試行していることが分かる。 ステレオバージョンの2分59秒には左右からギターが聴こえるが、右側のギターはモノバージョンではカットされている。 ステレオバージョンのエンディングでは4分08秒のドラムスにディレイが掛かっているが、モノバージョンではエコーになっている。
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